起業するなら知っておきたい合同会社のメリットとデメリット

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合同会社とは(昼顔)

会社を起業しようとする時には、必ず会社のタイプを選ばなければなりません。起業家を志している方は、これからご自身が起こす会社を、世の中で圧倒的に多い「株式会社」にしようか、最近増えている「合同会社」というタイプにしようか悩んでいて、特に「合同会社」について、「株式会社」と比べてどんなメリット・デメリットがあるのか、よく分からなくなっているのではないでしょうか。

実は、合同会社は、設立費用とランニングコストが安くて済む上、株式会社のメリットをできるだけ活かしつつデメリットをカバーしたタイプで、とりわけベンチャー企業には向いています。しかし、まだまだ合同会社がどんなタイプの会社でどういったメリット・デメリットがあるのかは、世の中に広く知られていないように思います。

そこで、この記事では、合同会社とは何なのか、しくみとメリット・デメリットを大づかみすることができるように、分かりやすく説明していきます。特に、最もメジャーなタイプである「株式会社」との比較を重視して説明しますので、株式会社のメリット・デメリットもばっちり理解できるようになっています。今後、起業を考えている方は、是非、参考にしていただきたいと思います。

はじめに|「合同会社」を選ぶ会社は増えてきている

あなたが起業を志して新しい会社を立ち上げようというとき、必ず3つの悩みを抱えることになります。

  1. 設立費用・ランニングコストをできるだけ節約したい
  2. お金をできるだけ多く集めたい
  3. 自分の発言力を最大限確保したい

ただ、「2.お金をできるだけ多く集めたい」という欲求と「3.自分の発言力を最大限確保したい」という欲求は、しばしばジレンマを引き起こすことになります。

どういうことか説明しましょう。かりに、あなたがベンチャー企業を立ち上げようとしてあちこち企画書等を持って奔走した結果、多額の出資をしてくれる人が見つかったとしましょう。そして、その人が「キミに全部任せるから好きにやってくれ」と言ってくれたとします。あなたの目には、ばら色の未来が浮かんでいるかも知れません。

しかし、ちょっと考えてみてください。その「キミに全部任せるから好きにやってくれ」の言葉に全幅の信頼を置けるでしょうか。

カネを出すなら口も出したくなるというのが人情です。特に会社の草創期は、事業が順風満帆にいくとは限りません。そういう時に、出資者が目先の利益にとらわれ、よく訳も分からないままに口出ししてくるようになって、個性溢れる会社だったのが他と代わり映えのしない「ショボイ」会社になってかえって衰退していったなんていうのはよく聞く話です。そうだとすれば、起業する側としては、お金はなるべくたくさん欲しいが、少なくとも出資者と対等の発言権を確保できるようなしくみを選びたいということになります。

そして、この観点から考えられたのが、「合同会社」というしくみなのです。

そして、現在、「合同会社」を選択する企業は増えてきていて、中には「西友」「Apple」のような大企業もあります。

以下、合同会社について、最もメジャーな「株式会社」との比較の観点から説明していきます。

1.「合同会社」ならば「株式会社」の美点を活かし、欠点をカバーできる

会社には4つのタイプがあります。明治時代初期に会社制度が整備された当時からあった「株式会社」「合資会社」「合名会社」と、そしてこの記事の主役・ニュータイプの「合同会社」です。

これらのうち、「株式会社」が最もメジャーなタイプであることはご存知の通りです。それには理由があります。主に次の2点です。

  • たくさんのお金を集めやすい
  • 意思決定のシステムが公平

そして、1点目は長所なのですが、2点目が少しやっかいなのです。

どういうことでしょうか。

もう一度、起業者の課題を確認してみましょう。

  1. 設立費用・ランニングコストをできるだけ節約したい
  2. お金をできるだけ多く集めたい
  3. 自分の発言力を最大限確保したい

結論からいえば、株式会社は、「たくさんのお金を集めやすい」という点では「2.お金をできるだけ多く集めたい」という課題には応えているけれども、「意思決定のシステムが公平」ということが足枷になっていて「3.自分の発言力を最大限確保したい」という課題には応えられていないということです。

