キャッシュを使わない節税策11選!会社の資金を守りながら税負担を軽減する方法

会社の利益を確保し、事業を成長させていく上で、節税対策は経営者の重要な関心事です。しかし、生命保険への加入、設備投資、広告宣伝費の投入など、多くの節税策は実行にあたって相応のキャッシュ(現金支出)を伴います。「節税のために支出を増やした結果、かえって資金繰りが苦しくなってしまった」という事態は避けたいものです。

「節税はしたい、でも手元のキャッシュはできるだけ減らしたくない…」そう考える経営者の方も多いのではないでしょうか。実は、大きな現金支出を伴わずに実行できる、あるいは全くキャッシュを使わずに税負担を軽減できる節税対策も存在します。

この記事では、会社のキャッシュフローを守りながら賢く税金対策を行うための、11個のアイデアをご紹介します。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

キャッシュを使わない節税の考え方

節税策は、大きく「キャッシュアウトを伴うもの」と「キャッシュアウトを伴わない(または少ない)もの」に分けられます。

前者は、支出した金額を経費として計上することで課税所得を減らす方法が主ですが、後者は、会計処理の工夫や制度の活用、既存資産の見直しなどによって、直接的な現金支出を抑えながら税負担を軽減するアプローチです。資金繰りに余裕がない時や、手元資金を温存したい場合に特に有効となります。

キャッシュアウト不要・少額でできる節税策11選

以下に、キャッシュアウトを伴わない、または比較的少額で実行可能な11個の節税対策を解説します。

① 家族を役員にして所得を分散する

経営者一人が高額な役員報酬を受け取るのではなく、生計を同一にする配偶者や子などを役員とし(もちろん業務実態が必要です)、報酬を分散して支払う方法です。

日本の所得税は累進課税のため、所得が高くなるほど税率が上がります。所得を複数人に分散させることで、一人ひとりに適用される税率が下がり、世帯全体で見た場合の所得税・住民税の負担を軽減できます。

さらに、家族を「非常勤役員」とすれば、社会保険への加入義務が生じないため、社会保険料の負担も抑えつつ所得分散が可能です(常勤役員は社会保険加入が必須です)。これは会社・個人双方にとってメリットがあります。

② 不要在庫(不良在庫)を処分する

仕入れた商品や製造した製品(在庫)は、販売されて初めて売上原価として経費になります。売れ残ってしまった不良在庫や、過剰に抱えている不要在庫は、帳簿上は資産として計上されていますが、利益を生み出さないばかりか、保管スペースや管理コストがかかる厄介な存在です。

これらの不要在庫を廃棄処分した場合、その在庫の帳簿価額(仕入価額や製造原価)を「棚卸資産廃棄損」として、その期の損金(経費)に計上することができます。売上は立ちませんが、損失を計上することで課税所得を圧縮できます。既存の不要物を処分するだけなので、新たなキャッシュアウトは基本的に発生しません(処分費用がかかる場合はあります)。

③ 不要な固定資産を処分(除却・売却)する

在庫と同様に、事業で使用しなくなった機械、設備、車両などの固定資産も、保有しているだけで固定資産税がかかったり、管理の手間が生じたりします。これらの不要な固定資産を廃棄処分(除却)した場合、その資産の帳簿価額(取得価額から減価償却累計額を引いた未償却残高)を「固定資産除却損」として損金計上できます。

また、売却した場合でも、売却価額が帳簿価額を下回れば、その差額を「固定資産売却損」として損金計上できます。特に、購入してから日が浅く、まだ減価償却があまり進んでいない(=帳簿価額が高い)固定資産を処分する場合、大きな損失を計上でき、節税効果も高くなります。

④ 決算期を変更して節税時間を確保する

これは直接的な節税ではありませんが、効果的な節税策を実行するための時間を確保する手法です。法人の決算月(事業年度の末日)は、定款を変更することで比較的自由に(ただし事業年度が1年を超えない範囲で)変更できます。

もし、会社の繁忙期や大きな利益が見込まれる時期が決算月近くに集中している場合、その利益に対する節税対策を打つ時間が十分に取れない可能性があります。そこで、決算期を変更し、利益が多く出る時期を期首(事業年度の初め)に持ってくることで、決算までの約1年間をかけてじっくりと利益予測を行い、計画的な節税対策を実行する時間を確保することができます。

⑤ 役員社宅制度を活用する

経営者や役員が個人的に借りている(または所有している)住居を、会社名義で借り上げ(または会社が購入し)、それを役員に社宅として貸し出す制度です。役員は会社に対して、一定の計算式で算出される「家賃相当額(賃料相場より低い額になることが多い)」を支払います。

会社は、役員から受け取る家賃相当額と、実際に支払う家賃(または減価償却費等)との差額を損金(福利厚生費など)として計上できます。さらに、役員の役員報酬を「会社が負担する家賃と役員から受け取る家賃相当額の差額分」だけ減額すれば、会社としてのキャッシュアウトは実質的に増えません。

一方、役員個人にとっては、役員報酬額が減ることで所得税・住民税・社会保険料の負担が軽減され、手取り額が増えるというメリットがあります。法人契約のための初期費用(敷金・礼金等)はかかりますが、継続的な節税・社保削減効果が期待できます。

