住民税の負担は重いものですが、仕組みを理解することで対策を立てられるようになります。
今回は、経営者はもちろん、個人事業主や会社員でも利用できる住民税の節税方法を10個ご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
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1.住民税とは?
住民税とはどんな税金でしょうか。個人として納める税金の代表的なものである「所得税」と少し比較してみましょう。
所得税は国に納める「国税」、住民税は地方自治体に納める「地方税」です。
また、所得税はその年の所得に課税され、年末調整や確定申告で精算しますが、住民税は前年度の所得(前年の1月1日から12月31日までに発生した所得)に応じて課税されます。
そして住民税を細かく見ると、前年の所得に対して税率10%の「所得割」と、市町村民税3,500円・道府県民税1,500円と定められている「均等割」に分けることができます。
この内、「均等割」の金額は減らすことができません。
つまり、「所得割」をいかに抑えるかが、住民税の節税を考える上では重要になります。
言い換えると、住民税は所得と連動しているため、住民税を減らすには所得を減らせばいいということです。
以上の事から、住民税の負担を減らすポイントは
- 総所得金額を減らす
- 所得控除・税額控除を漏れなく計上する
という2点になります。
2.総所得金額を小さくする
まず「所得を減らす」上で大事な4つのポイントについてご説明します。
・必要経費をもれなく計上する
個人事業主の場合、事業所得は
総収入金額ー必要経費=所得金額
という計算になります。
無駄な経費を計上するのは意味がありませんが、必要経費をもれなく計上することが節税につながります。
例えば、
例)自宅兼事務所の家賃、電気代、火災保険料、通信費、ネット代、減価償却費(按分のうえ事業分のみ)
などは、計上を忘れがちな経費です。
領収書がない交通費でも、支払い内容が明確であれば、出金伝票を作成した上で経費できるので、計上もれがないようにしましょう。
・青色申告特別控除
青色申告の事業者であれば、最大65万円の青色申告特別控除を受けることができます。
所得税の計算で青色申告特別控除を適用させると、住民税の計算の元になる「所得金額」が減り、結果として住民税の節税になります。
青色申告特別控除65万円の場合、住民税の税率は10%なので住民税を6万5千円減らせることになります。
・少額減価償却資産の特例
青色申告を行う個人事業主であれば、30万円までの固定資産について「少額減価償却資産の特例」が利用できます。これによって1年間で合計300万円までは、一括で取得した年の必要経費に計上して、所得を減らすことが可能です。
・はぐくみ基金への加入
はぐくみ基金とは、自分の給与から毎月積立をして、自分で退職金を作る企業年金制度です。
掛金は月額1,000円から給与の20%まで(上限100万円まで)積み立てられます。
年齢:30歳
月額給与:30万円
勤務地:東京
という条件で、上限の月6万円を積み立てた場合、
住民税を年間4万円以上減らすことが可能です。
また、役員も加入できたり、積立金を退職時・休職時・休業時など様々タイミングで受け取れたりと、柔軟性が高い制度です。
3.所得控除、税額控除を漏れなく適用する
続いて、「所得控除、税額控除を漏れなく適用する」上で大事な5つのポイントについてご説明します。
・ふるさと納税
ふるさと納税は、自分の応援したい自治体を選んで納税できる制度です。
控除上限額の範囲内であれば、寄付金額のうち自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象となって、「住民税」または「所得税・住民税」から控除されます。
会社員・公務員など確定申告が不要な方は「ワンストップ特例」を利用することで、ふるさと納税を手軽に適用できます。
この特例を利用した場合は、寄付した合計額から2,000円を差し引いた額がすべて住民税から控除されます。
一方、確定申告した場合、所得税と住民税の両方から控除されます。
(国税庁)
その際は「寄付金額から2千円を引いたものに所得税の税率を掛けた額」が所得税からの控除額になり、
(ふるさと納税額 - 2,000円)× 所得税率=所得税からの控除額
残りの控除額は住民税から控除されます。
正確には税金の前払いという形ですが、実質2,000円の負担で、寄付額の3割相当の野菜や果物・お米といった返礼品を貰えるということで、かなりお得です。
ただし控除限度額を超えて寄付した分は自己負担になってその分は控除されません。シミュレーターなどで予め計算してみることをおすすめします。
・医療費控除
医療費控除は、年に10万円以上の医療費を支払った場合に、確定申告することで受けられる所得控除です。
計算式は、
(年間の医療費-保険金から補填された金額)ー10万円=控除額
となります。この医療費は自分の分だけでなく、家族の分も合算して計算できます。
範囲がかなり広く、診療費用から入院費用、通院の交通費、さらに薬局で買った医薬品の代金や鍼・灸の費用なども計上できます。
意外なものだと、
- 花粉症の治療費
- スポーツジム代
- 禁煙治療代
- ED薬
なども対象になる場合があります。
所得から控除されるので、所得税だけではなく、住民税を節税する効果もあります。
例えば医療費控除の控除額が10万円のとき、
10万円×10%=1万円
の住民税を削減できます。
・小規模企業共済
(出典 中小機構)
小規模企業共済は、個人事業主や中小企業の経営者のための退職金積み立て制度です。
掛金は毎月1,000円~7万円までの範囲内で選択できます。
=====小規模企業共済=====
毎月1,000円~7万円まで積立可能
掛金全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象
支払った時は掛金の全額が所得控除になるので、満額の年84万円掛けると
84万×10%=8万4千円住民税が安くなります。
また、小規模企業共済には貸付制度があります。掛金の7~9割を借りることができ、年利は1.5%と低金利です。
・iDeCo
iDeco(個人型確定拠出年金)は私的年金を自分で積み立て運用していく制度ですが、こちらも掛金の全額が所得控除の対象となるので、住民税を下げる効果があります。
働き方や会社で加入している年金制度によって上限額が変わり、個人事業主であれば年81万6千円まで掛けられます。上限まで掛けると、年に約8万円住民税を減らすことが可能です。
受取時も退職所得控除が適用できるなど、税制的にお得です。ただし原則60歳までは引き出せない点についてはご注意ください。
・扶養控除
扶養控除は、16歳以上の子や親などを養育している場合に控除を受けられる制度です。
住民税に関しては33万円から45万円の控除を受けることができます。1人分扶養控除が増えると、住民税が3~4万円減ることになります。
見落としがちなのは、別居であっても「生計を一にしている場合」には対象となり得るので、たとえば寮生活している子どもは扶養親族に含めてOKですし、別居の親に生活費を送っている場合も対象になります。
まとめ
今回は、住民税を下げるための有効な方法を10個ご紹介しました。
住民税を下げるには、総所得金額を小さくし、所得控除と税額控除を漏れなく適用することが重要です。
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