期首に実行すべき節税対策――タイミングを逃すと1年間取り戻せない理由

執筆 社長の資産防衛チャンネル編集チーム監修 税理士法人グランサーズ公開 2026年4月24日
期首に実行すべき節税対策――タイミングを逃すと1年間取り戻せない理由
期首に実行すべき節税対策――タイミングを逃すと1年間取り戻せない理由

決算が終わると、ほっと一息つきたくなるものです。しかし、決算後の「期首」こそが、実は節税対策の最重要タイミングであることをご存じでしょうか。

期首を逃すと、その後1年間まったく使えなくなる節税策が複数存在します。つまり、決算直前の駆け込み対策だけでは不十分であり、新年度のスタートダッシュこそが1年間の資産防衛を左右するのです。

本記事では、期首に着手しておくべき代表的な節税策と、その背景にある「税金の繰り延べ」と「出口戦略」の考え方を順番に解説していきます。

役員報酬の見直しは期首3か月以内が勝負

なぜ期首でなければならないのか

期首に最優先で着手すべきなのが、役員報酬額の見直しです。役員報酬は会社にとってまとまった額の損金(経費)となるため、金額設定ひとつで法人税額が大きく変わります。

さらに、会社の利益と個人の税負担のバランスを最適化すれば、社長自身の手取りを最大化することも可能です。

しかし、役員報酬はいつでも自由に変更できるわけではありません。法人税法上「定期同額給与」というルールがあり、原則として事業年度開始から3か月以内に金額を確定させ、その後は期末まで同額を支給し続ける必要があります。

たとえば3月決算の会社であれば、6月末までに決定しなければなりません。この期間を過ぎてから増額や減額を行うと、変動した部分が損金として認められず、会社としてはお金を支出しているにもかかわらず、法人税の計算上は利益として扱われてしまいます。

法人と個人のバランスで手取りを最大化する

役員報酬の金額を決める際に意識したいのは、「法人で税金を払うほうが有利か、個人で払うほうが有利か」という視点です。

法人側について見ると、中小企業には利益800万円以下の部分に軽減税率が適用されます。そのため、役員報酬を調整して課税所得をこの範囲内に近づけることができれば、法人税の負担を抑えやすくなります。

一方、個人側は所得が増えるほど税率が上がる累進課税が適用され、所得税と住民税を合わせると最大55%に達します。加えて、社会保険料も「労使折半」とはいえ、経営者にとっては実質的に自己負担であるため、この点も考慮が必要です。

一般的には、個人の課税所得が900万円を超えるあたりから、個人の税率が法人の実効税率を上回り始めるとされています。ひとつの目安として、役員報酬を年1,200万円(月額100万円)程度に設定すると、法人と個人の税負担のバランスが取りやすいケースが多いといえます。

もちろん、住宅ローンの借り入れ予定やお子さんの教育費など、個人の事情によって最適額は異なります。しかし、まずは今期の利益予測を立てたうえで、期首3か月以内にシミュレーションを行い金額を確定させることが、1年間の資産防衛の第一歩となるのです。

以下に、法人利益と役員報酬の関係をまとめます。

項目 ポイント
法人側の軽減税率 利益800万円以下の部分に適用。報酬額で課税所得を調整可能
個人の最高税率 所得税+住民税で最大55%。社会保険料も実質負担に
バランスの目安 課税所得900万円超で個人税率が法人税率を上回る傾向
変更期限 事業年度開始から3か月以内。超過後の変更は損金不算入リスク

役員賞与を経費にする「事前確定届出給与」

届出を出しておけば役員ボーナスも損金になる

役員に対する賞与(ボーナス)は、原則として損金に算入できません。しかし、「事前確定届出給与」という制度を利用すれば、例外的に経費化することが可能です。

この制度は、「いつ・誰に・いくら払うか」を事前に確定させ、税務署に届け出るというものです。手順としては、まず株主総会で役員ごとの賞与額と支給時期を決議します。そのうえで、株主総会の決議日から1か月以内、または事業年度開始から4か月以内のいずれか早い日までに届出書を提出します。

届出期限が期首直後に設定されているため、これもまさに「期首にやらなければ使えない」対策のひとつです。

利益に応じて支給の可否を選べる柔軟性

事前確定届出給与には重要な注意点があります。届出と異なる日付や金額で支給した場合、全額が損金不算入となってしまうのです。

「期首の段階では今期の利益がどの程度になるか読めないのに、あらかじめ金額を決めるのはリスクではないか」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、もし決算が近づいて思ったほど利益が出なかった場合は、支給そのものを取りやめることができます。支給しなければ経費にはなりませんが、キャッシュアウトもなく、税務上のペナルティも発生しません。

つまり、この届出は「利益次第で支給するかどうかを選べる決算対策のオプション」として機能するのです。今期は大きな案件が入る可能性があるという状況であれば、とりあえず届出だけ出しておくのが合理的な判断といえます。

ただし、支給を見送る場合には、必ず支給日までに「支給しないこと」を株主総会等で決議し、議事録に残しておく必要があります。この手続きを怠ると、課税対象となる可能性があるため注意が必要です。

中古社用車を期首に購入して全額経費化する

4年落ち中古車なら初年度100%償却も可能

今期はかなり利益が出そうだという見込みがあるなら、中古資産の購入も有力な選択肢です。なかでも中古の社用車は、多くの経営者にとって取り組みやすい節税策のひとつです。

