ものづくり補助金 第23次の重要変更点と最大3,000万円を獲得するための実務ポイント


設備投資を検討している中小企業の経営者にとって、ものづくり補助金は最も活用価値の高い補助金のひとつです。しかし、第23次公募から制度設計が大きく見直され、これまでと同じ感覚で申請すると要件を満たせず、最悪の場合は採択後に補助金返還を求められるリスクすらあります。賃上げ要件の一本化、役員の取り扱い、新たな特例措置、さらには2026年度以降の補助金統合まで、押さえておくべき変更点は多岐にわたります。
ここでは、第23次ものづくり補助金の主要な変更点を整理しつつ、補助上限を最大化する方法、採択を勝ち取るためのポイント、そして今後予定されている「新事業進出・ものづくり補助金」への統合の動向まで、実務目線で詳しく解説します。
第23次ものづくり補助金で押さえるべき主な変更点
ものづくり補助金は、革新的なサービス開発や生産プロセスの改善のための設備投資を支援する制度で、補助上限額が大きいことから中小企業に根強い人気があります。しかし、第23次公募からは制度が大きく見直されており、申請前の要件確認がこれまで以上に重要になりました。
最も大きな変更点は、賃上げ要件の一本化です。第22次までは、給与支給総額を年率平均2%以上増加させるか、一人あたり給与支給総額を最低賃金の伸び率以上に引き上げるか、いずれかを選択できました。新規採用で総額を増やすといった調整も可能だったため、比較的柔軟に対応できたのです。
ところが第23次からは「従業員一人あたりの給与支給総額を年率平均3.5%以上増加」に一本化されました。物価高が続く中で、全従業員の給与を毎年3.5%ずつ引き上げ続けるのは、中小企業にとって相当な負担になります。
さらに重要なのが、この計算から「法人の役員」が完全に除外された点です。これまでのように社長自身の役員報酬を上げて平均値を調整する手法は通用しません。純粋に従業員の給与を引き上げる必要があるため、従業員ゼロのいわゆる「ひとり社長」での活用は実務上きわめて難しくなりました。新規雇用を行えば活用の余地はありますが、コストと得られる補助額のバランスを慎重に検討する必要があります。
加えて、要件未達となった場合は補助金返還のリスクが生じます。採択されたにもかかわらず後から返還を求められるのは最悪のパターンです。人員計画や給与計画と照らし合わせ、達成可能な水準であることを事前に十分検証した上で申請することが不可欠です。
なお、第23次の電子申請は4月3日から受付が開始され、締切は5月8日です。申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要で、発行までに数週間かかることがあるため、検討している方は早めに動くべきでしょう。
各申請枠の概要と補助上限額
第23次の申請枠は、これまでと同様に「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」の2つで構成されています。
製品・サービス高付加価値化枠
この枠は、革新的な製品やサービスの開発に必要な設備やシステムの導入を支援するもので、ものづくり補助金の中核的な位置づけになります。生産プロセスの改善や新たな付加価値の創出を目的とした設備投資が対象です。
補助対象経費としては、機械装置・システム構築費が必須で、そのほかに技術導入費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費なども含まれます。補助上限額は従業員規模によって異なり、補助率は中小企業が1/2、小規模企業が2/3です。
| 従業員数 | 補助上限額 | 補助率(中小企業/小規模企業) |
| 5人以下 | 750万円 | 1/2 / 2/3 |
| 6〜20人 | 1,000万円 | 1/2 / 2/3 |
| 21〜50人 | 1,500万円 | 1/2 / 2/3 |
| 51人以上 | 2,500万円 | 1/2 / 2/3 |
たとえば、従業員5人以下の小規模企業が900万円の設備投資を行えば、600万円の補助を受けられる計算になります。自己負担を大きく抑えながら設備更新ができるのは、非常に大きなメリットといえるでしょう。
グローバル枠
グローバル枠は、海外への投資や輸出拡大、インバウンド対応などを支援する枠で、補助上限額は3,000万円、小規模企業の補助率は2/3に設定されています。ただし、グローバル枠は採択率が低い傾向にあるため、申請する場合は計画の精度を高めることが重要です。
特例措置を活用して補助上限を最大化する
第23次では、補助上限額や補助率をさらに引き上げる2つの特例措置が用意されています。
ひとつ目は「大幅な賃上げに係る補助上限額引き上げの特例」です。これは、一人あたり給与支給総額を年率平均6%以上増加させることを条件に、従業員規模に応じて補助上限額が引き上げられる仕組みです。具体的には、5人以下で最大100万円、6〜20人で最大250万円、21人以上で最大1,000万円の上乗せが行われます。要件は厳しいものの、達成できれば恩恵は非常に大きくなります。
ただし、6%という賃上げ水準は中小企業にとって相当ハードルが高く、未達成の場合は補助金返還のリスクが生じます。人員計画や給与計画との整合性を確認した上で活用する必要があります。
