「今期は過去最高益が出そうだ。しかし、このままでは法人税でキャッシュがごっそり減ってしまう…」「来期以降の不況に備えて、内部留保を厚くしたいが、税金を払った後では資金が貯まらない」
経営者にとって、利益が出ることは最大の喜びであると同時に、納税による資金流出の悩みとの戦いでもあります。日本の法人税率は実効税率で約30%〜34%。稼いだ利益の3分の1が、税金として会社から出ていってしまうのが現実です。
そこで、賢い経営者がこぞって活用しているのが「簿外資産(ぼがいしさん)」です。簿外資産とは、税法に則った正しい会計処理を行った結果、経費として処理され、決算書(貸借対照表)には資産として計上されないにもかかわらず、実質的な換金価値を持つ資産のことを指します。
つまり、税金を払う前の利益を「見えない資産」に変えて会社の中にプールし、将来の赤字補填や大規模投資、あるいは役員退職金の原資として、好きなタイミングで再び利益に戻して使うことができるのです。いわば、会社を守るための「秘密の貯金箱」です。
今回は、数万円から始められる手軽なものから、億単位の利益を一瞬で処理する強力なスキームまで、7つの簿外資産の作り方を、そのメカニズムとともに徹底解説します。
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1.【王道にして最強】経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
まず、すべての黒字企業が検討すべき基本中の基本が「経営セーフティ共済」です。中小機構(国)が運営する制度であり、その安全性と確実性は他の追随を許しません。
「全額損金」で簿外に現金を貯める仕組み
この制度の最大の特徴は、支払った掛金が「全額損金(経費)」になる点です。通常、積立金や貯蓄性のある保険などは、資産計上され経費にはなりません。しかし、経営セーフティ共済は、掛金(月額5,000円〜20万円)を全額経費にしながら、解約時には「掛金の100%」が戻ってくるのです(※40ヶ月以上の加入が条件)。
帳簿上は「経費」として消えていますが、実際には中小機構に「現金」が積み上がっている状態。これぞまさに、教科書通りの簿外資産です。
「年払い」活用で最大460万円を経費化する裏ワザ
この制度には、向こう1年分の掛金を前納(一括払い)できる仕組みがあります。これを活用すると、決算月に駆け込みで大きな節税が可能です。
- ステップ1:決算月に加入し、当月分(20万円)を支払う。
- ステップ2:同時に、翌年1年分(240万円)を前納する。
- 結果:初年度から合計260万円を一気に損金計上できる。
さらに、すでに加入している企業でも、決算月に掛金を増額して年払いに切り替えることで、最大年460万円(当期分+翌期分)の経費を作ることが可能です。積み立て上限は800万円ですので、最短2年弱で満額の簿外資産を作ることができます。
【2024年改正の注意点】非常に使い勝手の良い制度ですが、令和6年度の税制改正により、「解約したあと、再加入して再び損金算入するには2年間の待機期間が必要」という制限が設けられました。「頻繁に解約と再加入を繰り返して利益調整をする」という使い方はできなくなったため、解約のタイミング(出口戦略)はより慎重に計画する必要があります。
2.【実益と資産性】リセールバリューの高い中古社用車
「4年落ちのベンツ」がなぜ社長に人気なのか。それは単なる見栄ではなく、極めて合理的な税務戦略に基づいています。
「定率法」のマジックで最短1年償却
法人の減価償却(定率法)において、中古資産は耐用年数を短縮できる特例があります。法定耐用年数(普通車6年)を過ぎた中古車は、「法定耐用年数×20%」で計算します。6年×20%=1.2年→2年(端数切捨て、最低2年)
耐用年数2年の定率法償却率は「1.000(100%)」です。つまり、購入した金額の全額を、その事業年度の経費として一括計上できるのです。(※減価償却は月割り計算のため、期首に購入することで100%経費化が可能になります)
帳簿価格1円、実勢価格数百万円の資産
償却が終わると、帳簿上の車の価値は「1円(備忘価額)」になります。しかし、ここからがポイントです。ベンツのGクラスやアルファード、レクサスLXなどの人気車種は、中古市場での価値が非常に落ちにくい(リセールバリューが高い)という特徴があります。帳簿上は1円の価値しかありませんが、いざ売却すれば数百万円、時には購入時と変わらない価格で現金化できます。車として実用しながら、万が一の際の換金資産を保有できる、非常に優秀な簿外資産です。
3.【即時償却】太陽光発電投資(福島復興特例)
環境投資としても意義のある太陽光発電ですが、特定の制度を活用することで、強力な節税商品へと変貌します。
「福島復興再生特別措置法」で投資額の約90%を即時償却
通常、太陽光発電設備の耐用年数は17年ですが、「福島復興再生特別措置法」に基づく認定を受けた地域の設備に投資することで、「即時償却(100%経費化)」が可能になります。土地代は減価償却できませんが、設備代金(投資総額の約90%相当)を一気に損金算入できます。
例えば、2,500万円の投資案件(うち設備費2,250万円)を購入した場合、初年度に2,250万円の赤字を作ることができます。実効税率30%と仮定すれば、約675万円の法人税を節税(キャッシュアウト回避)できる計算です。
20年間の安定収入(FIT)
太陽光発電のもう一つの魅力は、FIT(固定価格買取制度)により、20年間にわたって安定した売電収入が得られる点です。「節税で手元のキャッシュを守りつつ、将来にわたってチャリンチャリンと収益を生む資産を持つ」この2つのメリットを同時に享受できるのが強みです。ただし、特例措置には期限があるため、検討の際は最新情報の確認が必須です。
4.【不動産投資の入門編】トレーラーハウス投資
