株式会社センカク

株式会社センカクは、「コインランドリーピエロ」をフランチャイズとして展開しています。

出店戦略は都市部が中心で、赤地に白抜きで「コインランドリーピエロ」と書かれた、一度見たら忘れられないデザインの大きな看板がトレードマークです。

コインランドリー業界の見通し、同社の事業の現状と今後の方向性等について、営業部・課長の西海石裕之さんにお話をうかがいました。

1.株式会社センカクとはどんな会社ですか?

当社の創業者の西山由之は、ダスキンのフランチャイズの最大手である株式会社ナックを立ち上げ、東証一部上場まで成長させた人物です。

西山はナック社の名誉会長となった後、新たに弊社を立ち上げました。

コインランドリーに着目した理由は「生活密着ビジネス」「ストック型ビジネス」だからです。

「生活密着ビジネス」というのは、洗濯は昔から三大家事労働と言われ、日常生活を送るうえで大きな負担になっています。一日作業です。もしコインランドリーを広めることができれば、洗濯の時間を減らし、ゆとりの時間を作り出せるのではないか、という考えからです。

「ストック型ビジネス」というのは、洗濯物をまとめてコインランドリーで洗濯するということが習慣化すれば、安定的かつ継続的に収益を得られるビジネスになると考えたためです。

ちなみに「センカク」という社名は、「洗濯革命」を起こそうという思いを込めたものです。

このような成り立ちから、弊社の企業理念は「お役立ち」「生活密着」です。

2.出店実績を教えてください。

店舗数は、2022年1月初旬の段階で仕掛かりを含め500店舗です。弊社は6期目ですが、初期は場所探しに徹し、その後年100店舗ペースで出店してきました。当初の出店エリアは主に東京・神奈川・千葉・埼玉でしたが、今では北は北海道、西は兵庫と全国展開をしています。

2019年後半からは名古屋・阪神エリアへの出店に力を入れ、現時点で名古屋に約20店舗、大阪に約60店舗出店しています。最近は仙台、新潟、2021年末には札幌への出店も決まっています。

3.オーナーはどのような方たちですか?

オーナーの割合は法人6:個人4です。法人も個人も、最もニーズが多いのは節税です。

―オーナーの皆様の目的はどのようなものですか?

法人の多くは節税対策に重きを置かれていますが、第二第三の事業として参入されるケースもあります。即時償却と収益性の両方を重視されている、ということです。過去には、1法人で1度に十数件事業参入されたケースもあります。

個人も同様に節税対策の一つとして検討されるケースが多くありますが、個人の場合累進税率が適用されるので、特に最高税率が適用される高額所得者の方にとっては、即時償却で一気に経費化できる点が大きな魅力です。医師、弁護士、税理士といった士業の方たちが多く、保険のフルコミッションの営業マン、証券マンといったお金にかかわる職業の方、プロスポーツ選手といった方々もいらっしゃいます。また、複数年に分けて即時償却を求めているリピーターの方もいらっしゃいます。また「法人」と「代表者個人」と両方で同時に参入されるケースもあります。

―自前の遊休物件にランドリーを建てるケースはありますか?

ケースとしては非常に少ないです。弊社の場合、先に好立地物件を開拓する方式をとっています。自前の遊休地にランドリーを建てたいというご希望の方も時にはいらっしゃいますが、後でお話しするように、弊社の出店条件は厳しいです。そのため、なかなか折り合いが付かないのが実情です。

4.コインランドリー業界の動向と今後の展望をどうお考えですか?

