売上があっても資産が残らない社長と、地味でも1億円残す社長を分ける3つの財務習慣

売上は順調に伸びているはずなのに、なぜか手元にお金が残らない——そんな悩みを抱えている経営者は少なくありません。一方で、派手さはなくとも着実に資産を積み上げ、会社にも個人にもしっかりとお金を残している社長も存在します。両者を分ける違いは、カリスマ性や営業力ではありません。決定的な差は「財務に対する向き合い方」にあります。

本記事では、資産を守り増やしていく経営者に共通する3つの特徴を、財務の視点から解説していきます。難しい計算式は必要ありません。ポイントを押さえるだけで、会社の数字の見方が大きく変わるはずです。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

特徴1:損益計算書(PL)ではなく貸借対照表(BS)を重視する

「利益が出ている」と「お金がある」は別の話

多くの社長が毎日のように売上の数字を確認し、利益が出ていれば安心し、減れば焦るという行動を繰り返しています。しかし、売上が上がった瞬間に手元に現金が入ってくるわけではありません。掛取引が中心の会社であれば、入金は翌月や翌々月になります。

損益計算書(PL)上の売上や利益は、あくまで「儲かったことになっている」という記録に過ぎず、手元に現金があるかどうかとは別の話です。

資産を残す社長は、PLよりも営業キャッシュフローと貸借対照表(BS)を重視しています。利益が出ていても現金がなければ会社は潰れるという現実を、深く理解しているからです。

BSで見るべきは「たった3つのポイント」だけ

BSと聞くと、複雑な表を隅々まで読み解かなければならないと感じるかもしれません。しかし、すべてを見る必要はありません。

成功する社長が注視しているのは、次の3つだけです。

見るべきポイント 具体的にチェックする内容
現預金の推移(今あるお金) 単純な残高だけでなく、月商の何ヶ月分を保有しているか。増減の傾向はどうか
借入金の返済予定(これから出るお金) 向こう1年間でキャッシュがどれだけ減るか。税引き後利益で返済を賄えるか
売掛金・在庫の回収状況(動いていないお金) 回収が滞っている売掛金はないか。在庫として資金が拘束されていないか

特に注意すべきなのが、借入金の元本返済に関する誤解です。

意外と勘違いしている経営者が多いのですが、借入金の元本返済は経費になりません。経費として計上できるのは利息部分だけです。元本は「税金を払った後に残ったお金」から返すしかないのです。

つまり、「利益が出ている=返済できる」ではありません。税引き後のキャッシュが返済額より少なければ、会社のお金は毎月確実に減っていきます。

見るべきは「利益が出ているか」ではなく、「税引き後のキャッシュで返済を賄えるか」という視点です。

在庫は「資産」ではなく「眠っているお金」

在庫は会計上、資産として計上されます。しかし財務的に見れば、お金が形を変えて眠っている状態、つまり資金が拘束されている状態です。在庫が増えるということは、それだけ手元のキャッシュが減っていることを意味します。成功する社長は在庫を「生鮮食品」のように捉えています。早く現金化しなければ価値が下がっていくものだという認識です。

営業キャッシュフローがマイナスの時にやるべきこと

特に危険なのが、営業キャッシュフローがマイナスになっている状態です。これは本業で商売をすればするほどお金が減っている状況を意味します。このような局面でまずやるべきは、手元の現金を増やすことに集中することです。本業でお金が入る仕組みを整え、無駄な支出は徹底的に止めます。支払いの優先順位を見直す、売掛金の回収を早める、在庫の圧縮を進めるといった対応が優先です。

営業キャッシュフローがマイナスの状態で高級車の購入や保険加入といった支出を行うのは、出血多量で倒れそうな時にさらに血を抜くようなものです。

投資や節税は、本業で現金が増える体質に戻ってから考えるべきことです。調子が悪い時に一発逆転を狙って投資してしまうのはありがちな行動ですが、それが命取りになりかねません。

特徴2:過去の意思決定に対して冷酷である——損切り力が資産を守る

「もったいない」が未来を殺す

2つ目の特徴は、自らの過去の判断に対して冷酷であるということです。いわゆる「損切り力」です。

「せっかく投資したのにもったいない」「昔はこれで儲かっていた」——こうした感情に縛られて、不良在庫や赤字事業を抱え続けてしまう社長は少なくありません。

しかし、資産を残す社長はサンクコスト(埋没費用)、つまり過去にいくら投じたかという事実を判断基準に入れません。

判断基準はたった一つ。「それが将来、現金を生むかどうか」だけです。

たとえば、売上がまったく出ていない設備が残っていれば、その維持費や固定資産税が、新しいチャンスへの投資を阻害している可能性があります。

過去への執着が未来の可能性を潰しているのです。

損切りは有効な節税対策にもなる

実は、こうした損切りはかなり有効な節税対策にもなります。

会計上、資産を処分したり評価を下げたりすると損失として計上されます。損失が出れば会社の利益が減り、支払う法人税も減少します。無駄なものを抱えて税金を払い続けるよりも、損失を計上して税負担を軽減し、手元のキャッシュを守る方が合理的です。

