法人保険|節税以上にキャッシュを増やせる7つの魅力的な活用法

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ここをお読みの経営者の皆様は、「節税」目的での法人保険の活用をお考えになっていることと思います。

たしかに、法人保険の中には、保険料の全部または一部を損金に算入して、税負担を軽減できる商品があります。その点をさして「節税商品」という売り方がされていたりします。

しかし、「節税」という点だけで法人保険を選んでしまうと、法人保険の本当の効用をフルに受けられないおそれがあります。

たとえば、「1/2損金タイプ」と「全額損金タイプ」とでは「1/2損金」を選んだ方が得をする場合があります。

また、保険料を支払っている段階でたくさんの損金を計上できるのをさして「節税」だと思っていると、後で思わぬ損をすることもあります。「最初はラッキーだと思ったが、こんなことになるなら保険に加入しない方がましだった」という言葉もよく聞きます。

実は、法人保険の機能は「税負担の軽減」だけではありません。むしろ、会社のキャッシュを守り、大きく増やしていくのに役立つもの、と考えた方が、それぞれの保険の特徴やメリット・デメリットがよく見えるようになります。そして、上手に活用すれば、会社のキャッシュを最大化することに役立ちます。

この記事では、会社のキャッシュを最大化するための魅力的な7つの活用法、最も自分の会社に合った保険を選ぶにはどうしたらよいかといった点について、分かりやすく説明します。

目次

はじめに|法人保険の活用法は大きく7通りある

1.経営者保険でキャッシュを多く保つ5つの活用法

1-1.退職金等の資金を、税負担を軽くしながら効率よく積み立てる
1-2.予期せぬ突発的な経営危機に備える
1-3.事業承継の際の会社・後継者へのダメージを抑える
1-4.ビジネスチャンスに機動的にお金を借りられる
1-5.経営者に万が一のことがあった場合に備える

2.福利厚生保険の2つの活用法

2-1.養老保険で退職金と「死亡退職金」の制度を整える
2-2.医療保険・がん保険で従業員の福利厚生を整える
2-3.せっかくの福利厚生の制度も「福利厚生規定」を作成しなければ意味がない!

3.法人保険の比較検討

3-1.法人保険の目的を明確にして比較検討する
3-2.複数の保険会社の商品について保険料や返戻率を比較検討する

4.おまけ|うまい話には落とし穴がある!

4-1.逓増定期保険の「名義変更プラン」の落とし穴
4-2.養老保険の「逆ハーフタックスプラン」の落とし穴

まとめ

はじめに|法人保険の活用法は大きく7通りある

法人保険は、経営者にかける(経営者を被保険者にする)「経営者保険」と、従業員にかける「福利厚生保険」とで、活用法を分けて考えるのが分かりやすいです。

そして、「経営者保険」の活用法は5通り、「福利厚生保険」の活用法は2通り、合わせて7通りということになります。

〈経営者保険の活用法〉

  • 退職金等の資金を、税負担を軽くしながら効率よく積み立てる
  • 予期せぬ突発的な経営危機に備える
  • 経営者に万が一のことがあった場合に備える
  • 事業承継の際の会社・後継者へのダメージを抑える
  • ビジネスチャンスに機動的にお金を借りられる

