歯科医師賠償責任保険とは?3つの補償内容と対象となるケース

歯科医師の方であれば、加入しなければならない保険として、「歯科医師賠償責任保険」という保険の名前を聞いたことがあると思います。しかし、一般的な保険ではありませんし、どういうケースを補償してもらえるのか、どこまでの費用をカバーしてくれるのか、どのように補償を組めば良いのか、なかなかイメージしにくいのではないでしょうか。

歯科医師賠償責任保険は、診療中のミスによる事故や、施設・設備の不備による事故が原因で、患者さんが怪我をするなどして損害賠償責任を求めてきた時に、賠償金等の費用を補償してくれる保険です。

この記事では、歯科医師賠償責任保険について、補償内容、補償されるケースとされないケース、カバーしてもらえる費用の範囲等、基本的な事項を分かりやすくお伝えします。

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保険の教科書 編集部

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1.歯科医師賠償責任保険の3つの補償内容

歯科医師賠償責任保険は、以下の3つの補償を組み合わせた保険です。

  1. 歯科医師の医療ミスが原因の賠償責任に備える補償(医師賠償責任保険
  2. 施設の不備等が原因の賠償責任に備える補償(医療施設賠償責任保険
  3. 補助スタッフの医療ミスが原因の賠償責任に備える補償(医療従事者包括賠償責任保険

勤務医と開業医とで、加入すべき補償が異なります。

勤務医であれば、医師賠償責任保険のみ加入します。

これに対し、開業医は、自分の医療ミスだけでなく、医療施設の欠陥やスタッフのミスについても責任を負う立場にあります。したがって、医師賠償責任保険、医療施設賠償責任保険、医療従事者包括賠償責任保険のすべてに加入することが必要です。

以下、それぞれについて説明します。

1.1.歯科医師の医療ミスが原因の賠償責任に備える補償|医師賠償責任保険

歯科医師賠償責任保険の1つめの補償は、医療ミスが原因で賠償責任を負ってしまった場合に備える補償です。これは「医師賠償責任保険」と呼ばれます。

たとえば、歯科医師の診断ミスによって患者の症状が悪化してしまった場合や、手術ミスによって後遺症を負わせてしまった場合が対象です。

最も分かりやすいのは、治療中に手先が狂ってお客様に怪我をさせてしまうようなケースです。しかし、リスクはそれだけではありません。すぐには分からないリスクもあります。

私は以前、東京都内で開業されている歯科医院様からこんな話をうかがったことがあります。

「一番こわいのは、治療中にミスしたのに気付かずに後でそれが原因で患者さんの身に何かが起きてしまうことです。」

たとえば、インプラント埋入手術(健康保険の対象となる手術)は成功したものの、その一年後にインプラントが取れてしまい、その後に患者さんから医療事故として賠償責任を追及されることがあります。医師賠償責任保険は、そういうケースもきちんとカバーしてもらえる保険です。

なお、開業医で、代表者以外にも勤務医がいる場合、「勤務医師包括担保特約」を付ければ全員をカバーできます。これは常勤・非常勤を問いません。また、勤務医に入れ替わりがあった場合もカバーされます。

1.2.施設の不備等が原因の賠償責任に備える補償|医療施設賠償責任保険

2つめの補償は、医院内(医療施設)の不備・欠陥・管理不足が原因で起こった事故によって損害賠償を負ってしまった場合に備える補償です。「医療施設賠償責任保険」と呼ばれるものです。

これは、勤務歯科医として働いているのであれば無関係ですが、ご自身で歯科医院を経営するようになれば是非とも必要なものです。

たとえば、患者様が来院した際に自動ドアが故障していてぶつかり怪我をさせてしまった場合や、販売した歯ブラシが硬すぎて怪我をさせてしまった場合や、医院内で足を滑らせ転倒し怪我をした場合など、医院内の施設の不備によって起こった事故のため損害賠償をしなければならなくなった時にカバーしてもらえます。

1.3.補助スタッフの医療ミスが原因の賠償責任に備える補償|医療従事者包括賠償責任保険

3つめの補償は、歯科衛生士、歯科技工士等の補助スタッフの医療ミスが原因で患者さんに障害を負わせた場合等に、賠償責任をカバーする補償です。「医療従事者包括賠償責任保険」です。

これも、クリニックを開業したら必要になります。

カバーするスタッフは、補助スタッフの全員です。助手も、直接医療行為に従事することが少ない受付の人も含みます。また、パートやアルバイトの人も含みます。

2.歯科医師賠償責任保険でカバーされるケース

上述のように、歯科医師賠償責任保険は、診療中の事故、施設の不備による事故などによって損害賠償責任を負った場合に、損害賠償金等の費用をかなり広い範囲で補償してくれるものです。