具体的に活用できる損失には以下のようなものがあります。

①除却損は、使っていない機械やソフトウェア、車両などを物理的に処分して経費化する方法です。保有しているだけで固定資産税がかかっている場合もあり、処分することで二重のコスト削減につながります。

ただし、「実際に使用していない」「処分した」という事実を証拠として残しておく必要があります。

②評価損は、処分が難しい在庫であっても、売れる見込みがない、あるいは著しく価値が下がっている場合に、帳簿上の価値を引き下げて損失を計上する方法です。売れもしない在庫を資産として計上し続けて税金を払うのは、まさに踏んだり蹴ったりの状態です。

さらに、事業撤退に伴う原状回復費なども損失として計上できます。ダラダラと赤字事業を続けるよりも、スパッと撤退してそのコストで税負担を軽減した方が、傷は浅く済みます。

ただし、除却損も評価損も、客観的な証拠がなければ税務調査で否認される可能性があります。実務では必ず税理士に相談しながら進めることが重要です。

特徴3:出口戦略から逆算し、簿外に資産を退避させる

会社にお金を溜め込むリスク

3つ目の特徴は、出口戦略(イグジット)から逆算して、資産を簿外へ退避させているということです。

「出口なんてまだ先の話だ」と感じる方も多いでしょう。しかし、出口とは事業承継か、M&Aによる売却か、廃業か——この3つしかありません。

ここを考えずに漠然と会社にお金を溜め込んでいると、後になって想定外の税金問題に直面するケースが多発しています。会社の中に現預金が積み上がり、純資産が膨らむと、自社株の評価額が跳ね上がります。

上場企業であれば株価の上昇は喜ばしいことですが、非上場の中小企業にとっては深刻な問題を引き起こします。息子や従業員に会社を引き継がせる際、株価が高ければ、贈与税や相続税がとんでもない金額になるのです。最悪の場合、税金を払うために会社の資産を切り売りしたり、会社を解散せざるを得なくなったりします。

これは「黒字企業の承継倒産」と呼ばれる現象です。黒字なのに承継で倒産する——笑い事ではありません。

簿外資産という考え方

「お金は残したいが、会社に溜め込みたくない」一見矛盾するこの課題を解決するのが、簿外資産という考え方です。

経費として計上して利益を圧縮しながら、会社の外にお金を積み立てておく。そして、承継のタイミングや必要な時に戻せるようにしておくという方法です。

金庫の置き場所を会社の中から外に移すイメージです。

たとえば、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、掛金を全額損金に算入しつつ、最大800万円まで積み立てが可能です。40ヶ月以上加入していれば解約手当金として全額が返ってくるため、実質的な簿外資産として活用できます。

より大きな金額を動かせる方法としては、オペレーティングリースがあります。

航空機などの減価償却資産を活用した賃貸借取引で、数千万円から数億円単位の金額を一括投資し、出資初年度から2〜3年目までに損金として算入できます。リース満了時には資産売却による分配金が発生し、お金が会社に戻ってくる仕組みです。

こうして会社の中に現金を溜め込まず、簿外に資産を形成することで、自社株の評価を抑え、事業承継時の税負担を軽減できるのです。

出口は「退職金」で受け取る

簿外資産を活用する場合、繰り延べた利益の「出口」が必要になります。この出口として有効なのが、退職金です。簿外に退避させていた数千万円から億単位のお金を、最終的に社長個人の退職金として受け取る方法です。退職金は税制上、非常に優遇されています。退職所得控除が適用されるうえ、課税対象が2分の1になり、他の所得と分離して課税されます。仮に1億円を通常の役員報酬として受け取れば、所得税・住民税で半分近くが消えてしまいます。しかし「簿外資産からの戻し×退職金」の組み合わせを活用すれば、手元に大部分を残せる可能性が生まれます。

まとめ

売上があっても資産が残らない社長と、地味でも着実にお金を残す社長の違いは、3つの財務習慣に集約されます。

第一に、PLではなくBSを重視し、現預金・借入金の返済予定・売掛金と在庫の3点に注目してキャッシュの実態を正確に把握すること。

第二に、過去の意思決定に対して冷酷であること。サンクコストに囚われず、将来現金を生まないものは損切りし、その損失を節税に活用してキャッシュを守ること。

第三に、出口戦略から逆算して簿外に資産を退避させ、自社株の評価を抑えながら、最終的には退職金として税制優遇を受けて個人に資産を移すこと。

いずれも特別な才能や高度な知識を必要とするものではありません。大切なのは、感覚や勢いではなく、数字に基づいた冷静な判断を日常の経営に組み込むことです。

まずはBSを開いて、現預金の推移を確認するところから始めてみてください。それだけで、会社の実態が見えてくるはずです。

本記事で取り上げた内容については、税理士が動画でより詳しく、具体的な事例を交えながら解説しています。BSの見方や損切りの実務、簿外資産の活用法について、さらに深く理解したい方はぜひ動画もあわせてご覧ください。

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