〈福利厚生保険の活用法〉

  • 従業員の退職金の制度をコストパフォーマンスよく整える
  • 従業員の在職中の死亡・病気・ケガの保障をする

上に挙げた7つの活用法と、それぞれに活用される保険の種類、注意点等について、詳しく見ていきたいと思います。

1.経営者保険でキャッシュを多く保つ5つの活用法

1-1.退職金等の資金を、税負担を軽くしながら効率よく積み立てる

貯蓄性のある生命保険は、退職金等の資金を積み立てるのに利用されます。

どういうことかというと、適切なタイミングで解約すれば、支払った保険料の総額の一部、または総額以上の額の「解約返戻金」が返ってくるのです。

つまり、保険料を払うことによってそのお金を「解約返戻金」として積み立てていることになるわけです。

解約返戻金が積み上がっていくタイプの保険商品は、以下の5種類です。

※商品名をクリックすると各商品の詳細な説明に飛びます。

これらのうち、終身保険は他の商品と比べるとかなり異質なので、要注意です。

1-1-1.保険料の支払段階で税負担が軽くなる

これら5種類の保険のうち、終身保険以外の保険は、保険料の全部または一部が損金に算入されます。

そのため、保険料を支払っている段階=「解約返戻金」の積立をしている段階で、税負担を軽くすることができるのです。

なお、保険料のうち、損金に算入されなかった残りの額は資産に計上されていきます。

終身保険は保険料全額が資産に計上されますので、損金には1円も算入されず、税負担の軽減の効果がまったくありません。

詳しくはこちらをご覧ください。

1-1-2.解約返戻金を必要な資金に充てれば赤字のリスクがカバーできる

保険を適切なタイミングで解約して解約返戻金を受け取ると、退職金や大規模な設備投資の資金に充てることができます。

そして、下の表の通り、解約返戻金から、保険料総額のうちの資産計上分を差し引いた額が、益金に算入されます。

税法上の扱い

この益金が、会社の赤字の危機を救ってくれます。

というのは、退職金の支給や大規模な設備投資により多額の損金が計上されますが、解約返戻金によってそれをカバーする益金が立てられれば、赤字を避けられるからです。

ただし、終身保険は、保険料全額が資産計上されるため、解約返戻金を受け取った時にそもそも益金に算入できる額が少ないので、注意が必要です。

詳しくはこちらをご覧ください。

1-1-3.資金準備に活用するときの注意点

資金準備に活用できる経営者保険については、以下の3点に注意が必要です。

  • 保険料を支払い続けられる十分なキャッシュフローをキープできること
  • 保険料の損金算入額を超える営業利益を出し続けられること(終身保険を除く
  • 解約返戻金を返戻率が高いタイミングで受け取り、活用する明確な予定があること(終身保険を除く
■キャッシュフローが保てないと損をする

まず、どの商品も、解約まで保険料を支払い続けられる十分なキャッシュフローをキープできることが必要です。保険料はいったん支払うと解約するまではキャッシュアウトできないことに代わりはありません。よく、「キャッシュフローが潤沢な会社は1/2損金タイプ、キャッシュフローが少ない会社は全額損金タイプ」といった説明を目にしますが、根拠は乏しいです。

■「全額損金」の意外なリスク

また、保険料の全額か一部が損金に算入されるタイプの商品は、加入期間中、保険料のうちの損金算入額を超える額の営業利益を出し続けられることが必要です。そうでないと、赤字になってしまい、税負担の軽減の効果がないからです。しかも、解約返戻金を返戻率が高いタイミングで受け取って支出しないと、益金計上部分に税金がかかってきてしまうため、かえって、保険に加入しなかった場合より損をしてしまうおそれがあります。

特に、全額が損金に算入される「生活障害保障型定期保険」とその類似商品は、リスクが高いので要注意です。加入の時は「全額損金」で「節税」ができたと思いきや、その後の年度で赤字を出してしまえば税負担の軽減の効果が得られません。しかも、解約返戻金の返戻率が低いので、使い道がなければお金が目減りして戻ってきて税金が引かれてしまうだけということになってしまうのです。まさに弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂です。詳しくはこちらをご覧ください。

そのようなことにならないように、加入を検討する段階で、加入期間中の十分な予測と計画を立てておくことが必要です。

1-1-4.医療保険・がん保険(終身タイプ・保険料短期払い)は退職金代わりにできる

最近、保険会社が法人に対して推奨しているプランで、終身タイプの医療保険の保険料を短期払いにし、払込が終了してから経営者個人に名義変更するというものがあります。

終身がん保険(解約返戻金のないタイプ)も、同じように活用できます。

在職中は病気・ケガの場合に給付金を受け取れて、治療費や、経営者の離脱による営業赤字のカバーに活用できます。

保険料は全額が損金に算入されます。

そして、保険料の払込が終わったら、経営者・役員が退職する時に退職金代わりに現物で支給するというやり方です。これは、保険の契約者名義を会社から個人に変更するという形で行われます。

