平成29年度の税制改正でこれだけは押さえておきたい3つのポイント

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多くの経営者の方から、「税制は毎年変わってややこしいので、最新の情報に対応するのは大変だ」というご相談をいただきます。また、「たくさんの改正のうち重要なポイントに絞って押さえたい」というご要望もいただきます。

そこで、本日は、リクエストにお答えして、平成29年度の税制改正情報で、業種問わず、多くの法人のお客様に関わる重要な以下の3つのポイントをまとめました。

  1. 所得拡大促進税制の見直し
  2. 中小企業の設備投資促進税制
  3. 株式価値の評価方法の見直し

一つひとつ分かりやすくご説明致しますので、最後までお読みになってお役立てください。

ポイント1|所得拡大促進税制の見直し

「所得拡大促進税制」は、簡単に言うと、従業員の給与を上げたり新しい従業員を雇ったりした場合に法人税等が軽くしてもらえる制度です。

以下、

  • 適用の条件
  • 税金がどのくらい軽減されるか
  • 活用を考える上での注意点

に分けて説明します。

1.1.所得拡大促進税制の適用の条件

昨年度までは中小企業の場合は、従業員給与を3%以上引き上げることを条件に法人税の軽減が図られていましたが、平成29年度は従業員給与を2%上げれば法人税を軽減させることが可能です。

1.2.税金がどのくらい軽減されるか

法人税がどれくらい軽減されるかというと、引き上げた給与の額(前年比2%以上)の10%程度の額が、税金から差し引いてもらえます。

「法人所得」からではなく、「法人税の額」から差し引いてもらえるというのがポイントです。法人税の額は

法人税の額=法人所得(益金-損金)×税率

で計算されますが(詳しくは『法人税とは何なのか|もっとも分かりやすい法人税入門』をご覧ください)、その額から差し引いてもらえるということです。

1.3.活用を考える上での注意点

注意が必要なのは、赤字の場合は効果がないということです。なぜなら、法人税がかかる場合に初めてそこから差し引いてもらえるからです。

したがって、もしも利益がある程度出そうで、従業員さんの給与アップをしようと考えている場合は、2%以上のアップを意識しましょう。

ポイント2|中小企業の設備投資促進税制

中小企業が生産性向上に役立つ設備投資を促進すると、以下の3種類の制度の対象になり、税金が軽くなるという特典が受けられます。

  1. 中小企業投資促進税制
  2. 商業・サービス業・農林水産業活性化税制
  3. 中小企業経営強化税制

なお、「中小企業投資促進税制」と「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」はもともと平成29年3月までだったものが延長されたものです。

これらの制度に共通の特徴は、「購入代金の●%」を減価償却するか、「購入代金の▲%」を税金から差し引いてもらうか(税額控除)、どちらかを選択できることです。ただし、税額控除の場合、差し引いてもらえる上限は、3つの制度を合わせて法人税の額の20%までとなっています。

減価償却と税額控除のどちらがお得かは後ほどお伝えします。

もしもあなたの会社が何らかの資産を購入しようとしているのであれば、是非、これらの特典の対象になっているのか、一度確認してみてください。仕入れ先の企業に問い合わせるなどして確認することをおすすめします。

2.1.設備投資促進税制それぞれの概要

まず、それぞれの制度について概要を記載しておきます。

2.1.1.中小企業投資促進税制

※詳しくは中小企業庁のHPをご覧ください。

  • 期間:2019年3月31日まで(器具備品を除く)
  • 対象となる資産:所定の機械装置、工具、ソフトウエア、車両運搬具
  • 特典内容:購入代金の30%を一気に減価償却、または7%を法人税から差し引ける

2.1.2.商業・サービス業・農林水産業活性化税制

※詳しくは中小企業庁のHPをご覧ください。

  • 期間:2019年3月31日まで
  • 対象資産:所定の建物附属設備、器具備品
  • 特典内容:購入代金の30%を一気に減価償却、または7%を法人税から差し引ける

2.1.3.中小企業経営強化税制

※詳しくは中小企業庁のHPをご覧ください。

  • 期間:2019年3月31日まで
  • 対象資産:所定の建物附属設備、工具、器具備品、機械装置、ソフトウエア
  • 特典内容:購入代金全額を一気に減価償却、または資産の種類に応じ7%か10%を法人税から差し引ける

2.2.「減価償却」と「税額控除」のどちらを選ぶべきか

3つの制度はいずれも、「減価償却」と「税額控除」のどちらかが選べますが、どちらを選ぶべきでしょうか。

もし黒字になりそうなら、減価償却と税額控除のどちらが効果が高いか計算して選ぶことをおすすめします。

また逆に、赤字になりそうなら減価償却を選ぶことをおすすめします。赤字の分を翌年以降に黒字から差し引くことができます(「繰越控除」と言います)。

ポイント3|自社株式の価値の評価方法の見直し

最後のポイントは、自社株式の価値の評価方法の見直しです。ただ、あまりピンとこないと思いますので、本題に入る前に、なぜ自社株式の価値の評価方法が問題になるのかをお伝えします。

