法人が医療保険を有効活用できる3つの方法

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会社の経営が軌道に乗ってきて資金の余裕が出てきた法人のお客さまから、医療保険を法人で活用する方法について相談を受けます。

一口に医療保険と言っても、経営者の方のためと、従業員の福利厚生のためとでは、活用法が違ってきます。

というのは、医療保険には、保障が一生涯続いて保険料が変わらない「終身医療保険」と期間が短期で更新ごとに保険料が上がる「定期医療保険」とがあります。いずれも、保険料全額を損金算入でき、会社を守り発展させていくのに大いに役立つ可能性があるものです。ただし、それぞれ使い道が違うので、注意が必要です。ごく大雑把に言ってしまうと終身医療保険は経営者の方向け、定期医療保険は従業員の福利厚生向けとして使うのが最も適しています。

この記事では、医療保険の法人向けの3通りの活用法について説明します。

はじめに

まず、実際の50歳・男性の経営者の方の契約例をもとにお伝えします。このお客様からは法人保険を見直して経営者保険を充実させたいという依頼をいただきました。そして、その際に、経営者の方におすすめのプランとして提案したものです。

終身医療保険に、保険料の支払いを短期に設定して加入する方法です。

詳しくは後でお伝えしますが、このプランは、在職中は経営者の方が入院等で長期離脱を余儀なくされた時にご自身の給料等の資金の足しにしたり医療費をまかなったりするのに使えます。

そして、退職後は、会社から医療保険の契約自体をもらって一生涯の保障を受けられるプランです。

〈A生命 終身医療保険(重大疾病一時金特約付き)〉

  • 50歳・男性
  • 入院給付金:10,000円/日
  • 手術給付金:5万円(日帰り)・20万円(入院中)
  • 三大疾病入院一時金:100万円(2年に1回限度)
  • がん診断給付金:100万円(2年に1回限度)
  • 先進医療特約付き
  • 保険料:408,917/年
  • 保険料払込期間:60歳まで

このプランは、60歳までの10年間で保険料を支払い終えることになっています。その間、保険料は全額が損金に算入されます。

そして、60歳になったタイミングで、契約人の名義を会社から社長個人に移します。そうすると、以後、社長は保険料を一切支払うことなく、一生涯の保障を受けられます。

身を削る思いをして会社を発展させ、従業員の生活を守ってきた経営者の方にとって、 勇退後にこのような保障が受けられるということは、何よりの慰労になるのではないでしょ うか。

ただ、医療保険を法人で活用する方法はこれだけではありません。これから、この方法も含めて3通りの活用法について、整理してお伝えします。

1.法人の医療保険の活用法は3通り

1.1.経営者向けは「終身」、従業員向けは「定期」

医療保険は、病気やけがの場合の入院費・治療費等を一定の範囲で保障する保険です。

オーソドックスな保険内容としては、「入院給付金」の額を決めておき、それを基準に「手術給付金」を計算するタイプのものが多いです。たとえば、「入院給付金」の額を「1日5,000円」等と設定し、「手術給付金」は手術の種類に応じて「入院給付金」の5倍とか20倍とかに設定します。

これに先進医療の特約を付けるのがオーソドックスな契約内容です。

詳細については『誰でも簡単に理解できる!医療保険の仕組みについて解説』をご覧ください。

法人で加入する場合、医療保険には、以下のような活用法があります。例外はありますが原則としては「経営者向けは終身医療保険、従業員向けは定期医療保険」と考えるのが分かりやすいです。いずれも、保険料全額を損金に算入できます。

〈経営者向け〉

  • 在職中の事業保障 + 退職後の一生涯の医療の保障(終身医療保険)

〈従業員向け〉

  • 在職中の医療費のサポート(定期医療保険)
  • 在職中の医療費のサポート + 退職後の一生涯の医療の保障(終身医療保険)

なぜ、このような使い分けをするかというと、それは、保険料を払い込む期間が保険の対象となる人(被保険者)の在職中に限られるからです。

1.2.保険料は「終身」が高く、「定期」が安い

たとえば60歳になるまで医療保険をかけるとすると、保険料の総額は、定期医療保険よりも終身医療保険の方が割高です。なぜなら、終身医療保険は老後に急激に病気・ケガのリスクが高まることまで計算に入れて保険料を設定しているからです。

そして、60歳までの間に限ってみれば、定期医療保険の方が保険料の合計額が低いのです。なお、逆に、70代・80代まで加入し続けることを考えるならば終身医療保険の方が割安になります。

実際に、A社の定期医療保険(5年ごと更新)と終身医療保険(保険料終身払)とで保険料を比べてみましょう。なお、保障内容はいずれも以下の通りです。

〈保障内容〉

  • 入院給付金:日額5,000円(1入院あたり120日・通算1,000日まで)
  • 手術給付金:5万円・5万円・10万円・20万円
  • 先進医療特約付(通算2,000万円まで)

