生活障害保障型定期保険の活用のための鉄則3つ

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生活障害保障型定期保険は、よく「全額損金の保険」とか「節税商品」として紹介されます。

しかし、実は「節税商品」というのは大きなミスリーディングで、クセが強い商品である上、それなりのリスクがあり、活用方法は限られています。

ところが、そういったことを整理して説明している本やサイトはほとんど見当たりません。恐ろしいことに、法人保険を扱っている営業マンでも、「全額損金=節税」という点だけを売りにして販売している人がいたりします。

この記事では、生活障害保障型定期保険の活用を考える上で是非知っておいていただきたいメリットとデメリットを踏まえた上で、絶対に守るべき3つの鉄則について説明します。

生活障害保障型定期保険の活用をご検討の方は、是非参考にしてください。

1.生活障害保障型定期保険とは

生活障害保障定期保険とは、契約期間の定めがある生命保険:定期保険の一種です。

ただし、一般的な生命保険よりも保障の範囲が広くなっています。死亡の場合だけでなく、一定の「生活障害状態」に陥ってしまった場合にも保険金が支払われます。

「生活障害状態」は、保険会社によって違います。介護が必要な状態になった場合をさしていたり、いわゆる三大疾病(がん(悪性新生物)・急性心筋梗塞・脳卒中)になった場合をさしていたりします。

たとえば、A社の商品の「生活障害状態」は以下の通りです。

生活障害状態

また、解約すれば「解約返戻金」が支払われます。この解約返戻金にはピークが設定されていて、ピーク時の解約返戻金は、年齢・性別により違いますが、支払った保険料総額の50~90%台くらいです。

イメージ

生活障害保障型定期保険イメージ

生活障害保障型定期保険はクセが強く、活用するには、メリットとデメリットを十分に理解した上で、以下の3つの鉄則を守る必要があります。

【生活障害保障型定期保険を活用するための3つの鉄則】

  1. 十分なキャッシュフローがあり、多くの年度で保険料の額以上の経常利益が上げられること
  2. 解約のタイミングと解約返戻金の使い道について十分な計画を立てておくこと
  3. なるべく若い経営者・役員を被保険者にすること

これから、順を追って説明していきます。

2.生活保障型定期保険のメリット・デメリット

生活障害保障型定期保険のメリットとデメリットは以下の通りです。

【メリット】

  1. 保障範囲が広く、手厚い保障を受けられる
  2. 保険料の全額が損金に算入できる
  3.  「ある程度」の貯蓄性がある
  4. 赤字になりそうな年度に一部解約して黒字を計上できる

【デメリット】

  1. 保険料は保険金の割に高額でキャッシュフローを圧迫するおそれがある
  2. 解約返戻金の返戻率が低め
  3. 解約返戻金の全額が一気に益金に算入される

2.1.生活障害保障型定期保険のメリット

メリット1.保障範囲が広く、手厚い保障を受けられる

生活障害保障型定期保険は、保険の対象となる人(被保険者)が死亡した場合だけでなく、「生活障害状態」に陥った場合にも保険金が支払われるので、保障の範囲が広くなっています。

ただし、若いうちに加入した場合、「生活障害状態」に陥るリスクはかなり低いので、実際のところ、手厚い保障を受けることを目的として加入するケースは少ないです。むしろ、保険料全額が損金に算入されて利益の繰り延べができる点(メリット2参照)や、解約返戻金がある程度積み上がる点(メリット3参照)を目当てにして加入するケースが大多数です。

メリット2.保険料は全額が損金に算入される

次に説明しますが、生活障害保障型定期保険は、解約返戻金の返戻率が低くて貯蓄性という点では「ある程度」にとどまります。しかし、その代わりに、保険料の全額を損金に算入するという扱いが認められています。その結果、利益があるならば課税のタイミングが繰り延べられ、一時的に法人税の負担が抑えられることになります。

この点をさして、「節税商品」として扱われることがあります。しかし、これにはかなり誤解が含まれています。つまり、保険料の全額損金算入は課税の繰り延べにすぎず、解約返戻金のしかるべき使い道がなければ結果として損をしてしまうことになります。詳しくは「メリット3」「デメリット2」で説明します。

メリット3.「ある程度」の貯蓄性がある

返戻率(単純返戻率)は高くない

保険期間の途中で解約すれば「解約返戻金」が支払われます。この解約返戻金にはピークが設定されていて、そのピーク時に会社が解約返戻金を受け取って何らかの資金や赤字の補てんに充てることが多いです。このことからすれば、いわゆる掛け捨てではなく、「ある程度」の貯蓄性があります。

