社長の自宅は法人名義で買うべき?役員社宅購入の節税メリットと注意点

会社の経営者の方がマイホームの購入を検討する際、「この家を個人名義で買うべきか、それとも会社(法人)名義で買うべきか」という疑問は、多くの方が一度は直面するテーマではないでしょうか。

「法人名義で買うと節税になる」という話はよく耳にしますが、その具体的な仕組みや、メリット・デメリットまでを正確に理解している方は案外少ないかもしれません。

結論から言うと、一定の条件下では、法人名義で住宅を購入し、それを「役員社宅」として社長自身に貸し出すことで、大きな節税効果や資産承継上のメリットを得られる可能性があります。しかし、その一方で、個人購入にはないデメリットや注意すべき点も存在します。

この記事では、会社に家を買ってもらうことの具体的な仕組み、その3つの大きなメリット、そして実行前に必ず知っておくべき注意点、さらには購入以外のより手軽な選択肢についても詳しく解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

1.会社が家を購入するとは?「役員社宅制度」の活用

役員社宅制度の基本的な仕組み

会社が社長の住む家を購入するということは、その住宅は会社の資産(固定資産)になることを意味します。

そして、社長はその会社の所有物である住宅に住むことになりますが、この際に活用するのが「役員社宅制度」です。役員社宅制度とは、会社が所有または賃借した物件を、役員に社宅として貸し出す制度のことを指します。

役員が支払う家賃(賃料相当額)の考え方

社長は、会社に対して毎月一定の家賃(賃料相当額)を支払う必要があります。この賃料相当額は、物件の固定資産税課税標準額などを用いて、国税庁が定める計算式に基づいて算出されます。

多くの場合、その物件の一般的な家賃相場よりもかなり低い金額(例えば、相場の半額以下、場合によっては20~30%程度)に設定することが可能です。

無償貸与した場合のリスク(現物給与課税)

もし、会社が役員に対して家賃を一切取らずに無償で貸し出した場合、その家賃相当額分が「現物給与」とみなされ、役員報酬に上乗せされる形で所得税・住民税が課税されます。

また、社会保険料の算定基礎にも含まれてしまうため、会社・個人双方の負担が増えてしまいます。したがって、役員社宅制度を活用する際は、必ず適正な賃料相当額を役員から徴収することが不可欠です。

2.会社で家を購入する3つのメリット

会社名義で住宅を購入し、役員社宅として活用することには、主に以下の3つの大きなメリットがあります。

メリット①:住宅関連費用を会社の損金にできる

これが最大のメリットと言えるでしょう。法人名義で物件を購入すると、その住宅にかかる様々な費用を、会社の経費(損金)として計上することができます。

  • 建物の減価償却費:建物の購入費用は、法定耐用年数に応じて毎年減価償却費として損金算入できます。
  • 各種税金:不動産取得税(購入時)、登録免許税(登記時)、固定資産税・都市計画税(毎年)といった税金も、法人の経費(租税公課)となります。
  • 維持管理費:管理会社へ支払う管理費や修繕積立金、火災保険料なども経費になります。
  • 借入金利子:物件購入のために銀行から融資を受けた場合、その支払利息も経費になります。

これらの費用は、個人名義で自宅を購入した場合には、一切経費にすることができません(住宅ローン控除という別の制度はありますが)。

法人で所有することで、これらの支出を損金として計上し、法人の課税所得を圧縮して法人税等の負担を軽減できるのです。ただし、土地は経年で価値が減少しないため、減価償却費として経費にすることはできません。

メリット②:実質的な購入資金を大幅に削減できる

個人で自宅を購入する場合、その原資は、役員報酬などから所得税・住民税・社会保険料が差し引かれた後の「手取り収入」となります。

非常に単純化して考えると、所得税・住民税等の合計税率が50%の経営者が5,000万円の家を個人で買うためには、税金を支払う前の所得として1億円が必要になる計算です。

一方で、法人が家を購入する場合、その購入資金は会社の利益(税引前の資金)から支出されます。役員報酬のように個人の高額な税金・社会保険料を介さないため、同じ5,000万円の家を手に入れるために必要な原資は、理論上5,000万円で済みます。

この差は非常に大きく、会社で購入する方が、トータルで見た場合の資金的負担を大幅に抑えられると言えます。

メリット③:事業承継(自社株評価)対策になる

非上場会社の場合、自社株の評価額は会社の純資産価額に大きく影響されます。会社が多額の現預金を保有していると、それがそのまま純資産価額に反映され、株価が高くなる傾向にあります。

そこで、会社の現預金で不動産を購入すると、相続税評価額の計算上、その不動産の価値は実際の購入価格(時価)ではなく、一般的に時価よりも低く評価される「相続税評価額(路線価や固定資産税評価額を基に計算)」で評価されることになります。時価の50~60%程度の評価額になるケースも少なくありません。

