2026年最新|会社も社員も手取りが増える福利厚生節税9選|食事補助は月7,500円に拡大


「社員の給料を上げてあげたいけれど、社会保険料の会社負担まで増えるのが重い」「せっかく昇給しても、税金と社会保険料で引かれて社員の手取りはあまり増えない」——多くの社長が抱えるこのジレンマを解く方法として、いま注目されているのが「第三の賃上げ」=福利厚生です。
福利厚生費は、一定の要件を満たせば会社は経費にでき、社員には所得税も住民税も社会保険料もかからないお金の渡し方です。しかも2026年4月には、食事補助の非課税枠が42年ぶりに月3,500円から月7,500円へ引き上げられ、使い勝手が一段と良くなりました。
本記事では、給与と福利厚生で手取りがどれだけ変わるかの試算から、会社も社員も得をする福利厚生節税9選、さらに一人社長でも使えるもの・使えないものの整理、税務調査で否認されないための備えまでを、2026年の最新ルールに沿ってまとめます。
「第三の賃上げ」福利厚生が注目される理由
給料、賞与に続く第三の手段として福利厚生が注目されているのは、同じお金をかけても、社員の手元に残る金額がまったく違うからです。
給与で10万円渡すか、福利厚生で10万円分渡すか
給与は労働の対価なので、受け取った社員には所得税と住民税がかかります。さらに給与の額をもとに、社員と会社の両方に社会保険料がかかります。一方、要件を満たした福利厚生は、社員側は非課税で社会保険料の算定にも含まれず、会社側も経費にしたうえで社会保険料の上乗せがありません。
ざっくりとした試算で比べると、次のようになります。
| 項目 | 給与を10万円上げる | 福利厚生で10万円分を提供 |
| 会社の負担額 | 約11.5万円(給与10万円+会社負担の社会保険料 約1.5万円) | 10万円 |
| 社員の社会保険料 | 約1.5万円 | 0円 |
| 社員の所得税・住民税 | 約1.7万円 | 0円 |
| 社員が受け取る価値 | 約6.8万円 | 10万円 |
| 会社の経費(損金) | なる | なる |
※社会保険料を労使それぞれ約15%、所得税・住民税を合計約20%(所得税10%・住民税10%の税率帯)と仮定した概算です。実際の負担は地域の保険料率や年収によって変わります。
会社の支出は1.5万円少ないのに、社員が受け取る価値は約3.2万円多い。これが「第三の賃上げ」と呼ばれる理由です。年間で考えれば、社員1人あたり数十万円単位の差になることも珍しくありません。
福利厚生費にするための3つの要件
ただし、何でも福利厚生費にできるわけではありません。税務調査で「これは実質的な給与ですね」と言われないために、最低限次の3つを押さえておきましょう。
- 社内規程があること:福利厚生規程・社宅管理規程・出張旅費規程などを作り、支給の基準や金額を明示しておきます。
- 社員全員を対象にしていること:役員や一部の社員だけを特別扱いするものはNGです(年齢などの合理的な基準で区切るのは可)。
- 金額が社会通念上妥当であること:常識の範囲を超える豪華なものは、福利厚生ではなく給与とみなされます。
加えて、現金や商品券など換金性の高いものを渡すと原則として給与扱いになる点も覚えておいてください。福利厚生は「現物やサービスで提供する」のが基本です。
会社も社員も得をする福利厚生節税9選【早見表】
ここからは、具体的な9つの方法を紹介します。まずは全体像を早見表で確認しましょう。
| 施策 | 主な条件・目安 | 注意点 |
| ①社宅制度 | 社員が賃貸料相当額の50%以上を負担 | 役員の豪華社宅は時価家賃で課税 |
| ②食事代補助 | 社員が半分以上負担+会社負担は月7,500円以下(2026年4月〜) | 残業時の食事は全額会社負担OK |
| ③健康診断・人間ドック | 全員(または年齢等の合理的基準)が対象 | 会社が医療機関へ直接支払う |
| ④出張手当 | 出張旅費規程に基づく相当額 | 出張の記録を毎回残す |
