社長の飲食代を経費にする方法と税務調査で否認されないための実務ポイント

「この飲食代は経費にしていいのだろうか」「税務調査で否認されたらどうしよう」――社長業をされている方であれば、一度はこうした疑問や不安を抱いたことがあるのではないでしょうか。取引先との会食、社員とのランチミーティング、出張先での一人カフェなど、ビジネスに関わる飲食の場面は数多くありますが、そのすべてが経費として認められるわけではありません。

実は、飲食代を経費にできるかどうかは、「誰と」「何の目的で」「どこで」「いくら」使ったかによって判断が大きく変わります。さらに、2024年の税制改正や、40年ぶりに動きがある食事補助制度の見直しなど、最新のルールを押さえておかないと損をしてしまう場面も少なくありません。

本記事では、社長が飲食代を可能な限り経費に落とすための科目の使い分けと、税務調査で否認されないために押さえておくべき実務上のポイントを、ひととおり整理して解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

飲食代を経費にできる3つの科目

社長の飲食代をすべて経費にすることはできませんが、状況に応じて以下の3つの科目に振り分けることで、適切に経費計上することが可能です。

科目 主な対象 主な目的
交際費 取引先・事業関係者との飲食、贈答 接待・慰安・贈答
会議費 社内外との打ち合わせ時の飲食 会議・打ち合わせ
福利厚生費 従業員のための食事提供 従業員の福利厚生

それぞれの科目には適用条件や金額の上限が定められており、誤って処理すると否認されたり、給与扱いとなって社員に思わぬ負担をかけてしまうこともあります。順番に内容を見ていきましょう。

交際費として処理できるケース

交際費の基本的な範囲

交際費として処理できるのは、事業に関連する相手との食事や贈答品で、その目的が接待・慰安・贈答であるものです。具体的には、取引先との接待飲食代やお土産代をはじめ、お中元・お歳暮といった贈り物、ご祝儀やお香典なども交際費に含まれます。

ただし、税務上の原則として、交際費は「経費にならない」というのが基本ルールです。これを聞いて驚く方も多いのですが、安心してください。資本金1億円以下の中小企業の場合、特例として次のいずれかを選択して経費にすることができます。

(1)年間800万円までの定額控除

(2)交際費のうち飲食費の50%

一般的な中小企業であれば、年間800万円の枠は十分な水準といえるでしょう。

1人1万円以下の接待は交際費から除外

2024年の税制改正で、社長にとって非常に大きなメリットのある変更がありました。1人当たり1万円以下の接待飲食費は、交際費から外して会議費等で処理できるようになったのです。改正前の基準は5,000円でしたが、物価高などを背景に1万円まで引き上げられました。

会議費に振り分けることができれば、年間800万円の交際費枠とは別枠で計上できるため、実質的に使える経費の幅が大きく広がります。一次会程度であれば1万円以下に収まることも多いため、この枠は積極的に活用したいところです。

友人や知人との食事は経費になるか

よくある質問が、友人や知人との食事を経費にできるかどうかという点です。判断のポイントは、その相手が自分の事業に関係しているかどうか、そして食事の目的が情報交換や商談にあるかどうかです。

たとえば学生時代の同級生であっても、相手が取引先の担当者であったり、異業種であってもお互いのビジネスに関わる情報を交換する関係であれば、立派な接待・情報交換として交際費に計上できます。一方で、純粋に趣味のゴルフ仲間との飲み会のように、事業と全く関連しない食事については、経費にするのは難しいと考えるべきです。

キャバクラやクラブも交際費にできる

「場所」については、条件さえ満たしていればキャバクラやクラブでの飲食も交際費として処理できます。場所そのものよりも、誰とどのような目的で利用したかが重要であり、接待として必要であれば積極的に活用してかまいません。

ただし、当然ながら一人での利用や、事業との関連を説明できないケースは否認されます。誰と行ったか、何の目的だったかをきちんと説明できることが大前提です。

会議費として処理できるケース

会議費と交際費の違い

会議費は、社内や社外との打ち合わせで使った飲食代を計上する科目です。交際費が接待や慰安を目的とするのに対し、会議費はあくまで会議や打ち合わせを円滑に進めるための費用という位置づけになります。社員とのランチミーティングや、取引先との打ち合わせを兼ねた食事などが該当します。

会議の実態が伴っていれば問題なく経費にできますが、その実態をどう証明するかがポイントになります。たとえばファミレスや喫茶店のように食事をしながら会議ができる場所であれば自然ですが、個室のカラオケやカウンターのみのラーメン店などでは、本当に会議をしていたのかと疑われる可能性があります。

一人カフェ代の取り扱い

出張や外出の合間に、一人でカフェに入って作業をするケースはよくあると思います。これは実はグレーゾーンで、判断のポイントは「そこで仕事をする必要があったかどうか」です。

たとえば出張先で他に作業できる場所がなく、Wi-Fi環境が必要だったためにカフェを利用したというケースであれば、会議費として計上することは可能です。一方、オフィスのすぐ近くのカフェで気分転換のために仕事をしたという場合は、「オフィスでできなかったのか」と税務署から問われる可能性が高く、認められにくくなります。

さらに注意したいのが、一人カフェで何を注文したかという点です。コーヒー代は「場所代」として認められやすいのですが、ついでに注文したパスタセットなどの食事代は、プライベートな支出とみなされて否認されるリスクが高くなります。人間は仕事をしていなくても食事は必要であり、業務遂行上の必要経費とは認められにくいためです。