【B社の終身医療保険】 ※保険料払込期間:終身払い

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【B社の定期医療保険】 ※5年ごと更新

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このように、在職中の保障を目的として加入するならば定期医療保険の方が保険料が割安です。したがって、主に従業員の在職中の福利厚生をはかるのであれば、定期医療保険が向いています。

他方、終身医療保険は60歳までに限ると保険料が割高ですが、それ以降まで加入すると定期医療保険よりも割安になりますので、在職中の保障だけでなく、退職後も引き続き一生涯の保障を受けてもらえるような活用法に向いています。

以下、詳しく説明していきます。

2.経営者向け・終身医療保険の大変有効な活用法

法人の医療保険の活用法の中でも最も押さえておいていただきたい重要な方法は、終身医療保険を経営者の方にかけておき、保険料を会社が全額支払った後で、退職時にその人に退職金代わりに保険を現物支給するという活用法です。こうすれば、その経営者の方は退職後一生涯、医療保障・がん保障を受けられます。

これは、税金の面でもメリットがあります。つまり、会社としては全額損金にできて税負担が軽くなるし、個人の側でも所得税の負担を減らすことができます。

以下、説明します。

2.1.経営者の在職中|入院・手術での離脱から会社を守る

まずは、経営者の方の在職中の入院・手術の場合に、給付金で事業資金や医療費をある程度カバーすることができます。

経営者の方に医療保険をかける場合、個人の医療保障だけでなく、経営者の方が欠けた大きな穴を埋めるという意味合いも強いのです。したがって、入院給付金・手術給付金の額をある程度大きく設定しておくことをおすすめします。

他にも、特約で三大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞)の保障や、介護の保障を付けたりすれば、保障がより手厚くなります。

もちろん、保険料は全額が損金に算入されます。

ただし、受取人は個人ではなく会社にしておくのが無難です。なぜなら、受取人を個人にしてしまうとその人の給与と扱われ、その分、社会保険料や所得税が余計に取られてしまうからです。

会社が一旦給付金を受け取っておいて、その中から経営者個人に「見舞金」という形で支給することをおすすめします。見舞金の額は、法令・通達では「社会通念上相当な額」となっているのみで明確な基準はありませんが、だいたい5~10万円くらいと言われています。

以下はC生命の終身医療保険での契約例です。

【C生命の終身医療保険の経営者向け契約例①】

※三大疾病入院一時給付金特約・がん特約を付けた場合

  • 50歳 男性
  • 保険期間:終身
  • 保険料:407,077/年
  • 保険料払込期間:10年(60歳まで)
  • 入院給付金日額:1万円(支払限度:120日)
  • 手術給付金:入院10万円、外来5万円
  • 先進医療特約:2,000万円(通算)
  • 三大疾病入院一時給付金:100万円
  • がん診断給付金:100万円
  • がん治療通院給付金日額:1万円

【C生命の終身医療保険の経営者向け契約例②】

※上の契約例に「終身介護保障特約」を加えた場合の契約例

  • 50歳 男性
  • 保険期間:終身
  • 保険料:1,166,777円/年
  • 保険料払込期間:10年(60歳まで)
  • 入院給付金日額:1万円(支払限度:120日)
  • 手術給付金:入院10万円、外来5万円
  • 先進医療特約:2,000万円(通算)
  • 三大疾病入院一時給付金:100万円
  • がん診断給付金:100万円
  • がん治療通院給付金日額:1万円
  • 終身介護保障特約(要介護2等の条件あり)

(終身介護保障特約の内容)

  • 介護障害年金:200万円
  • 介護障害一時金:800万円

このように、経営者の方に医療保険をかける場合、給付金の額や特約の設定のしかたによっては、事業保障の役割を大きくすることができます。

2.2.経営者の退職後|一生涯の医療の保障を受けられる

以上のように、経営者の在職中は、医療保険の保障内容を手厚くすることで、長期離脱の場合をある程度カバーする役割を果たします。

そして、保険料の支払期間を短期、たとえば支払満了を経営者・役員の退職時期に合わせて設定し、支払いが終わったタイミングで退職金代わりに「名義変更」という形で支給することができます。

退職時期でなくても、たとえば10年等のごく短期で払込を終わらせて名義変更するというのも可能です。

こうすれば、保険料の払込が完了しているので、経営者・役員は、以後は保険料を支払わずに一生涯の保障を受けることができます。

〈イメージ〉

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なお、解約返戻金がないかあってもごくわずかなので、資産価値がないとみなされ、名義変更をしても法人・個人ともに経済的な負担がほとんど発生しません。

