倒産防止共済の裏技まとめ|2年ルールを月5,000円でしのぐ方法・年460万円の前納・税金を残さない2つの出口


「経営セーフティ共済は、解約してまた入り直せば何度でも節税できる」――そう聞いて、今もそのつもりで使っている社長は少なくありません。実はこのやり方は、2024年10月の改正で使えなくなりました。改正を知らずに同じ感覚で解約すると、節税どころか税金が増えることもあります。
一方で、ルールを正しく押さえれば、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は今でも「年最大460万円を経費にできて、いざというときは年0.9%前後で借りられて、出口を工夫すれば税金をほとんど残さずに回収できる」使い勝手のいい制度です。
この記事では、改正後の「2年ルール」の中身と、それを月5,000円でしのぐ裏技、多くの社長がやってしまう3つの失敗、決算月の前納で経費を倍近くにする方法、そして税金を残さないための2つの出口戦略まで、表を使って整理します。
まず押さえたい経営セーフティ共済の基本
経営セーフティ共済は、取引先が倒産したときに自社が連鎖倒産しないよう、国(中小企業基盤整備機構)が運営している共済制度です。取引先の倒産で売掛金が回収できなくなったら、掛金総額の10倍(最高8,000万円)まで無担保・無保証人・無利子で借りられます。
そのうえで、平時の「節税」と「資金繰り」にも使えるのがこの制度の特徴です。基本の数字は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
| 掛金月額 | 5,000円〜20万円(5,000円刻み。途中で増額・減額できる) |
| 積立の上限 | 掛金総額800万円まで |
| 税務上の扱い | 法人は損金、個人事業主は必要経費に全額算入(年最大240万円、前納を使えばそれ以上) |
| 解約したとき | 12か月以上で掛金の8割以上、40か月以上で全額が「解約手当金」として戻る。戻ったお金は全額が収益(益金) |
| 加入できる人 | 1年以上継続して事業を行っている中小企業・個人事業主 |
「払った掛金は全額経費、戻ってくるお金は全額収益」。この2つをセットで覚えておくと、ここから先の話がすっきり理解できます。
2024年10月改正の「2年ルール」とは
改正前は、利益が大きい年に掛金で利益を圧縮し、赤字や利益の少ない年に解約して解約手当金を受け取り、すぐ再加入してまた掛金を経費にする――という回し方が主流でした。この手法が広まりすぎた結果、問題視されて改正に至りました。
改正後のルールは次のとおりです。
- 2024年10月1日以降に解約して再加入した場合
- 解約の日から2年を経過する日までに支払った掛金は
- 損金(個人事業主は必要経費)に算入できない
つまり、短いスパンで「解約→再加入」を繰り返して経費を作ることは、事実上できなくなりました。これからは解約のタイミングを慎重に選ぶことと、解約した後の2年間をどう乗り切るかの2点がカギになります。改正の背景や細かな適用関係は経営セーフティ共済の改正と出口戦略でも解説しています。
実は「節税」ではなく「課税の繰り延べ」
経営セーフティ共済は、加入すれば税金が消える制度ではありません。掛金を払う年に経費になる代わりに、解約して戻ってきたお金には全額に法人税がかかります。税金が減るのではなく、後ろにずれるだけ。これを「課税の繰り延べ」といいます。
そこで重要になるのが、積み立てるときの税率と解約するときの税率の差です。資本金1億円以下の中小法人は、所得800万円までの部分に軽減税率が使えるため、800万円を境に税率が大きく変わります。
| 課税所得 | 法人税率(中小法人) | 実効税率の目安 |
| 800万円以下の部分 | 15% | 約25% |
| 800万円を超える部分 | 23.2% | 約34% |
※実効税率は住民税・事業税を含めたおおよその水準で、地域や会社の規模によって変わります。利益を800万円以下に抑える考え方は会社の利益は800万円以下に抑えるべき?法人税率の分岐点で詳しく解説しています。
税率で10ポイント近い差があるので、「いつ積んで、いつ戻すか」で最終的な損得が大きく変わります。
多くの社長がやってしまう3つの失敗
失敗1:利益が少ない時期から満額で積み立てる
掛金は月20万円・年240万円まで積めます。枠があると「使い切らないともったいない」と感じるものですが、ここが落とし穴です。利益が800万円以下で税率が低い時期に満額を積み、将来800万円を超えて税率が高い時期に解約すると、低い税率で節税して、高い税率で課税される「逆ざや」になります。
