株式会社ジーアイビー
- 2022年1月12日公開
株式会社ジーアイビーは、コインランドリーのブランド「ブルースカイランドリー」をフランチャイズとして展開する企業です。
主に郊外の商業施設の駐車場内に出店する戦略をとっており、2021年11月末で146店舗となり、現在までに撤退店舗ゼロという好調な成績を残しています。
コインランドリー事業の将来性、同社の事業の現状と今後の展望等について、代表取締役社長の鈴木衛さんにお話をうかがいました。
1.株式会社ジーアイビーとはどんな会社ですか?
当社は、名古屋に本拠を置いており、グループに税理士法人、コンサルティング会社があります。もともとは、それらの顧問先のお客様同士をビジネスマッチングするために立ち上げたことが始まりの会社です。
会社ロゴにある「×」は掛け算の意味で、お客様相互のビジネスを掛け合わせて相乗効果を生んでいただく理念を表したものになります。
コインランドリーのFC事業は2015年から始めました。コインランドリーの利点は、なんと言っても手離れの良さと収益性です。
つまり、オーナーの方はいったん出資すれば経営にタッチしなくても良いし、物件選びさえ間違えなければ、ある程度の収益を安定的に見込めるということです。
そこに着目して、コインランドリーのビジネスを開始したところ、多くの顧問先で喜んでいただける成果を上げることができました。
当社のコインランドリー「ブルースカイランドリー」はオリジナルのものです。普段使いの商業施設への出店に特化したり、店舗にパートさんを常駐させたり、SNSを駆使してマーケティングを行ったりという点は、他にはない独自性の強いものと自負しています。
2.出店実績を教えてください。
店舗数は、2021年10月23日時点で144店舗です。その半数以上が中部地方に集中しており、中でも多いのが愛知県、岐阜県、三重県、静岡県です。
最近では、出店地域が近畿地方、関東甲信地方、中国地方、北海道にも拡大し、近々仙台にもオープン予定のため、全国に出店範囲を広げています。
ゆくゆくは各都道府県をカバーできるように出店することが目標の一つです。
ただし、やみくもに店舗数を増やしているわけではありません。いずれも、駐車場のある商業施設に特化しており、立地の面で圧倒的に優位性のある場所を厳選しています。そうすることで、最近増え始めた近隣の競合店への差別化も常に意識しています。
3.オーナーはどのような方たちですか?
オーナーの内訳は、だいたい、法人が70%、個人の方が30%です。
個人の方で多いのは、法人経営者の方と、いわゆる士業の方たちです。
法人経営者の方はたいてい、法人でコインランドリーをやってみて効果が高かったので個人でもやるというパターンです。
一方、士業の中でも、税理士、医師・歯科医といった方は、職業柄、税金対策や資産形成に興味を持って始めるパターンが多いです。
オーナーの皆様の目的はどのようなものですか?
だいたい最初は60~70%が中小企業経営強化税制による優遇措置目的、残りが資産形成目的といったところでしょうか。
というのも、銀行からお金を借りてコインランドリーを始めて、年利回り10%で最初の10年間で借入を返済し、11年目以降に資産形成していくというケースであれば、優遇措置目的と資産形成目的の両方が満たされます。
また、税制優遇目的で1店舗目を始めたオーナー様が、資産形成目的で2店舗目に出資するパターンも多いです。
つまり、コインランドリービジネスは長期的安定性が見込めるビジネスのため、税制優遇も資産形成も結局どちらの希望も叶えられるツールとして参画していただいています。
加えて、従来の事業を廃業してコインランドリーを始めるパターンもあります。
最近は、コロナウイルス禍の影響で本業の業績が悪化して、事業再構築補助金を充当した新規事業として立ち上げるパターンも増えてきました。
自前の遊休物件にランドリーを建てるケースはありますか?
ほとんどありません。たいてい、立地の圧倒的な優位性を確保できる基準を満たすことができないからです。
たとえば、当社の出店基準だと、間口が広くて車が入れる場所が複数ある駐車場のスペースのある60~80坪が必要になります。しかも、集客を見込めるだけの世帯数が確保されているかどうかなども重要です。他にも多々ある出店基準を満たすのは現状で言えば商業施設でないとなかなか難しいです。
4.コインランドリー業界の動向と今後の展望をどうお考えですか?
