法人向け保険8種類を最大限に有効活用する方法まとめ

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法人向けの保険商品については、さまざまな保険会社がさまざまな種類の商品を販売しています。

しかし、どの保険がどのように役立つのかということについては、漠然として分かりにくいと思います。

そのため、どれを選んだら良いのか、そもそも加入して良いものなのか、なかなか判断できないままでいるのではないでしょうか。

法人向け保険は、目的・用途と、利用上の注意点さえ知っておけば、会社にあった保険を選ぶことができ、有効活用して会社のキャッシュを守り、増やしていくことができます。

この記事では、法人向け保険の種類と、それぞれの活用方法について、大まかな枠組みを分かりやすく説明します。

ご自身の会社のニーズに合った保険商品の活用を検討する上で、お役立ていただければと思います。

はじめに

法人向け保険の種類と活用法は、以下の2つのメルクマールに着目すると簡単に理解することができます。

  • 誰にかけるか(誰を被保険者にするか)
  • どのような機能があるか

このメルクマールから、以下のように分けることができます。

(記号の説明)

◎:最も適している、又は最も多く利用されている

○:適している、又はある程度多く利用されている

△:利用できないことはないが有用性が低い、又は利用が少ない

〈経営者・役員を対象とする保険〉

経営者保険

※現金ではなく現物支給として

〈従業員を対象とする保険〉

福利厚生保険

※現金ではなく現物支給として

以下、具体的に説明していきます。

1.経営者・役員を対象とする保険の活用法

経営者・役員を対象とする保険の活用法は、大きく分けて以下の5通りです。

  • 経営者に万が一のことがあった場合に備える
  • 退職金等の資金を効率よく積み立てる
  • 予期せぬ突発的な経営危機に備える
  • 事業承継における会社・後継者へのダメージを抑える
  • ビジネスチャンスに機動的にお金を借りられる

これからそれぞれについて説明を加えていきます。

1-1.経営者に万が一のことがあった場合に備える

ここでは、経営者の死亡のリスクに備える機能に特化した以下の2つの生命保険について説明します。

  • 定期保険(解約返戻金なし)
  • 収入保障保険

いずれも、掛け捨ての保険なので、保険料の額が低く抑えられるものです。ただし、「収入保障保険」の方がコストがより低くて済みます。

というのは、収入保障保険は、下図の通り、時間が経てば経つほど受け取れる保険金の総額が減っていくため、保険料の額が低く設定されているからです。

※契約例

  • 55歳加入・70歳満期
  • 保険金額:600万円/年(50万円/月)
  • 支払保障期間:5年間

収入保障55~75才(年600万円)

 

また、収入保障保険は、毎月一定額の保険金を受け取れるものなので、あなたの身に万一のことがあった場合の事業の安定化に役立ちます。

というのは、特に中小企業の場合、経営者が死亡した場合のダメージはその年度だけでおさまらないことが多いのです。数年間にわたって業績が低迷し、その間、ずっと赤字のカバーや借入金の返済をしなければならないことが予想されます。

そんな時、保険金を複数年に分けて受け取って、それぞれの年度の益金に算入し、営業赤字のカバーや借入金の返済に使うというシステムは、合理的です。

収入保障保険は、もともと、そのような活用法を予定して設計されている保険商品なので、事業の安定化に最も役立つのです。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

