
障害によって生活に支障が出てしまった場合に支払われる『障害年金』。
名前は聞いたことはあると思いますが、実際にいくら受け取れるのかがわからず、気にされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
または、計算式を見たことはあるけれど、実際に計算できずにいくら受け取れるのかがわからないという方もいるのではないでしょうか。
そこで本日の記事では、障害年金で受け取れる具体的な金額についてケースごとにお伝えしていきたいと思います。
はじめに:障害年金の大体の受給金額
-
自営業者は78~140万円程度
-
サラリーマン、公務員は58~300万円程度
おおよその数字ですが、上記の金額が受け取れます。
上記の通り、障害年金は障害の程度や職業などによって受け取れる金額が変わってきます。障害の程度(障害等級)・職業(障害年金の種類)を確認しておきましょう。
障害等級は1~3級までの3段階あります。
年金種類は職業により変わります。
-
自営業者
-
サラリーマン
-
公務員
よって、3つの職業別に受給金額を確認していきましょう。
1.自営業者(国民年金)の場合
自営業者などの第一号被保険者および、専業主婦などの第三号被保険者は
障害基礎年金を受給します。障害基礎年金は1~2級の2段階で支給されます。
障害基礎年金は等級ごとに一律。子の加算はあり。
※平成27年4月分からの年金額(定額)
-
975,100円(1級)
-
780,100円(2級)
1級障害年金は2級障害年金の1.25倍受給できます。
子の加算額・・・ 第1子・第2子 各224,500円・第3子以降 各 74,800円
*障害基礎年金のイメージ
子の加算もあるため、ご家族を持つ方にとっては手厚い制度となっています。ただし、加算対象の子とは18歳到達年度の末日を経過していない子、または20歳未満で障害等級1級または2級の障害者のことです。
例1)30歳男性・自営業者が障害年金1級に該当した場合。
家族構成:妻30歳・子供3人(5歳・3歳・1歳)
975,000円+224,500円×2人+74,800円=1,498,800円
(1級障害基礎年金) (子の加算) (受給合計額)
このケースでは、3人分の子の加算が加わり、約150万円受給できることがわかりました。
例2)45歳男性・自営業者が障害年金2級に該当した場合。
家族構成:妻45歳・子供3人(20歳・18歳・16歳)
780,100円+224,500円×2人=1,229,100円
(2級障害基礎年金) (子の加算) (受給合計額)
このケースでは、子は3人いますが、一番上の子は18歳を超えているので基本的に加算対象にはなりません。また、二番目の子も18歳になった年度の3月31日を過ぎてしまえば、支給対象から外れてしまいます。)
このように、障害等級と子の加算で支給額が決まります。
2.サラリーマン(厚生年金)の場合
サラリーマン(第二号被保険者は障害厚生年金を受給します。
障害厚生年金は1~3級の3段階で支給されます。
障害基礎年金に上乗せして支給するイメージです。
障害厚生年金は報酬比例型で計算される。
【1級】
(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕※対象者のみ
【2級】
(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕※対象者のみ
【3級】
(報酬比例の年金額) ※最低保障額 585,100円
報酬比例の年金額の計算式
上記計算を見ると、
障害厚生年金は、報酬比例の年金額で受給額が大きく変わることがわかりますよね。
報酬比例の年金額は、
平均標準報酬額(ボーナスも含めて平均して毎月いくら稼いできたか)と被保険者期間(厚生年金を何か月収めてきたか)で決まります。
年金定期便などでご自身の年金状況を確認されると、受給額の目安がより具体的にわかりますので、一度ご自身で確認してみてもいいでしょう。
また、「被保険者期間が少ないとあまりもらえないのではないか?」と考えてしまいませんか。
しかし、被保険者期間が300カ月未満の方は300カ月(25年間)加入していたとみなして支給してくれます。
よって、年金保険料をまだあまり納付できていない20代・30代の若年者でも、しっかりと障害年金が受給できる制度になっています。
*障害厚生年金のイメージ
障害等級1・2級の場合
障害等級3級の場合
例1) 30歳男性・サラリーマンが障害年金1級に該当した場合。
家族構成:妻30歳・子供3人(5歳・3歳・1歳)
平均標準報酬額40万円(平成15年3月までの被保険者期間はなく、平成15年4月以降の被保険者期間は96か月とする)
報酬比例部分
400,000円×5.481/1,000×96カ月= 210,470.4円
<ここで300カ月のみなしが発生します。>
210,470.4円×300カ月/96カ月=657,720円
よって、障害厚生年金部分は
657,720円×1.25= 822,150円
(報酬比例の金額)
これに、障害基礎年金(1級)と配偶者の加算が加えられるので、
975,000円+224,500円×2人+74,800円=1,498,800円
(1級障害基礎年金) (子の加算) (受給合計額)
1,498,800円+822,150円+224,500円=2,535,450円
