安定性と節税効果が魅力?沖縄「軍用地投資」の基礎知識と注意点

近年、沖縄県内にある米軍基地や自衛隊基地の敷地となっている土地、いわゆる「軍用地」への投資が、県外の投資家からも静かな注目を集めています。国が借主であるという安定性や、手間のかからない運用、相続税対策としての効果などがその理由として挙げられますが、「基地の土地を買う」というのは、一体どのような仕組みなのでしょうか。

この記事では、あまり広く知られていない「軍用地投資」について、その基本的な仕組みから、具体的なメリット、物件選びの際に確認すべきポイント、そして最新の注意点までを解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

1. 軍用地投資とは?

軍用地の定義

軍用地とは、文字通り、沖縄県内に所在するアメリカ軍基地や自衛隊基地として利用されている土地のことを指します。日本にある米軍専用施設の約7割が沖縄に集中しており、その基地用地の約4割は国や地方公共団体ではなく、個人や法人が所有する「民有地」です。 また、かつては軍用地だったものが現在は民間利用されている「那覇空港用地」のような土地も、軍用地投資の対象に含まれることがあります。

投資の仕組み

軍用地投資は、これらの個人等が所有する軍用地を購入し、地主となることで、国から借地料を受け取る、あるいは将来的に土地を売却して利益を得ることを目的とした投資手法です。土地の所有権を取得し、それを国に貸し出す形になります。

歴史的背景

沖縄において多くの民有地が基地として利用されている背景には、戦後の米軍による土地の強制接収という歴史があります。これに対する県民の抵抗運動などを経て、国が地主から土地を借り上げ、国が地主に借地料を支払うという現在の賃貸借契約の形が確立されました。

2. 軍用地投資のメリット

軍用地投資には、他の不動産投資とは異なるいくつかの特徴的なメリットがあります。

(1) 低リスク・低コストでの運用

最大の魅力は、国が借主であるという点です。これにより、一般的な不動産投資で懸念される以下のようなリスクがほとんどありません。

  • 空室リスク: 国が借り続けている限り、空室は発生しません。
  • 家賃滞納リスク: 国からの借地料支払いが滞ることは考えにくいです。
  • 管理の手間: 土地のみの投資であり、建物がないため、入居者募集や管理、建物の修繕・リフォームといった手間やコストが発生しません。固定資産税も、一般的な土地に比べて低く抑えられる傾向があります。

(2) 安定した利回りと価格上昇

軍用地の借地料は、毎年、国と沖縄県軍用地等地主会連合会(土地連)との交渉によって決定され、過去数十年にわたり、ほぼ一貫して上昇を続けています。沖縄県の資料によると、例えば嘉手納飛行場の年間借地料総額は、長期的に見て着実に増加しています。 投資利回り(年間借地料÷購入価格)は、物件にもよりますが実質で年2%弱程度と比較的高くはありません。

しかし、借地料が毎年わずかずつでも上昇していく(複利効果)ため、長期保有することで総収益の増加と、将来的な売却価格の上昇(キャピタルゲイン)が期待できます。

(3) 高い流動性(売却のしやすさ)

軍用地は、その安定性や希少性から、不動産市場での人気が高く、売却したい場合に比較的短期間(数週間~1ヶ月程度)で買い手が見つかりやすいと言われています。これは、急にまとまった資金が必要になった際に換金しやすいという点で、大きなメリットとなります。

(4) 相続税対策としての効果

軍用地は、相続税評価額が実際の売買価格(時価)よりも低くなる傾向があります。これは、国との賃貸借契約があることによる利用制限などが評価額算定時に考慮されるためです。物件にもよりますが、例えば時価1億円で購入した軍用地の相続税評価額が、4,000万円~5,000万円程度に圧縮されるケースもあります。現金を軍用地という不動産に換えておくことで、借地料収入を得ながら、将来の相続税負担を軽減する効果が期待できるのです。

また、軍用地は一般的な土地と同様に「分筆(土地を複数に分割すること)」が可能です。これにより、相続が発生した際に、相続人の数に応じて土地を分割して相続させるなど、柔軟な対応が取りやすい点もメリットと言えるでしょう。

3. 軍用地物件の選び方:購入時のチェックポイント

軍用地は、基地内にあるという性質上、投資家が実際に現地を見て確認することは基本的にできません。そのため、不動産業者から提供される資料を基に、慎重に物件を検討する必要があります。特に重要な資料は以下の3点です。

  • 土地賃借料算定調書(兼同意書): 年間の借地料や土地の面積、地目などが記載されています。
  • 登記簿謄本(登記事項証明書): 土地の所有権者や、抵当権などの権利関係が記載されています。
  • 航空写真(公図など): 土地のおおよその位置や形状を確認できます。

これらの資料を取り寄せ、以下のポイントをチェックすることが重要です。

チェックポイント①:場所(施設の状況と返還予定)

軍用地といっても、飛行場、弾薬庫、訓練場、住宅地区、補給地区など、様々な施設があります。最も重要なのは、その土地が所在する基地や施設に「返還予定があるかないか」です。