なお、付言しておきますと、他の種類の生命保険でも、保険金を一度に受け取るのではなく「年金形式」で受け取るように指定すれば、このような方法は可能です。

ただ、全ての死亡保険の種類の中で、収入保障保険が、事業の安定化という点とコストの低さという点で、最も合理的にできているということです。

1-2.退職金等の資金を税負担を減らしながら効率よく積み立てる

以下に挙げる5種類の保険は、貯蓄性のある商品なので、退職金等の資金を積み立てるのに利用されます。

どういうことかというと、適切なタイミングで解約すれば、支払った保険料の総額の一部、または総額以上の額の「解約返戻金」が返ってくるのです。

つまり、保険料を払うことによってそのお金を「解約返戻金」として積み立てていることになるわけです。

1-2-1.保険料の支払により税負担を軽くし利益を繰り延べる

これら5種類の保険のうち、終身保険以外は、保険料の一部または全部が損金に算入されます(残りの部分の額は資産に計上されていきます)。

そのため、保険料を支払っている段階=「解約返戻金」の積立をしている段階で、税負担を軽くすることができるのです。

終身保険は保険料全額が資産に計上されますので、税負担の軽減の効果がまったくありません。

ですので、終身保険は効率が悪いと言えます。詳しくはこちらをご覧ください。

1-2-2.解約返戻金を受け取り益金を計上することにより赤字リスクがカバーされる

解約返戻金は、1度に全部解約して全額を受け取ると、退職金や大規模な設備投資の資金に充てることができます。

税法上の扱い

この益金が、会社の赤字の危機を救ってくれます。

というのは、退職金の支給や大規模な設備投資により多額の損金が計上されますが、解約返戻金によって、それをカバーする益金が立てられれば、赤字を避けられるからです。

ただし、注意すべき点があります。

まず、どの商品も、解約返戻金の受け取りは、返戻率が高いタイミングで行わないと、かえって、保険に加入しなかった場合より損をしてしまうおそれがあります。

また、終身保険は、解約返戻金を受け取った時に益金に算入できる額が少ないので、注意が必要です。

1-2-3.医療保険・がん保険(終身タイプ・保険料短期払い)は退職金代わりにできる

医療保険・がん保険の「終身タイプ」は、保険料の支払期間が経営者・役員の引退時期に終わるように設定して「短期払い」で加入すると、経営者が病気になった場合の休業補償や治療費の保障だけでなく、「+α」の活用ができます。

それは、経営者・役員が退職する時に退職金代わりに現物で支給するというやり方です。

こうすれば、経営者・役員は退職後、一生涯にわたり医療の保障を受けられるようになります。

在職中は経営者・役員の病気や事故に備えます。もちろん、その間、保険料は全額会社の損金に算入されます。

そして、退職のタイミングで保険自体を退職金代わりに支給するのです。これは、保険の契約者名義を会社から個人に変更するという形で行われます。

保険料の払込は済んでいるので、経営者・役員は、以後は保険料を支払わずに一生涯の保障を受けることができます。

終身医療保険短期払い

この医療保険の「名義変更プラン」には、大きなメリットが2つあります。

第一に、会社にも経営者・役員個人にも経済的負担がほとんど発生しないということです。

つまり、解約返戻金がない医療保険の契約者の権利というのは、資産そのものではなく「仮に大きな病気や怪我をしてしまったら所定の給付を受ける権利」にすぎません。そのため、保険料の支払が済んでいれば、資産価値がゼロと扱われ、名義変更をしても会社にも個人にも経済的な負担はほとんど発生しません。

第二に、税務当局も認めている方法なので、否認されるリスクがないということです。

医療保険の中には、たとえば、三大疾病(悪性新生物、急性心筋梗塞、脳卒中)になった場合の一時金の特約や、介護状態になった場合の年金の特約を付けられる商品もありますので、老後の安心と豊かな生活を確保するという意味でも、魅力的な活用法の一つです。

1-3.予期せぬ突発的な経営危機に備える

解約返戻金のあるタイプの生命保険は、突発的な経営危機に備える役割も果たします。

たとえば、天災や不況、取引先の倒産等のアクシデントが発生するなどして、突発的な危機が生じた場合に、保険を全部解約、または一部解約し、解約返戻金を受け取って対応することができます。

また、そこまでいかなくても、営業赤字が出た年度に一部解約して解約返戻金を受け取り、その補填をすることができます。

ただし、解約返戻金が低いタイミングで解約してしまうと損をするリスクがあります。そのため、あくまでも、退職金等の必要な資金を保険を活用して積み立てるついでに、予備の資金を準備しておけるのだという程度です。

