節税のつもりが逆効果に?同族会社だけにある4つの落とし穴|みなし役員・留保金課税・行為計算の否認をやさしく解説【2026年最新】
日本の中小企業の多くは、社長とその家族が株式を持つ「同族会社」です。意思決定が速く、役員報酬や退職金、経費の使い方も柔軟に決められる――これは同族会社ならではの大きな強みです。
ところが、その柔軟さの裏側で、同族会社“だけ”に課される特別なルールがあります。これを知らずに「身内だから大丈夫」と進めると、よかれと思った節税がかえって税負担を増やす“逆効果”になることがあります。
この記事では、同族会社が特に気をつけたい4つの落とし穴を、仕組みと回避策までやさしく整理します。先に知っておけば、どれも十分に避けられるものばかりです。
そもそも「同族会社」とは?日本の会社の9割以上が該当
同族会社とは、ざっくり言えば上位3グループの株主(その家族などの同族関係者を含む)で、発行済株式の50%超を持っている会社のことです。社長一族で株の過半数を握っている中小企業は、ほとんどがこれに当てはまります。実際、国税庁の統計でも、日本の法人の9割以上が同族会社とされています。つまり「うちは関係ない」という中小企業はほとんどありません。
判定は、持株数(議決権)だけでなく、議決権や社員数などいくつかの基準のいずれかで50%超になるかを見ます。親族や、自分が支配している別会社の持ち分も合算して判定するのがポイントで、「自分名義の株は少ないから大丈夫」とはなりません。
同族会社は少人数で会社を支配できるため、利益や報酬の調整もしやすい立場にあります。だからこそ、税のルールでは身内での“やりすぎ”を防ぐための歯止めがいくつか用意されています。それが次の4つです。まずは全体像を一覧で押さえましょう。
| 落とし穴 | 何が起きる | 回避のポイント |
|---|---|---|
| ①みなし役員 | 家族への賞与が経費にならない | 賞与でなく定期同額給与で |
| ②使用人兼務役員になれない | 身内役員の賞与も損金不算入 | 損金にできる形に設計し直す |
| ③留保金課税 | 利益を貯めすぎると追加課税 | 計画的に使う(中小は原則対象外) |
| ④行為計算の否認 | 不自然な節税を否認される | 時価・契約書・議事録・実態 |
落とし穴①:家族への「賞与」が経費にならない(みなし役員)
「妻にも手伝ってもらっているから、決算賞与を出して経費にしよう」。よくある話ですが、同族会社では危険です。
役員として登記していなくても、一定の株式を持ち、経営に関わっている家族は「みなし役員」として扱われます。具体的には、①50%超の判定に関係する上位株主グループに属し、②そのグループの持株割合が10%超、③本人(配偶者や支配している会社を含む)の持株割合が5%超――これらを満たして経営に従事していると、みなし役員です。
そして役員(みなし役員を含む)への賞与は、原則として損金になりません。つまり、家族に賞与を出しても会社の経費にならず、税金は減らないどころか、受け取った側には所得税・住民税がかかります。これが典型的な“逆効果”です。
たとえば、経営を手伝う妻に決算賞与100万円を支給したとします。従業員への賞与なら全額が経費になり、法人税(実効税率を約34%とすると)で約34万円の節税になるはずでした。ところが妻がみなし役員に当たると、この100万円は損金不算入で会社の節税はゼロ。一方で妻には給与として所得税・住民税・社会保険料がかかります。「経費にもならず、個人の税金だけ増える」という、まさに払い損の状態になりかねません。
回避策:家族に支給するなら、賞与ではなく毎月同額の「定期同額給与」で出すのが基本です。金額や働き方の整え方は家族を非常勤役員にして手取りを最大化する方法で詳しく解説しています。
落とし穴②:役員でも「使用人兼務役員」になれない
通常の会社では、取締役でありながら部長なども兼ねる「使用人兼務役員」であれば、使用人(従業員)部分の給与・賞与は経費にできます。賞与を損金にできる数少ない役員の形です。
ところが、同族会社で①②③の持株要件に当てはまる役員は、この「使用人兼務役員」になれません。そのため、使用人部分も含めてすべて役員給与扱いとなり、賞与部分は損金になりません。「役員にも従業員としての賞与を出せば経費にできる」という一般的な節税が、同族会社の身内役員には通用しないのです。