| 800万円を積み立てて解約した場合 | 積立時の節税額 | 解約時の税金 | 差し引き |
| 税率が低い時期に積む → 高い時期に解約(逆ざや) | 約200万円(25%) | 約272万円(34%) | 約72万円の損 |
| 税率が高い時期に積む → 赤字の年に解約 | 約272万円(34%) | ほぼ0円(赤字と相殺) | 約272万円の得 |
※実効税率を25%・34%として単純化した試算です。同じ800万円でも、積み方と戻し方しだいで300万円以上の差がつきます。利益が安定して800万円を超えている会社なら、満額で積み立てても問題ありません。
失敗2:資金繰りが苦しくなって安易に解約する
「会社が潰れるくらいなら、貯金を崩す感覚で解約するのは仕方ない」と思うかもしれません。しかし、任意解約には2つのデメリットがあります。
1つは40か月未満だと元本割れすることです。
| 掛金を納めた月数 | 任意解約で戻る割合 |
| 1〜11か月 | 0%(掛け捨て) |
| 12〜23か月 | 80% |
| 24〜29か月 | 85% |
| 30〜35か月 | 90% |
| 36〜39か月 | 95% |
| 40か月以上 | 100% |
もう1つは、先ほどの2年ルールです。いったん解約すると、再加入しても2年間は掛金を経費にできません。元本割れしたうえに、その後2年間は節税にも使えない――という二重の損になりかねません。
失敗3:出口を決めずに積み立て続ける
3つ目は、解約の出口を考えないまま800万円まで積み上げ、そのまま放置するパターンです。上限に達するとそれ以上は経費を作れず、かといって何の準備もなく解約すると、800万円がそのまま利益として課税されます。出口の作り方は、この記事の後半で解説します。
お金が必要なときは解約せずに「一時貸付金」
資金繰りがピンチのときは、解約ではなく一時貸付金を使いましょう。取引先が倒産したときの「共済金貸付」とは別に、臨時の資金需要に使える貸付制度があります。
| 比較 | 任意解約 | 一時貸付金 |
| 受け取れる額 | 40か月未満は元本割れ | 解約手当金(機構解約の場合)の95%まで。40か月以上なら掛金総額のおよそ9割 |
| コスト | 戻った全額が収益になり課税 | 年0.9%前後の利息(借入時の利率は中小機構で確認) |
| その後の節税 | 再加入しても2年間は経費にならない | 加入を続けるので、掛金はそのまま経費になる |
| 条件 | ― | 掛金を12か月以上納めていること。担保・保証人不要、資金使途は自由、返済は1年以内の一括(借換えも可) |
注意点は、掛金を12か月以上納めていないと借りられないことです。加入1年目は頼れないので、最初の1年は余裕を持った掛金に設定しておくのが安全です。掛金は後からいつでも増額できます。貸付制度の使い方は小規模企業共済と経営セーフティ共済の「貸付制度」活用法でまとめています。
裏技1:月5,000円で「2年ルール」をしのぐ
いちばん手堅い使い方は、利益が安定して800万円を超えるようになってから大きく積むことです。逆に、利益が少ない時期は最低額の月5,000円で加入しておくのが得策です。
この「月5,000円」は、2年ルールをしのぐときにも使えます。解約後すぐに月5,000円で再加入し、2年が過ぎたら一気に月20万円へ増額する方法です。
| 比較 | A:2年待ってから再加入 | B:すぐ月5,000円で再加入→2年後に増額 |
| 最初の2年間 | 加入していない | 月5,000円×24か月=12万円(経費にならない) |
| 経費にできる額 | 800万円 | 800万円−12万円=788万円 |
| 全額戻る40か月に届く時期 | 再加入から40か月後(解約から約5年4か月後) | 解約から40か月後(約3年4か月後) |
Bなら、経費にできる額は12万円減りますが、加入月数のカウントが2年早く進むので、解約手当金が満額戻る状態に早く到達できます。経営セーフティ共済の最大のネックは「800万円の上限に達したら、解約しない限りそれ以上は節税に使えない」ことなので、ペナルティ期間は最低額で静かにやり過ごし、制限が解けたら一気に積むことで、改正前に近い感覚で回せます。
裏技2:決算月の前納で年最大460万円を経費にする
