社長が知って得する2026年の5つの大改正|178万円の壁と社会保険料・防衛特別法人税・ふるさと納税の上限・教育資金贈与の終了と今すぐやる7つの対策


「年収の壁が178万円に上がった」「子育て支援が手厚くなった」――最近は、税金や社会保障について良さそうなニュースが続いています。では、社長や会社にとっても得な話なのでしょうか。
実は、令和8年度(2026年度)の税制改正や社会保障の見直しは、パートや会社員にはメリットが大きい一方で、社長個人や会社の負担はむしろ増えるものが目立ちます。先に知って手を打っておけば、負担を抑えることができます。
本記事では、社長の手取りと会社のお金に影響する5つの大改正を、「いつから」「いくら影響するか」「何をすればいいか」の順に整理し、最後に今すぐやるべき7つの対策をチェックリストにまとめました。
結論:2026年に社長が押さえておくべき5つの大改正
| 改正 | いつから | 社長・会社への影響 | やること |
| ①178万円の壁と社会保険の加入拡大 | 2026年分(178万円は2027年分までの時限措置)、106万円要件は2026年10月に撤廃 | パートの社会保険加入が増え、会社負担が増える | パートの年収・シフトを見直す |
| ②子ども・子育て支援金 | 2026年4月〜 | 健康保険料に上乗せ。会社も半分負担 | 次期予算に計上する |
| ③防衛特別法人税 | 2026年4月1日以後に始まる事業年度 | 基準法人税額500万円超の部分に4%上乗せ | 前期の法人税額を確認し資金計画へ |
| ④ふるさと納税の上限 | 2027年の寄附分から | 住民税の特例控除が193万円で頭打ち | 大きな売却益の年は2026年中の寄附を検討 |
| ⑤教育資金一括贈与の終了 | 2026年3月末で終了 | 最大1,500万円の非課税贈与が使えない | 暦年贈与・相続時精算課税などに切り替える |
このほか、税金を減らしきれない分を現金で給付する「給付付き税額控除」も議論が進んでいます(後述)。得をする改正(少額減価償却資産の特例拡大など)は2026年税制改正の項目別まとめで解説しているので、あわせてご覧ください。
①178万円の壁:パートは得をするが、会社は社会保険料の負担が増える
ニュースで一番よく目にするのが「178万円の壁」です。誰でも使える基礎控除(特例を含めて最大104万円)と、給与所得控除の最低額(74万円)が引き上げられ、給与収入178万円までは所得税がかからなくなりました。パートの働き控えが減り、人手不足の解消につながると期待されています。
ただし、これはあくまで所得税の話です。住民税は別にかかりますし、178万円は2026年分と2027年分の2年間に限った措置で、2028年以降は改めて議論されることになっています。
会社にとってより大きいのは、社会保険の加入対象が広がっていることです。パートが一定の条件を超えると会社の社会保険に入る義務が生じ、保険料の半分を会社が負担します。
| 要件 | これまで | これから |
| 年収(賃金)要件 | 月8.8万円(年収約106万円)以上 | 2026年10月に撤廃 |
| 会社の規模要件 | 従業員51人以上 | 2027年10月から段階的に縮小し、2035年10月に撤廃 |
| 労働時間要件 | 週20時間以上 | 週20時間以上(変わらず) |
つまり、これからは会社の規模や年収にかかわらず、週20時間以上働くパートは社会保険の対象になっていきます。「社会保険に入りたくないから働く時間を抑える」という調整は難しくなり、加入するパートが一気に増える可能性があります。
年収150万円のパートが1人社会保険に加入すると、会社側の負担だけで年間おおよそ次のとおり増えます。
| 社会保険に加入するパート(年収150万円) | 会社負担の増加(年額の目安) |
| 1人 | 約21万〜23万円 |
| 5人 | 約110万円 |
| 10人 | 約220万円 |