一般的に、沖縄本島中部にある「嘉手納飛行場」のような極東最大級の米軍基地は、返還リスクが極めて低いとされ、長期安定的な借地料収入と資産価値の維持・向上が期待できるため人気があります。おおむね嘉手納より北側の基地は返還予定がないものが多く、逆に南側には返還計画がある、または将来的に返還される可能性がある土地が多く存在します。 長期保有を前提とするならば、返還予定のない場所を選ぶのが堅実です。

一方で、返還予定がある土地も、投資対象にならないわけではありません。過去には、北谷町の「アメリカンビレッジ」や那覇市の「那覇新都心」、沖縄市の「イオンモール沖縄ライカム」(旧米軍ゴルフ場)のように、返還後に大規模な再開発が行われ、土地の価値が飛躍的に上昇した例もあります。返還されるまでの期間は借地料(またはそれに代わる補償)を受け取りつつ、返還後の値上がり益(キャピタルゲイン)を狙うという戦略も存在します。

チェックポイント②:土地の種類(地目)

登記簿上の土地の種類(地目)も確認すべきポイントです。地目には「宅地」「田」「畑」「山林」「雑種地」など23種類がありますが、軍用地投資においては「宅地」および「宅地見込地(宅地への転用が見込まれる土地)」の人気が高い傾向にあります。

特に借地料の上昇率という観点では、「宅地見込地」の方が「宅地」よりも高い上昇率を示すケースが多く見られます。これは、将来的な開発ポテンシャルがより高く評価されているためと考えられます。

チェックポイント③:面積、権利、土地の形状

基本的なことですが、土地の正確な面積、所有権は誰にあるのか、抵当権などが設定されていないか、といった権利関係は必ず登記簿謄本で確認しましょう。 また、航空写真や公図などで土地のおおよその位置や形状を確認することも大切です。

例えば、いびつな形状の土地や、他の土地に囲まれて道路に接していない土地(袋地)などは、仮に返還された場合の開発が難しくなる可能性が考えられます。逆に、主要な道路に面しているなどの好条件であれば、返還後の価値上昇に期待が持てます。

4. 軍用地投資の「倍率」とは?

軍用地の取引においては、「倍率」という独特の指標が用いられます。これは、一般の土地取引における「坪単価」のようなものです。

軍用地特有の評価指標

軍用地の売買価格は、通常「年間借地料 × 倍率」という計算式で算出されます。例えば、年間借地料が10万円で倍率が50倍であれば、売買価格の目安は500万円となります。

倍率の決定要因と市場動向

この倍率は、特定の機関が定めているわけではなく、市場での需要と供給のバランス、該当する基地の人気度(返還リスクの低さなど)、地目、経済情勢など、様々な要因によって形成されます。

近年、軍用地投資への注目度が高まる中で、全体的に倍率は上昇傾向にあります。人気のある嘉手納飛行場などでは、かつて30倍台だったものが、現在では50倍~60倍程度で取引されることも珍しくありません。

売買価格の算出方法

したがって、軍用地を購入する際は、提示されている倍率が、その土地の条件(場所、地目など)や市場動向に照らして妥当な水準であるかを見極める必要があります。

5. 最新情報と注意点:ローン金利の動向

軍用地は比較的高額になることが多く、人気の物件はすぐに買い手がつくため、基本的には現金での購入が有利とされてきました。一方で、一度軍用地を購入して地主になると、「沖縄県軍用地等地主会連合会(土地連)」が運営する「土地連共済」という、地主限定の比較的低利な融資制度を利用して、次の軍用地購入資金を調達するという方法も活用されてきました。

土地連共済ローンの金利上昇傾向

しかし、近年の金利上昇局面を受け、この土地連共済ローンの金利も上昇傾向にあります。例えば、2025年3月時点での基準金利は1.65%となっていました。軍用地の表面利回りが2%弱であることを考えると、まだ利用価値はある水準かもしれませんが、今後の動向には注意が必要です。

長期プライムレートとの連動

土地連共済の金利は、金融機関の長期プライムレートに連動する仕組みになっています。主要銀行の長期プライムレートは2025年3月に引き上げられており、今後、土地連共済の金利が見直される際に、さらに上昇する可能性も十分に考えられます。

融資利用時のシミュレーションの重要性

軍用地投資でローンを利用する場合は、借地料収入とローン返済額のバランス、将来的な金利上昇リスクなどを十分に考慮し、慎重なシミュレーションを行うことが不可欠です。

まとめ

沖縄の軍用地投資は、国が借主という他にない安定性、維持管理の手間やコストの低さ、そして相続税対策としての有効性など、多くの魅力を持つ投資手法です。借地料の安定収入(インカムゲイン)に加え、長期的な土地価格の上昇による売却益(キャピタルゲイン)も期待できます。

しかしその一方で、物件の選定には専門的な知識や情報収集が不可欠であり、現地確認が困難であるという特性もあります。また、ローン金利の上昇など、外部環境の変化にも注意が必要です。

軍用地投資を検討する際は、これらのメリット・デメリット、リスクを十分に理解し、信頼できる不動産業者や専門家(税理士など)に相談しながら、ご自身の投資方針や資金計画に合った判断をすることが重要です。

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