小規模企業共済と経営セーフティ共済の貸付制度を活用した資金調達と資産形成の実務

会社経営において「売上を上げる」「経費を削減する」といった議論は日常的に行われますが、意外と見落とされがちなのが「資金調達手段の確保」です。いざという時に手元資金がなければ、たとえ帳簿上は黒字であっても倒産に追い込まれるケースは珍しくありません。資金調達といえば銀行融資が一般的ですが、審査に数週間かかることも多く、業績が一時的に落ち込んでいるタイミングでは融資を断られるリスクもあります。

実は、多くの経営者がすでに加入している小規模企業共済と経営セーフティ共済には、銀行融資以上に柔軟で強力な「貸付制度」が備わっています。審査不要・低金利・即日対応も可能なこの制度を正しく理解し活用すれば、経営の安定と資産形成を同時に実現できます。

本記事では、2つの共済制度の基本的な仕組みから貸付制度の詳細、さらには借換えや資産運用との組み合わせといった実践的な活用法まで、体系的に解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

2大共済制度の基本スペックをおさらいする

貸付制度の話に入る前に、まずは小規模企業共済と経営セーフティ共済の基本的な仕組みを整理しておきます。

小規模企業共済の概要

小規模企業共済は、国の機関である中小機構が運営する「経営者のための退職金積立制度」です。掛金は月額1,000円から7万円の範囲で自由に設定でき、最大年間84万円を積み立てることができます。

最大の魅力は、この年間84万円が全額所得控除の対象となる点です。

さらに、将来共済金を受け取る際にも「退職所得控除」という大きな控除が適用されるため、積立時と受取時の双方で税制優遇を受けられる非常に優れた制度といえます。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の概要

経営セーフティ共済の正式名称は「中小企業倒産防止共済」であり、本来は取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための制度です。

積み立てた掛金の最高10倍まで、無利子・無担保・保証人不要で借り入れが可能という特徴があります。税制面では、法人の場合、掛金は全額損金に算入できます。月額最大20万円積立総額の上限800万円です。

また「年払い」にも対応しており、毎月20万円を積み立てている場合でも、決算月年払い240万円を追加で損金計上することが可能です。つまり、1年間で最大480万円の経費を作ることもでき、突発的な利益が出た期の節税対策として非常に有効に機能します。

審査不要・低金利の貸付制度の全貌

ここからが本題です。

「自分で積み立てたお金なら、解約して引き出せばいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、解約にはデメリットがあります。解約すれば節税効果はそこで途切れますし、再加入の手続きも必要になります。

特に経営セーフティ共済は制度改正により、解約後2年間は再加入しても掛金の損金算入ができなくなりました。加入期間によっては元本割れのリスクもあります。

だからこそ、解約せずに「契約者貸付」という制度を使って一時的に資金を調達する方法が有効なのです。両制度とも、加入から1年が経過し掛金の滞納がなければ、低金利・無担保・無保証人で借り入れが可能になります。自分の積立金が実質的に担保となるため、決算書の提出も返済能力の審査も不要です。

小規模企業共済の貸付制度

小規模企業共済の貸付制度は種類が豊富で、状況に応じた使い分けができます。

貸付の種類 金利(年率) 借入限度額 主な特徴
一般貸付 1.5% 最大2,000万円(掛金の7〜9割) 資金使途自由・最も活用しやすい
傷病災害時貸付 0.9% 最大1,000万円 疾病・災害時に利用可能
緊急経営安定貸付 0.9% 最大1,000万円 経済環境の急変時に対応
創業転業時・新規事業展開等貸付 0.9% 最大2,000万円 事業転換や新規事業に活用
事業承継貸付 0.9% 最大1,500万円 事業承継時の資金に対応
廃業準備貸付 0.9% 最大1,000万円 廃業に伴う費用に対応

