税務調査は、経営者にとって何度経験しても慣れるものではありません。日頃からしっかり準備しておくのが一番だとわかっていても、いざ税務署から連絡が来るとバタバタしてしまう方が多いのではないでしょうか。
そのバタバタの中で対応を一歩間違えると、通常の追徴課税どころか、重加算税などの重いペナルティに発展してしまう可能性があります。特に、税務調査には「絶対にやってはいけない対応」が存在するため、事前に押さえておくことが重要です。
逆に言えば、正しい知識を持って準備しておけば、税務調査はそれほど怖いものではありません。今回は、税務調査で絶対にやってはいけないNG行動7つと、日頃から準備しておくべきポイントについて解説していきます。
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税務調査には3種類ある
まず前提として、税務調査には大きく分けて3つの種類があることを把握しておきましょう。それぞれ性質が異なるため、対応の仕方も変わってきます。
| 種類 |
内容 |
特徴 |
| 任意調査 |
事前に連絡があり日程や対象を通知される調査 |
実質的に拒否不可。多くの経営者が経験する |
| 査察調査 |
国税局査察部(マルサ)による強制調査 |
令状があり拒否不可。刑事事件に発展する可能性 |
| 簡易な接触 |
文書や電話による申告内容の確認 |
対応を誤ると任意調査に発展することも |
任意調査
税務署から事前に連絡が来て、調査の日程や対象期間、確認する税目や書類などが通知された上で実施されるのが任意調査です。多くの経営者が経験する税務調査はこちらにあたります。
「任意」という名前ですが、実際には断ることができません。税務調査官には「質問検査権」という権限が認められており、調査を受ける側には「受忍義務」があります。つまり実質的には強制的な調査であり、拒否したり故意に不正を隠したりすると、罰則が適用される可能性があります。
さらに、現金商売の場合は事前に告知しない「無予告調査」が行われることもあります。飲食店などはレジの現金を操作して売上を隠しやすいため、あえて知らせずに突然来るケースがあるのです。
査察調査
査察調査は、いわゆる強制調査で、任意調査の結果として悪質な不正や巨額の脱税が強く疑われる場合に実施されます。通常の税務署の調査官ではなく、国税局査察部、いわゆる「マルサ」が担当します。
査察調査は捜査令状を持ってやってくるため、拒否はできません。関係資料はその場で差し押さえられ、徹底的に調査されます。悪質な不正や脱税が判明した場合は刑事事件として立件され、最終的には裁判で判決が下されることになります。捜査中に逃亡や証拠隠滅の恐れがあると判断されれば、逮捕されることもあります。
簡易な接触
税務調査の中でも比較的軽いもので、税務署から文書や電話で申告内容の確認が行われます。一見気軽に対応できそうに感じますが、油断は禁物です。
税務署が申告内容に疑問を持ったから連絡してきているわけですから、回答内容や提出書類には細心の注意が必要です。対応を誤ったり不自然な点が出てきたりすると、本格的な任意調査に発展することもあります。簡易な接触であれ任意調査であれ、税務署からの連絡はどんな形であっても、まず顧問税理士に共有して一緒に対応方針を決めることをおすすめします。
税務調査でやってはいけないNG行動7選
ここからは、税務調査が来た時に絶対にやってはいけないNG行動を7つ解説していきます。
(1)日程をすぐに決めてしまう
税務署から連絡が来たとき、早く終わらせたいという気持ちからすぐに日程を決めてしまう方がいますが、これは大きな損につながります。
税務調査の日程はある程度調整が可能です。3週間程度の余裕を持って設定すれば、しっかりと準備して調査に臨めます。「管理していたはずのレシートが見つからない」といった不測の事態にも対応できますし、その期間に申告内容を再確認して、計上ミスなどを発見した場合は修正申告をしておくこともできます。
調査が始まる前に修正申告をした場合、過少申告加算税は発生しますが、重加算税を回避できる可能性があります。連絡がきたら、まず税理士に相談して日程の調整から始めましょう。調査官への最初の一言は、「日程については税理士に相談してから折り返します」と伝えるだけで十分です。
(2)調査内容を詳しく聞こうとする
どの項目を調べるのか、なぜ自社が選ばれたのか、知りたくなる気持ちはわかりますが、これは逆効果です。
調査官からすると、細かく聞いてくる事業者は「やましいことがあるのでは」と感じます。特に危険なのが、特定の費用について質問してしまうケースです。たとえば「交際費は調べますか?」「外注費は確認しますか?」などと聞いてしまうと、その費用が重点的に調べられることになります。自分から地雷を教えてしまうようなものです。
最初の連絡での会話は、日程の調整だけに絞るのが正解です。
資料の隠蔽や破棄をする
3つ目のNG行動は、資料の隠蔽や破棄です。証拠となるデータを消せばバレないと考える方もいますが、これは絶対にやめましょう。
削除したデータを復元するツールは存在しますし、会計システムには操作履歴が残ります。そもそも、隠蔽の事実が発覚すると重加算税が確実に課されます。