こうすれば、経営者・役員は退職後、一生涯にわたり、保険料を1円も支払うことなく、医療の保障を受けられるようになります。

終身医療保険短期払い

この医療保険の「名義変更プラン」には、大きなメリットが2つあります。

第一に、会社にも経営者・役員個人にも経済的負担がほとんど発生しないということです。

つまり、解約返戻金がない医療保険の契約者の権利というのは、資産そのものではなく「仮に大きな病気や怪我をしてしまったら所定の給付を受ける権利」にすぎません。そのため、保険料の支払が済んでいれば、資産価値がゼロと扱われ、名義変更をしても会社にも個人にも経済的な負担はほとんど発生しません。

第二に、税務当局も認めている方法なので、否認されるリスクがないということです。後で説明する「逓増定期保険の名義変更プラン」は「租税回避行為」として否認されるリスクがありますが、医療保険の「名義変更プラン」は、保険料全額を正当に払い終わった後のことなので、租税回避行為にはあたらず、税法上の問題がありません。

医療保険は、商品によっては、たとえば、三大疾病(悪性新生物、急性心筋梗塞、脳卒中)になった場合の一時金の特約や、介護状態になった場合の年金の特約を付けられるものもあります。したがって、医療保険の「名義変更プラン」は、老後の安心と豊かな生活を確保するという意味でも、魅力的な活用法の一つです。

1-2.予期せぬ突発的な経営危機に備える

1-2-1.解約返戻金を赤字の穴埋めに使える場合がある

解約返戻金のあるタイプの生命保険は、突発的な経営危機に備える役割も果たします。

たとえば、天災や不況、取引先の倒産等のアクシデントが発生するなどして、突発的な危機が生じた場合に、保険を全部解約、または一部解約し、解約返戻金を受け取って対応することができます。

また、そこまでいかなくても、営業赤字が出た年度に一部解約して解約返戻金を受け取り、その補填をすることができます。

ただ、これは、次に説明するように、あくまで「おまけの機能」として考えた方が良いでしょう。

1-2-2.「経営危機への備え」をメインに加入するのはおすすめできない

解約返戻金が低いタイミングで解約してしまうと損をするリスクがあります。そのため、あくまでも、メインは退職金等の必要な資金を積み立てるために保険に加入して、予備の資金を準備できるのはおまけ程度に考えておいた方が良いかも知れません。

なお、解約返戻金の返戻率の高いタイミングが長めの商品と、短めの商品がありますので、参考にしていただければと思います。

〈返戻率が高いタイミングが長めの商品〉

〈返戻率が高いタイミングが短めの商品〉

1-3.事業承継の際の会社・後継者へのダメージを抑える

事業承継、つまり、後継者に事業を引き継がせるときには、後継者の経済的負担をできるだけ軽くしてあげる必要があります。

というのは、後継者に死後に相続させる場合も、生きているうちに引退して引き継がせる場合も、いずれにせよ、相続税や贈与税の負担がかかってきます。

相続税・贈与税の軽減のための制度として、「暦年贈与」や、「相続時精算課税制度」がありますが、これらだけでは不十分な場合もあるので、他の対策も必要になってきます。

しかも、後継者が他の相続人よりも多くの財産を受け取ることになれば、それらの人々の法定相続分や遺留分の侵害になり、「代償交付金」を支払わなければならない可能性があります。

とるべき対策は、事業承継の相手(法定相続人かそれ以外の人か)、事業承継のタイプ(株式の贈与・売却か相続か)によって異なります。

詳しくはこちらの記事をご覧いただくとして、ここでは、株式会社のケースを念頭に、税金の問題に絞って、ごく簡潔に概要を説明します。

図にまとめると、以下の通りになります。

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1-3-1.後継者=法定相続人で、生前に株式を贈与する場合の贈与税対策

