会社に内部留保が積み上がってきたものの、銀行に預けていてもほとんど増えず、かといって株式や仕組債のような価格変動の大きい商品にはなかなか踏み切れない。そんな悩みを抱える経営者の方は多いのではないでしょうか。さらに将来の相続を考えると、現金のまま保有していること自体がリスクにもなり得ます。
そこで今回ご紹介したいのが、政府が借主となる極めて安定性の高い不動産投資、「軍用地投資」です。あまり知られていませんが、私自身の会社でも実際に購入・運用しているほど、経営者にとって理にかなった投資先です。本記事では、軍用地投資の基礎知識から、実際の収支、購入時に必ず押さえるべきポイント、最新の融資事情まで、実例を交えて詳しく解説していきます。
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軍用地投資の基礎知識
軍用地とは、アメリカ軍や自衛隊の基地などに使用されている土地のことを指します。現在、日本国内にある米軍基地約130箇所のうち、およそ7割が沖縄県に集中していますが、驚くべきことに、そのうちの約4割は民有地、つまり個人が所有している土地なのです。
なぜそのような状況になっているのかというと、歴史的な背景があります。かつてアメリカ軍が土地を強制的に接収したことに対して、沖縄では島ぐるみでの激しい抵抗運動が起きました。その結果、国が土地所有者から土地を借り上げ、賃借料を支払うという現在の形に落ち着いたのです。つまり、借主は日本国政府、地主は個人という構図になっています。
そして沖縄では、この軍用地が一般の不動産と同じように、不動産会社を通じて売買されています。沖縄県民でなくても購入できますし、相続を機に土地を切り売りする地主の方も増えていることから、市場にも一定の物件が出回っています。実際、軍用地主の約1割は沖縄県外の在住者だと言われています。
経営者に選ばれる5つのメリット
軍用地投資が経営者から支持される理由は、大きく分けて5つあります。ここでは特に重要な2つを番号付きで整理し、その他のメリットは続けて解説していきます。
(1)圧倒的なローリスク・ローコスト
通常の不動産投資で最も怖いのは、空室リスクや家賃滞納リスクです。しかし軍用地の借主は日本国政府ですから、家賃が滞納されることも、夜逃げされることもまずあり得ません。空室リスクも滞納リスクも実質的にゼロと言ってよいでしょう。
さらに、軍用地はあくまで「土地」への投資なので、建物がありません。雨漏りの修繕も、給湯器の交換も、退去後のリフォーム費用も一切かからないのです。固定資産税も建物分はかかりませんし、土地の評価額自体も低く抑えられているケースが多いため、保有コストが極めて低く済みます。経費がかさんで利益が残らない、という事態にもなりにくい投資です。
(2)安定した利回りと賃料の上昇
軍用地の借地料は、過去30年間にわたり着実に値上がりし続けています。例えば令和7年度の借地料は、前年度比で1.11%の増額となっています。これは、地主の団体である「土地連」と呼ばれる組織が、国と毎年粘り強く交渉して勝ち取っている成果です。
日本の給料がほとんど上がらない時代にあって、毎年確実にベースアップしていく賃料収入は非常に貴重です。長く保有すればするほど、購入時の取得価格に対する実質利回りは向上していくことになります。
流動性の高さ
3つ目のメリットは、流動性の高さです。一般的な不動産は売りたい時にすぐ売れないというデメリットがありますが、軍用地は適正価格で売り出せば、平均して2週間から1ヶ月程度で売買が成立すると言われています。会社の余剰資金をプールしておき、いざという時にはすぐ現金化できるという点は、経営者にとって心強い特徴です。
相続税対策としての絶大な効果
4つ目は相続税対策としての効果です。軍用地は実際の取引価格である時価と、相続税評価額との乖離が非常に大きいという特徴があります。場所にもよりますが、1億円で購入した軍用地の相続税評価額が4,500万円程度まで圧縮されるケースも珍しくありません。
現金1億円をそのまま相続すれば1億円に対して課税されますが、軍用地に組み替えておけば評価額を半分以下に圧縮できるわけです。資産価値を維持しながら、賃料収入も得ながら、相続税対策にもなるという、まさに一石三鳥の効果が期待できます。
分筆による争族対策
5つ目は、土地であるがゆえに「分筆」、つまり切り分けが容易だという点です。アパート一棟を兄弟で分けようとすると揉めるケースが多いですが、軍用地であれば綺麗に3等分して相続させるといった柔軟な対応が可能です。相続税対策だけでなく、いわゆる「争族」対策にも有効なのです。
実録・軍用地の収支
それでは、実際に私の会社で購入した物件の数字をお見せします。これは「キャンプ・コートニー」という基地の中にある土地で、購入価格は約505万円でした。意外に思われるかもしれませんが、小さな区画であれば数百万円から始められるのも軍用地投資の魅力です。
この物件の年間借地料、つまり家賃収入は約10万円。表面利回りで言えば約2%です。数字だけ見ると低く感じるかもしれませんが、ここから管理費も修繕積立金も引かれません。固定資産税は年間約8,000円のみ。購入時の諸経費も仲介手数料がゼロだったため、登録免許税などで約7万円しかかかっていません。出ていくお金がほとんどないため、手残りはほぼ確実に発生します。
| 項目 |
金額 |
| 購入価格 |
約505万円 |
| 年間借地料 |
約10万円 |
| 表面利回り |
約2% |
| 固定資産税 |
年間約8,000円 |
| 購入時諸経費 |
約7万円 |