そして、株式会社のこの欠点をカバーできるのが「合同会社」です。

1-1.合同会社は株式会社と同じ「有限責任」だから出資してもらいやすい

たくさんのお金を集めるためには、多くの人がお金を出資しやすいしくみが必要です。その点、合同会社は株式会社と同じく、出資者の責任が、出資した額の範囲に限られているので、安心してお金を出すことができるのです。

どういうことかというと、会社が倒産した場合に何が起きるか想像すると分かります。この場合、取引先等はまず、われ先にと会社の財産に群がってきますが、倒産してしまった会社には財産はほとんど残っていません。そこで、次に考えることは、出資者、つまり会社のメンバーに「お前が責任をとれ!」と言ってかかっていくことです。しかし、これは出資者の立場からするととんでもないことです。仮に10万円しか出資していなかったとしても、10億円の負債を抱えて倒産したら他の出資者と一緒に全部負担しなければならないということです。したがって、もし会社の債務について全財産をはたいてでも責任を追わなければならない(これを「無限責任」という)とすると、怖くて誰も出資したがりません。

一方、会社が倒産してしまった場合に自分が出資した額を失うだけで済むならば、それ以上に責任を負う必要はないので、比較的安心して出資できます。これを「有限責任」と言います(逆を「無限責任」と言います)。そして、株式会社のメンバー(株主)の責任と合同会社のメンバーの責任はいずれも「有限責任」なのです。

なお、株式会社の場合は、出資されたお金(資本)を債権者のために会社にキープしておく必要があるので、持分(株式)の払い戻しが認められておらず、代わりに譲渡の自由が原則として認められています。その結果、株式が会社にとって好ましくない人間の手に渡り、その人物が経営に介入してくるというリスクはあります。ただ、このリスクは定款で株式の譲渡を制限すれば対処できるので、株式会社の決定的なデメリットとは言えません。

有限責任と無限責任

結局のところ、日本だけでなく世界各国で、昔から大企業のほとんどが「株式会社」なのは、「有限責任」だからというのがきわめて大きいのです。つまり、お金をたくさん集めたいならば、「有限責任」に限るのです。

合同会社は、「有限責任」という点では株式会社の良いところを取り入れたシステムなのです。

1-2.合同会社ならば起業者が大口出資者と対等の影響力を持てる

株式会社の出資者たち(株主)の最終的な意思決定、つまり、株主総会での多数決の方法は、株式数(=出資した金額)に応じて平等に、ということになっています。1株しか持っていない株主の議決権は1個、1,000株持っている株主の議決権は1,000個です。「1株1議決権」ということです。

一株一議決権

これは、不特定多数の人が出資者=株主である場合には、非常に有効なシステムです。というのは、そういう場合には、メンバー(株主)どうしの結びつきがあまりないし、メンバーの個性もそれほど重視されないので、「出したお金の分だけ発言力が強くなる」ということにして、意思決定に公平を期すのが合理的だからです。「株式会社」はそもそも、そういう前提の下に作られたしくみです。

ところが、実は、この前提には無理があります。

というのは、実際には、世の中には規模の小さい「株式会社」も非常に多いのです。株主が数人の家族だけで占められているような会社や、気心の知れた仲間で設立した会社や、生まれたばかりのベンチャー企業も珍しくありません。そういった会社は、お金はある程度たくさん集めたいとしても、必ずしも広く不特定多数の一般大衆から莫大な額を集めなくても良いはずです。そんな会社までが、株式会社というしくみを選ぶ理由は、突き詰めると一つだけだと言っても過言ではありません。その理由とは、これです。

  • 「株式会社」という名前はなんとなくカッコいい

「そんなバカな?」と思われるかも知れません。しかし、実際のところ、他にこれといった理由を見つけるのは難しいのです。たとえば、ベンチャーで「いずれは上場を視野に入れているから」と言う人がいますが、それだけならば、現実に事業が軌道に乗ってきて、拡大のためにより多くの出資を募る必要が出てきてから株式会社に組織変更すればよいはずです(その方法については後で説明します)。

