サラリーマンの副業は個人事業主がお得?節税メリットと注意点を解説

働き方の多様化が進み、会社員として勤務しながら副業に取り組む方が増えています。副業で得られる収入は、家計の助けになるだけでなく、自己実現やスキルアップの機会にも繋がります。

しかし、副業による収入が増えてくると、「税金はどうなるのだろう?」「何か節税できる方法はないのか?」といった疑問や関心も高まってくるのではないでしょうか。

副業の収入がまだ趣味の延長線上にあるような少額な場合(年間20万円以下など)は、「雑所得」として扱われ、確定申告が不要なケースもあります。しかし、副業が本格化し、ある程度の規模で継続的に収入を得るようになると、「個人事業主」として開業届を提出し、「事業所得」として申告することで、様々な税務上のメリットを享受できる可能性があります。

この記事では、サラリーマンが副業で個人事業主になることの具体的な節税メリット、より有利になる「青色申告」の活用法、そして開業する際に知っておくべき注意点や、さらなる節税を目指す場合の法人化の選択肢について詳しく解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

1. サラリーマンが副業で個人事業主になる3つのメリット

会社員としての安定した基盤を維持しつつ、副業で個人事業主として活動することには、主に以下のようなメリットがあります。

メリット①:副業にかかる費用を経費にできる

個人事業主として事業所得を申告する場合、その事業を行うために直接必要となった費用を「経費」として収入から差し引くことができます。これにより、課税対象となる所得が減り、結果として所得税や住民税の節税につながります。

  • 対象となる経費の例:
    • 地代家賃: 自宅の一部を事務所や作業スペースとして利用している場合、事業で使用している面積や時間に応じた割合で家賃や住宅ローン金利、固定資産税などを按分し、経費計上できます。
    • 水道光熱費・通信費: 事業で使用した電気代、水道代、ガス代、インターネット料金、携帯電話料金なども、事業使用分を按分して経費にできます。
    • 消耗品費・事務用品費: 事業に必要な文房具、印刷用紙、ソフトウェアの利用料、専門書籍の購入費など。
    • 旅費交通費: 取引先との打ち合わせや仕入れのための移動にかかる交通費。
    • 接待交際費: 事業に関連する取引先などとの会食費。個人事業主の場合、法人と異なり交際費の損金算入上限はありません(ただし、事業との関連性が明確で、社会通念上妥当な範囲である必要があります)。
    • 車両関連費: 事業で使用する車の購入費用(減価償却費として計上)、ガソリン代、駐車場代、自動車税、保険料なども、事業使用割合に応じて経費にできます。
  • 雑所得との違い: 雑所得の場合でも一部経費計上は可能ですが、事業所得の方が経費として認められる範囲が一般的に広く、より明確に事業関連支出として計上しやすくなります。
  • 経営セーフティ共済の活用可能性: 個人事業主であれば、経営セーフティ共済(倒産防止共済)に加入できる可能性があります(事業を1年以上継続しているなどの要件あり)。掛金は全額必要経費に算入できるため、節税効果が高い制度です。ただし、会社員が主な収入源である場合、小規模企業共済への加入は原則としてできません。

メリット②:会社の社会保険に加入したまま事業ができる

専業の個人事業主は、国民健康保険と国民年金に加入するのが一般的です。一方、会社員が副業で個人事業主になる場合、本業の会社で加入している社会保険(健康保険・厚生年金)の資格をそのまま継続できます。 これには以下のようなメリットがあります。

  • 保険料の負担: 社会保険の健康保険料・厚生年金保険料は、会社と従業員が折半して負担します(労使折半)。国民健康保険料や国民年金保険料は全額自己負担となるため、実質的な個人負担額は社会保険の方が安くなるケースが多いです。
  • 年金制度: 厚生年金に加入し続けることで、将来受け取れる老齢年金額が、国民年金のみの場合よりも手厚くなる可能性があります。
  • 扶養制度: 社会保険には扶養制度があり、一定の収入以下の家族を被扶養者として追加の保険料負担なく加入させることができますが、国民健康保険にはこの制度がありません。

