不動産売却・相続の節税対策|3,000万円控除と小規模宅地等の特例を解説

執筆 社長の資産防衛チャンネル編集チーム監修 税理士法人グランサーズ公開 2025年12月10日
不動産売却・相続の節税対策|3,000万円控除と小規模宅地等の特例を解説
不動産売却・相続の節税対策|3,000万円控除と小規模宅地等の特例を解説

不動産は、人生で最も大きな買い物であると同時に、売却や相続の際には、最も大きな税負担を生む可能性のある資産でもあります。

「家を売却したら、思っていた以上に税金がかかって手取りが減ってしまった」

「実家を相続したら、相続税が払えなくて困った」

このような事態は、決して他人事ではありません。

しかし、不動産に関する税制には、私たちの生活基盤を守るために、税負担を大幅に軽減する強力な「特例」が用意されています。

これらの特例を知っているか知らないか、そして正しく使えるかどうかで、納税額には数百万円、場合によっては数千万円もの差が生じます。

まさに「知らなきゃ大損」の世界なのです。

この記事では、マイホームを売却する際に利益から最大3,000万円を差し引ける「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と、土地を相続する際にその評価額を最大80%も減額できる「小規模宅地等の特例」という、絶対に押さえておくべき2大特例について、その仕組みと適用要件、注意点を詳しく解説していきます。

1.マイホーム売却で使える「3,000万円特別控除」の威力

まずは、マイホーム(居住用財産)を売却した際に利用できる、最もポピュラーかつ強力な特例です。

特例の概要と節税効果

通常、不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、所有期間に応じて約20%(長期譲渡所得)または約40%(短期譲渡所得)の税金がかかります。

しかし、この特例を使えば、所有期間の長短に関わらず、譲渡所得から最高3,000万円まで控除することができます。

つまり、売却益が3,000万円以下であれば、税金は一切かかりません。

仮に、購入時より値上がりして3,000万円の利益が出た場合、特例が使えなければ(短期譲渡所得なら)約1,200万円もの税金を払う必要がありますが、特例を使えば0円で済むのです。

手元に残る現金が1,000万円以上変わる、非常にインパクトの大きい制度です。

見落としがちな適用要件

この特例を受けるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

  • 対象不動産:自分が住んでいる家屋、または家屋とともにその敷地を売却すること。
  • 売却先:配偶者や直系血族(親、子、孫など)以外の第三者であること。

そして、最も注意が必要なのが「売却のタイミング(期限)」です。

現在住んでいる家を売る場合は問題ありませんが、転勤や住み替えなどで引っ越してしまい、空き家になった家を売る場合は、期限があります。

それは、「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売却しなければならない、というルールです。

例えば、2025年3月に引っ越した場合、3年後の2028年12月31日がリミットです。

「いつか売れればいい」と放置して期限を過ぎてしまうと、この特例は使えなくなり、多額の税金を払うことになります。

さらなる節税:「軽減税率の特例」

マイホームを売却した年の1月1日時点で、所有期間が10年を超えている場合は、3,000万円の特別控除を適用した後の課税譲渡所得に対して、さらに低い税率が適用されます。

通常約20%の長期譲渡所得税率が、6,000万円以下の部分について約14%(所得税10%+住民税4%)まで軽減されます。

長く住んだ家を売る場合は、ダブルで恩恵を受けられる可能性があります。

忘れずに計上したい「譲渡費用」

特例ではありませんが、売却益(譲渡所得)を計算する際、売却にかかった費用を差し引くことができます。

  • 仲介手数料
  • 売買契約書の印紙代
  • 土地の測量費
  • 建物の解体費(土地として売る場合)

これらの領収書は必ず保管し、漏れなく経費として計上することで、課税所得を圧縮し、節税に繋がります。

2.相続税を劇的に下げる「小規模宅地等の特例」

次に、親から不動産を相続する際に、相続税評価額を大幅に下げることができる特例です。

特例の概要と効果

「小規模宅地等の特例」とは、亡くなった方(被相続人)が自宅や事業に使っていた土地を、一定の要件を満たす親族が相続した場合、その土地の評価額を最大80%減額できる制度です。

相続税は、財産の評価額に対して課税されます。

土地の評価額が80%減るということは、例えば評価額5,000万円の土地が、相続税の計算上はわずか1,000万円の価値として扱われることを意味します。

これにより、相続財産の総額が基礎控除額を下回り、相続税が0円になるケースも少なくありません。

土地の用途による3つの区分

この特例は、土地がどのように使われていたかによって、減額される割合や面積の上限が異なります。

【図表】小規模宅地等の特例の主な区分

 

①特定居住用宅地等(自宅の敷地)

最も利用頻度が高いのがこの区分です。

配偶者が相続する場合は無条件で適用されますが、同居親族が相続する場合は「相続税の申告期限まで住み続け、かつ所有し続けること」などの要件があります。

また、同居していない親族(いわゆる「家なき子」)でも、一定の厳しい要件を満たせば適用できる場合があります。

なお、被相続人が老人ホームに入居していた場合でも、要件を満たせば適用可能です。

②特定事業用宅地等(事業の敷地)

店舗や工場など、事業に使っていた土地です。

相続人がその事業を引き継ぎ、申告期限まで事業を営み、土地を所有し続けることが条件です。

③貸付事業用宅地等(アパート等の敷地)

