役員報酬を下げて手元現金を最大化する仕組み──高級車も住居も会社負担にする資産防衛術

「年収を上げれば上げるほど、豊かになれる」──多くの方がそう信じています。しかし実際には、役員報酬を高く設定している経営者ほど、税金と社会保険料に大部分を持っていかれ、手元にキャッシュが残らないという現実に直面しているのです。街で高級車を乗り回している経営者の中には、額面上の役員報酬が月30万円程度に抑えられているケースも少なくありません。なぜ、額面が低いはずの経営者のほうが、豊かな生活を実現できているのでしょうか。

その答えは、「個人」で稼いで「個人」で支払うのではなく、「法人の仕組み」を使って住居や車といった生活コストを会社側に負担させ、個人の手取りを最大化する設計にあります。本稿では、役員報酬を引き下げながら実質的な可処分所得を増やす具体的な手法と、その注意点について詳しく解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

役員報酬を上げるほど損をする構造

まずは、なぜ役員報酬を高く設定することが必ずしも得策ではないのかを、具体的な数字で確認していきます。

例えば、年間1,200万円の役員報酬を受け取っている社長のケースを想定してみます。年収1,200万円と聞けば、一般的には高所得の部類に入りますが、実際に手元に残る金額はそれほど多くありません。所得税と住民税で約200万円、社会保険料の個人負担分で約130万円、合計約330万円が税金と社会保険料として消えていきます。手取りは約870万円、月換算で約72万円です。

一見すると十分な金額に思えますが、経営者らしい生活を送ろうとすると、この手取りはあっという間に消えていきます。例えば家賃が月30万円で年間360万円、高級車のリース代と維持費で年間300万円かかるとすると、住まいと車だけで660万円が飛んでいく計算です。手取り870万円から660万円を差し引くと、自由に使えるお金は年間210万円ほどしか残りません。

項目 金額
役員報酬(額面) 1,200万円
所得税・住民税 ▲約200万円
社会保険料(個人負担) ▲約130万円
手取り 約870万円
家賃(年額) ▲360万円
車両費(年額) ▲300万円
自由に使える金額 約210万円

 

超過累進課税制度により、収入が高くなるほど税率も上がり、社会保険料の負担も比例して増加します。額面の数字と実感としての豊かさが乖離していくのは、この構造によるものです。だからこそ、賢い経営者は発想を切り替え、給料ではなく会社の仕組みを使って豊かな生活を実現しているのです。

経営者だけが使えるお金の設計方法

ここからは、具体的にどのような仕組みを使って個人の負担を減らし、生活の質を維持しながら手元キャッシュを増やせるのかを見ていきます。ポイントは大きく2つ、(1)役員社宅制度と(2)法人名義での車両購入です。

(1)役員社宅制度で住居コストを圧縮する

法人の仕組みを活用している経営者は、自分の住まいを個人契約で借りることをしません。会社が法人契約で物件を借り、それを社長に転貸する形をとります。同じ物件に住んでいても、契約形態を変えるだけで税務上の扱いが大きく変わってくるのです。

役員社宅制度では、税法で定められた基準に基づいて算定した「賃貸料相当額」以上を役員から徴収していれば、会社が負担している家賃との差額について給与課税されません。そして、この賃貸料相当額は実際の家賃相場よりも大幅に低く算定されるケースがほとんどです。物件の広さや構造によって計算ルールは変わりますが、おおむね家賃相場の半額程度、狭めの物件であれば20〜30%程度の負担で済むケースも珍しくありません。

例えば、家賃30万円の物件であれば、社長の自己負担は6万円程度で済む可能性があるということです。残りの差額である月24万円分は、会社の経費として計上できます。

さらに重要なのは、この仕組みが個人の税金と社会保険料の削減にも直結する点です。例えば元々月100万円の役員報酬を受け取っていた社長が、会社契約で借りた家賃30万円の物件に役員社宅制度で住むケースを考えてみます。役員報酬から会社の家賃負担分15万円を差し引き、役員報酬を85万円に設定します。すると、税金や社会保険料の計算基礎も85万円になるため、額面の減少分と同じだけ家賃負担が減っているにもかかわらず、税金と社会保険料が削減できた分だけ実質的な手取りが増える計算になります。

(2)法人名義の車両で高級車を節税ツールに変える

もう一つの柱が、車両の法人所有です。個人名義ではなく法人名義で車を購入することで、車両費用を会社の経費に落とし込むことができます。

ただし、法人が事業用に車両を購入した場合、原則として一括で全額を経費にすることはできず、耐用年数に応じて分割して減価償却する必要があります。新車の普通乗用車であれば耐用年数は6年です。

そこで注目したいのが「4年落ちの中古車」です。中古車の耐用年数は経過期間に応じて短縮され、4年落ちの車両であれば耐用年数は2年、定率法で償却すれば購入初年度にほぼ全額を経費計上することも可能です。1,000万円の車両を購入すれば、その年の法人利益を丸ごと圧縮できる計算となり、法人税の実効税率を30%とすると約300万円分の法人税が軽減されます。実質的な負担は700万円程度にまで下がることになるのです。

さらに、リセールバリューの高い車種を選んでおけば、数年後に売却して会社にキャッシュを戻し、次の車両購入資金に充てるというサイクルを回すことができます。「経費にして、乗って、売って回収する」という循環を繰り返すことで、役員報酬が低くても、常に高級車に乗り続けることが可能になるのです。