法定相続人(子など)を後継者として、あなたが生前に引退して事業を引き継がせる場合を考えてみましょう。

この場合、あなたは、株式を生前に後継者に贈与することになります。そのため、贈与税の問題が発生します。

■株式の評価額を引き下げて贈与税を軽くする

贈与税は、資産の評価額を基準として計算されるので、税金の額を引き下げるには、株式の評価額を低くする必要があります。

そのためには、毎年度に多額の損金を計上して会社の利益を抑え、資産価値を引き下げていくことが一番手っ取り早いと言えます。

そこで、保険料の全部または一部が損金に算入される保険に加入すれば、毎年度の会社の利益を引き下げ、会社の資産価値を引き下げ、株式の評価額を引き下げることができます。

これは、上で述べたような、退職金の資金の積立と同時進行で行うのが合理的です。

その結果、後継者の贈与税の負担を抑えてあげることができます。

この目的に適している保険は、以下の保険です。

使い分けとしては、事業承継の時期が20年~30年後であれば長期平準定期保険、5年~10年後であれば逓増定期保険を活用するのが良いでしょう。

1-3-2.後継者=法定相続人で、株式を相続により引き継がせる場合の相続税対策

後継者を法定相続人と決めているものの、あなたが生涯株式を手放すつもりがない場合はどうでしょうか。

この場合は、後継者は株式を相続により取得することになります。そのため、後継者は相続税を納税しなければならなくなります。

■経営者が生命保険に個人加入して後継者を保険金受取人にする

まず、後継者のために相続税の納税資金を準備してあげるという方法が考えられます。

そのためには、あなたが個人として生命保険に加入して、後継者を受取人に指定しておくことが有効です。

■会社のために後継者から株式を買い取る資金を準備する

しかし、それでも、後継者が相続税を払いきれないかもしれません。

その場合、後継者は、会社に株式を売却して、その代金を相続税の納税資金に充てることができます。ただし、これは会社法上、「自己株式の買い取り」にあたるので、会社は利益剰余金の中から購入代金を捻出しなければなりません。

つまり、会社の側に十分な利益剰余金がなければ、後継者の相続税の納税資金を提供してあげられないのです。

そこで有効なのが、会社であなたに生命保険をかけておき、あなたが死亡した場合に会社が多額のお金を受け取れるようにすることです。

そのためには、保険期間が長い商品が適しています。具体的には、以下の2種類です。

  • 長期平準定期保険(保険期間:100歳まで)
  • 終身保険(保険期間:一生涯)

いずれも、これまで見てきたように、解約返戻金が受け取れて貯蓄性のある商品です。しかし、「相続による事業承継」の対策に利用する場合は、そのことは忘れてください。重要なのはあくまでも「死亡保険金」です。

■長期平準定期保険の方が終身保険よりも使い勝手が良い

これらのうち、長期平準定期保険を選べば、保険料の1/2が損金に算入されるため、株式の評価額を低くする効果もあります。また、長期平準定期保険は解約返戻金の返戻率が高いタイミング(ピーク期間)が長いので、後で気が変わるなどして生前に事業承継(株式の贈与)をすることになった場合にも対応できます。その場合には解約返戻金をあなたの退職金に充てることもできます。保険期間が100歳までだというのは終身保険と比べて不確実といえば不確実ですが、100歳まで長生きし、しかも現役でいる可能性がきわめて低いことを考えると、大きなデメリットとは言えないでしょう。

これに対し、終身保険は、保険料の全額が資産計上扱いのため、株式の評価額を低くする効果はありません。また、生前の事業承継に切り替えた場合のメリットは特に見当たりません。終身保険を敢えて利用するならば、あくまでも「相続による事業承継」しか考えていないと断言できる場合のみにすべきでしょう。

1-3-3.後継者≠法定相続人で、株式を売却または贈与する場合

後継者が法定相続人でない場合には、後継者に株式を買い取ってもらうか、無償で譲渡することになります。

■後継者個人のために必要な資金を準備する

株式を買い取ってもらう場合には購入資金が必要になり、無償譲渡の場合には贈与税の納税資金が必要になります。ただ、後継者にそのための資金を準備してあげる方法としては、生命保険は使えないので、その人の給与の額をある程度多めに設定して支給しておくことくらいでしょう。ただし、役員給与は「社会通念上相当な額」でなければ損金算入が認められないので、注意が必要です。