ただし、これが2人以上での打ち合わせとなれば話は別です。ランチミーティングであれば食事をすることが前提となるため、食事代も含めて会議費として処理することができます。

福利厚生費として処理できるケース

残業時の夜食代

従業員のために支出した飲食代は、福利厚生費として経費にできます。代表例が、残業している社員のための夜食代です。遅くまで働いてくれる社員にピザや弁当を差し入れることで、士気の向上にもつながります。

ただし、やり方を間違えると福利厚生費ではなく「給与」として扱われてしまうため注意が必要です。給与扱いになると、社員の所得税・住民税が増え、社会保険料の負担も会社・社員双方で増えてしまいます。良かれと思って差し入れたのに、結果的に社員の手取りを減らしてしまうことにもなりかねません。

給与扱いを避けるためには、次の条件を満たす必要があります。

– 残業中に支給される食事であること

– 残業している社員全員が対象であること(特定の人だけはNG)

– 会社が全額を負担していること(現物支給であること)

特に注意したいのが、社員がコンビニなどで自分で弁当を買い、後でレシート精算するという方法です。これは現金を渡しているのと同じとみなされ、給与扱いになる可能性が高くなります。会社がデリバリーを一括で注文する、お店から会社名で請求書を出してもらうといった「現物支給」の形をとることが安全です。

なお、金額についても常識の範囲内である必要があります。一般的には1人あたり1,000円から2,000円程度に収めておくのが無難でしょう。

昼食補助は「40年ぶりの改正」が予定されている

社員食堂や仕出し弁当などで従業員に昼食を提供する場合も、福利厚生費にすることができますが、こちらは別の条件をクリアする必要があります。

まず、従業員全員に提供されていることが前提です。その上で、勤務時間内の食事支給については、従業員自身が食事代の半分以上を負担する必要があります。会社が全額負担すると福利厚生費にできなくなるため、必ず半分は本人から徴収するようにしてください。

そして会社が負担できる金額は、1人あたり1か月3,500円までと定められています。この上限は1984年に制定されてから一度も変更されておらず、現在の物価水準と大きく乖離していることが長年問題視されてきました。

しかし、2026年度の税制改正大綱で、食事支給に係る所得税非課税上限が月額7,500円に引き上げられることが明記されました。40年ぶりの大きな変更となります。実際の施行時期については今後の動向を注視する必要がありますが、ランチ補助の拡充は社員の満足度向上にも直結するため、注目すべきポイントです。

歓送迎会や忘年会も福利厚生費にできる

会社の歓迎会・送別会・忘年会なども、福利厚生費として処理することができます。ポイントは、全社員を対象としていることです。

ここでよく誤解されるのが「全員参加が必須なのか」という点ですが、実際には全員に参加する権利があれば問題ありません。当日たまたま用事があって参加できない社員がいても、福利厚生費としての処理は可能です。一方で、「役員だけの忘年会」や「営業部だけの飲み会」は福利厚生費にはなりません。

なお、会社の規模が大きい場合は、部署ごと・支社ごとに開催する忘年会であっても福利厚生費として認められます。

税務調査で否認されないための実務ポイント

飲食代は、税務調査において基本的にすべてチェックされる項目だと考えておくべきです。その上で、最も効果的かつ簡単にできる対策が「領収書の裏書き」です。

税務署が知りたいのは、その食事が本当に仕事に関連したものかどうかという点です。そのため、領収書の裏に「誰と」「何の目的で」食事をしたかをメモしておくだけで、税務調査での心証は大きく変わります。走り書き程度でかまわないので、その場で記録する習慣をつけることをおすすめします。

帳簿やスケジュール帳に記録する方法でも問題ありません。とにかく、後から第三者が見て事業との関連性を説明できる状態にしておくことが大切です。逆に、領収書だけがあって「これ誰と行ったんですか?」と聞かれた際に答えられない状況が最もまずいパターンです。

また、友人や知人との食事のように説明が難しいグレーゾーンの支出については、無理に経費に入れず、明確に説明できるものだけを経費に計上するのが安全策です。「これは仕事だ」と胸を張って言えるものだけを経費にする、というスタンスが、結果的に最もリスクを抑える方法といえます。

まとめ

社長の飲食代は、交際費・会議費・福利厚生費という3つの科目をうまく使い分けることで、適切に経費として計上することができます。2024年の改正で1人1万円以下の接待飲食費が交際費から除外できるようになったことや、2026年度税制改正大綱で食事補助の非課税枠が7,500円に引き上げられる見込みであることなど、最新のルールを押さえておくことが資産防衛上も重要です。

一方で、一人カフェでの食事代や、現金支給による残業夜食、特定の社員だけを対象とした飲み会などは、否認されたり給与扱いになったりするリスクがあります。グレーゾーンの支出は無理に経費にせず、領収書の裏書きや記録の徹底で、説明責任を果たせる状態にしておくことが税務調査対策の基本となります。

ルールを正しく理解した上で、使える枠は最大限活用し、リスクのあるものは無理をしない。このメリハリこそが、社長にとっての賢い飲食代の経費活用術といえるでしょう。

なお、本記事の内容については、税理士が動画でさらに詳しく、具体的な事例を交えながらわかりやすく解説しています。記事だけでは伝えきれないニュアンスや実務上の判断ポイントについても触れていますので、ぜひ元動画も併せてご覧ください。

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