福利厚生費の戦略的活用術|会社も社員も得をする節税テクニック12選

「社員の給料を上げたいが、会社の社会保険料負担も増えるのが厳しい…」「社員の満足度を高めたいが、会社のキャッシュは最大限残したい…」多くの経営者が、このようなジレンマを抱えているのではないでしょうか。

賃金アップは、社員のモチベーションに繋がる一方で、会社の利益を圧迫し、社会保険料という固定費を増大させます。しかし、この問題を解決する、非常に強力な選択肢があります。それが「福利厚生費」の戦略的な活用です。

福利厚生費は、単なるコストではありません。正しく設計すれば、会社の利益を圧縮して法人税を削減し、同時に、社員にとっては所得税や社会保険料がかからない形で可処分所得を増やすことができる、まさに「会社も社員も得をする」究極の制度なのです。

この記事では、福利厚生費を節税の武器に変えるための基本ルールから、明日からでも実践できる具体的な12のテクニック、そして税務調査で否認されないための注意点まで、網羅的に解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

なぜ福利厚生費は最強の節税ツールなのか?

福利厚生費がなぜこれほど強力なのか。それは、「給与」との決定的な違いにあります。

給与や賞与は、労働の対価として支払われるものであり、受け取った従業員には所得税・住民税が課され、さらに従業員と会社双方に社会保険料の負担が発生します。例えば、従業員の手取りを10万円増やそうとすると、会社は社会保険料の負担分を含め、12〜13万円以上のコストを覚悟しなければなりません。

一方、福利厚生費は、従業員の労働環境改善や生活安定のために提供される非給与サービスです。一定の要件を満たせば、提供にかかった費用は会社の経費(損金)になり、受け取った従業員側は非課税となります。社会保険料の算定基礎にも含まれません。

つまり、同じ10万円の価値を提供するのであれば、給与として上乗せするよりも、福利厚生として提供する方が、会社と従業員双方にとって、はるかに効率が良いのです。

福利厚生費として認められる「4つの絶対条件」

ただし、何でも福利厚生費にできるわけではありません。税務調査で「これは実質的な給与(現物給与)ですね」と指摘されないためには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 給与ではないこと:労働の対価ではなく、あくまで福利厚生目的であること。
  2. 現金や換金性の高いものではないこと:現金や商品券の支給は、原則として給与と見なされます。
  3. 全従業員が利用できること:役員や特定の人だけを対象としたものは、福利厚生費として認められません。
  4. 社会通念上、金額が妥当であること:あまりにも高額で贅沢なものは、福利厚生の範囲を超えていると判断されます。

この4つの原則を念頭に置きながら、具体的な活用術を見ていきましょう。

実践!会社のキャッシュと社員の手取りを増やす12のテクニック

ここからは、福利厚生費を戦略的に活用するための具体的な方法を12個、そのポイントと注意点を交えて詳細に解説します。

①社宅制度:最も強力な家賃補助スキーム

これは、福利厚生費を活用した節税術の中で、最も効果が大きいものの一つです。役員や従業員が住んでいる賃貸物件を、会社名義で契約し、それを「社宅」として貸し出す方法です。

会社は家主に対して家賃を全額支払い、入居する役員・従業員から、法律で定められた計算方法に基づく「適正な家賃(賃貸料相当額)」を徴収します。この徴収額は、一般的に市場家賃の10%〜50%程度になることが多く、会社は支払家賃と徴収家賃の差額の大部分を経費にできます。

従業員は実質的に家賃の大部分を会社に負担してもらいながら、その経済的利益は給与として課税されません。これは、住宅手当として現金を支給するよりも、はるかに節税効果が高い方法です。導入にあたっては、賃貸借契約の名義を法人に変更し、社内での「社宅管理規程」を整備することが不可欠です。

②食事代補助:社員のランチを賢くサポート

勤務時間内の昼食については、社員食堂などで食事を提供し、「従業員が費用の半分以上を負担」かつ「会社の負担額が月3,500円(税抜)以下」という2つの要件を満たせば、会社の負担分を福利厚生費にすることができます。

また、残業や深夜勤務を行う従業員に、食事を現物で提供した場合、その費用は全額福利厚生費として認められます。この場合は、月3,500円の上限はありません。「チケットレストラン」のような外部の食事補助サービスを活用するのも、管理がしやすく現代的な方法です。

③健康診断・人間ドック:社員の健康投資を会社の経費に

従業員の健康を守るための健康診断の費用は、福利厚生費として計上できます。これは法律で義務付けられている定期健康診断だけでなく、より精密な検査を行う人間ドックも対象となります。

重要なのは、「全従業員を対象」とすることです。ただし、「40歳以上の全従業員を対象」というように、年齢などで合理的な基準を設けて対象者を限定することは認められています。役員の配偶者の人間ドック費用についても、全役員の配偶者を対象とするなど公平な基準であれば、福利厚生費として認められる可能性があります。

④出張手当:社長も使える「非課税のポケットマネー」

これは、経営者にとって非常に強力な節税ツールです。出張が多い会社であれば、「出張旅費規程」を事前に整備しておくことで、実費の交通費や宿泊費とは別に、「出張手当(日当)」を支給できます。

この出張手当は、受け取った役員・従業員側では所得税・住民税が非課税となり、支払った会社側では全額経費(損金)として扱われます。給与や役員報酬を上げずに、合法的に会社の資金を個人に移転できる、極めて有効な手段です。海外出張の場合は、国内よりも高額な日当を設定することも可能です。