回避策:株を持たない(持株要件に当てはまらない)従業員への賞与は通常どおり経費になります。身内役員への支給は定期同額給与や役員退職金といった、損金にできる形に設計し直すのが有効です。
落とし穴③:利益を貯めすぎると追加で課税される(留保金課税)
会社に利益を残すと法人税がかかりますが、同族会社の中でも1グループで50%超を支配する「特定同族会社」が内部留保を過度に積み上げると、通常の法人税に加えて「留保金課税」という追加の税金がかかることがあります。配当を出さずに会社に利益を貯め込み、個人の所得税を回避するのを防ぐための制度です。
ここで安心材料を一つ。資本金1億円以下の中小企業は、原則としてこの留保金課税の対象外です(ただし、資本金5億円以上の大法人に100%支配されている会社などは除きます)。多くの中小企業は直接は心配いりません。
留保金課税は、その年に会社に残した利益(留保所得)から一定の控除額を差し引いた「課税留保金額」に対して、通常の法人税とは別に10〜20%の特別税率で課税される仕組みです。配当をほとんど出さず、利益を会社に積み上げ続ける会社ほど効いてきます。
注意が必要なのは、会社が成長して資本金を1億円超に増やしたときです。「信用力のために増資しよう」と資本金を1億円超にした瞬間、中小企業向けのさまざまな優遇(軽減税率・交際費の特例・少額減価償却資産の特例など)と同時に、この留保金課税の対象にもなります。増資は税負担の面も含めて慎重に判断すべきポイントです。
回避策:利益を“貯めるだけ”にせず、役員退職金の原資づくりや設備投資など、計画的に使って備えておくこと。経営セーフティ共済のような、損金にしながら将来に備えられる制度の活用も有効です(全体像は法人の節税 完全ガイド)。
落とし穴④:行き過ぎた節税は否認される(行為計算の否認)
最後は、同族会社の“節税の自由度”そのものにかかる歯止めです。同族会社が、ふつうの第三者同士では考えられないような不自然な取引で税負担を不当に減らした場合、税務署はその取引を否認して、税金を計算し直すことができます(同族会社等の行為又は計算の否認・法人税法132条)。
たとえば、実態のない家族への高額報酬、相場からかけ離れた価格での社長個人との売買、決算期末だけの不自然な資金のやり取りなどが典型です。「身内の会社だから、どんな取引をしても自由」というわけではありません。
この規定が怖いのは、一つひとつの取引自体は形式的に適法でも、全体として「税金を減らすためだけの不自然な取引」と判断されれば否認されうる点です。非同族会社なら、立場の違う株主や第三者の目があるため、こうした不自然な取引はそもそも起こりにくい。だからこそ、オーナーが自由に動かせる同族会社に対して、この歯止めが用意されているのです。節税スキームの“やりすぎ”は、この132条で足元をすくわれます。
回避策:社長個人や家族との取引も、第三者とやるのと同じ形で行うのが鉄則です。時価で取引し、契約書と取締役会・株主総会の議事録を残し、実態(勤務や使用の記録)を整えておく。これだけで否認リスクは大きく下がります。身内取引が特に見られやすい点は税務調査で狙われやすいポイントもあわせてご確認ください。
まとめ──同族会社の節税は「第三者と同じ形」で
同族会社の4つの落とし穴は、裏を返せばすべて「身内だからと特別扱いしない」ことで避けられます。
- 家族への支給は、賞与ではなく定期同額給与で(みなし役員)
- 身内役員は使用人兼務役員になれない前提で設計する
- 利益は貯めるだけにせず計画的に使う(留保金課税は資本金1億円超で視野に)
- 取引は時価・契約書・議事録・実態で固める(行為計算の否認)
同族会社は、正しく使えば節税の自由度が高い強力な器です。ルールを押さえたうえで、自社に合った設計を顧問税理士と相談しながら進めてください。役員報酬の最適化は一番手取りが多くなる役員報酬額もあわせてどうぞ。
※本記事は一般的な制度の解説です。実際の判定や適用は個別事情で変わるため、実行前に必ず顧問税理士にご相談ください。







