中小企業の決算対策|厳選重要11テクニックと落とし穴5つ

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工場地帯

中小企業の経営者の方からよく、決算対策についての相談をいただきます。大きな収益が出て法人税が心配なので、何とか決算対策をしたいというのがほとんどです。そして、中には、「保険を契約して保険料を年払いで支払う」とか、「社用車として高級外車を買う」といった具体的な方法について相談をされる方もいらっしゃいます。

しかし、それらはいずれもかなりのお金がかかるもので、簡単に決めていいものではありません。しかも、会社の資金を使わずに決算対策ができるならばそれに越したことはないと思います。また、お金を使うにしても、そのお金が無駄にならず、会社や従業員の将来にとって意味のある使い方を選ぶべきだと思います。

この記事では、お金がかからないか、お金を使う意味のある11のテクニックを厳選して説明します。また、「決算対策」をしようとする時に陥りがちな落とし穴を5つ取り上げて説明します。ぜひ最後までおつきあいください。

〈目次〉

1.絶対に押さえておきたい11テクニック

2.中小企業の決算対策の落とし穴5つ

1.絶対に押さえておきたい11テクニック

テクニック1.会計年度を変更して売上のピーク時期からスタートするようにする

まずは、会社の決算期と売上のピークの時期を確認してみてください。タイミングが重なっていたり近かったりはしないでしょうか。

売上のピークの期間が毎年決まっているのであれば、その時期を事業年度の始まりにすることで決算対策がしやすくなります。たとえば、12月がかきいれ時で売上のピークならば、事業年度のスタートを12月にすれば、翌年11月までの間にじっくりと決算対策ができるわけです。

決算期を変更するには会社の定款を変更しなければなりませんが、中小企業であれば手続は簡単でしょう。とくに、株主が社長1人しかいないような会社であれば、株主総会議事録を作成するだけで済ますことができます。あとは、税務署に届出をすれば手続は完了です。

ここまで読んで、「反則ではないか?」とお思いになるかも知れません。

しかし、気にすることはありません。売上のピークはたいてい繁忙期と重なります。納税申告で忙しい決算期末と重ならないようにしたいというのはむしろ当然のことです。

しかも、忙しすぎるとミスが増えるリスクがあります。ミスがあると税務署の手を煩わせてしまいます。したがって、繁忙期と決算期をずらしてミスが少なくなるならば、税務署の方でも大歓迎のはずです。

テクニック2.年度内に受けたサービスの対価は年度内の費用として計上する

たとえば、従業員の給料、事務所の賃料、水道光熱費、通信費等を思い出してください。これらは、毎月コンスタントに続けてサービスを受け、その費用を翌月に後払いするものです。

そして、年度内にサービスを受けて次の年度に費用を後払いすることがあります。これを「未払費用」と言って、その年度の損金に算入することができます。

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中小企業の場合、たまに、この「未払費用」の金額を年度内の費用として計上するということが徹底されていない場合が見受けられます。その結果、本来損金に算入すべきものが算入されていない可能性があります。

「未払費用」をその年度の損金として計上することは、会計のルールを明確にして事務の効率をアップさせることにもなります。普段から徹底しておくようにしてください。

テクニック3.サービスの対価を前払いしたら年度内の費用にできる場合がある

これから受ける予定のサービスの代金を前払いするものを、「前払費用」と言います。たとえば、事務所の賃料や保険料等を前払いするような場合です。つまり、上で説明した「未払費用」とは逆です。

この「前払費用」は、原則として、後でサービスの提供を受けた時に損金に算入することになっています。

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しかし、例外として、年度内にサービスを受けていなくても、その代金を年度内の損金に算入できる場合があります。これを「短期前払費用」と言います。

この「短期前払費用」の例外が認められるには、相手方との契約で、毎年同じように「年払い」で支払うことになっている必要があります。これまで「月払い」だった場合は、改めて相手方との合意の上、契約書を作り直して、それ以降の支払いを「年払い」に変更する必要があります。