⑤社員旅行・研修旅行:慰安と節税を両立

従業員の慰安を目的とした社員旅行も、以下の要件を満たせば福利厚生費として認められます。

  • 旅行の期間が4泊5日以内であること
  • 全従業員の50%以上が参加していること
  • 会社負担額が1人あたり10万円程度と、社会通念上妥当な範囲であること

税務調査で「実質的な給与」と見なされないためには、役員だけで行く豪華な旅行や、取引先を招待する旅行は避け、あくまで全従業員のためのイベントであるという実態を明確にしておくことが重要です。

⑥ユニフォーム・作業服:業務上の必要性を明確に

業務上、着用が必須となる制服や作業服の支給は、福利厚生費として認められます。ポイントは、それが「私服との兼用が難しい」業務専用のものであることです。社名のロゴを入れるなど、業務専用であることが客観的に分かるようにするのが一般的です。

一方で、接客業などで着用するスーツ代を補助する場合、それは業務外でも着用できるため、福利厚生費ではなく給与として扱われる可能性が高いので注意が必要です。

⑦通勤手当:非課税限度額の活用

従業員の通勤にかかる費用を支給する通勤手当は、一定の限度額まで非課税となります。公共交通機関を利用する場合、最も経済的かつ合理的な経路での1ヶ月の定期代相当額(上限15万円)までが非課税です。マイカー通勤の場合も、距離に応じて非課税限度額が定められています。給与に含めず「通勤手当」として支給することで、社会保険料の算定基礎からも除外されます。

⑧レクリエーションイベント:社内交流を会社の経費で

従業員全員を対象とした、社内の親睦を深めるためのイベント費用も福利厚生費となります。忘年会や新年会、運動会、ボーリング大会などが典型例です。また、社内の部活動(野球部、フットサル部など)に対する補助金も、一定の要件を満たせば福利厚生費として認められます。用具の購入費や活動場所のレンタル費用などを会社が支援する形です。

⑨勤続表彰:社員の功労に非課税で報いる

長年勤務した従業員の功労に報いるための記念品の支給や、旅行・観劇への招待も、以下の要件を満たせば福利厚生費として認められます。

  • 勤続年数がおおむね10年以上であること
  • 表彰の間隔が5年以上の一定期間あいていること
  • 記念品の価額が社会通念上、常識の範囲内であること

現金や換金性の高い商品券を支給した場合は、給与として課税されてしまうため注意が必要です。旅行券や従業員が自由に選べるカタログギフトなどを活用するのが一般的です。

⑩慶弔費:人生の節目を会社としてサポート

従業員やその家族の結婚、出産、死亡といった際に支給するお祝い金やお見舞金、香典なども、福利厚生費として認められます。金額については、社会通念上の相場を大きく超えない範囲で、あらかじめ社内の「慶弔見舞金規程」で基準を定めておくことが重要です。規程がない場合、金額の妥当性を客観的に証明するのが難しくなり、税務調査でリスクとなる可能性があります。

⑪資格取得支援制度

従業員のスキルアップを支援するための資格取得費用の補助も、福利厚生費または教育訓練費として経費計上できます。業務に直接関連する資格の受験料や、教材費、研修の受講料などを会社が負担する制度です。従業員の成長が会社の成長に繋がる、非常に有益な投資と言えるでしょう。これも全従業員が利用できる制度として整備することがポイントです。

⑫ジム・フィットネスクラブの法人契約

従業員の健康増進を目的として、フィットネスクラブやジムと法人契約を結び、その利用料を会社が負担する場合、福利厚生費として認められます。こちらも、役員など特定の人だけでなく、全従業員が希望すれば利用できるという公平性が求められます。健康経営が注目される現代において、非常に魅力的な福利厚生の一つです。

福利厚生制度を導入する上での最重要ポイント

ここまで12の施策を紹介してきましたが、これらを有効に機能させ、税務調査で否認されないためには、以下の3つのポイントを徹底することが不可欠です。

  1. 規程の整備:社宅、出張旅費、慶弔見舞金など、制度を導入する際は必ず関連規程を整備し、それに従って運用してください。規程は、制度が全従業員のために公平に運用されていることを示す客観的な証拠となります。
  2. 公平性の担保:「全従業員が利用できる」という原則を遵守してください。特定の役職や人物だけを優遇する制度は、福利厚生ではなく賞与や役員報酬と見なされます。
  3. 証拠の保存:支払いの事実を証明する領収書はもちろん、社員旅行であれば日程表や参加者名簿、会議費であれば議事録など、その支出が事業や福利厚生のために行われたことを示す客観的な証拠を必ず保存しておきましょう。

まとめ

今回は、福利厚生費を活用した12の節税テクニックを解説しました。

福利厚生制度の充実は、単なるコスト削減にとどまりません。従業員のエンゲージメントを高め、人材の採用・定着にも繋がる、会社の未来への重要な投資です。

給与を上げる前に、まずは自社で導入できる福利厚生制度がないか検討してみてください。今回ご紹介した12の方法は、どれも会社のキャッシュフローを改善し、従業員の可処分所得を増やすことに直結する可能性があります。

ただし、これらの制度を適用するには、税務上のルールを正しく理解し、規程の整備や客観的な証拠の保存を徹底することが不可欠です。自社に最適な福利厚生制度を設計・導入する際には、ぜひ一度、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

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