■株式の評価額を引き下げて贈与税を軽くする

あとは、贈与税の額自体をできるだけ軽くしてあげるために、株式の評価額を引き下げることです。

法人保険を利用してできる対策としては、長期平準定期保険または逓増定期保険に加入して、保険料の1/2を損金に算入することで会社の資産価値を引き下げ、株式の価値を引き下げていくことが考えられます。

使い分けとしては、事業承継の時期が20年~30年後であれば長期平準定期保険、5年~10年後であれば逓増定期保険を活用することになります。

1-4.ビジネスチャンスに機動的にお金を借りられる

解約返戻金があるタイプの保険は、いずれも、満期前に「契約者貸付」の制度を活用して、急な出費に対応することができます。

借入限度額はその時点の解約返戻金の90%程度、利率は年3%程度です。

いわば解約返戻金を担保に借入をするのと同じなので、担保を提供する必要は一切ありません。

また、銀行等の金融機関に融資を申し込む場合と異なり、面倒な手続をする必要もありません。

お金は、申込から1週間程度で入金されます。

したがって、たとえば千載一遇のビジネスチャンスが到来して、なんとか迅速にまとまった額のキャッシュを準備したい時に、便利な制度です。

ただし、ある程度解約返戻金が積み上がっていないとたいした額を借りられないので、加入初期の頃で解約返戻金が低いタイミングだと、活用のメリットはほとんどありません。

1-5.経営者に万が一のことがあった場合に備える

最後に、経営者保険の本来の機能で全てに共通する機能、つまり、あなたが死亡した場合の会社の経営リスクに備える機能についてお伝えします。

これも、会社のキャッシュを守り、増やしていくうえできわめて重要な機能だからです。

ただ、保険金の受け取り方一つで、会社のキャッシュフローは良くも悪くもなってしまいます。

また、事業保障の機能に特化するならば、それに合った保険を選ぶべきです。

1-5-1.死亡保険金の受け取り方は「年金形式」を選ぶべき

個人の場合は別として、法人の場合、保険金の受取を「一時金形式」にすることは合理的ではありません。

特にあなたの会社が中小企業であれば、「年金形式」にして、複数年に分けて受け取れるようにすべきでしょう。

というのも、あなたが死亡した場合、そのダメージが一年度だけでおさまることは考えにくいからです。

しっかりした後継者がいたとしても、その人がいきなりあなたの穴を埋めて、取引先や顧客や銀行等から変わらぬ信用を得ることは難しいと思います。

そのため、あなたの死後数年間にわたって業績が低迷し、その間、後継者はずっと赤字のカバーや借入金の返済に苦しむことが予想されます。

そんな時、「一時金形式」だと、あなたが死亡した年度に一気に益金が計上されるため、その年度の赤字しかカバーできず、しかも、多額の法人税がかかってきてキャッシュを減らしてしまいます。

むしろ、合理的なのは、「年金形式」を選び、保険金を複数年に分けて受け取って、それぞれの年度の益金に算入し、その都度、営業赤字のカバーや借入金の返済に使っていくことです。

1-5-2.事業保障機能に特化するならば「収入保障保険」がベスト

■収入保障保険とは

法人保険を活用するのに、事業保障の機能に特化するために、コストを抑えて解約返戻金のない「掛け捨て」の定期保険を選ぶという選択肢は十分ありえます。

あなたがもしその選択肢をとるならば、「収入保障保険」が最もリーズナブルです。

収入保障保険は、掛け捨ての定期保険の一種で、あなたが死亡した場合に、その時から満期まで毎月、会社が一定額を受け取れる、まさに「年金形式」の保険です。そのため、あなたの身に万一のことがあった場合の事業の安定化に役立ちます。