そもそも、10万円以上の固定資産を購入した場合、原則として購入年度に全額を経費にすることはできません。法律で定められた耐用年数に応じて、複数年に分けて経費計上する「減価償却」が必要となります。普通乗用車の法定耐用年数は6年です。

しかし、中古資産の場合は耐用年数を短縮して計算することが認められています。特に「4年落ちの中古車」であれば、最短の耐用年数2年が適用され、定率法を使うことで初年度に購入価額の100%を経費にすることも可能になります。

期首に納車まで完了させる理由

ここで極めて重要なのが、減価償却は「月割り計算」であるという点です。

たとえば3月決算の会社が、決算月の3月に車を購入した場合、今期の経費として計上できるのは12分の1、つまりわずか1か月分にすぎません。どれだけ短期間で償却できる車であっても、決算ギリギリの購入では節税効果が大幅に薄まってしまいます。

さらに、償却は「使い始めた日」からスタートします。契約だけでなく、期首に納車まで完了させておく必要があるのです。4月が期首の会社であれば、4月中に納車を済ませて使い始めることで、12か月分の減価償却費を丸々計上でき、初年度100%償却のメリットを最大限に活かせます。

車種選びの際にはもうひとつ、資産価値が落ちにくいものを選ぶという視点も大切です。数年後に売却した際にキャッシュとして戻ってくるため、利益が出ている期に購入して税金を抑え、将来的に業績が厳しい時期に売却して利益を補填するという、経営の安全装置としての役割も期待できます。

巨額の利益を圧縮するヘリコプターリース

利益の規模がさらに大きく、数千万円単位での圧縮が必要な場合には、ヘリコプターのオペレーティングリースという上級者向けのスキームもあります。

オペレーティングリースとは、リース資産を貸し出し、期間中のリース料と最終的な売却益によって投資リターンを得る取引です。ヘリコプターの法定耐用年数は5年ですが、中古のヘリコプターを活用すれば最短1年で償却できるケースもあります。

最低出資額は5,000万円程度からと高額ですが、共同出資の形式をとることで、初年度に大きな減価償却費を計上することが可能です。これだけの利益が出ている会社にとっては、そのまま法人税を支払うよりも検討の余地がある選択肢といえるでしょう。

このスキームにも月割りのルールが適用されるため、12か月分の経費をしっかり計上するには、期首のタイミングで契約を済ませておくことが不可欠です。また、決算が近づいてからでは、良質な出資案件がすでに埋まっているというリスクもあります。利益が大きくなる見通しがある場合は、早めの情報収集と意思決定が求められます。

節税の本質は「繰り延べ」と「出口戦略」にある

税金の繰り延べがキャッシュを生む

ここまで紹介してきた中古の減価償却資産を活用した節税策について、ひとつ押さえておくべき本質があります。それは、これらの手法の多くが「税金の繰り延べ」であるということです。

たとえば中古車を全額経費にしたとしても、数年後にその車を売却すれば、売却代金は利益として課税対象になります。つまり、今支払うはずの税金を将来に先送りしている構造なのです。

しかし、この繰り延べには大きな価値があります。今払うはずだった税金分のキャッシュが手元に残り、そのお金を新たな設備投資や事業拡大の資金として活用できるからです。先にキャッシュを手に入れ、そこから新たな利益を生み出すことで、会社全体の成長スピードを加速させることが可能になります。

役員退職金との組み合わせでトータルの税負担を圧縮する

繰り延べた税金の「出口」を計画的に用意しておけば、トータルの税負担そのものを抑えることも可能です。

代表的な出口戦略が、役員退職金です。会社が不動産や車両などの資産を売却して大きな利益が出るタイミングに合わせて役員退職金を支給すれば、会社の利益を一気に圧縮できます。退職金を受け取る個人としても、退職所得控除や2分の1課税といった税制上の優遇を活用できるため、会社と個人を合わせた手残りを大きくすることができます。

また、売却益をそのまま別の設備投資に充てるという方法もあります。いずれにしても、資産の購入時点から売却時の出口までを一貫して計画しておくことが、節税を「単なる先送り」で終わらせず、真の資産防衛につなげるための鍵となるのです。

まとめ

期首は、1年間の節税戦略を決定づける最も重要なタイミングです。

役員報酬の見直しは事業年度開始から3か月以内に行わなければ、その後の変更は損金不算入となるリスクがあります。事前確定届出給与の届出も期首直後が期限であり、届出を出しておけば利益に応じて支給の可否を選択できる柔軟なオプションとして機能します。

中古社用車やヘリコプターリースといった減価償却資産の活用は、月割り計算のルールがあるため、期首に購入・契約を完了させることで節税効果を最大化できます。そして、これらの「繰り延べ」を活かすためには、役員退職金などの出口戦略をあらかじめ設計しておくことが不可欠です。

決算が終わったからといって気を抜かず、新年度の初日から計画的に動くこと。これが、年間を通じた資産防衛の成否を分ける第一歩です。

本記事で取り上げた内容は、税理士が動画でよりわかりやすく解説しています。具体的なシミュレーションの考え方や実務上の注意点など、記事だけでは伝えきれないニュアンスも含めて丁寧に説明されていますので、ぜひあわせてご覧ください。

 

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執筆・監修

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー等の資格を持つメンバーで構成されています。
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