| ⑤社員旅行 | 4泊5日以内・参加者50%以上 | 不参加者への現金支給はNG |
| ⑥レクリエーション・部活動 | 全員に参加の機会がある | 役員だけの活動は対象外 |
| ⑦ユニフォーム | 業務専用・勤務中のみ着用 | 私服で着られるものは給与扱いの恐れ |
| ⑧慶弔費・永年勤続表彰 | 規程に沿った相場の金額/表彰は5年以上の間隔 | 現金・商品券での表彰は給与課税 |
| ⑨資格取得費・ジム法人契約 | 業務に必要な資格/ジムは全員が利用可能 | 固定費が増える・一人社長は否認されやすい |
①社宅制度:福利厚生の王様
最も効果が大きいのが社宅制度です。会社が物件を借りて(または所有して)社員に貸し出す仕組みで、現金で渡す家賃補助とはまったく扱いが違います。家賃補助は給与なので課税されますが、社宅は一定のルールを守れば会社負担分に税金も社会保険料もかかりません。
一般の社員の場合、国が定めた計算式で出す「賃貸料相当額」の50%以上を社員から受け取っていれば、残りの会社負担分は非課税です。この賃貸料相当額は固定資産税の課税標準額をもとに計算するため、実際の家賃よりかなり低くなるのが普通です。家賃10万円の物件でも、社員の負担は数千円〜1、2万円程度で済むケースがあります。そして会社が負担した残りの家賃は、全額を経費にできます。
社長や役員も社宅を使えます。役員報酬を少し下げて、その分を役員社宅に置き換えれば、会社も個人も手残りを増やせます。ただし役員の場合は計算方法が異なり、床面積が240㎡を超えるような豪華な社宅は時価家賃で判定されるなど、社員よりもチェックが厳しくなります。タワーマンションの最上階や大邸宅を会社で借りるのは避けたほうが無難です。
役員社宅の具体的な家賃の計算方法は役員社宅で手取りを増やす方法|家賃を経費化する計算方法と注意点で、会社名義で自宅を買う場合の全体像は会社名義で自宅を購入し役員社宅制度を活用する節税スキームの全体像で詳しく解説しています。
②食事代補助:42年ぶりの改正で月7,500円に
2026年に最も大きく変わったのが食事代の補助です。勤務時間内の食事(昼食など)を会社が提供する場合、次の2つを満たせば会社負担分が非課税になります。
- 社員が食事代の半分以上を負担していること
- 会社の負担額が社員1人あたり月7,500円以下(税抜)であること
この上限は長く月3,500円のまま据え置かれてきましたが、2026年4月1日以後に支給する食事から月7,500円へと、42年ぶりに倍以上に引き上げられました。物価の上昇にようやく制度が追いついた形です。社員食堂がない会社でも、仕出し弁当の手配や外部の食事補助サービスを使えば導入できます。
また、残業や休日出勤のときに現物で提供する食事は、会社が全額負担しても非課税です。条件は、通常の勤務時間外の提供であること、残業する社員全員に提供すること、高額な食事でないこと。深夜勤務で食事を現物支給できず夜食代を現金で渡す場合も、1回あたりの非課税限度が300円から650円に引き上げられています。
なお、役員には原則として「残業」という考え方がないため、残業食事の扱いは社員向けの制度だと考えておきましょう。高級な出前を毎回取るような使い方は、給与として否認されます。
③健康診断・人間ドック:会社が直接支払うのが必須
健康診断や人間ドックの費用も、役員・社員全員を対象として会社が負担すれば、全額を福利厚生費にできます。法律で義務付けられた定期健康診断だけでなく、より精密な人間ドックも対象です。「40歳以上の全員」のように年齢などの合理的な基準で対象者を区切ることも認められています。
見落としやすいのが支払い方です。会社が医療機関に直接費用を支払う必要があり、社員に現金を渡して各自で払わせると、現金の支給とみなされて給与扱いになってしまいます。社員に立て替えさせない運用を徹底しましょう。
④出張手当:規程ひとつで無税の手取りをつくる
