業務災害補償保険とは?社員のケガと会社の労務リスクに対する備え

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製造業や建設業、また運送業などの経営者の方であれば、業務中の事故による役員や社員のケガに対する補償について、一度はお考えになったことがあるかと思います。

業務災害補償保険は、法人保険の中でも業務中のケガに対する補償を行うものです。また、損害賠償責任なども対象となります。ただし、病気が原因の場合はほぼ対象外となります。

保険の分野としては自動車保険と同じ損害保険にカテゴリーされます。

不慮の事故は、いつ何時起こるか分かりませんから、従業員の労災リスクに備えることは会社を守ることになるので、たいへん重要なことではないでしょうか?

この記事では、業務災害補償保険の

・主な補償内容と特約
・保険料と補償の対象者
・損金算入と保険期間

の3項目に分けて、解説をしてまいります。簡単ではありますが、労災についても触れております。

1.業務災害補償保険の補償内容

業務災害補償保険の主な補償内容は、業務中の災害(ケガ)が対象となっています。どのような時に補償されるのか、次から確認していきましょう。

1.1.基本は全てケガを原因とするもの

まずは基本的な補償についてです。主な補償内容は以下の通りです。

「死亡」「後遺障害」「入院」「手術」「通院」

これらは全て、業務中に起きた事故が原因で従業員に補償金を支払った場合、保険会社が保険金を支払う仕組みになっています。保険会社により、プランが異なる場合もあります。

具体的には、

  • 足場を踏み外し転落、ケガが原因で死亡した場合
  • 出勤途中に交通事故に会い、入院した場合
  • 工場内で作業中にケガをして手術をした場合
  • 会社の階段で転び、ケガをして通院した場合

などです。死亡補償については、熱射病や日射病が原因の場合でも対象となるケースもあります。

1.2.特約で会社が負担した費用を補償する

次は特約についてです。保険にはオプションで付加できる特約が数多くあるのですが、業務災害補償保険でも同様です。特徴的なものとしては、会社が負担した各種費用を補償してくれる賠償責任があります。全てをご紹介するのは難しいので、ここではいくつかの特約について説明いたします。

使用者賠償責任補償特約

業務上の事由による従業員のケガや病気のために、会社が法律上の賠償責任や訴訟費用を負担する時の補償など

事業者費用補償特約

死亡または後遺障害の保険金を支払い、会社が負担した葬儀費用、再発防止等のためのコンサルティング費用などに対する補償など

雇用慣行賠償責任補償特約

不当評価やハラスメントが原因で、従業員などから損害賠償を求められた時にかかる法律上の賠償責任や訴訟費用を会社が負担する時の補償など

他にも・・・
「フルタイム補償特約」「医療費用補償保険金支払特約」「入院時一時補償保険金特約」
「退院時一時補償保険金特約」「長期補償保険金支払特約」「休業補償保険金支払特約」

などがあります。

漢字ばかり並んでしまいましたが、業務災害補償保険の特約は内容が非常に細かく、私が調べただけでも20種類近くの特約があることが分かりました。特約については業種や会社の規模によって必要な補償が異なりますので、何を選ぶかは保険会社や担当者から詳しい説明を受けながら、相談して決めることが大切です。

1.3.病気が対象となる場合

業務災害補償保険では、一部、病気が対象となる特約があります。それが「労災認定身体障害追加補償」です。脳疾患(脳梗塞など)や心神喪失等で、労災認定された場合に補償されるものです。過労が原因で急性心筋梗塞となり、死亡した場合にも対象となるケースもあります。

病気そのものを補償するわけではありませんが、うつ病などで休職した従業員の職場復帰に係る費用を補償する「メンタルヘルス対策費用」を補償する特約もあります。

2.保険料と補償の対象者を決める2つの方式

法人の生命保険では、保険に加入する対象は、経営者・役員・従業員などの『人』になります。一方、業務災害補償保険では、保険に加入するのは『会社』となります。

会社が会社のために加入する保険、といったほうが分かりやすいでしょうか?

生命保険では「人」の年齢や性別・健康状態等により保険料が決まりますが、業務災害補償保険では「会社」の売上高や人数などから保険料が決まります。

ここでは2つの方式から保険料と補償の対象者が決まる内容について解説したいと思います。

あまり馴染みのない内容かと思いますが、重要なポイントですので、必ずご確認をお願いいたします。

2.1.売上高方式と人数方式

業務災害補償保険の契約方式は以下の2つになります。

売上高方式

年間売上50億円以下が対象となります。これは保険契約時における直近の1年以内の税抜きの売上のことを指します。

新しく法人を立ち上げたばかりの場合で1年間の売上高が未確定な場合には、事業計画書などで計画された1年間の「「売上高」「完成工事高」を代わりとします。

売上高方式では、補償の対象となる人数ではなく売上高で保険料が決まります。通常10人程度で稼働しているが、現場によっては稼働が100人に増えるというような場合、人数で設定すると保険料が高くなってしまうので、売上高方式にしたほうが保険料は安くなることもあります。

人数方式

人数方式では、おおまかには保険契約時に把握可能な「在籍者全員の人数」または「最大稼働の人数」で保険料が決まります。

保険会社によっては「在籍者方式」「労働時間方式」「労働日数方式」「最大稼働人数方式」などに細かく区分されることがあります。

在席スタッフは50人いるが通常20人程度しか稼働していないような会社は、在籍者方式を選ぶと保険料は高くなることがあります。

実際には方式について選択することは難しく、業種や売上によって自動的に振り分けられてしまいます。

2.2.補償の対象となる人

補償の対象となる「補償対象者」については売上高方式と人数方式によって対象となる範囲が異なります。まずは以下の表をご覧ください。

○売上高方式:Ⅰ~Ⅳ全ての方が補償対象者となります。(区分を限定することはできません)
○人数方式  :Ⅰ~Ⅳの範囲内で、任意に補償対象者を設定することができます。

