会社名義で自宅を購入し役員社宅制度を活用する節税スキームの全体像

執筆 社長の資産防衛チャンネル編集チーム監修 税理士法人グランサーズ公開 2026年9月28日
会社名義で自宅を購入し役員社宅制度を活用する節税スキームの全体像
会社名義で自宅を購入し役員社宅制度を活用する節税スキームの全体像

「大きな買い物である自宅を、どうにか節税につなげられないか」――経営者の方であれば、一度はこう考えたことがあるのではないでしょうか。個人でマイホームを購入しても、住宅ローン控除以外に大きな節税効果は期待できません。しかし、経営者には個人にはない選択肢があります。それが、会社名義で物件を購入し、そこに「役員社宅」として住むという方法です。この仕組みを使えば、家にかかる費用を法人の経費として落としつつ、経営者個人は市場相場よりも大幅に安い家賃で暮らすことができます。本記事では、この役員社宅スキームの仕組みとメリット、そして必ず押さえておくべき注意点までを整理して解説します。

役員社宅制度の基本と「家賃月2万円」が成立する仕組み

役員社宅制度とは、会社が所有もしくは賃借している物件を、経営者や役員に貸し出す制度です。物件は会社の資産または会社が借りた物件となり、そこに住む役員は会社に対して一定の家賃相当額を支払います。

ここでポイントとなるのが、役員が会社に支払う家賃の金額です。税法上のルールに従って計算した「賃貸料相当額」を役員が負担すれば給与課税されないのですが、この賃貸料相当額は市場相場と比べてかなり低く設定できるケースが多くあります。物件によっては、市場家賃の半額程度、場合によっては20〜30%程度の負担で済むこともあり、例えば6,000万円クラスの物件であっても、月2万円程度の自己負担で住めるケースも珍しくありません。

ただし注意したいのは、無償で住んでしまうと賃料相当額が現物給与として認定され、所得税や社会保険料の対象になってしまう点です。あくまで、税法上定められた最低限の賃料は経営者個人から会社に支払う必要があります。

「賃貸料相当額」の具体的な計算方法

役員が会社に支払う「賃貸料相当額」は、物件の規模によって3つに区分されます。多くの経営者が該当する「小規模な住宅」(法定耐用年数30年以下なら床面積132㎡以下、30年超なら99㎡以下)の場合、月額の賃貸料相当額は次の3つを合計した金額です。

  • ①その年度の建物の固定資産税課税標準額 × 0.2%
  • ②12円 ×(建物の総床面積㎡ ÷ 3.3㎡)
  • ③その年度の敷地の固定資産税課税標準額 × 0.22%

固定資産税の課税標準額は市場価格より低く評価されるため、この式で求めた金額は市場家賃の1〜2割程度に収まることが多く、これが「6,000万円クラスの物件でも月2万円台で住める」といわれる根拠です。なお、小規模な住宅に当たらない「一般の社宅」はこれより高い計算式になり、床面積240㎡超などの「豪華社宅」は市場家賃がそのまま賃貸料相当額となり優遇を受けられません。また、役員の負担額がこの賃貸料相当額を下回ると、その差額が給与として課税されるため、金額設定には注意が必要です。役員社宅の計算方法と手取りへの効果は役員社宅で手取りを増やす方法・計算方法、すでに持ち家がある社長のケースは持ち家社長の役員社宅活用もあわせてご覧ください。

会社名義で物件を購入する3つのメリット

役員社宅制度を活用する前提で、物件を法人名義で購入すると、大きく3つのメリットが生まれます。

(1)家にかかるお金を損金算入できる

法人名義で物件を保有する最大のメリットは、家に関わるさまざまな費用を会社の経費として計上できる点にあります。具体的には、購入時にかかる不動産取得税、毎年の固定資産税、管理会社への管理費、住宅ローンの利息部分、さらに物件の管理・運営にかかる交通費や打ち合わせ費用などが挙げられます。

さらに、建物の取得費については減価償却という形で毎年少しずつ経費化していくことが可能です。例えば新築の木造物件であれば法定耐用年数は22年ですので、建物購入費を22年にわたって経費に落としていくイメージになります。これだけで毎年相当な金額を法人の利益から差し引くことができます。

ただし、減価償却できるのは建物部分のみで、土地代については経費にすることはできません。土地と建物の按分は購入時にしっかり確認しておくべきポイントです。

(2)トータルで用意する資金が少なく済む

同じ物件を購入するにしても、個人で買うのと法人で買うのとでは、必要となる原資の総額が大きく異なります。

例えば5,000万円の物件を個人で購入する場合を考えてみましょう。個人が使えるお金は、会社から受け取った役員報酬から所得税・住民税・社会保険料を引いた後の手取りです。所得税と住民税を合わせた税率がおよそ50%だとすると、手取り5,000万円を得るためには、会社から1億円近い役員報酬を出す必要があります。加えて役員報酬が増えると社会保険料も跳ね上がるため、実質的にはそれ以上の負担になることも珍しくありません。

一方、法人名義で物件を購入する場合は、会社の資金からそのまま5,000万円を支出するだけです。税引き後の手取りで買う必要がないので、個人で購入する場合と比べて用意すべき資金の総額を大幅に抑えられます。

事業承継対策としての側面

もう一つ、見落とされがちな大きなメリットが、事業承継への効果です。法人名義で不動産を保有しておくと、将来の事業承継の際に自社株の評価を引き下げる効果が期待できます。