「不動産投資には興味があるが、建物は償却期間が長くて節税効果が薄い…」そう感じる方におすすめなのが、近年注目を集めている「トレーラーハウス投資」です。
建物ではなく「車両」扱い=4年で償却
トレーラーハウスは、見た目は立派なコテージやホテルのようですが、タイヤがついており「随時かつ任意に移動できる」状態であれば、税務上は「車両(被けん引車)」として扱われます。建物の耐用年数が22年(木造)〜47年(RC造)であるのに対し、車両の耐用年数はわずか4年です。
定率法を使えば、初年度に50%、2年目で合計75%を経費化できます。1,000万円投資すれば、初年度に500万円の損金を作れる計算です。不動産のような安定した賃料収入を得ながら、パソコン並みのスピードで経費化できる、非常に効率の良い投資対象です。
固定資産税がかからない
さらに、「車両」であるため、不動産取得税や固定資産税がかからないというメリットもあります(自動車税などはかかりますが、少額です)。投資スキームとしては、宿泊施設(トレーラーホテル)の運営会社に賃貸し、一定期間後に買い取ってもらう出口戦略がセットになっているものが多く、初心者でも取り組みやすいのが特徴です。
5.【高収益&スピード償却】海外不動産(米国不動産)
日本の不動産常識を覆すスキームとして富裕層に人気なのが、アメリカを中心とした「海外不動産投資」です。
「築古木造」で4年償却のロジック
日本の税制では、海外にある不動産でも日本の耐用年数が適用されます。ここで注目すべきは、アメリカの住宅事情です。アメリカではDIY文化が根付いており、築年数が古くても価値が落ちない、あるいは上昇する物件が多く存在します。日本の税法上、築22年を超えた木造住宅の耐用年数は「4年」です。
アメリカの不動産は、日本と違って「土地と建物の比率」において建物の価値割合が高い傾向にあります(日本2:8、米国8:2など)。そのため、物件価格の大部分(建物部分)を、わずか4年という短期間で減価償却費として計上できるのです。※なお、個人の場合は税制改正により損益通算が制限されましたが、法人の場合は現在でも損益通算が可能であり、本業の黒字を不動産の償却赤字で相殺する強力な節税策として有効です。
キャピタルゲインとインカムゲインの両取り
償却メリットだけでなく、米国の不動産市場は成長傾向にあるため、数年後に売却する際、購入時よりも高い価格で売れる(キャピタルゲイン)可能性が高いのも大きな魅力です。為替リスクはありますが、「ドル資産を持つ」というリスク分散の観点からも有効な簿外資産です。
6.【巨額利益の対策】オペレーティング・リース
「今期、突発的に数千万円〜数億円の利益が出てしまった」そんな嬉しい悲鳴に対応できるのが、オペレーティング・リースです。
航空機や船舶で「億単位」の損金を作る
これは、匿名組合などを通じて、航空機、コンテナ船、ヘリコプターなどの大型減価償却資産に投資し、その減価償却費を損金として取り込む金融商品的なスキームです。銀行融資によるレバレッジ効果を活用することで、出資した初年度に、出資額の約70%〜80%を一気に損金算入できる商品が多く組成されています。
例えば、1億円の利益が出た際に、3,000万円をオペレーティング・リースに出資すれば、約2,400万円の損金を作ることができます。上限がないため、工場の売却益など、巨額の突発的利益を圧縮する手段として唯一無二の存在です。
明確な出口戦略が必須
リース期間終了後(7年〜10年後)に、物件を売却して出資金+αが戻ってきます。これは「課税の繰り延べ」ですので、戻ってきたお金は益金となります。そのため、
- 社長の勇退時期(退職金支給)
- 大規模修繕の計画
- 次なる新規事業への投資など、お金が戻ってくるタイミングに合わせて、大きな経費を使う「出口戦略」があらかじめ決まっている場合に真価を発揮します。
7.【無形資産】自社WEBコンテンツ・ブランド
最後は、少し視点を変えた「無形の簿外資産」です。
24時間働く営業マンを作る
自社のWebサイト、YouTubeチャンネル、オウンドメディアなどのコンテンツ制作費は、広告宣伝費や外注費として、支出した期の経費になります。しかし、一度構築された良質なコンテンツは、その後何年にもわたって24時間365日休まずに集客し、売上を生み出し続ける「資産」として機能します。
決算前に広告費を使ってWebサイトを強化したり、動画コンテンツを作り溜めたりすることは、単なる経費消化ではありません。帳簿には1円も載りませんが、その集客力やブランド力は、会社にとって何物にも代えがたい、収益を生み出す強力なエンジン(簿外資産)となります。
まとめ:簿外資産は「出口」まで描いてこそ完成する
簿外資産を作ることは、単なる節税テクニックではありません。税金を払って手元からキャッシュを失う代わりに、価値ある資産に形を変えて会社に残す、究極の「資産防衛策」です。
- 手堅く始めるなら:経営セーフティ共済、中古社用車
- 投資として運用するなら:トレーラーハウス、太陽光、海外不動産
- 巨額の利益対策なら:オペレーティング・リース
- 将来の収益力強化なら:Webコンテンツ
ただし、忘れてはならないのが「出口戦略」です。簿外資産を現金化して会社に戻す時、それは再び「利益」として課税対象になります。「いつ、何のために使うのか(赤字補填、退職金、新規投資など)」という出口まで描いて初めて、このスキームは完成します。
自社の利益規模や将来のビジョンに合わせて、最適な簿外資産を組み合わせていきましょう。具体的な導入シミュレーションや、自社に合ったスキームの選定については、税理士にご相談ください。
この記事で解説した内容は、以下の動画で税理士がより詳しく解説しています。各スキームの図解や詳細な注意点も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。