■収入保障保険が最もリーズナブルな理由

収入保障保険は、あなたが早期に死亡すればするほど、会社はより多くの保険金を受け取れることになります。

つまり、下図の通り、時間が経てば経つほど受け取れる保険金の総額が減っていくのです。そのため、保険料の額が低く設定されています。

〈契約例〉

  • 55歳加入・70歳満期
  • 保険金額:600万円/年(50万円/月)
  • 支払保障期間:5年間

収入保障55~75才(年600万円)

したがって、全ての死亡保険の種類の中で、収入保障保険が、事業の安定化という点とコストの低さという点で、最も合理的にできているということです。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

2.福利厚生保険の2つの活用法

この記事で「福利厚生保険」として説明する保険は、従業員の福利厚生の制度を効率よく整えるために活用されるものです。

いずれも、一定の条件をみたす従業員を全員にかけることが原則です。もちろん、従業員と一緒に、経営者であるあなた自身や、他の役員にもかけることができます。

福利厚生保険は3種類あります。

福利厚生を充実させることは、それ自体、従業員を大切にしているというメッセージを発信するものです。

たとえば、退職金制度を整えると、従業員の老後への心配を和らげることができます。

同時に、従業員に万一のことがあった場合に遺族が「死亡退職金」を受け取れるようにすれば、安心して働いてもらうことができます。

また、医療費をサポートすれば、従業員の心身の健康に配慮しているという姿勢を示すことができます。

これらのことは、法人向け保険を上手に活用すれば、可能なのです。

2-1.養老保険で退職金と「死亡退職金」の制度を整える

2-1-1.活用するのは1/2損金の「福利厚生プラン」

養老保険は、満期までに被保険者が死亡すれば死亡保険金が支払われ、満期まで生きていたら満期保険金が支払われるという生命保険です。

つまり、被保険者が死亡してもしなくても必ず保険金が支払われるのです。

従業員を被保険者として加入することで、従業員自身の退職金と、遺族のための「死亡退職金」の制度を同時に整えることができます。

ここでは、「福利厚生プラン」というオーソドックスなプランについて説明します。保険料の1/2が損金に算入され、退職金の資金を積み立てる段階で税負担が軽くなるタイプのものです。

なお、保険料全額を損金にできるとされる、いわゆる「逆ハーフタックスプラン」というものがあります。しかし、これは、保険料全額損金という扱いに税法上の根拠が乏しく、否認されるリスクが高いものなので、おすすめできません(後ほど簡単に説明します)。

2-1-2.「満期保険金」「解約返戻金」を退職金の資金に使う

「福利厚生プラン」では、死亡保険金の受取人を従業員の遺族、満期保険金の受取人を会社に設定しておきます。

解約すると会社は解約返戻金を受け取ることになります。この解約返戻金はある程度の期間以上加入していれば高くなっていきます。そして、満期まで増え続けます。

また、解約せず満期になると、最終的には「満期保険金」として保険料の90~100%程度のお金が受け取れます。

そして、この満期保険金または解約返戻金を、従業員の退職金の財源に充てることができます。

2-1-3.死亡保険金を「死亡退職金」にする

もしも従業員が満期前に死亡したら、遺族が死亡保険金を受け取れます。

これを、「死亡退職金」として扱うことに決めておくのです。

2-2.医療保険・がん保険で従業員の福利厚生を整える

2-2-1.医療保険・がん保険で医療費をサポートする方法

医療保険は病気やけがの場合の治療費・入院費等を一定の範囲で保障する保険です。保険期間は、一生涯のもの(終身タイプ)と、期間が決まっているもの(定期タイプ)があります。

がん保険は、がん治療に特化した医療保険です。

定年までの保険料の総額をみると、定期タイプの方が終身タイプよりも保険料の額が低くなっています。したがって、定期タイプを選ぶ会社が多くなっています。

従業員が病気になった場合には会社に対して所定の給付金が支払われ、その全部または一部を「見舞金」として従業員に支払うことができます。

加入に際しては、告知書の記入が必要です。この告知書には健康診断結果通知書を添付して提出してもらうようにすることをおすすめします。その方が会社の事務が楽だし、保険会社の側でも正確な情報に基づいて総合的に判断できるからです。