なお、税理士への報酬等、サービス内容が月ごとにかなり違うようなものは、「短期前払費用」と扱われませんので、注意してください。

また、新たに契約を結ぶ場合にはお金が必要です。大切な資金を無駄にするのは愚かなことです。くれぐれも「節税」だけに気を取られて無駄な契約を結ばないようにしてください。

特に、法人保険に加入して保険料を年払いで支払おうとする場合には注意が必要です。「落とし穴3.保険料を損金に算入できるという理由だけで保険に加入するのはNG」で説明します。

テクニック4.次年度以降に予定している設備投資や修繕を前倒しして行う

たとえば、次の年度以降に大規模な設備投資や修繕はありませんでしょうか。

もしあれば、その予定を少しだけ前倒しして年度内に行えないか検討してみてください。その費用を年度内の損金に算入できれば、黒字幅を小さくすることができます。

ただし、あくまで、もともと近い将来に確実に予定していた支出に限ります。決算期になって慌てて、必要でもない支出の計画を立てるなどというのは、会社の資金の無駄遣いにすぎません。

テクニック5.使わなくなった固定資産・災害で損傷した固定資産について損失を計上する

会社の固定資産台帳を確認してみてください。全く使わなくなってしまった固定資産や、災害等で損傷した固定資産がないでしょうか。

売却損

不要な固定資産をいつまでも持っていると、無駄が大きいだけでなく、固定資産税もかかってしまいます。このような固定資産については、帳簿価額よりも安い金額で叩き売れば、差額を「売却損」として損金に計上することができます。

除却損

また、不要な固定資産を廃棄すれば、その資産の帳簿価額を「除却損」として損金に計上することができます。この場合、税務調査が入った時のために、廃棄したことの証拠を残しておくようにしてください。なお、固定資産台帳に記載されているのに実際にはもうなくなってしまっている物があれば、それについても「除却損」を計上できます。また、パソコンのソフトのような無形の固定資産についても、もう絶対に使わないのが明らかならば「除却損」を計上することが認められています。

評価損

さらに、固定資産については、災害による著しい損傷が生じて、資産価値を低く見積もらなければならなくなった場合に限ってではありますが、「評価損」を損金に算入することが認められています。

テクニック6.売れなくなった商品について損失を計上する

商品(棚卸資産)が売れなくなってしまった場合、固定資産と同じように、「売却損」「廃棄損」「評価損」を損金に算入できることがあります。

売却損

決算期末前に大量に売れ残ってしまった商品があったら、「決算セール」「大売出し」等をして原価よりも安く売れば、原価との差額分を「売却損」として損金に計上できます。

廃棄損

そこまでしても売れる見込みが全くない棚卸資産もあるかも知れません。そのような資産については、廃棄すれば「廃棄損」を損金に計上することができます。

評価損

また、資産価値の評価を低く変更すれば、その分を「評価損」として損金に算入できる場合があります。ただし、これはごまかしが行われやすいので、条件がかなり厳しくなっています。詳しくはこちらをご覧ください。

テクニック7.回収できなくなってしまった不良債権の額について損失を計上する

売掛金等の債権が回収できる見込みがなくなって、不良債権となってしまってはいないでしょうか。その状態がある程度の期間継続したなどの一定の要件を充たせば、その額を「貸倒損失」として、その年の損金に算入できる可能性があります。

ただし、ごまかしが行われやすいので、認められる条件はかなり厳しくなっています。詳しくはこちらをご覧ください。

テクニック8.回収できなくなることが確実な不良債権の額を損失として計上する

上でお話しした「貸倒損失」は、既に債権が回収不能になってしまった場合の話でした。

それでは、将来回収不能になることが確実な場合はどうでしょうか。

実は、この場合も、「貸倒損失」よりも条件が厳しいものの、回収不能の事態に備えて事前に一定の金額を損金に算入できる可能性があります。これを「貸倒引当金」と言います。