※健康保険(協会けんぽ東京2026年度)・厚生年金・子ども・子育て支援金の会社負担分で概算。40歳以上は介護保険料が加わり上の値に近づきます。雇用保険・労災保険は含みません。
パートの多い会社ほど影響は大きくなるため、早めに年収とシフトの計画を見直しておくことが大切です。家族を役員や従業員にしている場合の年収ラインは家族を非常勤役員にする節税と年収ライン早見表でも解説しています。
②子ども・子育て支援金:2026年4月から健康保険料に上乗せ
児童手当の対象が高校生年代まで広がるなど、子育て支援は確かに手厚くなっています。問題はその財源です。2026年4月から「子ども・子育て支援金」が健康保険料に上乗せされる形で徴収されています。
子どもがいるかどうかに関係なく、公的医療保険に入っている全員が負担するため、ネットでは「独身税」とも呼ばれています。協会けんぽの場合、2026年度の支援金率は0.23%で、会社と本人が半分ずつ負担します。
| 従業員の給与(標準報酬月額) | 会社負担(月額) | 会社負担(年額) |
| 30万円 | 約345円 | 約4,140円 |
| 50万円 | 約575円 | 約6,900円 |
1人あたりの金額は小さく見えますが、従業員全員分が会社にそのまま跳ね返り、社長自身の保険料にも上乗せされます。①の社会保険の加入拡大と合わせると、社会保険料の負担はじわじわ増えていきます。制度の詳しい仕組みは子ども・子育て支援金とは?事実上の増税?で解説しています。
③防衛特別法人税:節税する前の法人税額で判定される
2026年4月1日以後に始まる事業年度から、防衛力強化の財源として防衛特別法人税が新たに課されています。計算は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
| 計算式 | (基準法人税額 − 500万円)× 4% |
| 基準法人税額 | 所得税額控除や外国税額控除などを差し引く前の法人税額 |
| 対象になる会社 | 基準法人税額が500万円を超える会社(赤字の会社は対象外) |
| 目安 | 中小企業なら課税所得がおおむね2,400万円を超えるあたりから |
ポイントは、判定の基準が税額控除を使って節税する前の法人税額だということです。例えば、設備投資の税額控除で最終的な法人税を300万円まで減らしても、控除前の法人税額が800万円なら、計算のベースは800万円になります。
| 金額 | |
| 税額控除前の法人税額(基準法人税額) | 800万円 |
| 税額控除後に実際に払う法人税 | 300万円 |
| 防衛特別法人税 | (800万円−500万円)× 4% = 12万円 |
せっかく節税しても、防衛特別法人税は別にかかるということです。また、法人税の中間申告が必要な会社は、防衛特別法人税も中間申告・納付が必要になります(制度が始まった最初の年度は、通常は前年度の実績がないため生じません)。前期の法人税申告書で法人税額が500万円を超えているなら、翌期の資金計画に組み込んでおきましょう。会社にお金を残す全体の考え方は法人の節税 完全ガイドで整理しています。
④ふるさと納税:2027年の寄附分から住民税の控除に193万円の上限
ふるさと納税にも見直しが入りました。2027年の寄附分から、住民税の「特例控除額」に193万円の上限が設けられます。給与収入でいえば1億円程度の水準で、一般的な収入の人には影響しませんが、高収入の社長ほど影響を受けます。
特に注意したいのが、会社をM&Aで売却したり、不動産や株式を売ったりして、一時的に個人の所得が大きく跳ね上がる年です。こうした年は控除の上限額も大きくなるため、ふるさと納税をフルに使う人が多いのですが、2027年以降は特例控除が193万円で頭打ちになり、それを超えて寄附しても節税効果はほとんどなくなります。
| ケース | 2026年の寄附 | 2027年以降の寄附 |
| 通常の年収の社長 | 影響なし | ほぼ影響なし |