厚生労働省の調べでは、コインランドリーの店舗数は業界全体で2019年末段階で全国に約2万店舗程あると言われています。そのうちの多くは昔ながらの銭湯に併設されているような古いランドリーです。そのようなランドリーが年間500店舗程度閉業し、新しいフランチャイズのランドリーが500店舗程度増えています。

ただし、昔ながらのランドリーと言っても、地域に密着していて侮れないことがあります。たとえば、自宅の100m先に普段使いの昔ながらのランドリーがあり、300mに新しいオシャレなランドリーが出来たとします。その場合でも、多くの方が近くのランドリーをご利用されるケースが多いのです。

単に洗濯が出来る機械を揃えるのではなく、既存の古いランドリーではできないこと、つまり、大型の機械を取り揃え布団・カーペットなど、家で洗えないものを気軽に洗ってもらうことで、健康志向にまで寄り添っていこうという考えをもっています。

特に、アレルギー対策として、例えば、布団はダニの糞や死骸がたまりやすく、アレルギーの原因になることがあります。その対策の一つとして、布団を大型の洗濯機で洗い、乾燥機で乾燥させるという活用法が効果的です。しかしながら、コインランドリーに羽毛布団等を洗える機械がある、ということは、まだあまり知られていません。

ちなみに、布団は洗濯前に乾燥機にかけ、洗い、また乾燥機をかけることで、ダニは死滅し、糞や死骸もきれいに洗い流すことができます。また最近の店舗では敷布団専用の乾燥機を導入しており、お客さまの敷布団を乾燥させたい、というニーズにも対応しています。

これは余談ですが、私はもともと印刷会社の営業マンでした。コインランドリーに興味を持ち始めたのは、私の妻が喘息持ちで、医師のすすめで掛布団をコインランドリーで「乾燥機にかける⇒洗う⇒乾燥機にかける」をやった結果、発作が止まったことがきっかけです。

5.コインランドリーピエロの標準的な利回りはどれくらいですか?

店舗の規模によって異なりますが実質利回りで言うと、1年目2~3%前後、2年目4~5%前後、3年目以降は7~8%前後で落ち着きます。

我々は、コインランドリーが大きく儲かるようなビジネスだと謳っているわけではなく、目的やニーズが合うお客様にご提案させていただいております。

月間の想定売上は店舗によって様々ですが、1年目50万円前後、2年目55万円前後、3年目以降は70万円前後です。

これは、1日の平均売上が1.5~2.3万円程度で達成できまして、それはつまり、1時間に1~2名のご利用者様に来店いただければ達成できる計算になります。

6.物件構築で重視している点は何ですか?

弊社では、良い物件を探して厳選し、そこにコインランドリーの店舗を作っています。その上で、オーナーを募集します。出店候補となる物件の情報は大量に見ていますが、条件をみたす物件は200~300件のうち4~5件あるかないか、という状況です。

特に重視しているのは、立地と商圏の世帯数です。弊社は都市型店舗(駐車場がない店舗)をメインに事業展開しており、ほとんどのランドリーが都市部の住宅地など、人口が多い地域にあります。郊外型店舗(駐車場有の店舗)もありますが、住宅の多いエリアやショッピングセンター内のテナントなど条件を絞って出店しております。

一例で言えば、店舗に駐車場がない店舗であっても、その店舗までの動線が自転車や徒歩が中心であれば、歩道の広さはどうなのか、街路樹にのぼり旗が隠れてしまわないか等、細かい部分をチェックしています。

その上で、弊社は徹底して地域密着を意識しています。特に重視しているのは商圏範囲です。徒歩圏内、自転車圏内にどのような方々が住んでいるのか。住まいは戸建てなのかマンションなのか。その世帯構成はどのようになっているのかなど、その圏内に住んでいる方に利用して頂けるかを確認することが重要です。

ちなみに、「コインランドリーピエロ」の看板は他のコインランドリーに比べ「わかりやすく」「読みやすい」ため老若男女問わず誰が見てもここにコインランドリーがあると分かります。そして、認知してもらえれば利用して頂けます。繰り返し利用してもらえるようになれば、生活の一部になります。だからこそ、皆さんの目に留まりやすいデザインにしています。

コインランドリーは、ビジネスの特性上、店前を通りかかって「看板がおしゃれだから立ち寄る」という利用のされ方はあまりないので、スタイリッシュなデザイン性はあまり重要ではありません。弊社は普段使いのランドリー、地域密着のランドリーに徹しています。