⑥ 出張手当(日当)を支給する

出張が多い会社であれば、「出張旅費規程」を整備し、その中で日当(出張手当)を定めて支給する方法があります。日当は、出張中の食事代や少額な諸雑費の実費弁償的な性質を持つものとして、受け取った役員・従業員側では所得税がかからず(非課税所得)、会社側では経費(旅費交通費)として計上できます。

例えば、基本給を少し下げて、その分を日当として支給する形にすれば、従業員の手取り額を変えずに、所得税・社会保険料の負担を軽減できます(社会保険料は標準報酬月額に基づいて計算されるため、基本給が下がると保険料も下がる)。会社側も、従業員の社会保険料の会社負担分が軽減されます。

さらに、日当は「課税仕入れ」として扱われるため、消費税の納税額を計算する上で控除対象となり、消費税の節税にも繋がります。ただし、規程の整備と、社会通念上妥当な金額設定が必要です。

⑦ 役員賞与を活用して社会保険料を削減する(※節税とは異なるが関連)

これは法人税等の節税ではなく、社会保険料の負担を軽減する方法です。役員報酬の一部を、毎月の給与ではなく年1~2回の賞与として支給します(事前に税務署へ「事前確定届出給与」として届け出る必要があります)。

健康保険料・厚生年金保険料の計算対象となる賞与額には上限(健康保険は年間累計573万円、厚生年金は1ヶ月あたり150万円)が設けられています。そのため、高額な報酬を受け取っている役員の場合、報酬の一部を賞与として支給することで、上限を超える部分には社会保険料がかからなくなり、会社・個人の双方で社会保険料負担を削減できる可能性があります。ただし、この方法は厚生労働省も注視しており、将来的に制度が変更されるリスクがある点には注意が必要です。

⑧ 未払金・未払費用を決算で計上する

会計の原則(発生主義)に基づき、決算日までに既に発生しているが、支払いが翌期以降になる費用を、当期の費用として計上する方法です。これにより、当期の利益を圧縮し、納税を翌期以降に繰り延べる効果があります。

  • 従業員給与・賞与: 例えば末締め翌月10日払いの場合、決算月の末日までの勤務に対応する給与は、支払いが翌期でも当期の費用(未払費用)として計上できます。決算賞与も、支給額が通知され未払いであれば計上可能です。
  • 社会保険料: 決算月分の社会保険料(翌月納付)は、当期の費用(未払費用)として計上できます。
  • その他: 家賃、リース料、水道光熱費、支払利息などで、当月分を翌月以降に支払う契約になっているものも、決算月に未払計上できる場合があります。

⑨ 貸倒損失を計上する

取引先の倒産などにより、売掛金や貸付金などの債権が回収不能となった場合、その回収不能額を「貸倒損失」として損金計上できます。キャッシュアウトはありませんが、損失を計上することで課税所得を減らせます。

ただし、貸倒損失として認められるためには、(1)債権が法律上消滅した場合(会社更生法等の決定、債権放棄通知等)、(2)債務者の資産状況等からみて全額が回収できないことが明らかになった場合、(3)取引停止後1年以上経過した場合(備忘価額1円を除く)など、厳格な要件を満たす必要があります。判断が難しい場合は税理士に相談しましょう。

⑩ 貸倒引当金を設定する

これは、将来発生する可能性のある貸倒れ(回収不能)に備えて、あらかじめ損失の見込額を費用(貸倒引当金繰入額)として計上するものです。実際に貸倒れが発生していなくても、一定の計算方法に基づいて算出した金額を損金に算入できます。

これにより、利益を繰り延べる効果があります。ただし、適用できるのは資本金1億円以下の中小法人や銀行・保険会社などに限られ、繰入限度額の計算も詳細なルールがあります。

⑪ 資本金を減資する(1,000万円以下へ)

会社の資本金の額は、税制上の取り扱いに影響を与えることがあります。特に、資本金が1,000万円を超えている場合、1,000万円以下に減資(資本金の額を減少させる手続き)することで、税負担が軽減される可能性があります。

最も分かりやすいのが法人住民税の「均等割」です。均等割は、会社の利益に関わらず、資本金等の額と従業員数に応じて課される税金ですが、資本金が1,000万円以下の場合、1,000万円超の場合よりも税額が低く設定されています(例:東京都23区、従業員50人以下の場合、年18万円→年7万円に減額)。

株主総会の決議など法的な手続きは必要ですが、直接的なキャッシュアウトなしに、毎年の税負担を軽減できる可能性があります。ただし、資本金の額は会社の信用力にも関わるため、取引先や金融機関への影響も考慮する必要があります。

まとめ

節税対策というと、どうしても「何かを購入する」「お金を支払う」といったキャッシュアウトを伴うものをイメージしがちですが、今回ご紹介したように、現金の支出を伴わない、あるいは最小限に抑えながら実行できる方法も数多く存在します。

 

役員報酬の配分見直し、不要な資産の整理、会計処理の適切な適用、各種制度の活用などを組み合わせることで、会社の資金繰りを健全に保ちながら、効果的に税負担を軽減することが可能です。ただし、それぞれの方法には適用要件や注意点、メリット・デメリットがあります。自社の状況に合わせて最適な対策を選択・実行するためには、税理士などの専門家によく相談することが重要です。

この記事で解説した内容は、以下の動画で税理士がより詳しく解説しています。具体的な事例などを知りたい場合に、参考にしてください。

 

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