矢野経済研究所のデータによると、コインランドリーの店舗数は過去2年間で1.3倍と急増しています。今後私の予測では、現在全国で2万店と言われるコインランドリーは、4万店まではいくのではないかと見ています。
そう考える根拠は4つあります。アレルギー対策、大物洗い、天候不順、消費者の考え方の変化です。
一つずつ詳しくご説明しましょう。
第一に、アレルギー対策です。花粉症対策とダニ対策として、ランドリーの活用が広がりつつあります。
花粉症の季節は長期にわたって洗濯物を外に干せないので、ランドリーの利用が欠かせません。
また、ダニ対策で最も有効なのは、布団をランドリーの乾燥機にかけてから洗い、また乾かすことです。
ハウスダストアレルギーの原因は、ダニの死骸やフンです。乾燥機にかけると、60℃以上の熱風でダニが死滅するだけでなく、死骸とフンが飛ばされて完全になくなります。それから洗って乾かせば、アレルギーは出なくなります。
特にダニ対策についてはご家庭では解決しにくい問題のため、ランドリー活用が広がっています。
第二に、大物洗いです。クリーニングに出すよりコインランドリーで水洗いした方が安いしきれいに仕上がります。あまり知られていないと思いますが、クリーニングは溶剤で洗うのですが、溶剤は使いまわすので、実はきれいになりません。スーツなども「汗抜き」というのがありますが、あれは何のことはない水洗いです。それであれば、コインランドリーを使った方が衛生的だし、料金も割安にすみます。また、大物洗いのスピードも異なります。クリーニングでは当日中に返却されないこともあります。朝洗ってその日の夜には綺麗な布団で眠れることも、コインランドリーだからできることです。
第三に、天候不順です。最近はゲリラ豪雨などが増えているので、長時間外に干しっぱなしにできないことがあります。共働き家庭も増え、雨が降ったからといって洗濯物をすぐに取り込める人ばかりではないため、せっかく洗った洗濯物をやり直すならいっそランドリーでまとめて洗った方が早く、ストレスなく仕上がるというわけです。
第四に、消費者の考え方の変化です。消費者の考え方が、「きれい好きだから誰が使ったか分からないのはイヤ」というのから、「きれい好きだから布団を何回も洗う」というのへ変わっていくのではないかと思います。かつてロードサイドにあった薄暗く入りにくいコインランドリーと現在のコインランドリーは全く別物です。当社だけでなく他社さんも含めてコインランドリーの存在自体が変化しており需要が高まってきています。そして需要が高まればますます店舗数が増えます。店舗数がたくさんあれば、「自分も使ってみようか」ということで使う人も増える、というサイクルが続くと考えられます。
5.ブルースカイランドリーの標準的な利回りはどれくらいでしょうか?
だいたい3年目から軌道に乗ると考えると、3年目以降は年9%~12%くらいです。ただし、もっと高い利回りをたたき出している店舗もあります。
年9%の利回りを挙げるのに必要な売上金額は、店舗の地代等にもよりますが、おおむね月80万円です。また、損益分岐点は月50万円です。
標準的な売上計画は、1年目が月40万円、2年目が月60万円ときて、3年目に月80万円に達して軌道に乗るというものです。
ただし、初年度は、減価償却を計算に入れると、表面上の利益率が著しく低くなることがあります。
6.物件構築で重視している点は何ですか?