ふたつ目は「最低賃金引き上げに係る補助率引き上げの特例」です。これは、事業所内最低賃金を、事業所のある都道府県の最低賃金より50円以上高く設定することを条件に、補助率が通常の1/2から2/3に引き上げられるというものです。補助率が引き上げられれば、自己負担割合が大幅に軽減されます。
これらの特例は、賃上げ計画と補助事業の投資計画を一体的に設計することで、補助額を最大化できる仕組みになっています。賃上げは経営上のコスト増として捉えられがちですが、補助金活用と組み合わせれば、会社全体の収支をプラスに転じさせることも十分可能です。狙えるのであれば積極的に活用したい制度設計といえます。
採択を勝ち取るための実務ポイント
ものづくり補助金は人気の制度ですが、誰でも通るわけではありません。第21次締切分の採択率は全体で約34.1%にとどまっており、3社に1社しか通らない計算です。準備不足で落ちる会社が約7割存在する点は、決して他人事ではありません。
ただし、申請者数は前回から約24%減少しており、要件の高度化により準備不足の申請が減少し、質の高い競争へと変わってきています。第23次でさらに要件が厳しくなったこともあり、しっかり準備すれば採択の可能性は十分にあります。
口頭審査では社長自身の言葉が問われる
採否を分ける大きな要因のひとつが、オンラインでの口頭審査です。この審査にはコンサルタントや専門家の同席が認められておらず、社長自身が単独で臨む必要があります。計画書だけを専門家に丸投げしていた場合、内容を十分に理解していないと、口頭審査の場で一発で見抜かれます。
なぜ今この投資が必要なのか、どのような市場背景があるのか、投資後にどのような成果が見込めるのか。こうした問いに対して、社長自身の言葉で説得力を持って答えられるかどうかが、合否を大きく左右します。
革新性と実現可能性を両立した計画書
事業計画書の審査では、申請事業の革新性が大きな評価軸となります。既存設備の老朽化更新や単純な省力化にとどまらず、新たな付加価値の創出や業界水準を超える取り組みであることを、具体的なデータや市場分析を用いて示す必要があります。
一方で、革新性ばかりを強調しても、実現可能性が乏しいと判断されれば評価は下がります。技術的な裏付け、資金調達の見通し、販路開拓の具体策、実施体制の整備状況などをしっかりと示し、地に足のついた計画であることを伝えなければなりません。
夢のある革新性と、堅実な実現可能性の両方を兼ね備えた計画書を作り上げることが、採択を勝ち取るための最大のポイントといえるでしょう。
2026年度の新事業進出補助金との統合動向
もうひとつ押さえておきたいのが、2026年度以降に予定されている制度改正です。新事業進出補助金とものづくり補助金が統合され、「新事業進出・ものづくり補助金」として一本化されることが決まっています。
現時点では詳細までは確定していませんが、基本的にはものづくり補助金に新事業進出枠が追加される形になる見通しです。これに伴い、現行のグローバル枠の補助上限額3,000万円という一律設定は、従業員規模に応じた段階的な上限額に変更される方向で調整が進んでいます。
新事業進出枠とグローバル枠については、最大で9,000万円という大型の補助上限が設定される見込みで、これが実現すれば中小企業にとって極めて大きな支援となります。その分、求められる要件や計画の質も高まることが予想されますが、公募が始まったら積極的に活用を検討する価値があるでしょう。
第23次ものづくり補助金は申請期限まで時間が限られているため、無理に急がず、より大型の支援が受けられる新制度の公募開始を待つという選択肢も合理的です。自社の投資計画や賃上げ余力、準備状況を踏まえて、どちらに照準を合わせるかを戦略的に判断することが求められます。
まとめ
第23次ものづくり補助金は、賃上げ要件の一本化と役員の除外という大きな変更により、これまでよりも申請のハードルが上がっています。一人あたり3.5%の賃上げを達成できるか、未達成リスクをどう管理するかが、活用可否を左右する重要な判断ポイントです。
一方で、製品・サービス高付加価値化枠で最大2,500万円、グローバル枠で最大3,000万円という大型の補助上限は依然として魅力的であり、特例措置を組み合わせれば、補助額のさらなる引き上げや補助率の引き上げも狙えます。賃上げ計画と設備投資計画を一体で設計することで、会社全体の収支をプラスに転じさせることも十分可能です。
採択率は全体で約34%にとどまるものの、口頭審査に向けた経営者自身の準備と、革新性と実現可能性を両立した事業計画書を作り込めば、十分にチャンスはあります。さらに、2026年度以降の「新事業進出・ものづくり補助金」への統合により、最大9,000万円という大型支援も視野に入る予定です。短期的な申請と、中期的な制度活用の両面から、自社にとって最適なタイミングを見極めましょう。
本記事のテーマである第23次ものづくり補助金の変更点や特例措置、採択を勝ち取るためのポイント、そして2026年度の制度統合の動向については、税理士が動画でさらに詳しく解説しています。実務での判断材料として、ぜひあわせてご覧ください。