メリット③:本業(給与所得)と副業(事業所得)で損益通算できる

副業の所得が「事業所得」として認められた場合、その事業で赤字(損失)が出たときに、本業である会社の給与所得など、他の黒字の所得と相殺(損益通算)することができます。これにより、全体の課税所得が減り、所得税・住民税が軽減される効果があります。

例えば、給与所得が600万円あり、副業の事業所得が50万円の赤字だった場合、損益通算により課税所得は550万円として計算されます。副業を始めたばかりの時期や、初期投資がかさんで赤字が出やすい場合には、この損益通算は大きなメリットとなります。

事業所得認定のポイント

ただし、副業の所得が事業所得として認められるためには、単に収入があるだけでなく、「事業として継続的かつ安定的に行われている」という実態が必要です。具体的には、相当の時間を費やしているか、継続して収入を得られる可能性があるか、営利性・有償性があるか、帳簿書類をきちんと作成・保存しているか、といった点が総合的に判断されます。

休日に単発でエッセイを書いて原稿料を得る、といったケースは、一般的に雑所得とみなされる可能性が高いです。事業所得か雑所得かの判断は難しいため、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

2. 【さらに節税】青色申告の活用で得られる4大メリット

個人事業主として事業所得がある場合、確定申告の方法として「白色申告」と「青色申告」のいずれかを選択できます。青色申告は、複式簿記による帳簿付けなど、白色申告に比べて手間がかかりますが、それを補って余りある大きな税制上のメリットがあります。

青色申告と白色申告の違い

  • 白色申告: 簡易な帳簿付け(単式簿記)で済み、手続きも比較的簡単です。
  • 青色申告: 原則として複式簿記による記帳が必要で、事前に税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。

手間はかかりますが、青色申告を選択するメリットは非常に大きいです。

青色申告の主なメリット

(1) 最高65万円の青色申告特別控除

青色申告を行うと、所得金額から最高で65万円を控除できる「青色申告特別控除」の適用を受けることができます(※65万円控除には、複式簿記による記帳に加え、e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存が必要です。これらがない場合は55万円または10万円の控除となります)。この控除額はそのまま課税所得を減らすため、節税効果は大きいです。

例えば所得税率が20%の方なら、65万円×20%=13万円の所得税が軽減されます。 サラリーマンが副業で個人事業主となる場合、本業の給与所得で受けられる「給与所得控除」と、副業の事業所得で受けられるこの「青色申告特別控除」の両方の適用を受けることが可能です。

(2) 少額減価償却資産の特例(30万円未満の資産を一括経費化)

通常、取得価額が10万円以上のパソコンや機械、車両などの固定資産は、減価償却により数年間に分けて経費計上しますが、青色申告者である中小企業者等(個人事業主を含む)は、取得価額30万円未満の減価償却資産について、年間合計300万円を上限として、購入・使用開始した年に一括で必要経費に算入できる特例があります。副業で高価な機材(パソコン、カメラ、業務用ソフトなど)が必要な場合に活用できます。

(3) 赤字(純損失)の3年間繰越控除

事業所得で赤字(純損失)が生じた場合、その赤字額を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の黒字の所得と相殺することができます。これにより、将来の税負担を軽減できます。

(4) 青色事業専従者給与(家族への給与を経費化)

生計を同一にする配偶者や15歳以上の親族が、その事業に専ら従事している場合、事前に届け出た範囲内で支払った給与を「青色事業専従者給与」として全額必要経費に算入できます。

白色申告の場合でも事業専従者控除(配偶者で最高86万円など)がありますが、青色申告の方がより多くの金額を経費にできる可能性があります。副業を家族に手伝ってもらっている場合に有効です。

ただし、専従者として認められるには、「その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること」「その年を通じて6ヶ月を超える期間、その事業に専ら従事していること」などの細かい要件があります。