ただし、解約返戻金のピーク時の単純返戻率(支払った保険金のうち解約返戻金として戻ってくる割合)は、性別と加入年齢によって差が大きく、20代だと90%近いこともありますが、加入年齢が高いと60%台にとどまることもあります。一般的には概ね60~80%だと思っていただければけっこうです。したがって、貯蓄性は、他の法人向け定期保険である「長期平準定期保険」や「逓増定期保険」よりも低くなっています。

「単純返戻率」が低くても「実質返戻率」が100%を超えて得する可能性がある期間が長い

しかし、単純返戻率が60~80%台でも、同じ税引前利益の中から現金・預金で積み立てた場合よりも得をする場合があります。

どういうことか説明しましょう。

解約返戻金を受け取ると「雑収入」として益金に算入されます。これは、そのままだとそこに法人税がかかってきてしまいます。しかし、全額を退職金等の資金に充てて使い切ると、これによって解約返戻金と同じ額の損金が計上されるため、結果的に、解約返戻金には税金がかかりません。

つまり、単純返戻率が低かったとしても、解約返戻金を受け取ると同時に支出して税金がかからないようにしさえすれば、現金・預金で積み立てた場合よりも多くのキャッシュを積み立てて活用できたことになります。

こういう場合の、保険料を支払っている段階での税効果を考慮して、現金・預金で積み立てた場合よりも何%増えたかというのを「実質返戻率」と言います。「実質返戻率」が100%を超えているタイミングで解約返戻金を受け取り、支出して損金に算入することができれば、得をする可能性が高いということです。

ただし、この「実質返戻率」は解約返戻金自体にかかる税金は一切考慮していないので注意が必要です。詳しくは「デメリット2」で説明します。

以下に、A社の商品について、男性・50歳加入の場合と男性・25歳加入の場合の「単純返戻率」と「実質返戻率」の変遷の一覧表を掲載しましたので、ご覧ください(「実質返戻率」は法人実効税率30%として計算しています。税率が低くなれば、「実質返戻率」は低くなります)。

「実質返戻率」が100%を超える期間が割と長いことがお分かりになると思います。

【A社商品の男性・50歳加入の場合の返戻率の変遷】

  • 保険期間:27年(50歳~77歳)
  • 保険料:4,371,200円/年
  • 保険金:1億円
  • 返戻率ピーク:7年後(返戻率81.7%)

50歳男性

【A社商品の男性・25歳加入の場合の返戻率の変遷】

  • 保険期間:45年(25歳~70歳)
  • 保険料:1,807,800円/年
  • 保険金:10,000万円
  • 返戻率ピーク:7年後・8年後(返戻率87.1%)

25歳男性

メリット4.赤字になりそうな年度に一部解約して黒字を計上できる

上で説明したように、生活障害保障型定期保険は解約返戻金の「実質返戻率」が100%を超える期間、つまり、「解約返戻金を受け取ると同時に同じ額の損金を計上すればトクをする期間」が比較的長くなっています。

もし、この期間中に赤字が出そうな年度があった場合、保険を一部解約して解約返戻金で赤字の穴埋めをして、経常利益をプラスにすることができます。

そうすることによって、銀行等に対する対外的な信用を保ち、融資を取り付けたりすることもできます。

2.2.生活障害保障型定期保険のデメリット

デメリット1.保険料は保険金の割に高額でキャッシュフローを圧迫するおそれがある

死亡の場合だけでなく「生活障害状態」の場合まで保険金が支払われ、一般の定期保険に比べて保障範囲が広くなっています。また、上で述べたように解約返戻金が「ある程度」積み立てられて貯蓄性があります。

そのため、保険料は保険金の割に高額に設定されていて、適正な保険料を設定しないとキャッシュフローが圧迫されるおそれがあります。

特に、赤字の年度には、キャッシュフローは減るわ利益の繰り延べができないわ、ということになってしまいます。

デメリット2.解約返戻金の返戻率(単純返戻率)が低め

「メリット3」で、「単純返戻率」が60~80%台でも、「実質返戻率」が100%を超えているタイミングで解約して解約返戻金を受け取り、同じ年度にそれを支出して損金を計上できれば、得をする可能性が高いと説明しました。

しかし、それは、裏を返せば、どれほど「実質返戻率」が高いタイミングで解約返戻金を受け取ったとしても、同じ年度にその使い道がなければ、解約返戻金にそのまま法人税がかかってきてしまうだけということになります。

したがってせっかく保険料の全額を損金に算入して「節税」できたつもりでも、解約返戻金の使い道がなければ、保険料として支払ったお金が目減りして返ってきただけで無意味だったということになってしまうのです。