「掛金は年240万円が上限」と思われがちですが、前納(まとめ払い)を組み合わせると、1つの事業年度で経費にできる額を広げられます。1年以内の前納分は、支払った年度の経費にできるからです。
| 当期に払う掛金 | 金額 |
| 期首から決算月の前月まで、月払い(20万円×11か月) | 220万円 |
| 決算月に1年分を前納(決算月分+翌期11か月分、20万円×12か月) | 240万円 |
| 当期の経費の合計 | 460万円 |
実効税率34%の会社なら、460万円で約156万円分の納税を先送りできる計算です。利益が想定以上に出た年の決算対策として効果的です。
ただし、前納分も800万円の上限に含まれ、2年目以降は決算月の5日までに「掛金前納申出書」を出す必要があるなど、手続きの期限があります。詳しくは倒産防止共済の前納で決算対策|前納減額金の早見表と注意点を確認してください。
なお、掛金の枠は会社ごとに設定されるため、2社経営していれば単純計算で枠は2倍(最大1,600万円)になります。ただし、節税のためだけに実態のないペーパーカンパニーを作るのは税務上問題になるおそれがあります。事業規模が大きくなって分社化するなど、事業の実態がある会社で使うのが前提です。
税金を残さない2つの出口戦略
経営セーフティ共済は「課税の繰り延べ」なので、最後に戻ってくるお金への課税をどう抑えるかで成否が決まります。王道の出口は次の2つです。
| 出口 | やり方 | 注意点 |
| ①役員退職金とぶつける | 社長が退職する年に解約し、解約手当金の収益を退職金の損金で相殺する | 退職金は「不相当に高額」だと損金にならない。功績倍率などで適正額を計算しておく |
| ②事業投資で赤字の年にぶつける | 設備の入れ替え・DX・大型の広告などで費用が膨らむ年に解約する | 設備は減価償却で数年に分かれることが多い。その年にいくら経費になるか事前に確認する |
出口①:役員退職金
いちばん相性がよいのが役員退職金です。会社側は適正な退職金を全額損金にできるので、解約手当金の収益と相殺できます。さらに個人側でも、退職金は退職所得控除を引いた残りの2分の1にだけ課税されるなど、給与よりはるかに税負担が軽くなります。「法人では経費、個人では低い税金」という、出口として理想的な形です。
引退がまだ先なら、将来の退職時期を決めて、そこから逆算して積み立てていきましょう。退職金の受け取り方やiDeCoとの順番は退職金とiDeCoは同時に受け取ると大損?「10年・20年ルール」、在任中に退職金を受け取る方法は「みなし退職金」の活用メリットと注意点で解説しています。社長個人の退職金づくりなら小規模企業共済の最適な掛金と受け取り方とあわせて設計すると効果的です。
出口②:事業投資で意図的に赤字を作る
引退までまだ時間がある場合は、事業への投資で費用が大きくなる年に解約する方法があります。無駄遣いで赤字を作るのではなく、古い機械の入れ替え、システムのDX化、新規顧客を取るための大規模な広告など、会社を強くするためのお金を使う年に合わせるのがポイントです。
解約手当金を投資費用と相殺できるので、実質的に「積み立てた共済を、税金をかけずに事業投資に回す」ことができます。銀行からの見え方が気になる場合も、投資の中身を説明できれば一過性の赤字として理解されやすくなります。考え方はあえて赤字にして無税で成長する方法でも詳しく紹介しています。
まとめ
経営セーフティ共済で損をせず、得を最大にするためのポイントは次のとおりです。
- 2024年10月以降に解約すると、再加入から2年間(解約日から2年を経過する日まで)の掛金は経費にならない
- 本質は「課税の繰り延べ」。税率が高い年に積み、税率が低い年や赤字の年に戻すのが鉄則
- 利益が800万円以下の時期は満額にこだわらず、月5,000円で加入月数を稼いでおく
- お金が必要なときは解約せず、一時貸付金(掛金12か月以上で利用可)を使う
- 決算月の前納を組み合わせれば、1年で最大460万円を経費にできる
- 出口は役員退職金か事業投資の年。積み始める前に決めておく
経営セーフティ共済のように、利益を繰り延べながら会社の外にお金を貯めておく方法は、ほかにもあります。決算書に載らない「隠れ資産」の作り方|7つの簿外資産もあわせて読むと、出口までの設計がしやすくなります。
今回の内容は、動画でも税理士が詳しく解説しています。2年ルールの図解や、月5,000円で再加入するテクニックの流れも紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。







