個人事業主から一人社長へ|法人化で得られる15の節税メリットを解説

個人事業主として事業が軌道に乗り、所得が増えてくると、多くの方が「法人化(法人成り)」を検討し始めます。

しかし、法人を設立するには登記費用などの初期コストがかかり、赤字でも発生する税金や社会保険料の負担、経理処理の複雑化といったデメリットもあるため、「コストをかけてまで法人化するメリットはあるのだろうか?」と二の足を踏む方も少なくありません。

確かに法人化にはコストや手間がかかりますが、それを上回るほどの大きなメリットが存在します。

金融機関や取引先からの信用力が向上したり、万が一の際の責任が限定されたりといった点に加え、最も大きなメリットが得られるのが「節税」の面です。法人化することで、個人事業主では利用できない、あるいは利用しにくい多様な節税策が活用可能になり、結果として会社と個人の手元に残るキャッシュを最大化できる可能性があります。

この記事では、法人化の基本的な考え方を概観した上で、個人事業主が一人社長になることで活用できるようになる、15個もの具体的な節税メリットについて詳しく解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

1. 法人化の基本:コストをかけてもお金を守りやすくなる理由

法人化のデメリット(設立・維持コスト)

まず、デメリットを正確に把握しておくことが重要です。

  • 設立費用: 株式会社なら約24万円~、合同会社でも約10万円~の設立費用(登録免許税、定款認証手数料など)がかかります。
  • 維持コスト: 事業が赤字であっても、毎年最低約7万円の法人住民税(均等割)が発生します。また、会計処理が複雑になるため、税理士への顧問料なども必要になるのが一般的です。
  • 社会保険への加入義務: 社長一人であっても、法人化すると社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられ、保険料負担が増加するケースが多くなります。

法人化のメリット(信用力、有限責任、そして節税)

これらのコストをかけてもなお法人化が選ばれるのは、それを上回るメリットがあるためです。

  • 社会的信用力の向上: 法人格を持つことで、金融機関からの融資や、大企業との取引において有利になる場合があります。
  • 有限責任: 個人事業主が事業上の負債に対して全財産で責任を負う「無限責任」であるのに対し、株式会社や合同会社は、出資した範囲内で責任を負う「有限責任」となります。
  • 節税の選択肢の拡大: そして最大のメリットが、これから解説する「節税」の選択肢が格段に広がることです。

2. 一人社長が活用できる節税メリット15選

個人事業主から一人社長になることで活用できる節税メリットを、テーマごとに分類して解説します。

【報酬・給与関連のメリット】

①   出張手当の支給

出張旅費規程を整備することで、社長自身に出張手当(日当)を支給できます。

この出張手当は、会社にとっては全額損金(経費)となり、法人税・消費税の節税につながります。

さらに、受け取った社長個人にとっては所得税・住民税がかからない非課税所得となり、社会保険料の算定対象からも除外されます。出張が多い社長にとっては、非常に有効な節税・資金移転の手段です。

②   役員報酬の経費化

個人事業主の場合、事業主自身の生活費は経費にできません。しかし、法人化すれば、社長自身に支払う給与(役員報酬)を、法人の経費として損金算入できます。

これにより、法人の利益を圧縮し、法人税を軽減できます。ただし、役員報酬を損金にするには、原則として毎月同額を支給する「定期同額給与」のルールを守る必要があります。

③   役員賞与の経費化

原則として損金にできない役員賞与も、「事前確定届出給与」という手続きを踏むことで、損金算入が可能になります。

事前に「いつ、誰に、いくら支払うか」を税務署に届け出て、その通りに支給することで、役員賞与も経費として認められます。決算対策の選択肢として活用できます。

④   家族を非常勤役員にして所得分散

生計を同一にする家族を役員にして報酬を支払うことで、所得を分散し、世帯全体での税負担を軽減できます。

特に、業務への関与が限定的な場合は「非常勤役員」とすることで、社会保険への加入義務が生じないため、社会保険料の負担を増やすことなく所得分散のメリットを享受できます。

⑤   家族を従業員にしても扶養控除が使える

個人事業主の場合、家族を「専従者」として給与を支払うと、配偶者控除や扶養控除の対象から外れてしまいます。

しかし、法人の場合は、家族を従業員として雇用し給与を支払ったとしても、その家族の年収が一定額以下であれば、社長自身が配偶者控除や扶養控除の適用を受けることが可能です。