3. 副業で個人事業主になる際の重要注意点

メリットの多い副業での個人事業主ですが、いくつか注意しておきたい点があります。

開業届の提出

個人事業主として事業を開始した場合、原則として事業開始から1ヶ月以内に、納税地を所轄する税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出する必要があります。提出が遅れた場合の罰則は特にありませんが、青色申告の承認を受けるためには、開業届の提出が前提となります。

青色申告承認申請書の提出期限

青色申告の適用を受けるためには、「所得税の青色申告承認申請書」を、青色申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、事業開始日から2ヶ月以内)に税務署へ提出する必要があります。開業届と同時に提出するのが一般的です。

失業保険の受給資格への影響

会社を退職した場合に受け取れる失業保険(雇用保険の基本手当)は、あくまで「失業状態」にあることが受給の前提です。税務署に開業届を提出していると、たとえ副業であっても「事業を行っている」とみなされ、失業保険の受給資格がなくなる可能性があります。もし本業を辞めることになった際に失業保険を受けたい場合は、個人事業の方も廃業届を提出して廃業する必要が出てくるかもしれません。

会社に副業を知られたくない場合の住民税の取り扱い

勤務先の会社が副業を禁止している場合など、副業をしていることを知られたくないと考える方もいるでしょう。その場合、確定申告の際に住民税の徴収方法で「普通徴収(自分で納付)」を選択することが一つの対策となります。

住民税を「特別徴収(給与から天引き)」にすると、副業の所得も合算された住民税額が会社に通知されるため、副業が発覚する可能性があります。

4. さらなる節税を目指すなら「法人化」も視野に

副業の事業所得が大きくなってきた場合(一般的には課税所得で年間900万円程度が目安)、個人事業主のままでいるよりも、法人を設立して事業を行った方が、トータルの税負担を抑えられる可能性があります。

個人所得税と法人税の税率差

個人の所得税は超過累進課税で、所得が増えるほど税率が上がります(住民税と合わせて最高約55%)。

一方、法人税は、資本金1億円以下の中小企業の場合、所得年800万円以下の部分は軽減税率(約15%)、それを超える部分も約23.2%と、個人の最高税率に比べて低く設定されています(これに法人住民税・事業税を加えた実効税率は約25%~34%程度)。

法人化のメリット・デメリット

法人化すると、役員報酬の設定による所得分散、役員退職金の活用、生命保険料の損金算入など、個人事業主よりもさらに多様な節税策が利用可能になります。ただし、法人設立には費用(合同会社で約10万円~、株式会社で約24万円~)がかかり、赤字でも毎年最低約7万円の法人住民税(均等割)が発生するほか、社会保険への加入義務、経理処理の複雑化に伴う税理士費用なども考慮に入れる必要があります。

まとめ

サラリーマンが副業で個人事業主として活動することは、経費計上の範囲が広がり、本業の会社の社会保険に加入したまま、事業所得の赤字を給与所得と損益通算できたり、青色申告による様々な税制優遇(最大65万円の特別控除、赤字の3年間繰越、30万円未満の資産の一括経費化、家族への給与の経費化など)を受けられたりと、節税面で多くのメリットを享受できる可能性があります。

しかし、開業届の提出や青色申告承認申請といった手続きが必要であり、失業保険の受給資格や会社への副業発覚リスク(住民税の徴収方法)など、事前に理解しておくべき注意点も存在します

副業の所得がさらに大きくなれば、法人化も視野に入れることで、より有利な税率や多様な節税スキームを活用できる道も開けますが、設立・維持コストとのバランスを慎重に検討する必要があります。

ご自身の副業の状況や将来の展望に合わせて、個人事業主として開業すべきか、どの申告方法を選ぶべきか、あるいは法人化も検討すべきか、最適な方法を選択し、賢く節税していくことが、資産形成においても重要と言えるでしょう。

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