銀行と信用金庫の違いとは?中小企業経営者が知るべき信用金庫活用のメリット・注意点

企業経営において、金融機関との良好な関係構築は不可欠な要素です。融資相談や資金調達の場面で、多くの方はまず「銀行」を思い浮かべるかもしれませんが、「信用金庫」という選択肢も存在します。しかし、銀行と信用金庫の違いや、信用金庫ならではのメリットを正確に理解されている方は意外と少ないのではないでしょうか。特に創業期や事業規模が比較的小さい企業にとっては、信用金庫との付き合い方が経営に大きな影響を与えることもあります。

本記事では、銀行と信用金庫の基本的な違いから、信用金庫と付き合うことのメリット、注意点、そして最終的にどのように付き合っていくべきかについて、解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

銀行と信用金庫の根本的な違い

まず、銀行と信用金庫は、その成り立ちや目的において根本的な違いがあります。

銀行は、銀行法に基づく「株式会社」です。したがって、株主が存在し、利益を追求することが経営の主たる目的となります。顧客との取引においても、銀行自身の利益に繋がるかどうかが重要な判断基準となり、融資審査などもその観点から厳格に行われる傾向があります。一方で、一般的に信用金庫よりも資金量が豊富であり、大口の融資や幅広い金融サービスを提供できる体力があるのが特徴です。

対して信用金庫は、信用金庫法に基づく協同組織金融機関であり、地域の中小企業や個人などが「会員」となって互いに助け合う「相互扶助」を目的としています。株式会社ではないため、銀行のような株主は存在せず、利益追求が第一の目的ではありません。地域社会の発展に貢献することが重要な使命であり、そのために地域内の企業や住民への金融サービスの提供を行っています。

このように、銀行が営利を主目的とする株式会社であるのに対し、信用金庫は地域貢献を主目的とする非営利的な性格を持つ金融機関であるという点が、最も大きな違いと言えるでしょう。

信用金庫と付き合うメリット

こうした違いから、特に中小企業や創業期の事業者にとって、信用金庫と付き合うことには多くのメリットがあります。

(1) 地元企業への手厚いサポート

信用金庫は地域経済の活性化を使命としているため、地元の企業を積極的に応援する姿勢を持っています。単にお金を貸すだけでなく、経営に関する様々なサポートを提供してくれることが期待できます。

例えば、担当者が頻繁に訪問してくれ、経営状況のヒアリングを通じて親身に相談に乗ってくれることが多いです。新規事業の立ち上げ時には事業計画の策定や社内体制の構築についてアドバイスをくれたり、IT活用や技術的な課題に関して他の企業の成功事例などを紹介してくれたりすることもあります。

また、補助金や助成金の情報提供にも積極的です。自社で活用できそうな制度をピックアップして教えてくれることもあり、情報収集の手間が省けるだけでなく、申請の機会損失を防ぐことにも繋がります。

さらに、地域内のネットワークを活かして、取引先候補となる企業を紹介してくれる「ビジネスマッチング」を行ってくれる場合もあり、販路拡大のきっかけになることもあります。

(2) 地域貢献を考慮した柔軟な融資審査

融資審査においても、信用金庫ならではの視点があります。

銀行が主に財務状況や収益性を重視するのに対し、信用金庫はそれに加えて「その企業への融資が地域社会の発展にどう貢献するか」という観点も加味して審査を行います。

そのため、財務状況だけでは評価が難しい創業期の企業や、小規模な事業者であっても、事業内容や将来性が地域貢献に繋がると判断されれば、銀行よりも柔軟に融資を検討してくれる可能性が高いです。

特に、創業時の資金調達で活用されることが多い「日本政策金融公庫」からの融資を受ける場合、その融資金の入金先(着金先)口座を指定する必要があります。この着金先として、メガバンクや地方銀行ではなく、信用金庫の口座を指定することをおすすめします。

日本政策金融公庫からの融資を信用金庫の口座で受け、その返済をきちんと実績として積み上げていくことで、信用金庫からの評価が高まり、「返済実績のある事業者」として認識されます。これが、将来的に信用金庫から直接プロパー融資(信用保証協会の保証を付けない融資)を受ける際に有利に働く可能性があります。

貸し渋り・貸し剥がしリスクの低減

金融機関から融資を受けると、通常、毎年決算書の提出を求められ、その内容に基づいて「信用格付け」が行われます。業績が悪化し格付けが下がると、追加融資を断られたり(貸し渋り)、最悪の場合、既存の融資の一括返済を求められたりする(貸し剥がし)リスクがあります。貸し剥がしは企業の資金繰りを急激に悪化させ、倒産に繋がりかねない深刻な事態です。

もちろん、信用金庫であっても業績が悪化すれば融資姿勢は厳しくなりますが、地域貢献という目的を持つため、銀行に比べると、短期的な業績悪化だけを理由にした急な貸し渋りや貸し剥がしには比較的慎重であると言われています。経営状況が悪化した場合でも、すぐに融資を引き揚げるのではなく、経営改善に向けた相談に乗ってくれる可能性が銀行よりも高いと考えられます。