結論からお伝えすると、自社株式の評価額が高いと後継者が苦しむリスクがあるので、低く抑えるに越したことはありません。ところが、平成29年度改正で評価方法の見直しが行われたことで、従来よりも評価額が高く出てしまう可能性があるのです。

3.1.自社株式の評価額を抑えないと後継者が苦しむリスクがある

あなたはいずれ、会社をお子様等の後継者の方に引き継ぐことをお考えのことと思います。「事業承継」と呼ばれるものです。

後継者に事業承継をする場合、どのような方法で引き継いでもらうにしても、株式の評価額が高いと、後継者は、大変な経済的負担を負ってしまうリスクがあります。

そのリスクは主に以下の2つです(詳しくは『事業承継対策に役立つ生命保険4種類の活用法』をご覧ください)。

  • 株式をタダで引き継ぐならば相続税・贈与税、買い取るなら買取代金がかかる
  • 他の相続人の遺留分を侵害した分についてお金を払わなければならない

3.1.1.株式をタダで引き継ぐならば相続税・贈与税、買い取るなら買取代金がかかる

生前に後継者に株式を譲り渡す時は、タダで渡すと後継者の方に「贈与税」がかかるし、買い取ってもらう場合は後継者の方は「買取代金」を準備しなければなりません。

また、あなたに万一のことがあってご家族が株式を相続する場合と、遺言で親族外の方に株式を引き継いでもらう場合には、相続税がかかります。

3.1.2.他の相続人の遺留分を侵害した分についてお金を払わなければならない

さらに、あなたの遺産総額のうち株式の占める割合が極端に高いと、それを引き継ぐ後継者の方は、他の親族の方の最低限の取り分(遺留分)を侵害してしまいます。そのため、後継者の方は他の方にお金(代償交付金)を支払わなければなりません。

いずれにしても、株式の評価額が高いと、後継者の方に大変な負担を強いることになります。したがって、上場を目指す等の事情がないならば、株式の評価額は低く抑えるに越したことはないのです。

3.2.平成29年改正で「類似業種比準方式」の評価額が高めに出る

市場で取引されていないオーナー企業の株式の場合、その評価額の計算方法は、主に「純資産価額方式」と「類似業種比準方式」という2種類の方法を組み合わせることになっています。このうち「純資産価額方式」は評価額が高めに、「類似業種比準方式」は評価額が低めに出る傾向があります(※1)。

ところが、平成29年度から「類似業種比準方式」の計算方法が改正され、評価額が以前より高めに出るようになったのです。

新しい計算方法は、以下の数式をご覧ください。

類似業種比準方式改正後

なお、ご参考までに、改正前は以下のようになっていました。

類似業種比準方式改正前

この式に出てくる「ABCD」「bcd」について少し説明を加えておきます。

まず、ABCDの額は、あなたの会社と同業種の「標準的な会社」の以下の数値です(※2)。

  • A:株価
  • B:配当金の額
  • C:利益の額
  • D:純資産の帳簿上の額

bcdの額は、あなたの会社の以下の数値です。

  • b:「1株あたり」の配当金額(直前2期中の平均)
  • c:「1株あたり」の利益(益金-損金)の金額(直前2期分の平均か、直前期分のどちらか低い方)
  • d:「1株あたり」の純資産価額(直前期末)

この改正によって、事業承継が近くなったタイミングで利益を圧縮して株価評価を下げようとしても、その効果は落ちてしまうということにもなります。

これに対し逆に、資産のない法人は株価が落ちる可能性もありますので、事業承継・相続対策の方法を現在の会社の状況に合わせて再度検討してみてください。

※1:詳しくは『株式の評価方法|株式の相続税対策に役立つ全知識まとめ』をご覧ください。

※2:詳しくは『類似業種比準方式とは?株式の相続税対策に必要な知識まとめ』をご覧ください。

まとめ

平成29年度の税制改正で経営者の方に押さえておいていただきたい3つのポイントをお伝えしてきました。

従業員給与を上げようと検討されている方、設備投資を検討されている方、そしてこれから株価を下げて自社株を後継者へ移行しようと考えている方は、上記の3つのポイントを踏まえた上で、有効な対策を講じていただきたいと思います。

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松澤 正宣

松澤 正宣

大手生命保険会社にてオフィス長を経験。
これまで200名以上のセールスに教育・研修を行ってきた保険のコンサルタント。
得意分野は資産家・経営者の税金対策。
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