ただし、資本金・出資金が1億円以下でなければならないという条件があります。

また、まだ貸し倒れに陥っていない段階なので、債務者が破産状態に陥っているなどの極めて厳しい要件が課されています。詳しくはこちらをご覧ください。

テクニック9.1個30万円未満、合計300万円以下の減価償却資産を前倒しで購入する

「減価償却資産」については、よく分からない人がいるかも知れませんので、簡単に説明しておきましょう。

建物、機械、船、自動車、工具、器具等といった資産は、それが利用されて収益を出し続けていくにつれて、その資産の価値が逆に減っていくものと扱われます。これが「減価償却資産」です。

「減価償却資産」を買った場合の代金は、原則として、全額をその年の損金に算入することはできません。収益が上がっていくのに対応して、逆にその資産の価値が減った分を、何年かに分けて費用として損金に算入することになっています。これが「減価償却費」です。

減価償却費

しかし、資本金・出資金の額が1億円以下で、青色申告をしている中小企業の場合には、減価償却費の損金算入について特例が認められています。

つまり、1個30万円未満の減価償却資産については「少額減価償却資産」と扱い、購入金額の全額を、年間合計300万円まで、その年の損金に算入することができます。

たとえば、1台25万円のパソコンを12台購入すれば、合計300万円をその年の損金に算入できます。

ただし、物を購入するにはお金が必要です。必要もないものを購入するのはただの無駄遣いです。近い将来に購入する予定だった物を多少早めに買うという程度にとどめてください。

テクニック10.従業員に対し決算賞与を支給する

全従業員に対して「決算賞与」を支給すれば損金に算入することができます。例年になく利益が上がったというのであれば、従業員のやる気を引き出すことにもつながります。

決算賞与を損金に算入していい条件は以下の2つです。

  • 決算期末までに従業員全員に支給額を通知する
  • 決算期末から1ヶ月以内(つまり次の年度の最初の1ヶ月以内)に支給する

従業員への通知は決算期末ぎりぎりになっても大丈夫です。

ただし、「役員」に対する決算賞与は、決算期末に決定しても損金への算入はできませんので、注意してください。これは「落とし穴」のところで改めて説明します。

テクニック11.社員旅行を実施する

これは決算賞与と同じような趣旨ですが、例年になく利益が上がったというのであれば、従業員に対する慰労も兼ねて社員旅行を実施することも一つの方法だと思います。

その際、

  • 旅行期間(海外旅行であれば現地での滞在時間)が4泊5日以内であること
  • 全従業員の半数以上が参加していること

という2つの条件を充たしている必要があります。これらを充たしていれば、費用は「福利厚生費」として損金に算入されます。

ただし、税務調査に備えて、資料や、写真等の記録を残しておきましょう。

2.中小企業の決算対策の落とし穴5つ

落とし穴1.役員に対して「決算賞与」を支給するのはNG

先ほど、「従業員」に対する「決算賞与」はぎりぎりに支給を決定しても損金に算入できるという話をしました。

しかし、役員に対する「決算賞与」は基本的に損金への算入が認められません。役員自身が「賞与」の額を吊り上げて損金を大きくするのに悪用されやすいからです。

役員に対する「賞与」を損金に算入したいのであれば、遅くとも会計年度の最初の4ヶ月目までに金額と支給時期を税務署に届け出た上で、その通りに支給しなければなりません。これを「事前確定届出給与」と言います。つまり、決算期末に駆け込み的に支給することは物理的に無理です。

従業員に対する決算賞与はOKでも、役員に対する決算賞与はNGです。絶対に忘れないようにしてください。

落とし穴2.「高級外車」のような高額な減価償却資産を購入するのはNG

たまに、「決算対策」として高級外車の購入を勧めている本やサイトを見かけます。

しかし、これは、二重の意味で明らかな間違いです。

まず、決算期末に駆け込み的に中古の資産を購入したとしても、購入時から期末までの分しか損金に算入されません。そんな金額は微々たるもので、あまり効果がありません。

しかも、そもそも、「節税」のためだけに、必要でもない減価償却資産を購入するのは、大事な資金の無駄遣いにすぎず、本末転倒です。そんなお金があるならば事業に回して利益を上げたり、従業員に決算賞与を支給したり、社員旅行を計画したりした方がはるかに賢明です。