現金商売の場合、領収書の隠蔽などが疑われますが、こちらは「外観調査」と「内観調査」という方法で慎重に調査されます。客入りや立地、経営者の生活実態などから大まかな売上を推定し、店内の商品の価格や顧客の過ごし方から客単価や従業員数などを予測することで、売上や固定費が細かく推定されます。外から見てある程度の売上規模を把握した上で来るため、申告内容との乖離がすぐに分かってしまいます。隠すくらいなら正直に対応した方が、最終的には傷が浅くて済みます。
必要以上の情報を話してしまう
4つ目が、必要以上の情報を話してしまうことです。実はこれが、最も注意してほしいポイントです。
税務調査官は話術が非常に巧みで、自然な会話の流れで情報を引き出してきます。特に警戒してほしいのが、趣味の話です。調査の雰囲気を和らげるような世間話をしてくるのですが、そこから経費につながる内容を探ってきます。
たとえばゴルフが好きな経営者なら、接待ゴルフの話や個人でのラウンドの話が引き出されやすく、そこから交際費の内容を深掘りされることがあります。趣味の話を振られたら、散歩や読書など、どう考えても経費と結びつかない趣味の話をするのが無難です。
調査中はとにかく、聞かれたことに対して必要最低限だけ答えるという意識を徹底してください。話が盛り上がりそうになっても、そこはグッとこらえることがポイントです。
税務調査に対して文句を言う
5つ目は、税務調査に対して不満や文句を言うことです。指摘された内容に納得がいかない場合でも、その場で感情的に反論するのは避けましょう。冷静に顧問税理士に確認してから回答する形をとるのが正解です。
また、指摘された際に担当税理士のせいにするのも絶対にやめてください。その瞬間から税理士との関係が悪化し、調査の対応でも不利になってしまいます。調査中のネガティブな発言は、どんな形であれ控えるべきです。
嘘をつく
6つ目は、嘘をつくことです。基本的に、税務調査でついた嘘はバレます。自社で証拠隠滅に手を尽くしたとしても、領収書の発行先などを調査して整合性を確認するなど、税務調査官には調査の手段がいくらでもあります。
特に注意が必要なのが、故意でなくても問題になるケースがあることです。たとえばうろ覚えの情報を、その場の雰囲気でそのまま話してしまい、後から確認したら事実と食い違いがあった、というケースです。調査では領収書の発行先や取引先なども調べられるので、食い違いは必ず見つかります。
分からないことや確認が必要なことを聞かれたら、「後ほど確認して回答します」と伝え、税理士と相談してから正確な情報を提供するのが安全です。意図的な隠蔽と判断されると重加算税が課されますし、その後の申告に対する目も一気に厳しくなります。
税務調査を拒否する
7つ目が、税務調査を拒否することです。前述の通り、任意調査であっても拒否はできません。拒否すること自体がペナルティの対象になりますし、査察調査に発展するリスクも出てきます。
ただし、体調不良や繁忙期などで本当に対応できない場合は、事情を伝えれば日程をかなり後ろにずらしてもらえることがほとんどです。確定申告の時期で税理士が対応できない場合でも、相談すれば大幅に調整してもらえます。断るのではなく、事情を話して調整するという対応が正解です。
税務調査を無事に乗り切るためには
税務調査を無事に乗り切るために最も重要なのは、日頃からの準備です。いつ税務調査が来ても対応できるように、書類や領収書の管理を徹底し、申告内容にミスがないよう普段から気をつけておくことが基本になります。
特に経費の根拠となる書類は、何のための支出だったかが後から分かる状態にしておくことが重要です。領収書の裏に用途や相手先をメモしておくだけでも、調査の際にスムーズに説明できます。何ヶ月も前の領収書の内容は、記録がなければ覚えていないものです。説明が曖昧だと、調査官の疑念を生む原因になります。
そして調査当日は、可能であれば税理士に同席してもらうことを強くおすすめします。調査官とのやり取りで余計なことを話してしまうリスクを大幅に下げられますし、何か指摘された場合にも、その場で適切に対応してもらえます。
税理士に同席してもらえない場合でも、何か指摘されたり判断が難しい質問をされたときは、その場で無理に回答しようとせず、「後ほど顧問税理士と確認して回答します」と伝えて構いません。焦って答えるよりも、正確な情報を確認してから答える方が、調査官にとっても誠実な対応として受け取ってもらえます。
まとめ
税務調査は、対応を誤ると重加算税などの重いペナルティにつながる一方、正しい知識を持って準備しておけば冷静に乗り切ることができます。特に今回ご紹介した7つのNG行動は、いずれも「良かれと思って」あるいは「その場の雰囲気で」やってしまいがちなものばかりです。
まず税務署から連絡が来た段階で日程調整のみに絞って対応し、余計な情報は話さないこと。分からないことは無理に答えず、必ず税理士と確認してから回答すること。そして日頃から書類の管理と申告内容のチェックを徹底すること。この基本を押さえておけば、税務調査で大きなトラブルに発展することはまずありません。
税務調査は「戦うもの」ではなく、「準備で差がつくもの」です。連絡が来てから慌てるのではなく、いつ来ても対応できる体制を平時から整えておくことが、資産を守るうえで何よりの防御策になります。
今回のテーマについては、動画でも税理士がより具体的な事例を交えながらわかりやすく解説しています。税務調査官の「真の目的」や、実際の現場で交わされるやり取りのポイントについても詳しく触れていますので、ぜひ動画も併せてご覧ください。