また、個人の側では「退職所得」として扱われず、所得税がかかりません。

3.従業員の福利厚生にはもっぱら定期医療保険

次に、従業員の福利厚生として活用する方法についてお伝えします。

従業員にとって、会社がいざという時のために医療の保障を用意していてくれるというのは安心感があります。したがって、従業員の勤労意欲を引き出し、長期的にみて人材の定着と会社の業績の向上につながる可能性があります。こういう無形の影響というのはおろそかにできません。

福利厚生に向いているのはもっぱら定期医療保険です。在職中だけかけるのであれば保険料が終身医療保険よりも割安だからです。ただし、終身医療保険も、活用できる会社は限られてはいますが、経営者向けと同様に、退職金代わりに個人に名義変更する方法もあります。

以下、従業員の福利厚生のための定期医療保険と終身医療保険それぞれの活用法についてお伝えします。

3.1.定期医療保険は在職中の福利厚生に

定期医療保険は、従業員が在職中、病気やケガで入院したり手術を受けたりした場合の医療費をサポートするために使います。福利厚生の一環です。3年、5年といった短期に設定し、在職中、自動更新されるようにします。

福利厚生の制度は従業員がある程度長く働いてくれることが前提ですので、従業員の出入りが激しい会社には向かないのは言うまでもありません。そして、その他にも注意点が3つあります。

  1. 原則として全従業員を対象としなければならない
  2. 給付金の受取人は会社にするのが無難
  3. 福利厚生規程を定めなければならない

2.2.1.注意点1|原則として全従業員を対象としなければならない

まず、福利厚生目的ならば、一定の条件をみたす従業員全員を対象としなければなりません。福利厚生の制度は、従業員が等しく利用できるものでなければならないからです。

2.2.2.注意点2|給付金の受取人は会社にするのが無難

また、給付金の受取人は会社にしておくのが無難です。これは、上述の通り、受取人を個人にしてしまうと、従業員の側で給与と扱われ、社会保険料や所得税が余計に取られてしまうからです。

2.2.3.注意点3|福利厚生規程を定めなければならない

さらに、福利厚生は従業員の勤労意欲を引き出すためのものなので、会社全体に周知徹底するために「福利厚生規程(※)」を作成しなければなりません。

この福利厚生規程は、税務調査が入った場合に福利厚生目的であることの確かな証拠とするという意味合いもあります。

※福利厚生規程については『必見!福利厚生で法人保険を活用するとき重要な福利厚生規定』をご覧ください。

3.2.従業員の退職金代わりに使える終身医療保険

経営者の方向けの活用方法のところで、終身医療保険を個人に名義変更する方法をお伝えしましたが、これは従業員の福利厚生としても使えます。在職中は入院・手術の場合に見舞金が受け取れるようにし、退職時に退職金代わりとして名義変更してあげる方法です。

ただし、従業員は経営者・役員と違い、定年までずっとその会社で働いてくれるとは限らず、途中で退職・転職することもあります。また、終身医療保険の保険料が60歳までだと定期医療保険より割高なことも合わせて考えると、多くの会社にとっては難しいでしょう。

しかし、たとえば家族経営で経営陣も従業員も家族が占めているようなごく小規模な会社等、従業員の大多数が基本的に定年まで働くことが予定されているような場合には、この活用法は大いに考えられます。

2.3.補足|加入手続について

医療保険を福利厚生に活用する場合、加入手続については、通常、告知書の記入が必要であり、各従業員に自己申告で「告知書」に記入してもらうことになっています。

ただし、法人契約の場合の告知書は、予め用意された質問項目に○×をつければよいものなど、書式が簡略化されているものが多いです。

また、この告知書には健康診断結果通知書を添付して提出することができ、こちらをおすすめします。というのは、既往症や健康診断で指摘がある人が、健康診断書を追加で提出することで美点評価により、審査が有利になることがあるからです。その方が会社の事務が楽だし、保険会社の側でも正確な情報に基づいて総合的に判断できるからです。

まとめ

法人のための医療保険の活用法についてお伝えしてきました。経営者の保障目的と福利厚生目的とでそれぞれ終身医療保険と定期医療保険を使い分けるべきということ、意外と使い方にバリエーションがあることがお分かりになったと思います。

法人にとって、医療保険は、保険料の全額を損金に算入できるだけでなく、事業保障、退職金代わり、福利厚生と使えて、会社にとって単純にコストだけで割り切れないプラスの影響を与えてくれる可能性があります。もちろん会社を守ることやキャッシュを多く残すということを考えれば経営者・役員の方の生命保険が最優先ですが、それを一通り整備した後で、福利厚生等をお考えであれば、活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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出岡 大作

行政書士資格保有。保険や税金や企業関係法、民法、行政法といった分野について幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
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