1-4.事業承継による会社・後継者へのダメージを抑える

事業承継、つまり、後継者に事業を引き継がせるときには、後継者の経済的負担をできるだけ軽くしてあげる必要があります。

というのは、後継者に死後に相続させる場合も、生きているうちに引退して引き継がせる場合も、いずれにせよ、相続税や贈与税の負担がかかってきます。

たとえば、あなたが株式会社の社長で、法定相続人(子など)を後継者として、事業を引き継がせる場合を考えてみましょう。

この場合、後継者はあなたが持っている株式を、相続か贈与で承継することになります。

相続税や贈与税は、資産の評価額を基準として計算されることになるので、税金の額を引き下げるには、株式の評価額を低くする必要があります。

そのためには、毎年度に多額の損金を計上して会社の利益を抑え、資産価値を引き下げていくことが一番手っ取り早いと言えます。

そこで、保険料の全部または一部が損金に算入される保険に加入すれば、毎年度の会社の利益を引き下げ、会社の資産価値を引き下げ、株式の評価額を引き下げることができます。

その結果、後継者の相続税・贈与税の負担が抑えられてあげることができます。

なお、それは、上で述べたような、退職金の資金の積立と同時進行で行うことができます。

以上はあくまで一例です。

事業承継の方法・タイプに応じて、活用すべき生命保険の種類は違います。

また、あなたご自身が生命保険を個人契約する方法も有効な場合があります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

1-5.ビジネスチャンスに機動的にお金を借りられる

解約返戻金があるタイプの保険は、いずれも、満期前に「契約者貸付」の制度を活用して、急な出費に対応することができます。

借入限度額はその時点の解約返戻金の90%程度、利率は年3%程度です。

いわば解約返戻金を担保に借入をするのと同じなので、わざわざ担保を用意する必要は一切ありません。

また、銀行等の金融機関に融資を申し込む場合と異なり、面倒な手続をする必要もありません。

お金は、申込から1週間程度で入金されます。

したがって、千載一遇のビジネスチャンスが到来して、なんとか迅速にまとまった額のキャッシュを準備したい時に、便利な制度です。

2.従業員を対象とする保険の活用法

以下の3種類の保険は、従業員の福利厚生の制度を効率よく整えるために活用されるものです。

いずれも、一定の条件をみたす従業員を全員加入させることが原則です。

  • 養老保険
  • 医療保険
  • がん保険(解約返戻金なし)

福利厚生を充実させることは、それ自体、従業員に対し、大切にしているというメッセージを発信するものです。

たとえば、退職金制度を整えると、従業員の老後への心配を和らげることができます。

同時に、従業員に万一のことがあった場合に遺族が「死亡退職金」を受け取れるようにすれば、安心して働いてもらうことができます。

また、医療費をサポートすれば、従業員の心身の健康に配慮しているという姿勢を示すことができます。

これらのことは、法人向け保険を上手に活用すれば、可能なのです。

2-1.養老保険で退職金と「死亡退職金」の制度を整える

2-1-1.活用するのは「福利厚生プラン」

養老保険は、満期までに被保険者が死亡すれば死亡保険金が支払われ、満期まで生きていたら満期保険金が支払われるという生命保険です。

つまり、被保険者が死亡してもしなくても必ず保険金が支払われるのです。

従業員を被保険者として加入することで、従業員自身の退職金と、遺族のための「死亡退職金」の制度を同時に整えることができます。

ここでは、「福利厚生プラン」というオーソドックスなプランについて説明します。保険料の1/2が損金に算入され、退職金の資金を積み立てる段階で税負担が軽くなるタイプのものです。

なお、保険料全額を損金にできるとされる、いわゆる「逆ハーフタックスプラン」というものがあります。しかし、これは、保険料全額損金という扱いに税法上の根拠が乏しく、否認されるリスクが高いものなので、おすすめできません(興味がある方はこちらの記事をご覧ください)。