最も使いやすいのは「一般貸付」です。資金使途が自由で、最大2,000万円まで借り入れが可能、金利も年1.5%と低めに設定されています。借入可能額はそれまでに納めた掛金の7割~9割となるため、積立額が大きいほど多くの資金を引き出せる仕組みです。

特別貸付は金利が年0.9%とさらに低くなりますが、利用条件が限定的なため、基本的には一般貸付を中心に活用することになるでしょう。

経営セーフティ共済の貸付制度

経営セーフティ共済にも、取引先倒産時の「共済金貸付」とは別に「一時貸付金」という制度があります。

こちらも資金使途は原則自由で、借入限度額は掛金総額の最大95%です。たとえば掛金上限の800万円まで積み立てている場合、最大760万円まで借り入れることが可能です。

金利は年0.9%と非常に低く、窓口で手続きを行えば即日で着金するケースもあります。銀行融資であれば審査に数週間かかることも珍しくない中で、このスピード感は経営者にとって大きな武器になります。

急な資金需要が発生した際に、銀行の担当者に決算書を持って説明に行くことなく資金調達できるのは、精神的にも経営判断の面でも大きなメリットです。

元金据え置きを可能にする借換えの仕組み

貸付制度の真価は、実は「借換え」という仕組みにあります。

通常、お金を借りたら返済期日までに元金と利息を返さなければなりません。ところが共済の貸付制度では、返済期日が到来した時点で利息だけを支払えば、元金を返済せずに借入期間を延長することが可能です。

正確には、新しい借入で古い借入を返済する形をとりますが、実質的には利息を払うだけで元金をずっと据え置きにできるのです。

共済を解約する時や満期になった時には精算が必要ですが、それまでの間は低金利の資金を手元に確保し続けることができます。しかも、借入金は共済金や解約手当金と相殺されるため、返済のために別途資金を用意する必要がありません。

銀行融資の場合、業績が悪化すると借換えを拒否されるリスクがありますが、共済の貸付は積立金が担保になっているため、そうした心配は不要です。

増額借換えでキャッシュポジションを拡大する

さらに注目すべきなのが「増額借換え」です。

これは既存の借入金を返済すると同時に、増額された枠で新規の借入を行う仕組みです。たとえば、最初に500万円を借り入れたとします。その後も毎月掛金を払い続けているため、借入限度額は少しずつ増えていきます。

返済期日が来た時に、ただ借り換えるのではなく、増えた枠の分も上乗せして借り直すのです。

追加で200万円の借入をしたい場合であれば、元々借りていた500万円を返済すると同時に、新たに700万円を借り入れる形になります。

この手法を繰り返していけば、掛金の積み増しに応じて手元資金を段階的に厚くしていくことが可能です。

経営において現金は血液のようなものですから、常にキャッシュポジションを厚く保てるというのは、事業の安定に直結する大きな安心材料となります。

貸付制度を活かした3つの活用戦略

貸付制度は資金使途が自由であるため、単なる緊急資金としてだけでなく、より戦略的に活用することが可能です。ここでは代表的な3つの方法を紹介します。

事業成長の起爆剤として活用する

まず1つ目に、借入金を設備投資や事業拡大の原資に充てることで、節税をしながら会社の成長を加速させるという使い方です。特に有効なのが補助金との併用です。

多くの補助金は、先に事業者が設備投資などの支出を行い、その後に費用の一部が補填される「後払い」方式を採用しています。

つまり、まとまった先行投資ができなければ、そもそも補助金を活用できないという構造的な問題があります。ここで共済の貸付制度が力を発揮します。審査不要で即座に資金調達できるため、補助金が入金されるまでの数ヶ月間をこの資金で乗り切ることが可能です。