非上場企業の株式評価においては、現金や預金はそのままの金額で評価されますが、不動産は「相続税評価額」という独自の基準で評価されます。この相続税評価額は、実際の時価の50〜60%程度になるケースが多く、現金のまま保有し続けるよりも、不動産に組み替えたほうが株価評価上は資産が圧縮されるのです。

例えば1億円の現金を1億円の不動産に組み替えると、株の評価上は5,000〜6,000万円程度の資産として扱われることになります。株価評価が下がれば、事業承継の際にかかる相続税や贈与税の負担も軽減されます。節税をしながら自分が住む家も手に入れ、さらに将来の事業承継対策にもなるという、まさに一石三鳥の効果が見込めるわけです。

ただし、不動産を相続税評価額で評価してもらうためには、その不動産を取得してから3年以上経過していることが条件になります。購入直後は時価での評価となってしまうため、事業承継を見据える場合には早めに購入しておくことが重要です。

法人購入で押さえておくべき3つの注意点

メリットの大きい役員社宅スキームですが、押さえておかないと逆効果になる注意点もあります。

まず1つ目は、法人側で購入資金を用意しなければならない点です。数千万円単位の支出は会社のキャッシュフローを大きく圧迫する可能性があります。会社にキャッシュが十分に貯まった段階で検討すべき話であり、経営セーフティ共済などを活用しながら簿外に資産を積み立てておき、それを購入原資に充てるといった計画的な準備が有効です。

2つ目は、住宅ローン控除が使えない点です。個人で物件を購入する場合は住宅ローン控除によって大幅な税額控除が受けられますが、法人購入ではこの制度は利用できません。「個人で住宅ローン控除を受けた後、法人に売却すればよいのでは」と考える方もいますが、住宅ローンが残っている物件を法人に売却した時点で控除は打ち切られますし、売却価格によっては個人側に譲渡所得が発生するため、こうした抜け道は現実的ではありません。

3つ目は、物件を売却する際の税金です。法人が物件を売却した場合、その売却益は法人の利益として法人税の課税対象になります。個人の場合は所有期間によって税率が変わりますが、法人と個人では以下のような違いがあります。

区分 保有期間 譲渡益にかかる税率(概算)
法人 期間による違いなし 約25〜34%(法人実効税率)
個人 5年以下(短期譲渡) 約40%
個人 5年超(長期譲渡) 約20%

 

短期で売却する場合は法人のほうが有利になるケースが多い一方、5年以上長期で保有してから売却する場合は個人名義のほうが税率が低くなることもあり得ます。売却出口までを見据えた設計が求められます。

購入せずに賃貸で役員社宅を活用する選択肢

「会社の資金がまだ十分でない」「いきなり法人で購入するのはハードルが高い」という場合には、法人で賃貸契約を結んだ物件に役員社宅制度で住むという選択肢があります。

この方法では、購入するほどの大きな資金は必要ありません。しかも、役員社宅制度のメリットを最大限活かすことができるのが特徴です。会社が支払う家賃と役員から徴収する金額の差額を損金として計上できるうえに、経営者個人の税金や社会保険料も抑えられます。

具体例で考えてみましょう。もともと月100万円の役員報酬を受け取っている経営者が、会社で契約した家賃30万円の物件に役員社宅制度で住むケースです。もし個人でその物件を借りていた場合、月100万円の役員報酬から税金や社会保険料が引かれた手取りから、家賃30万円を支払うことになります。

これに対して、同じ物件を法人で契約し、役員社宅として自分に貸し出す形にします。役員から徴収する自己負担分を仮に15万円とすると、会社負担分の15万円を役員報酬から差し引き、役員報酬を85万円に設定します。すると、税金や社会保険料の計算も85万円ベースで行われるため、その分だけ税負担・社会保険料負担が削減されます。額面は減っていますが、同じ金額だけ家賃負担も減っていますので、削減できた税・社会保険料の分がそのまま手取りアップにつながる仕組みです。

購入と比べると建物の減価償却費や維持費を経費にできない分、経費インパクトは限定的ですが、キャッシュフローや資金力を考えると、こちらのほうが現実的な選択肢となる経営者も多いはずです。

まとめ

会社名義で物件を購入し役員社宅として住むスキームは、家にかかる費用の損金化、必要資金の圧縮、事業承継時の株価評価引き下げという3つの効果をあわせ持つ強力な節税策です。一方で、購入資金の確保、住宅ローン控除が使えないこと、売却時の税率など、事前に理解しておくべき論点も少なくありません。また、資金余力がまだ十分でない段階であれば、法人契約の賃貸物件を役員社宅として活用する方法も有効な選択肢となります。

不動産だけでなく、共済や役員報酬の設計まで含めて、法人全体でどのように資産を守っていくかは、会社ごとに最適解が異なります。自社の状況に合わせた設計を検討していくことが、資産防衛の第一歩です。

役員社宅は購入型だけでなく、法人契約の賃貸物件を使う「借り上げ社宅」でも同様の効果が得られます(借り上げ社宅で会社も個人も節税する方法)。家賃負担を2割程度まで抑える具体例は役員社宅で家賃2割負担を実現する方法、法人名義で購入すべきかの判断は自宅を法人名義で買うべきかの判断、自宅兼事務所として住宅ローン控除と両立させたい場合は自宅兼事務所の住宅ローン控除との両立も参考にしてください。

なお、今回解説した内容については、動画のなかで税理士がより具体的な数字や事例を交えてわかりやすく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー等の資格を持つメンバーで構成されています。
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