出張旅費規程を作っておけば、交通費や宿泊費の実費とは別に、出張手当(日当)を支給できます。会社は全額を経費にでき、受け取った役員・社員側は所得税・住民税・社会保険料がかかりません。宿泊費などを定額で支給する形にすれば、上手に節約した差額も手元に残ります。
社長も対象にできるため、役員報酬を上げずに会社のお金を個人に移せる強力な方法です。ただし、金額は同業他社などと比べて社会通念上相当な範囲に設定し、税務調査に備えて出張の日程・行き先・目的を毎回記録しておくことが欠かせません。金額の決め方や規程の作り方は役員報酬を上げずに毎年100万円を会社から個人へ無税で移す「出張手当」活用術をご覧ください。
⑤社員旅行:参加50%以上が条件
福利厚生の定番である社員旅行は、次の条件を満たせば、原則として参加者に給与課税されず福利厚生費にできます。
- 旅行の期間が4泊5日以内であること(海外旅行は現地での滞在日数で判定)
- 参加した人数が全体の50%以上であること(支店ごとに行う場合は支店ごとに判定)
- 金額が社会通念上妥当であること(会社負担は1人10万円程度が一つの目安)
注意したいのが、参加しなかった社員に代わりの現金を渡すことです。その現金は給与として課税されるうえ、参加者にも同じ額の給与があったものとして扱われてしまいます。
また、「研修旅行」として海外へ行き観光もする、という使い方は危険です。研修旅行は福利厚生費ではなく研修費や旅費として扱われ、日程表や研修資料などの業務である証拠が求められます。実態が観光なら、税務調査で否認されます。旅行費用を経費にする条件は旅行費用を正しく会社の経費にするには?社員旅行から役員合宿まで、税務上の5つの条件で詳しく整理しています。
⑥レクリエーション・部活動:「全員に機会」がポイント
忘年会・新年会、運動会、ボウリング大会などのレクリエーションも、全社員が参加できる形にしていれば福利厚生費になります。「全員参加」が条件と聞くと身構えるかもしれませんが、全員に平等に案内して参加の機会を与えていれば、結果的に参加しない人がいても問題ありません。無理に参加を強いる必要はないということです。
社内の部活動(フットサル部、野球部、ゴルフ部など)の場所代や用具代を補助する方法もあります。条件は、全社員が参加できるオープンな部活であること、自社の社員だけが参加していること、補助金が部活のためだけに使われていること、飲食代が常識的な範囲であること。補助額は1人あたり月1,000〜2,000円程度にしている会社が多いようです。役員だけで活動している「名ばかり部活」は認められません。
⑦ユニフォーム代:勤務中のみ着用が条件
飲食業や医療、警備などで業務に欠かせない制服を支給する場合、購入費を福利厚生費として計上できます。条件は、職場の全員を対象としていること、社名やロゴが入っているなど一目で従業員だと分かること、そして勤務中だけ着用するものであることです。
最近はおしゃれなデザインの制服も増えていますが、普段着としても着られるものや、接客用のスーツ代の補助などは、給与として扱われる恐れがあります。
⑧慶弔費・永年勤続表彰:相場と間隔を守る
結婚や出産のお祝い金、病気のお見舞い金、香典などの慶弔費は、世間一般の相場の範囲であれば福利厚生費になります。金額は「慶弔見舞金規程」で事前に決めておくのが鉄則です。規程がないと、金額が妥当であることを税務調査で説明しにくくなります。
長く勤めた社員への永年勤続表彰も、記念品の支給や旅行・観劇への招待であれば課税されません。目安は次のとおりです。
- 勤続年数がおおむね10年以上の人が対象
- 表彰の間隔がおおむね5年以上あいている
- 記念品などの金額が社会通念上相当である
短い間隔で何度も表彰したり、現金・商品券で渡したり、高額すぎるものを贈ったりすると給与課税になります。旅行への招待や、社員が選べるカタログギフトなどがよく使われます。
⑨資格取得費・ジムの法人契約:全員対象ゆえの落とし穴
社員のスキルアップを支える資格取得費やセミナー費用は、業務に直接必要な資格であれば会社の経費にできます。仕事と関係の薄い趣味の資格などは給与扱いになるので注意しましょう。