| 売却益などで所得が大きい年 | 上限なし(従来どおり) | 特例控除は193万円が上限 |
大きな売却益が出る予定があるなら、2026年中に寄附しておくほうが得かどうかを、早めに税理士と確認しておきましょう。事業の売却や承継の全体像はM&A・事業承継 完全ガイドで解説しています。
⑤教育資金の一括贈与(最大1,500万円非課税)は2026年3月末で終了
30歳未満の子や孫に教育資金をまとめて贈与すると、最大1,500万円(塾代などは500万円まで)が非課税になる「教育資金の一括贈与」の特例は、延長されずに2026年3月31日で終了しました。まとまった金額を生前に移せる方法として、多くの経営者が使ってきた制度です。
すでに期限までに拠出したお金は、引き続き非課税の対象です。ただし、贈与した人が亡くなったときに使い残しがあると、相続税の対象になる場合があるので注意しましょう。
これから資産を移すなら、次のような方法を組み合わせて考えます。
| 方法 | ポイント |
| 暦年贈与 | 1人あたり年110万円までは贈与税がかからない |
| 相続時精算課税 | 2024年から年110万円の基礎控除ができ、使い勝手が向上 |
| 子や孫のNISA | 18歳以上の子や孫が自分の口座で運用する資金を援助する |
どの方法が合うかは、財産の内容や家族構成で変わります。相続対策の全体像は相続対策 完全ガイドで整理しています。
番外:給付付き税額控除は「社長は対象外」になる可能性
税金を減らし、減らしきれない分を現金で給付する「給付付き税額控除」も議論が進んでいます。以前の定額減税の進化版のような制度で、2026年8月に閣議決定された方針では、2029年度(令和11年度)の本格導入を目指し、所得が一定水準を超えると給付が減り、やがてなくなる設計が示されています。
具体的な金額や対象はまだ決まっていませんが、定額減税のときも合計所得1,805万円(給与収入2,000万円相当)を超える人は対象外でした。所得の高い社長は対象から外れる可能性があるうえ、毎年数兆円規模とされる財源をどう賄うかによっては、社会保険料などの負担増として跳ね返ってくることも考えられます。
社長が今すぐやるべき7つの対策
| 分野 | やること | 関係する改正 |
| 人事 | パート・アルバイトの年収とシフトを見直す | ①178万円の壁・社会保険の加入拡大 |
| 経理 | 子ども・子育て支援金の会社負担を次期予算に計上する | ②子ども・子育て支援金 |
| 法人税 | 前期の申告書で法人税額が500万円を超えているか確認する | ③防衛特別法人税 |
| 節税 | 売却益が出る予定なら2026年中のふるさと納税を検討する | ④ふるさと納税の上限 |
| 資産 | 教育資金贈与に代わる資産移転の方法を検討する | ⑤教育資金贈与の終了 |
| 給与 | 給与計算システムが社会保険の要件変更に対応しているか確認する | ①社会保険の加入拡大 |
| 手続 | 従業員に公金受取口座の登録を周知しておく | 番外:給付付き税額控除 |
どれも一度にやる必要はありませんが、社会保険料と法人税は資金繰りに直結します。顧問税理士とも相談しながら、早めに対応できる体制を整えておきましょう。
まとめ
2026年の改正は、パートや会社員にとっては得な話が多い一方、社長と会社にとっては、社会保険料の負担増(178万円の壁・加入拡大・子ども・子育て支援金)、防衛特別法人税、ふるさと納税の上限、教育資金贈与の終了と、負担が増えたり使える制度が減ったりするものが目立ちます。
ただ、どれも中身と時期がはっきりしているので、先に知っておけば手を打てます。まずは、パートの年収とシフトの見直し、前期の法人税額の確認、売却予定がある場合のふるさと納税の検討から始めてみてください。
この記事の内容は、税理士が動画でもわかりやすく解説しています。防衛特別法人税の計算例や、ふるさと納税の上限の影響をぜひ動画でもご確認ください。







