法人名義での投資信託|個人とは違う5つのメリットと注意点を解説

新NISA制度の開始などをきっかけに、個人の資産運用への関心が急速に高まっています。その中でも「投資信託」は、専門家が運用を行う手軽さから、多くの方が活用している金融商品です。では、この投資信託を、個人としてではなく、会社(法人)として運用することに、どのような意味があるのでしょうか。

「法人で投資信託を始めると、何か節税メリットはあるのか?」「個人でNISAを使うのと、どちらが得なのか?」

このような疑問をお持ちの経営者の方も多いかもしれません。結論から言うと、法人で投資信託を運用することには、個人にはない、税務上の大きなメリットが存在します。しかし、その一方で、個人であれば受けられる恩恵が受けられなくなるといった、特有のデメリットや注意点も存在します。

この記事では、法人が投資信託を運用する場合の5つのメリットと、必ず知っておくべき3つの注意点を詳しく解説します。その上で、どのようなケースであれば、法人での運用が有利になるのか、その判断基準を明確に示していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

1.法人で投資信託を運用する5つのメリット

法人で投資信託を運用することには、主に以下の5つのメリットが考えられます。

①本業の利益と投資信託の損失を「損益通算」できる

これが、法人で運用する最大のメリットと言えるでしょう。個人の場合、投資信託の運用で損失が出たとしても、その損失を、給与所得や事業所得といった他の所得と相殺(損益通算)することはできません。

しかし、法人の場合、会計上の所得区分という概念がありません。本業で得た利益も、投資信託の運用で生じた損失も、すべて同じ会社の中で発生した「益金」と「損金」として扱われます。そのため、両者を合算して、会社全体の所得を計算することが可能です。

例えば、

  • 本業の事業利益:+300万円
  • 投資信託の売却損:-200万円といった場合、これらを相殺した100万円が、その期の法人の課税所得となります。投資信託で損失が出たとしても、その損失が本業の利益を圧縮し、結果として法人税の負担を軽減する効果があるのです。逆に、本業が赤字で、投資信託で利益が出た場合も、同様に相殺が可能です。

②経費として認められる範囲が広くなる

個人が投資信託で利益を得た場合、その利益は「配当所得」や「譲渡所得」に分類されます。これらの所得区分では、経費として認められる範囲が非常に狭く、基本的には証券会社に支払う手数料程度に限られます。投資信’託を学ぶための書籍代やセミナー代、情報収集に使うPCや通信費などは、原則として経費にできません。

一方、法人の場合は、これらの支出も、事業運営に必要であると合理的に説明できれば、すべて会社の経費(損金)として計上することが可能です。投資信託で大きな利益が出たとしても、他の事業で発生した様々な経費と相殺することで、課税所得をコントロールしやすくなります。

③分配金の一部が非課税(益金不算入)になる場合がある

法人が、他の法人(投資信託を含む)から配当金や分配金を受け取った場合、その一部または全部が、法人の利益(益金)に含めなくてもよい、という「受取配当等の益金不算入制度」があります。これは、配当の原資となる利益に対して、支払う側の法人と、受け取る側の法人の双方で、二重に法人税が課されるのを防ぐための制度です。

投資信託の分配金(普通分配金)の場合、その20%相当額が、益金不算入の対象となる可能性があります。これにより、分配金にかかる法人税の負担を軽減できます。ただし、この制度が適用されるのは、「特定株式投資信託」など一部の投資信託に限られ、外国株式指数に連動するものなどは対象外となるため、注意が必要です。

④損失(赤字)を最大10年間繰り越せる

法人の場合、事業年度全体で赤字(税務上は「欠損金」)が出た場合、その赤字を翌年以降、最大10年間にわたって繰り越すことができます。そして、将来の事業年度で黒字が出た際に、この繰り越してきた欠損金と黒字を相殺し、課税所得を圧縮することが可能です(欠損金の繰越控除)。

投資信託で大きな損失が発生し、その年の本業の利益と相殺してもなお赤字が残る場合でも、その赤字を無駄にすることなく、将来の節税に繋げることができます。(※個人の場合、国内株式投資信託等の損失は3年間繰り越せますが、そもそも他の所得との損益通算ができません。)

⑤銀行融資などを活用したレバレッジ運用が可能になる

個人で投資信託を購入する場合、その原資は基本的に自己資金に限られます。しかし、法人の場合は、金融機関から事業資金として融資を受け、その一部を資産運用の原資とすることも、経営判断として可能です。借入金を活用して、より大きな元本で運用することで、将来的に大きなリターンを得られる可能性があります。