結局、人間は「なんとなく」というイメージで判断し行動するところがあります。「株式会社」の方が「合資会社」や「合名会社」よりも「なんとなく」立派で信用できそうなイメージがあるのは否定できないと思います。この「なんとなく」という心理はバカにできないのです。

このような「なんとなく」で株式会社タイプを選んでいる会社の場合、誰がいくら出資したかということよりも、メンバー一人ひとりの個性を尊重することに重点がおかれていることが多いのです。こういう会社で何か対立があった時に大株主が「カネは力だ!1株1議決権!」とばかりに強権を発動して無理やり押し切ってしまうと、かえってうまくいかなくなってしまうのは目に見えています。

つまり、そもそも、「有限責任」と「1株1議決権の原則」を結びつけることに無理があるのではないでしょうか。それが現れる極端な例が、上に挙げたベンチャー企業の例です。起業者の方針に疑問を抱いた大口出資者が、ついつい一時の損得勘定にとらわれて要らぬ口出しをし、起業者を屈服させたり追放したりし、成功の芽を摘んでしまうことが簡単にできてしまうわけです。これは、起業者にとっても大口出資者にとっても好ましいことではありません。

つまり、会社によっては、株式会社の「意思決定のシステムの公平」があだになることがあるわけです。

そこで、それならばいっそ、「有限責任」は維持しながら、「1株1議決権」の枠をとっぱらってしまえばいいではないか、というのが、「合同会社」のそもそもの誕生のきっかけです。

つまり、「合同会社」は、メンバーの責任が「有限責任」でありながら、多数決は出資額の多さではなく「頭数」で決めるというタイプの会社です。つまり、「1人1議決権」です。

この「1人1議決権」というのは、「合資会社」「合名会社」の意思決定のシステムを取り入れたものです。

一人一議決権

 

これから、「合同会社」のメリットとデメリットを説明していきます。

2.「合同会社」のメリット

2-1.設立費用が株式会社よりも14万円安くて済む

株式会社の場合、定款を公証役場で認証してもらうための費用(5万円)がかかってしまいますが、合同会社ならばこのお金はかかりません。

また、設立登記にかかる登録免許税も、株式会社ならば15万円ですが、合同会社ならば6万円で済みます。

つまり、合同会社の設立費用は、株式会社よりも合計14万円安くて済むことになります。

2-2.ランニングコストが低い

株式会社の場合は決算公告の義務がありますが、合同会社にはこの義務がありません。その他にも、様々な手続が株式会社よりもシンプルになっているので、その分、全体的にランニングコストが抑えられます。

2-3.たくさんのお金を集めやすい

合同会社のメンバーは、万一会社が倒産しても、出資した額の範囲内で責任を負えばいいだけです。たとえば、10万円出資している状態で会社が1億円の負債を抱えて倒産したら、その10万円が戻ってこないだけで済むということになります。

なので、お金を持っている人から、わりと安心してお金を出資してもらう(=会社のメンバーになってもらう)ことができます。

2-4.メンバーの個性を尊重できる

「合同会社」では、意思決定はメンバーの出資の額ではなく、頭数の多数決で行います。たくさんのお金を出資した人も少ししか出資していない人も「1人1議決権」です。

上に述べたように、家族経営の会社や、友人同士で作った会社誰がいくら出資したかということよりも、メンバー一人ひとりの個性を尊重することに重点がおかれている会社があります。このような会社の場合、意思決定の時に出資額の大小を問題にしない方がむしろうまくいく可能性が高いと言えます。また、定款で各人の発言権についてきめ細かに定めることもできます。

2-5.お金がなくても大口出資者と対等の発言権を持てる

優れたアイデア・技術を持っていてもお金がない人が、スポンサーを見つけて多額の資金の提供を受けてベンチャー企業を起こそうというとき、会社のタイプとして合同会社を選べば、「1人1議決権」なので、出資者(ベンチャーキャピタルと言います)と対等の発言力を持つことができます。あるいは、会社の定款で、出資者の発言権に制限を加えることもできます。