まず、何と言っても、圧倒的な立地の優位性の確保です。
商業施設の駐車場に、メインの施設と離れたところに戸建てで出店することにしています。
なぜなら、その方が目立ちやすく、車から洗濯物を持ち込みやすいという利便性が向上するからです。
もし、メインの施設にインテナントという形で出店すると、前のスペースほど車が停まります。そうなると、気づいてもらいにくいし、洗濯物も持ちこみにくいです。だからこそ、あえて、メインの施設と離れた位置にランドリーを建てています。
また、商業施設のタイプは、普段使いのスーパー、ホームセンター等が良いです。あまりに巨大すぎるモールへの出店は、存在が埋もれて目立たなくなってしまうので、避けるようにしています。
次に重要なのが、外部からの視認性です。立地が良くても、視認性が悪いと集客しにくいことがあります。
商業施設の駐車場内ならどこでも立地がいいわけではないのです。
例えば、敷地内の奥まったところに出店したため認知してもらえなかったケースがあります。このケースでは、駐車場のあちらこちらに看板を置いたら売上が上がりました。
また、ランドリーを駐車場の入口に建てるのか、出口に建てるのかによっても変わってきます。車で駐車場に入る時はあまり気に留めてもらえません。頭の中が買い物のことでいっぱいだからです。しかし、出口にあると帰りがけにふっと視界に入りやすいのです。
こういった心理学的な要素もかなり影響することなどを含めた視認性に関するノウハウの構築には3年もかかりました。
その結果、現在では人の導線、車の滞留する場所、出入口との位置関係等、あらゆるものを考慮した最適解を自信を持って提供できると感じています。
7.店舗経営の体制はどうなっていますか?
店舗の経営に関することは、清掃、維持・管理、マーケティング等、全て本部が一括して行います。
そのため、オーナーは店舗の運営管理にはいっさいタッチしなくてよいしくみになっています。売上高はウェブ上でリアルタイムで確認できますし、店内の様子もウェブカメラで見ることができます。
また、清掃は毎日行っており、店内は掃除が行き届いて清潔で、明るい雰囲気にしています。
時間帯によってはパートさんを常駐させ、お客様のきめ細かなニーズにできるだけ応えられるようにしています。
さらに当社のランドリーは商業施設の敷地内にあるので、防犯カメラがたくさんあり、警備員も常駐していて、安全性が高いです。
8.集客・売上向上のためどのような施策を行っていますか?
集客や売上向上の施策は、LINEを利用して行っています。LINE会員は10万人を超えました。
お客様はLINEに登録すれば、店舗の空き状況を確認できますし、利用ポイントも付与されます。こうした繋がりを持つことでリピーターも増えてきました。
また、その他にもキャンペーンの告知やクーポンの配布、アンケートまで一貫した双方向のコミュニケーションが取れるツールとして活用しています。
たとえば晴れの日にはランドリーの稼働率が下がるので、大物洗いの割引サービスのキャンペーンの告知を行ったりします。
この告知で、キャンペーンを利用して雨の日では持ち出しにくい大物洗いをお得にできるお客様の満足と店舗の収益アップの両立ができるなど、双方にとってメリットのあるSNSの使い方ができていると思います。
そのほかクーポンは、たとえば母の日に300円のクーポンを配布したり季節やイベントに合わせた展開を行っています。
さらに集客で言うと、商業施設内のランドリーという利点をフル活用できるのもブルースカイランドリーの強みです。たとえば、トイレに張り紙してもらったり、レジ袋のコーナーにチラシを置いてもらったり、店内放送でキャンペーンの告知をしてもらったりなど、商業施設に設置されているからこそできるアプローチが豊富にあります。
もちろん、当社のスタッフが店舗の近隣の家にポスティングしたりという地道な取り組みもしています。
最近では、名古屋市をはじめとする自治体と地域協定した災害対応型ランドリーを開設しており、それが認知度向上につながっている面もあると思います。
9.撤退店舗・不採算店舗の割合、その要因と克服の取り組みについて教えてください。
撤退店舗は現時点でゼロです。
不採算店舗は、現状(2021年10月時点)、利回りが5%切るくらいの店が全店舗のうち10%程度あります。ただし、これは、開店して間もない店舗も全て含めた数字です。
1~2年目が不採算でも、その大半は3年目以降軌道に乗るようになります。これまでの傾向からすると、認知度が高くなるにつれ売上が上がり、安定していくでしょう。
店舗によっては、最初のうち不採算になることが想定されることもあります。それは、諸事情によって視認性を十分に確保できないケースです。
この場合は、お客様に事情を説明して、納得いただいた上でオーナーになっていただいています。
後記
ジーアイビー社様にインタビューをお願いしたところ、鈴木社長直々に応じていただくことができました。
不採算店舗や過去の失敗例など、答えにくい質問にも包み隠さず回答していただきました。また、たゆまぬ努力によってシミュレーションの精度を高めていること、想定外に著しく不採算な店舗については直営店と交換するなどのフォローをしていることから、オーナーの方々との信頼関係を重視していることがうかがわれました。