コインランドリー投資が、企業の計画納税(いわゆる節税)につながるという話を聞いたことあると思います。
しかし、なぜ節税につながるのか、その仕組みがよくわからないと言う方もいらっしゃると思います。また、リスクや落とし穴があると考えてなかなか手を出せないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、今回は、コインランドリー投資が節税につながるしくみを説明した上で、どのようなリスクがあるのか、その中身を検証します。
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1.コインランドリー投資による計画納税のしくみ
1.1.コインランドリー投資とは
コインランドリー投資とは、コインランドリーのオーナーになり、その利用料で収益を得る投資方法の1つです。多くの場合、オーナー自身はランドリー経営には関わらず、収益だけを得るモデルです。
コインランドリー投資の主な特徴は次の通りです。
- 一般的な初期投資額は、3,000万円~4,000万円程度
- 投資初年度に大きな損金を作ることができる
- 国が定めた税制優遇制度の対象なので、税務上のリスクがない
以上から、収益を得ることを目的とした投資以上に、節税目的に適った投資として多くのニーズがあります。
以下、どのようなしくみで節税につながるのか説明します。
1.2.コインランドリー投資がなぜ計画納税につながるか
節税につながる理由は、コインランドリー経営に必要な設備・機械の購入にかかった金額について、以下のどちらかの税制上の優遇措置を受けられる点にあります。
設備・機械とは、具体的には、電気設備や空調設備、洗濯機や乾燥機等、コインランドリー事業に使うものをさします。
1.2.1.即時償却
まず、即時償却です。即時償却とは、減価償却の特例です。詳しくは「即時償却とは?基本のしくみと活用を検討する際のポイント」をご覧ください。
所定の機械設備等を新規導入すると、その購入代金を初年度に全額経費にできる制度です。これは「中小企業経営強化税制」により認められている税制優遇措置です。
通常、設備を購入すると減価償却制度が適用となります。その場合、費用は設備の耐用年数に応じて、複数年で計上されます。
しかし、即時償却では初年度に全額を計上することができます。
コインランドリー投資においては、機械設備の購入金額は、案件によりますが投資額の70%~80%程度です。
たとえば、初期投資額が4,000万円で、機械設備の購入金額が70%であれば、約2,800万円が対象となります。法人実効税率が30%の場合、約840万円の税負担が軽減されます。
1.2.2.税額控除
「中小企業経営強化税制」での税制優遇では、即時償却の他に、税額控除を選択することができます。
税額控除は、法人税額から税額を直接控除する制度で、機械・設備の購入金額の10%をその年度の税額から控除できます。
たとえば、初期投資額が4,000万円で、機械設備の購入金額が2,800万円の場合、通常の減価償却制度に加えて、初年度に税額控除(約280万円)を受けられます。
1.2.3.即時償却と税額控除、どちらが得か
それでは、即時償却と税額控除のどちらを選ぶべきでしょうか。
以下のように考えることをおすすめします。
【即時償却をおすすめするケース】
- 突発的に例年より大きな利益が出た
- 業績の先行きに少しでも不安がある
【税額控除をおすすめするケース】
まず、前提として、トータルの税負担の軽減額で比べると、税額控除の方が有利です。なぜなら、税額控除は、通常の減価償却に加えてさらに税金から購入代金の10%が控除してもらえるのに対し、即時償却はあくまで減価償却費の早期計上に過ぎないからです。
しかし、即時償却は、一気に償却を済ませることにより、当座のキャッシュを確保できるというメリットがあります。
また、今は業績が良くても、将来にわたって安定して利益を出し続けられるとは限りません。不測の事態が起きて業績が急激に悪化することもあり得ます。
税額控除を選択した場合、減価償却を長年にわたって続けることができる保障はないのです。
以上のことからすれば、即時償却をおすすめするのは、突発的に例年より大きな利益が出た場合や、業績の先行きに少しでも不安があるケースです。
これに対し、税額控除をおすすめするのは、利益が安定していて、今後も安定した利益が確実に見込まれるケースです。
1.2.4.税負担軽減のシミュレーション
初年度の税負担がどれだけ軽減されるか、以下の法人の例でシミュレーションしてみます。
- 経常利益:5,000万円
- 何もしない場合の法人税額:1,500万円(実効税率:30%とする)
- コインランドリー初期投資額:4,000万円
- 損金計上額:2,800万円(初期投資額の70%とする)
①即時償却の場合
- 即時償却額:2,800万円(全額)
- 法人税額:(5,000万円-2,800万円)×30%=660万円
- 税負担軽減額:1,500万円-660万円=840万円
②税額控除の場合
- 税額控除:280万円(10%)
- 法人税額:(1,500万円-280万円)=1,220万円
- 税負担軽減額:1,500万円-1,220万円=280万円
2.リスクとその中身の検証
以上、コインランドリー投資の節税効果について説明してきました。一方で、どのようなリスクが考えられるでしょうか。
主に次の3つが挙げられます。
- 税務否認のリスク
- コインランドリーの需要の伸び悩みのリスク
- 経営がうまくいかないリスク
以下、それぞれのリスクの内容について、実際どうなのか検証します。
2.1.税務否認リスクはない
まず、税務否認のリスクはありません。