⑥   給与所得控除の適用

社長が受け取る役員報酬は「給与所得」となるため、「給与所得控除」が適用されます。給与所得控除は、給与収入に応じて計算されるみなし経費のようなもので、領収書などがなくても所得から差し引くことができます。

個人事業主の青色申告特別控除(最大65万円)と比較して、給与所得控除は最大で195万円と、控除額が大きくなる可能性があります。

⑦   退職金の活用

個人事業主には退職金の概念がありませんが、法人であれば、将来社長自身や役員である家族が退職する際に、退職金を支給できます。支給した退職金は、法人側で多額の損金として計上できるため、大きな節税効果があります。

また、受け取る個人側も、給与所得に比べて税制面で大幅に優遇されている「退職所得控除」などのメリットを受けられます。

【資産・経費関連のメリット】

⑧   創立費・開業費の経費化

法人設立にかかった費用(創立費)や、設立後から営業開始までにかかった準備費用(開業費)は、経費として計上できます。

これらの費用は、初年度に一括で経費化することも、あるいは「繰延資産」として計上し、将来利益が出た任意のタイミングで償却(経費化)することも可能なため、柔軟な利益調整に役立ちます。

⑨   役員社宅制度の利用

会社名義で住居を借り上げ(または購入し)、それを社長に社宅として貸し出すことで、家賃や関連費用の一部を法人の経費にできます。

社長は会社に対して相場より低い家賃相当額を支払うだけで済むため、役員報酬をその分減額すれば、個人の税・社会保険料負担が軽減され、手取り額を増やす効果があります。

⑩   社用車の経費化

法人名義で車を購入すれば、その購入費用を減価償却費として数年にわたって経費計上できるほか、ガソリン代、保険料、税金、駐車場代といった維持費も経費にできます。

特に「4年落ち中古車」などを活用すれば、購入初年度に全額を経費化できる可能性もあり、大きな節税効果が期待できます。

【税務・制度関連のメリット】

⑪   決算月の自由な設定

個人事業主の事業年度は1月1日~12月31日に固定されていますが、法人は決算月を自由に設定・変更できます。

会社の繁忙期を避けたり、資金繰りが楽な時期に納税時期を合わせたりと、戦略的な経営計画を立てやすくなります。

⑫   欠損金(赤字)の繰越期間が10年に延長

事業で発生した赤字(欠損金)は、翌年以降の黒字と相殺して税負担を軽減できます

この繰り越しができる期間が、個人事業主の青色申告では3年間ですが、法人(青色申告法人)の場合は10年間に延長されます。これにより、創業初期の大きな赤字などを、より長期間にわたって有効活用できます。

⑬   消費税の納税義務免除(最大2年)

個人事業主から法人成りした場合、一定の要件を満たせば、設立から最大2年間、消費税の納税が免除されます。

消費税の納税義務は、原則として2期前の課税売上高で判定されるため、設立後1期目と2期目は判定の基準となる期間がなく、免税事業者となるためです。

ただし、資本金が1,000万円以上の場合や、特定期間の課税売上高・給与支払額が1,000万円を超えた場合などは、早期に課税事業者となるため注意が必要です。

【投資・利益繰延べ関連のメリット】

⑭   オペレーティング・リースの利用

航空機や船舶などを対象としたオペレーティング・リース取引に出資することで、出資額の大部分を初年度に損金算入し、大きな利益を将来に繰り延べることが可能です。

数千万円単位の突発的な利益が出た際の決算対策として、法人ならではの強力な選択肢となります。

⑮   海外不動産投資の活用

法人として海外の不動産に投資することも可能です。

特にアメリカの中古木造住宅などは、日本の税法上、短い耐用年数で減価償却できる一方で、現地では資産価値が落ちにくいという特性があり、減価償却による節税と将来のキャピタルゲインの両方を狙える可能性があります。

まとめ

個人事業主から一人社長へと法人化することは、設立・維持コストや社会保険料の負担増といったデメリットがある一方で、本記事で紹介した15項目に代表されるように、それを上回る多様な節税メリットを享受できる可能性があります。

給与所得控除や退職金の活用、役員社宅制度、各種経費の計上範囲の拡大など、個人事業主では使えない、あるいは使いにくい節税の選択肢が格段に広がります。

法人化を検討するタイミングとしては、一般的に個人の課税所得が900万円を超え、所得税・住民税の合計税率が法人税の実効税率を上回り始める頃が一つの目安とされています。

これらのメリットを正しく理解し、自社の利益状況や将来の事業計画と照らし合わせて、最適なタイミングで法人化を検討することが、事業の成長と資産防衛の両立につながるでしょう。

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