障害基礎年金 障害厚生年金 配偶者の加算
*100円未満切り捨てなので、この場合の障害厚生年金は 2,535,400円
(これはあくまでも試算ですので、正確な受給額とは限りません)
このように、実際は300ヶ月の間、厚生年金に加入していなくても300ヶ月未満の場合は300ヶ月のみなしで計算されるので、しっかりと保障されている事がわかります。
例2) 30歳男性・サラリーマンが障害年金3級に該当した場合。
家族構成:妻30歳・子供3人(5歳・3歳・1歳)
平均標準報酬額30万円(平成15年3月までの被保険者期間はなく、平成15年4月以降の被保険者期間は96か月とする)
報酬比例部分
300,000円×5.481/1,000×96カ月= 157,852円
3級には配偶者の加給年金はないため、
障害厚生年金部分は、157,852円
<ここで300カ月のみなしが発生します。>
157,852円×300カ月/96カ月=493,290円 <585,100円
(最低保障額)
ここで、
障害厚生年金3級の場合、障害基礎年金が支給対象ではないので、加算はなし。
また、障害厚生年金3級の最低支給額は、585,100円であることから
今回のケースの受給合計額は、最低保障額の585,100円となります。
この2つケースのように、障害等級によって受給金額の違いがあることがわかります。また、300ヶ月のみなし計算や最低保障金額が設定されていることで、加入期間の短い人もしっかりと保障されていることに気づけたかと思います。
3.公務員(共済年金)の場合
公務員(第二号被保険者は障害共済年金を受給します。
障害共済年金は1~3級の3段階で支給されます。
障害基礎年金に上乗せして支給するイメージです
障害共済年金も報酬比例型で計算される
厚生年金相当部分・加給年金額(障害厚生年金と類似している部分)
【1級】
(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕※対象者のみ
【2級】
(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕※対象者のみ
【3級】
(報酬比例の年金額) ※最低保障額 585,100円
報酬比例の年金額の計算式
職域年金相当部分(障害共済年金独特の部分)
*障害厚生年金と同じく、被保険者期間が300カ月未満の方は300カ月(25年間)加入していたとみなして支給してくれます。
例)30歳男性・公務員が障害年金1級に該当した場合。家族構成:妻30歳・子供3人(5歳・3歳・1歳)
平均給与月額40万円(平成15年3月までの被保険者期間はなく、平成15年4月以降の被保険者期間は96か月とする)
報酬比例部分
400,000円×5.481/1,000×96カ月= 210,470.4円
<ここで300カ月のみなしが発生します。>
210,470.4円×300カ月/96カ月=657,720円
よって、障害厚生年金部分は
657,720円×1.25= 822,150円
(報酬比例の金額)
100円未満切り捨てなので、障害厚生年金部分は、822,100円
さらに、職域年金相当部分があります。
400,000円×1.096/1,000×96カ月= 42,086円
<ここで300カ月のみなしが発生します。>
42,086円×300カ月/96カ月=131,518円
よって、職域年金相当部分は、131,500円(100円未満切り捨て)です。
障害厚生年金相当部分+加給年金額+職域加算=障害共済年金
822,100円 +224,500円+131,500円=1,178,100円
これに、障害基礎年金(1級)が加算されるので、
975,000円+224,500円×2人+74,800円=1,498,800円
(1級障害基礎年金) (子の加算) (受給合計額)
1,498,800円 + 1,178,100円=2,676,900円
障害基礎年金 障害共済年金
これが今回のケースの障害年金の受給合計額となります。
(これはあくまでも試算ですので、正確な受給額とは限りません)
また、平成27年10月より、共済年金は厚生年金と一律化する予定がありますので、今後受給額は変更されていきます。
参考:障害が治った(症状が固定した)ときに給付される一時金もある。
-
障害厚生年金の場合は、障害手当金。障害共済年金の場合は、障害一時金。
-
報酬比例の年金額の2年分で最低保障は115万。
-
受給権を得てから5年以内に請求しなければ、受給できなくなる。
-
障害年金の受給権のある人が障害等級の3級にもあたらなくなってから
3年以上たった場合に、別傷病で障害手当金に当たる障害状態となったときは障害手当金が支給されます。
まとめ
障害年金は、障害等級や職業により受給金額が異なりますが、保障範囲も広く、子の加算や障害厚生・共済年金には報酬比例部分もあり、手厚く保障してくれます。具体的な計算をしてみることで、300日のみなし計算などのすごさも理解できたのではないでしょうか。
普段、なんとなく支払っている年金ですが、老後の備え・死亡への備え・障害への備えの3つの場面で活用できるとても優れた制度です。
ただし、この制度ですべての経済的負担がカバーできるわけではありません。
一度、社会保障と民間の保険でどれだけカバーできるのか、ご自身で確認してみるのもいいかもしれません。