なぜなら、先述の通り、コインランドリー投資で適用される優遇税制は「中小企業経営強化税制」で認められているからです。
計画の承認を受け、それに従って機械・設備を購入し、事業を行いさえすれば、税制優遇措置を受けることができます。
2.2.コインランドリーの需要の伸び悩みのリスク
コインランドリー投資によって税負担を抑えることができたとしても、投資元本を回収できなければ、結果として損をしてしまうことになります。
そこで、まず、そもそも需要がどの程度あるのか、伸び悩んでいるのではないかという疑問があると思います。
この点については、需要は今後も拡大して行くと考えられます。
直近のコインランドリーの店舗数は毎年5%以上のペースで増えています。その背景には主に以下のような事情があります。
- 共働き世帯の増加
- アレルギー対策としての利用
- 気候の変化
2.2.1.共働き世帯の増加
1つめは、共働き世帯が増えていることにあります。現在、夫婦世帯のうち、共働き世帯は6割を超えています。
一般的に、共働き世帯は家事負担を極力減らしたいと考えるようになります。洗濯は毎日行わず、時間のある週末にまとめて済ませることが効率的と考えます。
そこで、コインランドリーが併設されているショッピングセンターなどへ行った際に、まとめて行うといったことが多くなっていくと思います。
2.2.2.アレルギー対策としての利用
2つめはアレルギー対策です。特に、花粉症対策とダニ対策です。
花粉症対策
特に春先など、洗濯した服や布団をベランダに干すと、スギ花粉が付着します。
花粉症の方は、そのような服や布団で生活するとくしゃみや鼻炎に悩まされることになります。
そこで、コインランドリーの乾燥機を使えば、花粉が付着することなく乾燥させることができます。
ダニ対策
また、コインランドリーはダニ対策にも有効です。ハウスダストアレルギーの方はだいたいダニアレルギーだと言われています。また、ダニは喘息やアトピー性皮膚炎の原因にもなると言われています。
ダニ(チリダニ)は春から急激に増殖し、8月ごろをピークに、10月ころには布団の中には死骸とフンだらけになります。これがアレルギーのもとになります。
ダニは天日干しをしてもほとんど生き残ると言われていますが、死滅させる唯一の方法が、60℃以上の熱を効率的に加え続けることです。コインランドリーの大型乾燥機を使えば、それができます。
さらに、乾燥機は熱風を当て続けるので、布団の中のダニの死骸とフンが吹き飛ばされて一掃されます。
2.2.3.気候の変化
3つめは、ゲリラ豪雨などの不安定な天候です。昨今の温暖化の影響により、ゲリラ豪雨や集中豪雨などの被害が年々増加しています。
そのため、洗濯物を外に長時間干しておくことが難しくなっており、それがコインランドリーの需要につながっています。
2.3.経営がうまくいかないリスク
最後に、経営がうまくいかないリスクです。
これは、コインランドリーのフランチャイズ業者にかかっています。業者選定の際には、以下の3つのポイントを押さえているかに着目することをおすすめします。
- 立地の選定
- 売上・経費のシミュレーションの綿密さ
- 店舗の運営、集客施策等の体制が確立していること
プランの選び方についての詳細は「コインランドリー投資・節税の3つのメリットと収益性を確保するためのポイント」をご覧ください。
ポイント1|立地の選定
まず、立地の選定です。以下のポイントを押さえて選定していることが重要です。
- 駐車場・駐車可能スペースの有無と使い勝手
- 周辺から視認されやすい場所にあること
- 周辺の競合他店の有無・競争力と今後の出店可能性
- 近隣に共働き世帯・一人暮らし世帯が多いこと
駐車場・駐車可能スペースが重要なのは、大量の洗濯物や布団等の大物を持ち込む場合は自動車を使うことが多いからです。
また、認知度が高まれば利用も増加すると言えるので、視認性も重要です。
ポイント2|売上・経費のシミュレーションの綿密さ
売上のシミュレーション
売上は立地に大きく左右されます。
それに加え、その立地条件がどのように売上のシミュレーションと結びついているのかという合理的な説明がなされていなければなりません。
経費のシミュレーション
主なランニングコストには以下のものがあります。
- 賃料
- 水道代・電気代
- メンテナンス代
- 消耗品代(洗剤など)
- 清掃費
- 防犯・警備代
これらがそれぞれいくらかかるのか、将来にわたってどのように変動するのか、合理的な説明が行われる必要があります。
ポイント3|店舗の運営、集客施策等の体制が確立していること
コインランドリー投資では、オーナーは店舗の運営には一切タッチせず、基本的にフランチャイザーに一任することになります。したがって、店舗の運営や集客施策等の体制が確立していることが重要です。
まとめ
コインランドリー投資による計画納税(いわゆる節税)は、中小企業経営強化税制による税制優遇の特例を利用するものです。
初年度に、対象となる機械・設備の購入代金の全額を即時償却するか、あるいは、購入代金の10%の税額控除を受けるかを選択することができます。
即時償却が向いているのは、突発的に大きな利益が出た場合と、今後の経営の先行きに一抹の不安がある場合です。これに対し、税額控除が向いているのは、今後も何があっても継続的に利益を出し続けられることが確実な場合です。
ただし、いずれにしても、投下資本を回収できなければ損をしてしまいます。最も重要なリスクは「経営が上手くいかないリスク」です。立地の選定が確かか、売上・経費のシミュレーションが合理的に行われているか、店舗の経営・集客施策党の体制が確立しているか、などの事情を吟味する必要があります。