会員特典や親密な関係性によるメリット

信用金庫は地域との密接な関係を重視するため、長く良好な付き合いを続けることで、様々なメリットが得られることがあります。

例えば、会員限定の金利が優遇された定期預金や各種ローンが提供されることがあります。また、企業の経営者や従業員個人の住宅ローンやマイカーローンなどについても、親身に相談に乗ってくれることが期待できます。会社だけでなく、従業員の福利厚生にも繋がる可能性がある点は魅力です。

信用金庫と付き合う際の注意点

多くのメリットがある一方で、信用金庫と付き合う際にはいくつか注意すべき点もあります。

融資限度額が銀行より低い傾向

信用金庫は、営業エリアや会員資格が限定されるため、一般的に銀行(特にメガバンクや大手地方銀行)と比べて預金の総量が少なく、結果として一企業あたりに融資できる金額も少なくなる傾向があります。

統計データ(例えば2022年のデータ)によれば、信用金庫の平均的な融資残高は約2,000万円程度とされ、企業の規模や信用度によっては、融資限度額が数百万円程度になることもあります。

そのため、事業規模が拡大し、数億円単位といった大規模な設備投資資金などが必要になった場合、信用金庫だけでは資金需要を満たせない可能性があります。

営業エリアの制限

信用金庫は、その名の通り「地域密着型」の金融機関であり、定款によって営業エリアが定められています。原則として、その営業エリア内に住所または居所を有する個人、あるいは事業所を有する法人でなければ、会員となって取引(特に融資)を行うことができません。

自社の本社所在地にある信用金庫と付き合っていても、事業が拡大し、営業エリア外に支店や営業所を開設した場合、その支店が必要とする資金について、本社で付き合っている信用金庫に直接相談することは原則としてできません。その場合は、支店の所在地にある別の信用金庫や、全国展開している銀行などに相談する必要が出てきます。

金利が銀行より高い傾向

融資を受ける際の金利については、一般的に信用金庫の方が銀行よりもやや高めに設定されることが多いです。これは、融資規模が比較的小さいため、銀行のように薄利多売のビジネスモデルが取りにくいことや、前述のような手厚いサポートを提供するための人件費などがかかることが理由として考えられます。

ただし、金利は融資の種類、企業の信用度、担保の有無、そして各信用金庫の方針によって大きく異なります。一概に高いとは言えず、場合によっては銀行と同程度の金利で融資を受けられるケースもありますので、個別に相談してみることが重要です。

銀行と信用金庫、どちらと付き合うべきか?

では、結局のところ、企業は銀行と信用金庫、どちらと付き合っていくのが最適なのでしょうか。

結論から言えば、「両方と付き合う」のが最も賢明な戦略と言えます。

金融機関との付き合いは、特定の1行に限定する必要はありません。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自社の状況に合わせて使い分ける、あるいは併用することが望ましいです。

特に創業期や事業規模が小さい段階では、信用金庫の手厚いサポートや柔軟な融資姿勢は非常に頼りになります。まずは地元の信用金庫に相談し、信頼関係を築くことから始めるのが良いでしょう。

事業が成長し、より大きな融資が必要になったり、営業エリア外への進出を考えたりする段階になれば、銀行との付き合いも視野に入れるべきです。ただし、メガバンクは中小企業にとってはハードルが高いことが多いのが実情です。そのため、まずは地方銀行、特に「第二地方銀行」と付き合うことを検討するのが現実的かもしれません。 第二地方銀行は、かつての相互銀行が普通銀行に転換したものであり、歴史的に中小企業との取引が多く、比較的相談しやすい傾向があると言われています。

信用金庫、そして地方銀行(特に第二地銀)と、複数の金融機関と関係を築いておくことで、資金調達の選択肢が広がり、より有利な条件を引き出しやすくなるだけでなく、一方の金融機関の都合で融資が受けられなくなった際のリスクヘッジにもなります。

まとめ

銀行と信用金庫は、その成り立ちや目的に大きな違いがあります。信用金庫は地域社会への貢献を使命とし、中小企業や創業者にとって、融資相談だけでなく、経営に関する様々なサポートを提供してくれる頼れるパートナーとなり得ます。特に、日本政策金融公庫の融資の着金先に指定することで、将来的なプロパー融資に繋げやすくなる点は見逃せません。

一方で、融資額の制限や営業エリアの問題、金利がやや高い傾向があるといった注意点も存在します。 自社の事業規模や成長段階、資金ニーズに合わせて、信用金庫のメリットを最大限に活かしつつ、地方銀行なども含めた複数の金融機関とバランス良く付き合っていくことが、安定した企業経営のための重要な鍵となるでしょう。

この記事で解説した銀行と信用金庫の違いや、信用金庫のお得な活用法について、税理士がよりわかりやすく解説している動画もありますのでご覧ください。

 

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