落とし穴3.保険料を損金に算入できるという理由だけで保険に加入するのはNG

法人向けの保険商品、つまり「法人保険」の中には、保険料の全部又は一部が損金に算入される商品があります。そのため、決算期末直前に法人保険に加入し、保険料を「テクニック2」で説明したように「短期前払費用」として損金に算入して、大幅な黒字を一気に解消しようとするという話をよく聞きます。

確かに、それをやれば、一時的には黒字が小さくできるかも知れません。

しかし、法人保険の保険料は高額なので、会社の資金繰りを悪化させるおそれがあります。そのため、保険料を毎年支払い続けられる自身がないのであれば、おすすめできません。

しかも、保険料が損金に算入されるという扱いは「課税の繰り延べ」にすぎないことに注意が必要です。

つまり、後で保険金や解約返戻金を受け取れば、それが益金に計上され、その年度にその分の税金をいっぺんに払わなければならなくなる可能性があるのです。

特に以下の法人保険には要注意です。これらの保険は「掛け捨て」ではなく、必ずいつかは保険金や解約返戻金を受け取ることになるからです。

これらの保険で、最終的に節税の効果を得るには、解約返戻金を受け取るのと同じ年度に、大きな損金を計上する計画を立てておく必要があります。たとえば、ご自身や従業員の退職金、大規模な設備投資などです。

このような計画を立てておくことができないのであれば、保険への加入はやめておきましょう。

落とし穴4.損金算入だけを目的として接待をするのはNG

接待にかかったお金等の交際費は、もともと、損金への算入が制限されています。ただ、最近、飲食費についてはその制限が緩和されて、以前よりも損金に算入されやすくなっています。

特に、中小企業は、平成26年4月1日以後にスタートする事業年度から、宴会や接待等にかかる飲食費については以下のどちらか

  1. その年度あたり800万円まで
  2. その年度分の全額の1/2まで

を損金に算入するかのどちらかを選ぶことができます。ただ、中小企業で年間1,600万円を超える交際費を使えるような会社はないと思いますので、意味があるのは実際上、「1.年度あたり800万円まで」を損金に算入できるというルールだけでしょう。

しかし、800万円まで損金に算入できるからといって、損金への算入だけを目的としてバンバン意味のない接待をするのは愚の骨頂です。税金は減らせるかも知れませんが、会社の資金はもっと減ってしまうことになるからです。

落とし穴5.その他の「決算対策」のためだけの出費

損金の額が増えれば税金の額を減らすことができます。しかし、その分、会社に残るキャッシュが減ることになります。「決算対策」のためだけに本来ならば必要もないの出費をするのは、単なる資金の無駄遣いです。利益を上げた分の税金をまじめに支払ったうえで、事業資金に充ててより大きな利益を出して会社を発展させる方が有益なのは間違いありません。

まとめ

この記事では、決算対策として有効で是非とも押さえておいていただきたい11のテクニックと、一見「決算対策」っぽく見えても結果的には会社の首を絞めることになってしまう有害な方法5つを取り上げて説明してきました。

会社の経営は「節税」や「決算対策」が全てではありません。損金を増やせば税金は安くできますが、それ以上のキャッシュを減らしてしまっては意味がありません。

重要なのは、会社になるべくキャッシュを残すことと、お金を使うにしても会社と従業員にとって意味のある使い方をすることです。そのことをくれぐれも忘れることなく、ご自身の会社に必要な決算対策を実践していただきたいと思います。

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出岡 大作

行政書士資格保有。保険や税金や企業関係法、民法、行政法といった分野について幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
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