フィットネスジムやマッサージの法人契約も、健康経営の流れで人気の福利厚生です。ただし全社員が利用できる形にする必要があるため、社員全員分の利用料を毎月負担し続けることになり、固定費が一気に上がります。キャッシュに余裕があり、経営が安定してから検討するのが現実的です。
一人社長・役員だけの会社で使えるもの、使えないもの
福利厚生は「全員対象」が原則のため、社員がいない一人社長や、役員だけの会社では、役員報酬との区別がつきにくく否認されやすいものがあります。9選を会社の形で整理すると、おおむね次のとおりです。
| 施策 | 社員がいる会社 | 一人社長・役員だけの会社 |
| 社宅制度(役員社宅) | ◎ | ◎ 最も効果が大きい |
| 出張手当 | ◎ | ◎ 規程と記録が前提 |
| 健康診断・人間ドック | ◎ | △ 規程・金額の妥当性しだい |
| 食事代補助(残業食含む) | ◎ | × 役員に残業の考え方がない |
| 社員旅行・レクリエーション | ○ | × 役員だけだと給与・交際費扱いになりやすい |
| ジムの法人契約 | ○ 固定費に注意 | × 役員報酬とみなされやすい |
一人社長が狙うべきは、まず役員社宅と出張手当の2つです。ほかにも一人社長ならではの節税策は手取りが200万円変わる?一人社長が個人事業主より得する11の節税術で、法人と個人を組み合わせた手取り最大化の全体像は社長の手取りが数百万円変わる――法人・個人を組み合わせた節税戦略の全体像でまとめています。
9選以外にも押さえたい制度
- 通勤手当:電車・バスの通勤なら、合理的な経路の定期代相当額で月15万円までは所得税が非課税です(社会保険料の算定には含まれる点に注意)。
- 法人保険を使った福利厚生:養老保険などを福利厚生として全員加入にする方法もあります。詳しくは従業員の福利厚生に役立つ法人保険3種類の活用法をご覧ください。
- 別の切り口で12の手法を読みたい方は:福利厚生費を活用して賢く手取りを最大化!会社と社員がWin-Winになる12の節税手法
税務調査で否認されないための3つの備え
福利厚生費は、制度を作っただけでは守り切れません。税務調査で「実質的な給与だ」と言われないよう、次の3つを徹底しておきましょう。
- 規程を作り、その通りに運用する:社宅管理規程、出張旅費規程、慶弔見舞金規程、食事補助の支給基準などを明文化し、規程どおりに運用している事実を残します。
- 公平性を保つ:特定の役員や社員だけが得をする運用は、賞与や役員報酬とみなされます。案内は全員に平等に出しましょう。
- 証拠を保存する:領収書だけでなく、日付・内容・参加人数がわかる案内文、参加者名簿、旅行の日程表、出張の記録などを保存し、いつでも説明できる状態にしておきます。
まとめ
給与を上げても、税金と社会保険料で社員の手取りは思うほど増えず、会社の負担だけが増えてしまいます。福利厚生を「第三の賃上げ」として使えば、同じ予算でも社員が受け取る価値を大きく増やし、会社の経費にもできます。
- ①社宅制度、②食事代補助(2026年4月から月7,500円に拡大)、③健康診断・人間ドック、④出張手当、⑤社員旅行、⑥レクリエーション・部活動、⑦ユニフォーム、⑧慶弔費・永年勤続表彰、⑨資格取得費・ジム法人契約の9つが代表的な方法
- 共通する条件は「規程がある」「全員が対象」「金額が社会通念上妥当」の3つ。現金や商品券は原則として給与扱い
- 一人社長はまず役員社宅と出張手当から
どれも、規程の作り方や運用のしかたしだいで効果が大きく変わります。自社に合う制度を選ぶときは、顧問税理士に相談しながら設計していきましょう。
今回の内容は、動画でも税理士が詳しく解説しています。42年ぶりに改正された食事補助のルールや、豪華社宅の注意点なども紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。