弊社の「生活密着ビジネス」という考え方からは、コインランドリーは買い物や用事のついでに利用していただくものであって、あまり長居するような場所ではないと考えています。買い物のついでに立ち寄って洗濯物をランドリーにかけ、買い物の帰りに回収していく場所だと考えています。

たとえば、コインランドリーピエロには飲食できるコーナーは設けていません。それは、飲み物や食べ物を洗濯物にこぼしてシミを作ってしまってはいけないという考えからです。

創業者の西山は、何か新しいサービスのアイデア等の提案があった際には、いつも「それはランドリー利用者のためになるのか?」という問いを発します。

いろいろな考え方があっていいと思いますが、弊社は起業理念が「生活密着」にあるので、その視点で一貫することを心がけています。

それはランドリーの機械の選定にもあらわれていまして、弊社が使用しているものきれい好きな日本人向けにドラム洗浄機能が付いていたりと、日本人のニーズに合った性能のものを使用しています。

7.店舗経営の体制はどうなっていますか?

弊社では、場所を探す専門の「店舗開発」、機器や工事関係の専門である「工事部」、店舗管理の専門の「スーパーバイザー」が一体となって、互いにフィードバックする体制をとっています。

掃除・集金は全て業務委託で対応し、掃除は毎日、機器フィルターの掃除や店舗の掃除を行い、集金は適宜行っています。ご利用者の方からの問い合わせにお答えする365日24時間対応のコールセンターもあり、オーナー様の手を煩わすことはありません。

個人経営のランドリーの場合、このような業務を全て自前で行う必要があり、それが大変で疲弊していってしまうという話を聞きますが、弊社のランドリーはそのような心配はありません。

防犯カメラの設置、両替機、火災保険のあっせんなども全て本部である弊社が行っています。

また、弊社は基本、物件を賃借してオーナー様に転貸する形をとっています。たとえば、利用者のマナーが悪い場合等に、地権者からクレームを頂いた際にも全て当社が受けることになり、オーナー様への負担がない仕組みになっています。

このように、オーナー様が労力をかけることはほぼないため、地方のオーナーが都内のランドリーのオーナーをやっているケースもあります。

8.集客・売上向上のためどのような施策を行っていますか?

弊社では「コインランドリーピエロ」というブランド全体の認知度を上げる取り組みをしています。

前述の通り、店舗デザインは「目立つ」ように「わかりやすく」しており、誰が見てもコインランドリーと分かるデザインです。その地域の方々に認知してもらい、利用してもらうことが目的です。もちろん、SNS等や独自アプリでキャンペーンの告知を行ったりしますが、一番効果が高いのはやはりお客様と直接触れ合うことです。店舗の前に弊社のスタッフが立ってビラ配りや説明等を行ったり、新聞の折込チラシやポスティングを行ったり、最寄り駅で旗を振ったりもします。

このようなことを、梅雨、年末等の繁忙期に集中的に繰り返し行うことによって、認知度を上げる取り組みをしています。

おかげさまで店舗数も500店舗にまで増えているので、コインランドリーピエロというブランド全体が認知されてきていると感じています。

そうなれば、たとえば、引っ越ししたらそこで「コインランドリーピエロ」の看板を探すようになります。それが狙いです。

後記

私はつねづね、街中で「コインランドリーピエロ」の看板を見るにつけ、おしゃれなコインランドリーが増えている中でなぜあのデザインなのか、不思議に思っていました。しかし、今回のインタビューを通じ、まんまと術中にはまっていたことに気づきました。

たしかに、一度見たら忘れられないし、近所にあれば間違いなく利用していたと思います。

「お役立ち」「生活密着」という考え方はセンカク社の創業の理念であり、物件の選定から店舗づくり、マーケティングに至るまで、その考え方で一貫しているというところに、強烈な独自性と信念を感じました。

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