これは出資者にとっても好都合な面があります。ベンチャー企業の場合、出資者が素人である場合が多く、素人が圧倒的な発言権を持って経営に主体的に関わるのは面倒なことが多いのです。また、信頼できる起業者に経営を一任しておけば利益だけ受け取ることができるからです。目先の利益にとらわれてつい余計な口を出してしまうという事態を避けることもできます。

2-6.会社にとって好ましくない人間がメンバーになるリスクが少ない

合同会社は、株式会社と違い、メンバーの持分の譲渡の自由は原則として認められず、例外的に認められるとしても、下の表のように厳しい条件が課されています。これは、メンバーの個性が重視されているからです。

そのため、持分の譲渡によって会社にとって好ましくない人間がメンバーに入ってくるリスクは少ないです。

 

合同会社は、株式会社と違い、メンバーの持分の譲渡の自由は原則として認められず、例外的に認められるとしても、下の表のように厳しい条件が課されています。これは、メンバーの個性が重視されているからです。

そのため、持分の譲渡によって会社にとって好ましくない人間がメンバーに入ってくるリスクは少ないです。

譲渡制限

3.「合同会社」のデメリット

3-1.株式会社と比べてお金を集めにくい?

合同会社では、メンバーの個性を重視するため、出資分(持分)の譲渡は原則NGです。

それでは出資分を払い戻してもらえるかというと、会社の債権者の保護、つまり、会社が倒産した場合に債権者がかかっていく財産をキープしておくため、ごく厳しい条件が課されています。また、払い戻しが認められたとしても全部は戻ってこないことがあります。

したがって、こういった点が、一般人にとって合同会社に出資すること(メンバーになること)を躊躇させる可能性はあります。

ただし、株式会社でも、株式(持分)の譲渡に定款で制限を加えることができるので、それを考慮に入れれば、株式会社と比べて決定的なデメリットとは言いにくいです。

3-2.「株式会社」に比べて認知度・信用性が低い

株式会社が多いのは「なんとなく」カッコいいからだ、という話をしましたが、株式会社に比べると、「合同会社」というのはまだまだ耳慣れない存在だと思います。また、「なんとなく」うさんくさい、信用できない、などと思われて取引するのを躊躇する会社・個人もいるかもしれません。

ただし、ニュータイプの会社であることからすれば、新しもの好きな人や若い世代の人には逆に「カッコいい」と思ってもらえる可能性があります。また、今後、合同会社が増えていけば、世の中の意識も変わっていくと考えられます。

したがって、現時点で世の中の認知度や信用性が低いといった点は、決定的なデメリットとまでは言えないでしょう。

おまけ.上場したくなったら株式会社に変更する手がある

会社のタイプは後で変更することができます。なので、合同会社を設立して事業が軌道に乗り、これからより幅広く出資を募って一層事業を成長させ、上場したくなった、といったような場合には、会社のタイプを株式会社に変更するということも可能です。

合同会社から株式会社への変更は、「組織変更」といって、メンバー全員の同意と、債権者保護手続が必要です。

※会社のタイプの変更の手続一覧

組織変更の手続一覧

まとめ

この記事では、合同会社がどんなもので、どんなメリット・デメリットがあるのかということを、株式会社との比較を念頭に置いて説明してきました。

合同会社は、株式会社と比べ、メンバー一人ひとりの個性を尊重したり、起業者自身の発言力を維持したりするのに有利なしくみです。また、設立も簡単で決算公告の義務もないというのも利点です。

これから会社を起業しようと考えている方は、「なんとなく」という理由で漫然と株式会社を選ぶのではなく、合同会社など、他のタイプのことも知ったうえで、自分のビジョンに最適なのはどの会社のタイプなのか考えて選択することをおすすめします。

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出岡 大作

行政書士資格保有。保険や税金や企業関係法、民法、行政法といった分野について幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
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