つまり、「実質返戻率」は、あくまで、解約返戻金に使い道があったという限られた条件の下で意味をもつに過ぎません。これに対し、単純返戻率さえ高ければ、保険料はあまり目減りせず、少なくとも損はしないのです。

このことからすれば、保険商品を選ぶ時に重視すべきなのは、払い込んだナマの保険料のうちどれだけナマのキャッシュが返ってくるのか、つまり「単純返戻率」であることがお分かりいただけると思います。

したがって、「単純返戻率」が低い生活障害保障型定期保険は、貯蓄機能目当てだとリスクが高いことになります。

デメリット4.解約返戻金の全額が一気に益金に算入される

生活障害保障型定期保険は、保険料の全額が損金に算入されます。資産には一切計上されません。その結果、解約返戻金を受け取ると、全額が一気にドカン!と益金に算入されることになります。

生活障害保障型の時系列

この時、同じタイミングで同額程度の支出をして、損金に算入しないと、解約返戻金に税金が一気にかかってきます。

ここで、解約返戻金の「単純返戻率」が高ければ、「現金・預金で積み立てた場合と比べてトクしなかった」というだけで済み、たいして損はありません。

しかし、生活障害保障型定期保険は、ほとんどの場合解約返戻金の「単純返戻率」が低いので、「現金・預金で積み立てた場合よりも損をしてしまった」ということになります。つまり、支払った保険料は目減りしてしまうわ、そこに税金はかかるわ、ということです。

2.生活障害保障型定期保険を活用するための鉄則3つ

鉄則1|十分なキャッシュフローがあり、多くの年度で保険料の額以上の経常利益が上げられる見通しがあること

生活障害保障型定期保険は保障が手厚く、保険料が解約返戻金としてある程度戻ってくることから、保険料は割高です。そのため、保険料を、少なくとも解約返戻金受取時まで支払い続けることができる程度の十分なキャッシュフローが重要です。

また、保険料全額を損金に算入できるとは言っても、保険料の支払によって赤字になってしまっては、利益の繰り延べの意味がありません。そのため、全ての年度とはいかなくても、多くの年度で保険料の額以上の経常利益が上げられるという見通しがなければなりません。

鉄則2|解約のタイミングと解約返戻金の使い道について十分な計画を立てておくこと

生活障害保障型定期保険は、解約返戻金のピーク時の「単純返戻率」が低くなっています。

それでも「実質返戻率」が100%以上のタイミングで解約すれば現金・預金で積み立てた場合よりも多くの額が受け取れます。そして、受け取ると同時に解約返戻金と同程度の額の支出をして損金を計上すれば、解約返戻金に税金がかからないことになり、少なくとも損はしません。

この点について、「メリット4」で説明したように、赤字になりそうな年度に一部解約して赤字の埋め合わせに活用することもできます。しかし、赤字が出るかどうかは偶然に左右される面があるので、もっぱらそれ自体を目的にするというのはあまり賢明とは言えません。

したがって、「実質返戻率」が100%以上のタイミングで解約し、同時に解約返戻金と同程度の損金を計上するよう、解約のタイミングと解約返戻金の使い道について十分な計画を立てておくことが鉄則となります。

鉄則3|なるべく若い経営者・役員を被保険者にすること

生活障害保障型定期保険の解約返戻金の返戻率はほとんどの場合低くなっています。ただし、年齢が若いうちに加入すれば比較的返戻率が高く設定されます。

また、たとえば経営者の退職金を準備するのに、その経営者自身を被保険者としなければならないといったルールは全くありません。

そのため、経営者自身の年齢が高い場合でも、なるべく若い役員を被保険者として加入し、ピーク時に解約して経営者の退職金に充てるといった方法が考えられます。

まとめ

「全額損金」という点以外、活用法がきちんと整理して説明されることの少ない「生活障害保障型定期保険」について、商品の特徴とメリット・デメリット、そして、上手に活用するための鉄則3つを説明してきました。

「生活障害保障型定期保険」が全ての会社に向いているわけではないこと、「節税商品」という表現が必ずしも適切ではないことがお分かりになったと思います。

「生活障害保障型定期保険」に限らず、どの商品にもデメリットはつきものです。「全額損金」とか「節税」とかの甘い言葉に惑わされることなく、それぞれの商品の特性を見極め、自分の会社のニーズや経営状態に合ったものかどうかを、慎重に見極めるようにしていただきたいと思います。

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出岡 大作

出岡 大作

行政書士資格保有。保険や税金や法律といった分野から、自然科学の分野まで、幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
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