補助金が入金された後は返済に充ててもよいですし、そのまま運転資金に回すこともできます。

低金利を活かして資産運用に回す

2つ目に、やや上級者向けの方法ですが、借り入れた資金を資産運用に回して利ざやを得るという考え方もあります。

銀行融資の場合、借入金を株式投資などに使えば資金使途違反となりますが、共済の貸付は資金使途が自由であるため、こうした運用も制度上は可能です。

たとえば経営セーフティ共済から年利0.9%で借り入れた資金を、年利3〜5%程度で回る安定した投資信託や高配当株で長期運用すれば、金利差分の利益を積み上げていくことができます。

また、小規模企業共済から借り入れた資金は個人の資金として扱われるため、新NISA枠での運用に充てることも可能です。

新NISAであれば運用益が非課税になるため、さらに効率的な資産形成が期待できます。「手元資金がないから投資に回せない」という状況を、貸付制度が低金利であるからこそ打破できるわけです。

ただし、投資には元本割れのリスクが伴います。運用益が借入金利を下回れば損失となるため、慎重な判断が求められる点は十分に認識しておく必要があります。

掛金の原資として循環させる

3つ目は、借り入れた資金をそのまま共済の掛金に充てるという方法です。

一見すると「借金して貯金する」ような奇妙な話に思えますが、税制上のメリットは大きいものがあります。

小規模企業共済の掛金は所得控除、経営セーフティ共済の掛金は損金になります。

つまり、資金を循環させているだけで税負担が軽くなり、実質的な負担は借入利息のわずかな金額だけで済むのです。資金繰りが苦しい時期に掛金を減額したり解約したりすると、節税メリットが失われてしまいます。

共済は加入から1年経過すれば貸付制度が利用できるため、そこからは少額の利息負担で節税効果を維持し続けることが可能になります。

制度活用におけるリスクと注意点

ここまで貸付制度の多様な活用法を紹介してきましたが、見落としてはいけない注意点もあります。

まず、借換えや増額借換えを行うたびに利息の支払いが発生します。

特に資産運用に活用する場合、運用益が借入金利を確実に上回ることが大前提です。金利を下回るリターンしか得られなければ、当然ながら損失が生じます。

次に、老後資金との兼ね合いについてです。

借入金は共済金や解約手当金と相殺できるため返済の心配はありませんが、裏を返せば、将来受け取れる退職金がその分だけ減るということです。

貸付制度を長期間活用し続けた結果、満期や解約の時点で手元にほとんど残らないという事態も起こりえます。これは老後資金を前借りして使っているのと実質的に同じ構造です。

したがって、貸付制度を積極的に活用するのであれば、別途老後に向けた資産形成の手段を確保しておく意識が不可欠です。

iDeCoや新NISA、不動産投資など、複数の資産形成手段を組み合わせて全体のバランスを取ることが重要になります。

まとめ

小規模企業共済と経営セーフティ共済は、多くの経営者が「節税のための積立制度」として認識しています。

しかし、本記事で見てきたように、これらの共済に備わった貸付制度は、審査不要・低金利・即日対応という銀行融資にはない特長を持っており、経営者の資金調達手段として極めて強力です。

借換えの仕組みを使えば元金を据え置いたまま低金利の資金を手元に確保し続けることができ、増額借換えによってキャッシュポジションを段階的に拡大していくことも可能です。

さらに、事業投資や補助金との併用、資産運用への転用、掛金の循環といった戦略的な活用を組み合わせれば、単なる節税を超えた資産防衛・資産形成のツールとして機能します。

一方で、利息負担の発生や老後資金の目減りといったリスクも存在するため、制度の仕組みを正しく理解した上で、自社の経営状況や将来設計に照らして判断することが大切です。

貸付制度の使い方や他制度との組み合わせ次第で、得られる効果は大きく変わります。共済制度をすでに活用している方も、これから加入を検討する方も、ぜひ貸付制度の存在を視野に入れた資金戦略を考えてみてください。

本記事の内容は、元動画にて税理士がより具体的な数字や事例を交えながらわかりやすく解説しています。制度の細かなニュアンスや実務上のポイントも語られていますので、ぜひあわせてご覧ください。

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