2-1-2.「満期保険金」「解約返戻金」を退職金の資金に使う

「福利厚生プラン」では、死亡保険金の受取人を従業員の遺族、満期保険金の受取人を会社に設定しておきます。

解約すると会社は解約返戻金を受け取ることになります。この解約返戻金はある程度の期間以上加入していれば高くなっていきます。そして、満期まで増え続けます。

また、解約せず満期になると、最終的には「満期保険金」として保険料の90~100%程度のお金が受け取れます。

そして、この満期保険金または解約返戻金を、従業員の退職金の財源に充てることができます。

2-1-3.死亡保険金を「死亡退職金」にする

もしも従業員が満期前に死亡したら、遺族が死亡保険金を受け取れます。

これを、「死亡退職金」として扱うことに決めておくのです。

2-2.医療保険・がん保険で従業員の福利厚生を整える

2-2-1.医療保険・がん保険で医療費をサポートする方法

医療保険は病気やけがの場合の治療費・入院費等を一定の範囲で保障する保険です。保険期間は、一生涯のもの(終身タイプ)と、期間が決まっているもの(定期タイプ)があります。

がん保険は、がん治療に特化した医療保険です。

定年までの保険料の総額をみると、定期タイプの方が終身タイプよりも保険料の額が低くなっています。したがって、定期タイプを選ぶ会社が多くなっています。

従業員が病気になった場合には会社に対して所定の給付金が支払われ、その全部または一部を「見舞金」として従業員に支払うことができます。

加入に際しては、告知書の記入が必要です。この告知書には健康診断結果通知書を添付して提出してもらうようにすることをおすすめします。その方が会社の事務が楽だし、保険会社の側でも正確な情報に基づいて総合的に判断できるからです。

2-2-2.終身タイプの医療保険・がん保険を退職金代わりに現物支給する方法

「終身タイプ」には「定期タイプ」にない特有の活用法があります。退職金代わりに従業員個人に「名義変更」するという形で現物支給するという利用法が考えられます。

やり方は、上で説明した、経営者への医療保険の「名義変更プラン」と全く同じです。

つまり、保険料の支払いが終わる時期を従業員の退職時期に合わせて設定しておき、そのタイミングで退職金代わりに支給するのです。

こうすれば、その従業員は、退職後は保険料を支払わずに一生涯の保障を受けることができます。

この活用法は、従業員の出入りが激しい会社にはおすすめできません。

しかし、小規模な家族経営の会社など、基本的に従業員の全員が定年まで働くことが見込まれるような場合には、検討の余地があるでしょう。

2-3.せっかくの福利厚生の制度も「福利厚生規定」を作成しなければ意味がない!

福利厚生に保険を活用するのであれば、「福利厚生規定」を作成しておく必要があります。その理由は、以下の通りです。

  • 福利厚生制度とその導入目的を全従業員に周知徹底する
  • 権利関係を明確にして遺族とのトラブルを防ぐ
  • 税務調査が入った場合に福利厚生目的の明確な証拠になる

福利厚生制度は、従業員に高いパフォーマンスを発揮して安心して長く働いてもらうという目的が達成されなければ意味がありません。導入をしたときには必ず「なぜこの制度を導入したのか」を周知徹底していただきたいと思います。

また、もしも「福利厚生規定」を作成しておかなければ、保険金受取の時に従業員・遺族とトラブルになる可能性があります。たとえば、従業員が死亡した場合、遺族は死亡保険金を受け取ることになるのですが、会社の側ではこの死亡保険金を「死亡退職金」だと考えていても、遺族の側から別に死亡退職金を請求されることがあります。

さらに、「福利厚生規定」を作成しておかなければ、税務調査が入った時に福利厚生目的と認められず、保険料の損金算入という扱いが否定されてしまうおそれがあります。

そういったことを避けるためにも、福利厚生規定を作っておきましょう。

まとめ

法人向け保険の種類と活用法について、ざっくりと整理して説明してきました。

誰に保険をかけるか、どのような目的に使うか、ということを理解して、ご自身の会社のニーズに合った保険、お得な保険を選んで、無理のない計画を立てて活用するようにしてください。

そうすることによって、限りある会社のキャッシュを最大限に有効活用し、会社を守り、発展させ、ひいては次の世代に伝えていくことができるようになります。

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出岡 大作

行政書士資格保有。保険や税金や企業関係法、民法、行政法といった分野について幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
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