アパート経営や駐車場経営などに使っていた土地です。

ただし、「相続開始前3年以内に貸付を始めた土地」は、原則として対象外となります(節税目的の駆け込み対策を防ぐため)。

また、親族に相場より著しく安い賃料で貸していた場合なども、適用が認められないことがあるため注意が必要です。

これらの特例は、面積の上限内であれば併用も可能ですが、計算が複雑になるため、専門家への相談が必須です。

3.特例活用前に押さえるべき相続税対策の基本

これらの特例は非常に強力ですが、そもそも相続税がかからないのであれば、気にする必要はありません。

まずは、相続税の「基礎控除」を理解しておきましょう。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続財産の合計額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかかりませんし、申告も不要です。

例えば、相続人が妻と子2人の計3人であれば、4,800万円までは非課税です。

また、配偶者が財産を取得する場合、「配偶者の税額軽減」という制度により、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い額までは、相続税がかかりません。

一次相続(両親のどちらかが亡くなった時)では、この制度のおかげで税金が発生しないことも多いですが、次の二次相続(残された親も亡くなった時)では使えないため、トータルでの対策が必要です。

生前贈与との関係に注意

相続税対策として「生前贈与」を行う方も多いですが、注意点があります。

相続時精算課税制度を利用して土地を生前贈与した場合、その土地は「相続ではなく贈与で取得した」とみなされ、小規模宅地等の特例が使えなくなってしまいます。

将来、値上がりが確実な土地などであればメリットもありますが、特例による80%減額の恩恵を捨てることになるため、慎重な判断が必要です。

まとめ

不動産の売却や相続においては、「3,000万円特別控除」や「小規模宅地等の特例」といった特例を適用できるかどうかが、手元に残る資産額を大きく左右します。

  • マイホーム売却:

利益が出たら3,000万円控除を検討。住まなくなってから3年目の年末という期限を忘れないこと。

  • 不動産相続:

小規模宅地等の特例で評価額を80%減額できる可能性を探る。誰が相続するか、その後の利用状況が要件に関わる。

これらの特例は、適用要件が複雑で、一つ間違えれば適用外となるリスクもあります。

「知らなかった」「期限を過ぎてしまった」で数百万円を損しないためにも、不動産の売却や相続が発生しそうな段階で、早めに税理士に相談し、シミュレーションを行っておくことが、賢明な資産防衛策と言えるでしょう。

この記事で解説した内容は、以下の動画で税理士がより詳しく解説しています。具体的な事例やさらに詳しい情報を知りたい場合に、参考にしてください。

動画でも解説しています

社長の資産防衛チャンネルでは、税理士が同じテーマをより詳しく解説しています。 文字で追いきれなかったところは、動画でご覧ください。

社長の資産防衛チャンネルを見る →

執筆・監修

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー等の資格を持つメンバーで構成されています。
監修体制を詳しく見る →
制度活用

相続税が払えず自己破産?滞納が急増する理由と回避するための生前対策

「相続」は、誰の身にも起こりうる、人生の重要な節目です。 親から大切な財産を受け継ぐ一方で、多くの人が直面するのが「相続税」の問題です。 近年、この相続税を納付できずに「滞納」してしまうケースが年々増加しており、その額は…

2025年11月14日
制度活用

事業承継の税金対策|オペレーティングリースで自社株評価を下げる方法

長年かけて大切に育て上げてきた会社を、いずれは後継者である子どもに引き継いでほしい。そう願うオーナー経営者にとって、避けては通れない大きな壁が、事業承継に伴う「税金」の問題です。 特に、業績が好調で、内部留保が厚い優良企…

2025年10月23日
制度活用

資産管理会社を作って大幅節税する仕組みとは?富裕層が実践する「プライベートカンパニー」活用の秘訣

「富裕層やオーナー経営者は、なぜわざわざ資産管理会社(プライベートカンパニー)を作るのか?」「個人の資産なのだから、個人で管理すれば十分ではないか?」 多くの人が疑問に思うこの点ですが、実はそこには税制上の明確な理由があ…

2026年2月24日
制度活用

相続税の追徴課税が急増中!国税AIに見抜かれる「申告漏れ」の真実と対策

「自分にはまだ早い」「うちはそんなに資産がないから大丈夫」相続税について、そのように考えてはいませんか?しかし、国税庁の発表によると、相続税の税務調査が行われた案件のうち、なんと85%以上で申告漏れなどの不備が指摘され、…

2025年12月23日
相続

不動産小口信託受益権を活用し相続対策と資産運用を同時に行う方法

相続または生前贈与においては、現金そのままの形よりも不動産にした方が、相続税・贈与税の負担は抑えられます。 中でも「不動産小口信託受益権」のスキームを利用することで、不動産収入を得ながら、同時に相続税の節税を行うことが可…

2024年10月3日
相続

相続税について必ず知っておきたい9つの重要ポイント

相続税法の改正法が平成27年1月から施行され、相続税の課税対象が広がりました。その結果、これまで相続税を支払わなくてもよいはずだった人も相続税を気にしなければならなくなりました。 不動産等のある程度大きな財産を持っている…

2021年5月31日
制度活用

事業承継の成否は「株価」で決まる!自社株評価を下げて後継者に資産を渡す7つのスキーム完全版

「創業以来、無我夢中で会社を大きくしてきた。おかげで利益も積み上がり、財務内容は盤石だ」経営者として、これほど誇らしいことはありません。しかし、こと「事業承継」という局面においては、その優良な財務内容が、逆に会社を存続の…

2026年2月13日
相続

2026年税制改正で不動産節税が大きく変わる|相続税評価見直しの全貌と緊急対策

「儲かったら不動産を買って相続税対策」――経営者や資産家の間で長年常識とされてきたこの戦略が、2026年(令和8年)の税制改正によって根本から揺らごうとしています。特に富裕層に人気の「不動産小口化商品」や「相続直前に取得…

2026年7月13日
通話料無料で今すぐ電話で相談予約フォームから無料相談予約