これにより、会社の純資産価額が圧縮され、自社株の評価額を引き下げることが可能です。将来、後継者に事業承継を行う際の、自社株にかかる贈与税や相続税の負担を軽減する効果が期待できます。

注意点:取得後3年以内の相続と不動産評価

ただし、この評価額圧縮効果には注意点があります。相続開始前3年以内に取得した不動産については、相続税評価額ではなく、通常の取引価額(時価)で評価されるルールがあります。

そのため、相続直前に駆け込みで不動産を購入しても、株価引き下げ効果は得られません。事業承継を視野に入れる場合は、3年以上前からの計画的な実行が必要です。

3.会社で家を購入する際の注意点

多くのメリットがある一方で、会社で家を購入する際には、以下のようなデメリットや注意点も存在します。

注意点①:法人の購入資金調達

当然ながら、物件を購入するためには、法人にそのための資金が必要です。数千万円単位の大きなキャッシュアウトとなるため、会社の資金繰りを圧迫する可能性があります。

将来の役員社宅購入を見据え、経営セーフティ共済などを活用して計画的に簿外に資金を準備しておくといった対策も有効です。

注意点②:住宅ローン控除が使えない

個人で住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合、年末のローン残高に応じて一定額が所得税から直接控除される「住宅ローン控除」という非常に有利な制度があります。

しかし、法人名義での購入では、この住宅ローン控除は一切適用されません。

「個人で住宅ローン控除を受けつつ、後から法人に売却すれば良いのでは?」と考えるかもしれませんが、ローン返済中に所有権を法人に移転した場合などは、その時点で住宅ローン控除は打ち切りとなってしまいます。

注意点③:売却益にかかる税率が個人より高くなる可能性

将来、その物件を売却する場合、売却益にかかる税率が、個人所有の場合よりも高くなる可能性があります。

  • 個人の場合:不動産の所有期間が5年を超えている場合、売却益(長期譲渡所得)にかかる税率は約20%です(5年以下の短期譲渡所得の場合は約40%)。
  • 法人の場合:売却益は他の事業利益と合算され、法人税(実効税率で約25%~34%程度)が課されます。

つまり、長期間所有した後に売却することを考えると、税率面では個人所有の方が有利になるケースが多いのです。

4.【代替案】購入より手軽な「賃貸契約」の役員社宅

ここまで見てきたように、法人での住宅購入にはメリットもデメリットもあります。

特に、購入資金の準備が大きなハードルとなる場合もあるでしょう。そのような場合に、より手軽に始められ、かつ大きな節税効果が期待できるのが、「法人が賃貸物件を契約し、それを役員社宅として利用する」という方法です。

購入資金が不要な賃貸社宅のメリット

この方法の最大のメリットは、数千万円という高額な購入資金を用意する必要がないことです。法人として賃貸借契約を結ぶ際の初期費用(敷金、礼金、仲介手数料など)だけでスタートできます。

賃貸社宅でも節税効果は大きい

賃貸社宅であっても、役員社宅制度のメリットは十分に享受できます。

  • 差額家賃の損金算入:会社が家主へ支払う家賃と、役員から徴収する賃料相当額との差額は、会社の損金(地代家賃や福利厚生費など)として計上できます。
  • 役員報酬減額による個人の税・社会保険料削減:例えば、役員が個人で家賃30万円のマンションに住んでいるとします。これを会社契約の役員社宅とし、役員からの徴収額が15万円になった場合、役員報酬を差額の15万円減額しても、役員の実質的な住居費負担は変わりません。しかし、役員報酬の額面が下がることで、それにかかる所得税・住民税・社会保険料が軽減され、結果的に役員個人の手取り額が増加するという大きなメリットが生まれます。

まとめ

経営者が住む家を法人名義で購入し、「役員社宅」として活用することは、住宅関連費用の損金算入による法人税の節税、実質的な購入原資の削減、そして事業承継対策など、多岐にわたるメリットが期待できる有効なスキームです。

しかしその一方で、法人での多額の資金準備が必要となる点、個人であれば受けられる住宅ローン控除が適用されない点、将来の売却益にかかる税率が個人より高くなる可能性がある点など、慎重に比較検討すべきデメリットも存在します。

もし、物件を購入するほどの資金的な余裕がない、あるいはもっと手軽に始めたいという場合には、法人で賃貸物件を契約し、役員社宅とする方法が非常に有効かつ効果的です。

どの方法が自社にとって最適かは、会社の財務状況、経営者のライフプラン、そして将来の事業承継計画などを総合的に勘案して判断する必要があります。

いずれの選択をするにしても、その実行前には必ず税理士などの専門家と相談し、メリットとデメリットを十分に理解した上で進めることが重要です。

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