2-2-2.終身タイプの医療保険・がん保険を退職金代わりに現物支給する方法

「終身タイプ」には「定期タイプ」にない特有の活用法があります。退職金代わりに従業員個人に「名義変更」するという形で現物支給するという利用法が考えられます。

やり方は、上で説明した、経営者への医療保険の「名義変更プラン」と全く同じです。

つまり、保険料の支払いが終わる時期を従業員の退職時期に合わせて設定しておき、そのタイミングで退職金代わりに支給するのです。

こうすれば、その従業員は、退職後は保険料を支払わずに一生涯の保障を受けることができます。

この活用法は、従業員の出入りが激しい会社にはおすすめできません。

しかし、小規模な家族経営の会社など、基本的に従業員の全員が定年まで働くことが見込まれるような場合には、検討の余地があるでしょう。

2-3.せっかくの福利厚生の制度も「福利厚生規定」を作成しなければ意味がない!

福利厚生に保険を活用するのであれば、「福利厚生規定」を作成しておく必要があります。その理由は、以下の通りです。

  • 福利厚生制度とその導入目的を全従業員に周知徹底する
  • 権利関係を明確にして遺族とのトラブルを防ぐ
  • 税務調査が入った場合に福利厚生目的の明確な証拠になる

福利厚生制度は、従業員に高いパフォーマンスを発揮して安心して長く働いてもらうという目的が達成されなければ意味がありません。導入をしたときには必ず「なぜこの制度を導入したのか」を周知徹底していただきたいと思います。

また、もしも「福利厚生規定」を作成しておかなければ、保険金受取の時に従業員・遺族とトラブルになる可能性があります。たとえば、従業員が死亡した場合、遺族は死亡保険金を受け取ることになるのですが、会社の側ではこの死亡保険金を「死亡退職金」だと考えていても、遺族の側から別に死亡退職金を請求されることがあります。

さらに、「福利厚生規定」を作成しておかなければ、税務調査が入った時に福利厚生目的と認められず、保険料の損金算入という扱いが否定されてしまうおそれがあります。

そういったことを避けるためにも、福利厚生規定を作っておきましょう。

3.法人保険の比較検討

3-1.加入の目的を明確にして比較検討する

法人保険には多くの種類があり、また、活用目的もさまざまです。

まずはこの記事の内容を理解して、自分の会社のニーズは何なのかということを確認していただければと思います。その際、それぞれの保険について、こちらのページを活用するなどして、どのように役立つのかを確認してみてください。

3-2.複数の保険会社の商品について保険料や返戻率を比較検討する

同じ種類の保険商品でも、保険会社によって保険料や返戻率が異なります。

そのため、複数社の商品を比較してみることをおすすめします。

こちらに、返戻率の一例をまとめてありますので、参考にしてみてください。

4.おまけ|うまい話には落とし穴がある!

経営者の皆様からよく質問をいただく以下の2つの「うまい話」について、そのしくみとリスクを説明します。

  • 逓増定期の「名義変更プラン」
  • 養老保険の「逆ハーフタックスプラン」

4-1.逓増定期保険の「名義変更プラン」の落とし穴

4-1-1.逓増定期保険「名義変更プラン」のしくみ

これは、「『低解約返戻金型』の逓増定期保険のシステムを利用して法人から個人に資産を移転する」というスキームです。

低解約返戻金期間の最後の年に解約し、経営者個人に退職金代わりに名義変更するのです。

そして、その直後、解約返戻金が跳ね上がってピークに達したところで解約すれば、引退した経営者は、高額な解約返戻金を受け取れるというものです。

名義変更スキーム

逓増定期保険の「名義変更プラン」のメリットとされているのは、以下の2点です。

  • 役員退職金の損金算入限度額よりもはるかに多額の退職金を受け取れる
  • 退職金にかかる所得税を軽くすることができる

税法上、「保険の評価額≒解約返戻金の額」ということになっています。

そのため、会社が経営者に名義変更(=現物支給)した保険の評価額は、名義変更の時点での評価額、つまり、跳ね上がる直前の解約返戻金の額だから、その分得をするというものです。