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いかがでしょうか?売上高方式では、全ての方が対象となる一方、人数方式では会社の業務内容などに合わせて、必要な補償対象者を選ぶことができます。

人数方式を選んだ場合、誰を対象者とするかによって、どんな補償が必要かを検討する方法もあるかと思います。

2.3.補償の対象とならない人

業務災害補償保険で原則として契約の引受ができない場合があります。それは以下の通りです。ただし、加入できる可能性はゼロではないので、これらにあたる場合も、一度保険会社に問い合わせてみると良いでしょう。

  • シルバー人材センターが被保険者、登録者が補償の対象者
  • 愛好会、クラブ等が被保険者、その会員が補償の対象者
  • 労働組合が被保険者、組合活動中の組合員が補償の対象者

3.損金算入と保険期間

最後に、業務災害補償保険の保険料の損金算入と保険期間について確認していきましょう。

3.1.保険料は全額損金算入

法人が生命保険に加入した場合、保険料が損金算入されるので使い方によって大きな節税効果をもたらす仕組みがあるのはご存知の方も多いと思います。生命保険の場合ですと、全額損金算入できる商品は少なく、多くが2分の1損金となっています。

業務災害補償保険の保険料は、全額損金算入することができるので、その点で優れた商品であると言えます。生命保険のように解約返戻金はないので、お金の使い道を決めておかなくて良い点では使いやすい保険になります。

とはいえ生命保険のように保険料が高額になることは稀なので、節税を目的として加入する経営者の方は皆無です。

3.2.保険期間は1年間

保険には補償される期間があらかじめ決まっていて、業務災害補償保険の場合、業務災害補償保険の保険期間は1年となっています。

多くの保険会社では、毎月1月から1年間を保険期間と定めています。更新時には、その時の売上や従業員数などによって保険料が高くなったり安くなったりします。

3.3.福利厚生の一面もあり

病気とは違い、事故や災害によるケガはどんな状況で起こるか誰にも予測することはできません。そのことから、業務災害補償保険に加入していれば、従業員が安心して働くことのできる環境作りの一環として福利厚生の役割も担うことができます。

4.労災(労働者災害補償保険)との違い

「労災」という言葉は、皆さんお聞きになったことがあると思います。労災の正式名称は「労働者災害補償保険」といいます。労災は、労働者を一人でも雇っていれば雇用主に必ず加入が義務付けられている制度です。一方、業務災害補償保険は任意の加入となっています。

労災の補償内容は・・・

  • 療養(補償)給付…病院で療養を受ける時の費用
  • 休業(補償)給付…療養のため勤務ができず給与をもらえない時、4日目から6割相当
  • 障害(補償)給付…障害が残った場合、等級に応じた日数分の年金や一時金
  • 遺族(補償)給付…死亡の場合、遺族が受け取れる年金や一時金

などがあります。

業務災害補償保険にあって、労災にないものは「損害賠償」に関する補償です。「過酷な労働を強いられたことが原因で過労死した」「事故は会社が転落防止の措置を怠ったため」などとして、従業員本人や遺族から損害賠償請求を求められ、結果として多額の賠償金を支払ったケースもあります。

労働者の保護を目的とした法令も数多くなり、近年では50人以上の事業所に対する従業員へのストレスチェックも義務化されました。精神障害の労災認定も年々増加の傾向にあります。

このような状況の中で、思わぬところから労務リスクが発生する可能性を考えると、労災の上乗せ補償として業務災害補償保険で賠償責任に対する備えを持つことは、経営者の方にとって安心材料の1つとなることでしょう。

労災について詳しくお知りになりたい方は、以下のリンクをご参照ください。

まとめ

最後までお読みいただき、ありがとうございました。厚生労働省の「平成27年における労働災害発生状況について」によると、労働中の死傷者数は約11万人で、死亡者数は972人、重大災害は278件となっています。

前年よりも件数は減少しているものの、もしも重大な事故が起こり、それが会社側の過失が原因と判断されてしまうと、多額な賠償金の支払いは経営を圧迫することになります。

労災の加入は義務となっていますが、業務災害補償保険は任意の保険ですから、加入の判断は経営者の方が検討することになります。業種によって必要性は異なりますが、労災ではカバーできない賠償責任等に関するリスクに備えるには、業務災害補償保険への加入は有功な手段ということができます。

業務災害補償保険の補償内容は複雑なので、いつ・どんな時に補償の対象となるかを確認し、数多くのオプションから本当に必要な内容を判断するのは困難な作業になるかもしれません。ただし、基本的な補償は役員や従業員が業務中のケガを原因として治療費用などを会社が負担した時に対象となります。

一般的にケガのリスクが高いとされる建設業や運送業の経営者の方であれば、労災の上乗せ補償として、ご検討されてみることをおすすめします。

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宮阪 沙織

私は10年以上にわたり、生命保険業界で働いております。マイホームの次に高い買い物と言われることもある保険ですから、本当に必要な商品を無駄なく加入してもらうことが大切だと考えています。お一人お一人のご希望やライフプランをおうかがいし、少しでも豊かな人生を送るお手伝いが出来ればと思っております。
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