ただし、これは諸刃の剣です。投資信託の運用に失敗し、元本割れするほどの損失が出た場合、借入金の返済が、会社の資金繰りを著しく悪化させるリスクも伴います。借入金を活用した運用は、入念な計画と、慎重なリスク管理が不可欠です。

2.法人で投資信託を運用する際の3つの注意点

多くのメリットがある一方で、法人で投資信託を運用する際には、個人にはない、特有のデメリットや注意点も存在します。

①NISA(ニーサ)や特定口座が利用できない

これが、法人で運用する際の最大のデメリットと言えるでしょう。

  • NISA口座の不適用:個人であれば、NISA(少額投資非課税制度)を活用し、年間最大360万円、生涯で1,800万円までの投資で得た利益を、完全に非課税にすることができます。法人の場合は、この極めて有利な制度を利用することができません。
  • 特定口座の不適用(一般口座のみ):個人が証券口座を開設する際には、年間の損益計算を証券会社が代行してくれる「特定口座」を選択できます。しかし、法人が利用できるのは、自身で全ての取引の損益を計算し、確定申告を行う必要がある「一般口座」のみです。取引回数が多くなると、その事務負担は非常に大きくなります。

②個人よりも税率が高くなる可能性がある

個人の場合、投資信託の利益にかかる税率は、一律20.315%の申告分離課税です。一方、法人の場合、投資信託の利益は他の事業利益と合算され、法人税(実効税率で約25%~34%程度)が課されます。

単純な税率だけを比較すると、法人の方が、個人よりも高い税率が適用されることになります。もちろん、法人の場合は、損益通算や経費計上の範囲が広いといったメリットがあるため、一概にどちらが不利とは言えませんが、この基本的な税率の違いは、必ず認識しておく必要があります。

【図表】個人と法人の税率比較

③「含み益」が課税対象になる可能性がある

個人の場合、保有している投資信託にどれだけ含み益が出ていても、実際に売却して利益を確定させない限り、税金はかかりません。しかし、法人の場合は、その投資信託の保有目的が「短期的な売買目的」であると判断された場合、決算期末時点での「含み益」に対しても、法人税が課税される「期末時価評価課税」というルールがあります。まだ実現していない利益に対して課税されるリスクがある点は、法人ならではの注意点です。

3.個人と法人、投資信託はどちらで運用すべきか?

それでは、結局のところ、投資信託は個人と法人のどちらで運用するのが良いのでしょうか。それは、個々の状況や目的によって異なりますが、以下のようなケースでは、法人での運用が有利に働く可能性があります。

  • 本業で安定した利益が出ており、リスクヘッジをしたい場合:本業の利益を、投資信託の損失と相殺できるため、ポートフォリオ全体のリスクを管理しやすくなります。
  • 経費計上や節税策で、税率差をカバーできる場合:法人の税率が個人より高いというデメリットを、経費計上の範囲の広さや、他の多様な節税策で相殺できる見込みがある場合。
  • 借入金を活用し、大きなリターンを狙いたい場合:レバレッジを効かせた運用を、リスクを理解した上で行いたい場合。

逆に、非課税の恩恵を最大限に受けたいNISA口座を活用したい場合や、申告の手間を省きたい場合、あるいは、短期的な売買を繰り返したい場合は、個人での運用の方が向いていると言えるでしょう。

まとめ

法人名義で投資信託を運用することには、「本業との損益通算」「経費範囲の拡大」「分配金の益金不算入」「欠損金の長期繰越」「借入金の活用」といった、個人にはない5つの大きなメリットが存在します。これらは、会社の利益を平準化し、税負担をコントロールする上で、非常に有効なツールとなり得ます。

しかし、その一方で、「NISA・特定口座が使えない」「税率が個人より高い」「含み益に課税されるリスクがある」といった、明確なデメリットも存在します。法人での投資信託運用を検討する際は、これらのメリットとデメリットを天秤にかけ、自社の財務状況や投資戦略、そして社長個人の資産形成プランと照らし合わせて、総合的に判断することが不可欠です。

特に、個人のNISA口座という極めて有利な非課税制度が存在する現在においては、その活用を優先した上で、それでもなお法人で運用するメリットがあるのかを、慎重に見極める必要があるでしょう。

この記事で解説した内容は、以下の動画で税理士がより詳しく解説しています。具体的な事例やさらに詳しい情報を知りたい場合に、参考にしてください。

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