4-1-2.逓増定期保険「名義変更プラン」の問題点

しかし、逓増定期保険の「名義変更プラン」は、問題点があり、おすすめはできません。詳しくは『逓増定期保険名義変更プランのしくみと3つの注意点』をお読みいただくとして、法的観点からは3つの問題があります。

  1. 会社の資産(解約返戻金)を実質よりも低い金額で経営者個人に譲り渡すもので、会社法上の利益相反行為にあたる可能性がある
  2. 税法上否認され、延滞税がとられるおそれがある
  3. 国税庁が問題視しているとみられ、近い将来、税法上網が掛けられる可能性が極めて高い

このうち、1つ目の利益相反行為の点は、会社の内部での手続(株主総会または取締役会の承認)をクリアすれば問題ありません。

しかし、あとの2つはきわめて深刻な問題です。

「低解約返戻金型」の逓増定期保険自体は税法上問題のある商品ではありません。しかし、「名義変更プラン」という使い方をすると問題があるということです。保険の営業マンやコンサルタントが「名義変更プラン」について、上に挙げたようなリスク、少なくとも後2者について説明することなく、積極的に加入を勧めることは、大いに問題があると考えています。

4-2.養老保険の「逆ハーフタックスプラン」の落とし穴

4-2-1.養老保険「逆ハーフタックスプラン」のしくみ

養老保険「逆ハーフタックスプラン」は、死亡保険金の受取人が法人で満期保険金の受取人が被保険者になっているタイプをさします。

先ほどお伝えした養老保険「福利厚生プラン」と比べると、死亡保険金と満期保険金の受取人が逆になっています。

「逆ハーフタックスプラン」については、法律も通達も保険料の税法上の扱いを定めていないので、「保険料の全額損金算入」が可能とまことしやかに説明されており、かつては「節税商品」として人気がありました。

4-2-1.養老保険「逆ハーフタックスプラン」の問題点

しかし、「逆ハーフタックスプラン」には以下の2つの問題があります。

  • 保険商品としての合理性が乏しい
  • 保険料の「全額損金」扱いの税法上の理論的根拠がない

死亡保険金の受取人を法人、満期保険金の受取人を被保険者とするのは、そもそも保険商品としての合理性が見出しにくいと言わざるをえません。福利厚生プランならば「被保険者が死亡した場合にその遺族の生活を保障する目的のために善意で加入してあげる」→「何事もなかったら、お金を返してもらって被保険者の退職金に充てる」という理屈が一応通っていますが、逆ハーフタックスプランにはこういう理屈をつけるのが非常に困難です。

また、「保険料の全額損金算入」というのも、税法上の理論的な根拠がきわめてあやしいのです。どういうことかというと、通達では、養老保険で死亡保険金の受取人と満期保険金の受取人をいずれも法人とする場合には保険料は全額資産計上ということにされています。そうだとすれば、「逆ハーフタックスプラン」でも死亡保険金の受取人が法人になっている以上、少なくとも保険料の1/2は法人の資産に計上しなければならないはずです。なので、仮に保険料からの損金算入が認められたとしても1/2どまりのはずです。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

なお、現時点で、多くの保険会社が「逆ハーフタックスプラン」の取り扱いをやめています。

まとめ

法人保険は、「節税商品」としてとらえるよりも、会社のキャッシュを最大化するための商品としてとらえるべきものです。その方が、それぞれの保険商品の役割・効用がよく理解でき、上手に使いこなせるようになります。

どの会社にもぴったりの万能の保険商品というものはありません。各保険商品にはそれぞれのメリット・デメリットがあります。また、会社の財政状態やニーズに応じて、向き不向きがあります。

場合によっては公の共済を使ったり、保険を使わなかったりというのも、ありうる選択肢だと思います。

それぞれの保険商品の特性を十分に理解し、自社のニーズを見極めて上手に活用することで、会社のキャッシュを守り、大きく育てていくために活用すべきものです。

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出岡 大作

出岡 大作

行政書士資格保有。保険や税金や企業関係法、民法、行政法といった分野について幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
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