ただし、対象とならないケースもあるので注意が必要です。かいつまんで説明します。

2.1.対象となるのは保険診療のみ

対象となるのは保険診療、つまり、法令上、国の健康保険の対象となっている治療のみです。

歯のホワイトニングや歯列矯正、ヒアルロン酸を唇に注入する美容整形手術等は、「美容を目的とした行為」とみなされると、一般的な歯科医師損害賠償責任保険の対象から外れてしまいます。

ヒアルロン酸注入は明らかに美容目的ですが、若干微妙なのが「ホワイトニング」と「歯列矯正」です。どういうことなのか、少し説明しておきます。

2.1.1.ホワイトニング

ホワイトニングは、単に「白くしたい」というだけであれば美容行為になりますが、そうでない場合もあります。

たとえば「虫歯になりやすい患者に、その予防処置として歯面清掃を行う」という目的でホワイトニングをすれば、これは、保険の対象となる医療行為になります。

ただし、その場合でも、「真っ白にする」「〇〇年補償」などと虫歯予防と無関係な約束をしてしまうと、「美容目的がメインだ!」と見られてしまい、保険の対象外になることがあります。

2.1.2.歯列矯正

歯列矯正も、単に「見栄えを良くする」というだけだと美容目的とされてしまいます。ただし、歯並びを良くすることで虫歯や歯周病を予防するなどの目的がメインであれば、美容目的ではなく、保険の対象となる医療行為になります。

2.2.ミスがあまりに重大だと補償してもらえない(重過失)

ミスがあまりに重大すぎる場合は、「重過失」と言って、「故意」つまり知っていてやった場合と同じと扱われてしまいます。

したがって、ひどすぎるミスのせいで損害が発生した場合には、補償してもらえません。

2.3.保険でカバーしてもらえないケースに備えて貯えを

重過失のケースはともかく、歯科医師賠償責任保険が、国の健康保険の対象外の医療行為ををカバーしてくれないのは深刻な問題です。

損害賠償責任を追及された場合に備え、自前である程度の貯えをしておいていただくしかありません。

3.歯科医師賠償責任保険でカバーしてもらえる費用の範囲

歯科医師賠償責任保険は、賠償責任を負った場合にかかった費用をどこまでカバーしてくれるでしょうか。

基本的な補償範囲は、大まかに、以下の5通りに分けられます。損害賠償金以外の費用も補償されることにご注目ください。

3.1. 損害賠償金

まず、歯科医師賠償責任保険の最も基本的な補償は、損害賠償金自体の補償です。日本国内で治療中に発生した事故、歯科医院内での事故によって発生した損害賠償金がカバーされます。

3.2. 損害を防ぐためにかかった費用

次に、損害が一旦発生したら、損害自体を防ぐ措置をしないと、損害が拡大し、損害賠償金もどんどんかさんでいきます。したがって、損害自体を防ぐ費用や、損害の拡大を防ぐための費用もカバーされます。

3.3. 争訴費用

損害賠償金に関する示談交渉になった場合や、裁判になった場合、どうしても弁護士を雇わなければなりません。その弁護士費用がカバーされます。

また、裁判で負けてしまった場合は、裁判にかかった費用を負担しなければなりませんが、その費用も補償してもらえます。

3.4. 緊急措置費用

事故が起きても、すみやかに応急手当や緊急措置を行えば、結果的に損害賠償責任を負わなくても良くなる場合があります。こういう場合、応急手当や緊急措置に使った費用などを補償してもらえます。

3.5. 協力費用

たとえば、保険金の額をいくらにするか決めるために、保険会社から資料の提出を求められることがあります。この場合、資料を作成したり集めたりするのに費用がかかれば、「協力費用」として補償してもらえます。

4. どこで加入できるか?

歯科医師賠償責任保険は保険の種類でいうと「損害保険」です。この保険を扱っているのは主に損害保険会社と保険代理店です。

おすすめなのは、複数の損害保険会社を扱っている保険代理店にお問い合わせいただくことです。

なお、この保険は取り扱っている保険会社が少ないこともあり、最近では歯科医師会や学会などを通じて加入できることもあります。

まとめ

歯科医師賠償責任保険は、診療中のミスによる事故と、施設・設備の不備による事故が原因で、患者さんに怪我をさせるなどして、損害賠償責任を負ってしまった場合をカバーする保険です。

3つの保険の集合体で、医師の医療ミスによって事故が起きた場合をカバーする保険(医師賠償責任保険)、医院の施設の不備等が原因で事故が起きた場合をカバーする保険(医療施設賠償責任保険)、医師以外の補助スタッフのミスによって事故が起きた場合をカバーする保険(医療従事者包括賠償責任保険)がセットになっています。勤務医であれば医師賠償責任保険に、開業医であれば3つの保険すべてに加入する必要があります。

ただし、カバーしてもらえるのは保険診療のみで、美容目的等での施術は対象外となることに注意が必要です。

補償してもらえる費用は、損害賠償金それ自体だけでなく、損害を防ぐための費用や、裁判にかかる費用等も含まれます。

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