制度を使う際に必ず押さえておくべき注意点

これらの仕組みは非常に強力ですが、使い方を誤ると否認されるリスクがあります。ここからは、実務上必ず押さえておきたい注意点を整理します。

役員社宅制度における「豪華社宅」の壁

役員社宅制度は非常に有効ですが、やりすぎると税務署から「豪華社宅」と認定され、経費計上が認められなくなります。目安として、床面積が240平米を超える物件や、個人邸にプールが設置されているような豪邸は、「経営に必要な社宅ではなく社長の個人的な趣味」とみなされ、家賃相当額の算定ルールが適用されず、実勢家賃をベースに給与課税される可能性があります。ただし、一般的な高級マンションや戸建てレベルであれば問題なく制度の対象となりますので、常識的な範囲で活用する分には安心して使える仕組みです。

社用車のプライベート利用は「レンタル料」で対処する

事業目的で購入した社用車を、休日に家族で使うといったプライベート利用がゼロという経営者はほとんどいないでしょう。何も処理をしていないと、私的利用部分について「給与」と認定され、追加で税金が課される可能性があります。

対処法はシンプルで、社長個人から会社に対して毎月「レンタル料」を支払う形をとることです。金額の目安は、月当たりの減価償却費と維持費の合計に、プライベート使用率を掛けて算出します。例えば月当たりのコストが20万円で、プライベート利用が全体の10%であれば、月2万円のレンタル料を会社に支払う形になります。あわせて運行記録を残し、公私の割合を客観的に証明できるようにしておくことが重要です。

決算対策で車を買う際のタイミング

決算対策として車を購入する場合、絶対に避けたいのがタイミングのミスです。減価償却費は月割で計算されるため、決算月の1ヶ月前に駆け込みで車を購入しても、その期に計上できる減価償却費は12分の1に限られます。1,200万円の車を購入しても、決算月に取得した場合はその期に経費にできるのは100万円分だけということになり、法人税の節税効果はほとんど得られません。

ただし消費税については別で、取得した課税期間に一括で仕入税額控除の対象となるため、状況によっては消費税の還付を受けられる可能性もあります。また、購入時に支払う自動車取得関連費用や保険料、自動車税なども一部は一括で経費計上が可能です。決算月の駆け込み購入は法人税対策としては効果が薄いものの、消費税との兼ね合いで検討する価値はあります。

役員報酬を月30万円に下げたときの実際の変化

ここまで見てきた仕組みを組み合わせると、役員報酬をどこまで下げられるのか、そしてその結果として手元にどれだけキャッシュが残るのかを具体的に確認しておきます。

先ほどの例では、年間1,200万円の役員報酬に対して、税金と社会保険料で約330万円、家賃と車両費で660万円が消えていました。ここで家賃と車両費を会社負担に切り替え、役員報酬を年間360万円(月30万円)に引き下げたとしましょう。

この場合、所得税・住民税は約17万円、社会保険料の個人負担は約53万円、合計約70万円で済みます。税金と社会保険料の負担が約330万円から約70万円へと、260万円も圧縮される計算です。家賃や車両費は会社が負担するため、生活水準を落とすことなく、むしろ自由に使えるキャッシュは増加します。

さらに重要な副次効果として、役員報酬を下げた分の資金は会社に残ります。法人税を支払ったとしても、内部留保、新規投資、次の事業資金として活用できるため、事業の成長エンジンとしても機能します。会社負担の社会保険料も同額減るため、法人側でも年間数十万円規模のコスト削減が実現します。

ただし、役員報酬を下げすぎるのは危険です。毎月の生活資金が不足すると、結果的に会社からお金を借りる事態になりかねず、役員貸付金として金融機関からの評価を大きく下げる要因になります。また、将来受け取る年金額にも影響が出るため、単純に「下げれば得」ではなく、生活費・将来の受給額・金融機関評価を含めた全体のキャッシュフローを見ながら適正水準を設計することが不可欠です。

まとめ

役員報酬を上げれば上げるほど、超過累進課税と社会保険料負担によって、額面の増加分の多くが税金と社会保険料に消えていきます。一方で、役員社宅制度と法人名義での車両購入という2つの仕組みを組み合わせれば、生活水準を落とすことなく、むしろ引き上げながら、個人の税負担と社会保険料負担を大きく圧縮することが可能です。

重要なのは、「個人で稼いで個人で使う」という発想から抜け出し、「法人と個人をトータルで設計する」という視点に切り替えることです。役員報酬の適正水準は、単に節税額だけで決めるものではなく、生活費、将来の年金、金融機関からの評価、事業の資金需要といった要素を総合的に勘案しながら決定していく必要があります。

本稿で紹介した仕組みは、正しく運用すれば非常に強力な資産防衛策となりますが、豪華社宅の判定や車両の私的利用の処理、決算月の購入タイミングなど、実務上の落とし穴も存在します。自社の状況に合わせて最適な形で導入するためには、専門家と相談しながら進めていくことが安全です。

なお、今回解説した「役員報酬を下げて手元現金を最大化する具体的な仕組み」については、動画の中で税理士がさらに詳しく実例を交えながら解説しています。数字のシミュレーションや制度活用のポイントを映像で確認したい方は、ぜひあわせてご覧ください。

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