さらに、もう一つ最新の事例として「嘉手納飛行場」の滑走路上の土地もご紹介します。ここで重要になるのが「倍率」という軍用地独特の指標です。倍率は市場動向や基地返還の予定の有無などによって変化し、人気のあるエリアほど高くなる傾向があります。嘉手納飛行場の倍率は、2011年は35倍ほどでしたが、現在は50倍~60倍の間で取引されることが多くなっています。
軍用地の売買価格は、一般の土地のように「坪数×坪単価」で計算するのではなく、「年間借地料×倍率」で計算します。先ほどの嘉手納飛行場の物件であれば、年間借地料約60万5千円×倍率53倍で、売買価格は3,208万円ということになります。
仮にこの物件を10年間保有した後、倍率が54倍、借地料が62万円に上昇していたとすれば、54×62で約3,348万円で売却できる計算になります。その間も毎年安定して借地料が入ってくるわけですから、インカムゲインとキャピタルゲインの両方を狙える商品設計になっているのです。
失敗しない軍用地選びの重要ポイント
沖縄の軍用地は、基本的に現地を見ることができません。そのため、不動産業者から取り寄せる「土地賃借料算定調書」「登記簿謄本」「航空写真」の3点を基に検討することになります。資料から読み取るべきポイントを順に解説していきます。
場所の見極め
まず最も重要なのが場所です。軍用地と一口に言っても、飛行場、弾薬庫、訓練場など様々な施設があります。場所選びで重要なのは「返還予定の有無」を考慮し、個々の施設の状況を見極めることです。
大雑把に言うと、嘉手納飛行場より北は返還予定がない軍用地が多く、嘉手納より南は返還予定があるものが多くなります。長期的にじっくり保有して安定した賃料収入を得たいのであれば、返還予定のない場所が向いています。嘉手納飛行場は極東最大のアメリカ空軍基地で、返還リスクが極めて低く、長期保有に適した人気物件です。
一方で、返還予定がある軍用地も投資対象になり得ます。返還後の再開発によって値上がりを狙えるからです。例えば現在「イオンモール沖縄ライカム」がある場所は、以前は泡瀬ゴルフ場という米軍施設でしたが、返還後に坪単価が6倍になりました。返還までは借地料が入ってきますし、返還後の区画整理期間中も借地料相当の保証があるため、リスクを取って大きなリターンを狙う戦略も成り立ちます。ただし、すべての土地が値上がりするわけではなく、道路がつかない場所など利用価値が低いまま残るリスクもあるため、慎重な見極めが必要です。
また、基地内の土地を所有することに心理的抵抗がある方には、那覇空港用地のように現在は民間利用されている土地もおすすめです。
土地の種類
次に確認すべきは土地の種類です。登記簿上の地目には「田」「畑」「宅地」「山林」など23種類の区分があります。最近の軍用地借地料の上昇率を見ると、「宅地」や「宅地見込地」が高い傾向にあります。宅地は米軍兵士などが住んでいる地域、宅地見込地は宅地への転用が可能な土地のことです。
特に借地料の上昇率で見ると、宅地見込地の方が高い傾向があります。嘉手納飛行場の場合、宅地の賃料上昇率が0.34%であるのに対し、宅地見込地は0.95%。キャンプ・コートニーでも同様の傾向が見られます。私の会社で購入したのも、キャンプ・コートニーの宅地見込地です。
面積、権利、土地の形状
最後に細かなチェックポイントです。面積や権利関係(所有権か抵当権か)の確認は基本ですが、航空写真で土地の形状や位置を確認することも重要です。形状が悪ければ返還後の再開発に手間がかかると推測できますし、主要道路に近ければ返還後の値上がりが期待できます。現地を見られない分、資料からどれだけ情報を読み取れるかが勝負になります。
最新の融資事情と投資戦略の転換
最後に、最新の融資事情についても触れておきます。以前は、軍用地主だけが利用できる「土地連共済」という低金利ローンを活用し、レバレッジをかけて買い増していく手法が有効でした。しかし、ここにも金利上昇の波が押し寄せています。
2026年1月現在、土地連共済の金利は2.2%まで上昇しています。軍用地の利回りが2%弱であることを考えると、ローンを組んで購入するのは現実的に厳しいと言わざるを得ません。
したがって現在の軍用地投資は、レバレッジを効かせて積極的に拡大していく投資というよりも、現金で購入し、会社の内部留保を安全な資産に移しておく、あるいは相続税対策として現金を圧縮しておくという「守りの投資」としての側面が強くなっています。キャッシュリッチな企業にとっては、現金のまま預金で寝かせておくよりも、はるかに有効な選択肢と言えるでしょう。
また、優良物件はインターネットに公開される前に売れてしまうケースも多いため、興味のある方は早めに情報収集を始めることをおすすめします。
まとめ
軍用地投資は、日本国政府を借主とする極めて安定性の高い投資です。空室リスクや滞納リスクが実質的にゼロでありながら、毎年賃料が上昇し続けているという特異な性質を持ちます。さらに、相続税評価額と時価との乖離を活用した相続対策、土地であるがゆえの分筆のしやすさ、そして数百万円から始められる手軽さなど、経営者にとって魅力的な要素が揃っています。
一方で、金利上昇により融資を活用した拡大戦略は難しくなっており、現金購入による守りの資産防衛・相続対策としての色合いが強まっています。物件選びでは、場所、土地の種類、形状などを資料からしっかり読み取り、自社の戦略に合った物件を見極めることが成功の鍵となります。
なお、軍用地投資の具体的な物件選定や購入手順、相続税対策との組み合わせ方については、動画の中で税理士がより詳しく解説しています。実際に購入した物件の収支や、未公開物件の探し方など、記事では伝えきれなかった実務的な内容も含まれていますので、ぜひ元動画も併せてご覧ください。