初年度に一括経費化!即時償却を活用した3つの設備投資節税スキーム

企業の経営において、予期せぬ大きな利益が発生することは喜ばしい反面、それに伴う多額の納税は経営者にとって大きな悩みの一つです。

「今期は予想以上に利益が出そうだが、効果的な節税対策が思いつかない」「将来性のある分野に投資しつつ、同時に当期の税負担も圧縮できる方法はないだろうか」といった課題に直面している方も多いのではないでしょうか。

通常の設備投資では、購入費用を数年にわたって分割して経費計上する「減価償却」が原則ですが、実は、国の施策を活用することで、投資額の全額を初年度に経費化できる「即時償却」という強力な手法が存在します。

本記事では、この即時償却を活用して、突発的な利益に対する効果的な節税を実現する3つの具体的な投資手法について、その仕組みや要件、メリットを詳しく解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

「即時償却」とは?

まず、今回の節税スキームの核となる「即時償却」の仕組みについて正しく理解しておきましょう。

通常、事業のために建物や機械、車両などを購入した場合、その取得費用は「減価償却」という会計ルールに則って処理されます。

これは、資産が使用できる期間(法定耐用年数)に応じて、取得費用を数年間に分割して少しずつ経費として計上していく方法です。

一方で「即時償却」とは、特定の法律や税制上の特例措置として認められているもので、設備投資にかかった費用を、資産を取得したその事業年度に全額一括で経費計上できる制度を指します。

この即時償却を適用できれば、多額の経費を初年度に集中して計上できるため、設備を導入した年の課税所得を大幅に圧縮し、結果として法人税などの納税額を大きく削減することが可能になります。

特に、急な業績向上により多額の利益が出た年度などにおいて、非常に有効な節税対策となり得ます。

今回は、この即時償却が適用可能な具体的な投資対象として、①GPUサーバー投資、②コインランドリー投資、③太陽光発電投資の3つをご紹介します。

1.【成長分野への投資】GPUサーバー投資

即時償却を活用できる一つ目の投資先は、今まさに成長市場として注目を集めている「GPUサーバー」です。

GPUサーバーとは何か?

まず「GPU」とは「Graphics Processing Unit」の略で、日本語では「画像処理装置」と訳されます。

もともとは、PCゲームなどの高精細な映像をスムーズに表示するために開発された半導体チップですが、その高い並列処理能力が、近年急速に発展するAI(人工知能)の膨大な計算処理に最適であることから、需要が爆発的に高まっています。

そして「GPUサーバー」とは、このGPUを複数搭載し、大量のデータを高速で処理できるよう最適化された高性能なコンピュータのことです。

GPUサーバー投資とは、このサーバーを購入して自社で保有・運用し、その計算能力(計算リソース)を他の企業などに貸し出すことで収益を得るというビジネスモデルです。

AIやVR(仮想現実)、ビッグデータ解析といった分野は今後も市場の拡大が見込まれており、それを支えるGPUサーバーの需要も安定して伸びていくと期待されています。

実際に、日本政府もAI開発の基盤となるGPUの国内確保を重要な政策課題と位置づけており、2023年には岸田首相(当時)が米半導体大手エヌビディア社のCEOと面会し、GPUの安定供給を要請したほどです。

国策として推進されている成長分野への投資でありながら、節税も実現できるのが、この投資の大きな魅力です。

「中小企業経営強化税制」による即時償却

GPUサーバーの法定耐用年数は「器具及び備品」として5年ですが、税制優遇制度である「中小企業経営強化税制」を活用することで、即時償却が可能になります。

この制度は、青色申告を行っている中小企業者等が、国から認定を受けた「経営力向上計画」に基づき、一定の要件を満たす設備を導入した場合に、「即時償却」または「取得価額の最大10%の税額控除」のいずれかの適用を選択できるというものです。

GPUサーバーはこの制度の対象設備(A類型:生産性向上設備)に該当するため、即時償却を選択すれば、一台数百万円以上にもなる取得費用を全額、導入初年度に経費として計上できます。

制度を利用するためには、2027年3月31日までに経営力向上計画の認定を受け、対象設備を新規で取得し、事業の用に供する必要があります。

また、対象設備は中古資産ではないことや、国内への投資であることなどの要件も定められています。

投資規模としては、一般的に1,000万円程度から取り組むことが可能であり、他の大型節税商品(例:航空機オペレーティングリースで数千万円)と比較して、始めやすい価格帯である点もメリットと言えるでしょう。

2.【安定収益と節税】コインランドリー投資

即時償却で節税できる二つ目の投資は、私たちの生活に身近な「コインランドリー」事業です。

「コインランドリーの即時償却は、税制改正で使えなくなったのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、一定の条件を満たすことで、現在でも活用することが可能です。

2023年度の税制改正により、「中小企業経営強化税制」の対象から「その管理のおおむね全部を他の者に委託するもの」が除外されました。

つまり、フランチャイズ契約などで運営を完全に丸投げしている場合は対象外となりますが、オーナー自身が採用や広告宣伝、収支管理などの経営業務に主体的に関与していれば、引き続きこの税制の適用を受け、即時償却を行うことができます。

コインランドリー投資における即時償却シミュレーション

では、実際にどれくらいの節税効果が見込めるのでしょうか。

初期投資額を4,000万円と仮定してシミュレーションしてみましょう。

このケースでは、初期投資のうち約70%にあたる2,800万円が即時償却の対象となります。

 

仮に法人の実効税率を30%とすると、「2,800万円 × 30% = 840万円」となり、初年度にこれだけの税負担を軽減できる計算になります。

また、コインランドリー事業は、その性質上、景気の変動を受けにくく、安定した収益が期待できるビジネスです。

立地や業者選びが成功すれば、平均して10%前後の高い利回りを継続的に確保することも可能であり、節税だけでなく、事業としての収益性も魅力的な投資と言えます。

3.【地域復興と高利回り】太陽光発電投資

即時償却を活用できる三つ目の投資は「太陽光発電」です。

太陽光発電投資は、FIT(固定価格買取制度)の買取価格低下などにより、一時期に比べて旨味が少なくなったというイメージがあるかもしれません。

しかし、福島県の一部の特定の地域においては、今なお100%の即時償却が可能な特別な税制優遇が存在します。

「福島復興再生特別措置法」による特例

その根拠となるのが、「福島復興再生特別措置法(特措法)」です。

これは、東日本大震災における原子力災害からの福島の復興を後押しするために定められた法律で、認定を受けた法人または個人が、対象地域で復興に資する新規の設備投資を行った場合に、税制上の優遇措置を受けられるというものです。

この特例を利用することで、太陽光発電設備を取得した場合、「即時償却」または「取得価額の15%の税額控除」のいずれかを選択することが可能になります。

太陽光発電システムの法定耐用年数は17年であり、通常であれば17年かけて減価償却していくところを、この特例を使えば初年度に全額経費として一括計上できるのです。

特例を受けるための要件

この特措法による即時償却を受けるためには、いくつかの要件を満たす必要がありますが、最も重要なポイントは「避難指示が解除された区域で、その解除日から一定期間内に事業を開始すること」です。

対象となる避難解除区域や申請期限は、自治体や区域によって異なります。

例えば、2023年11月30日に避難指示が解除された富岡町の一部地域では、2030年11月29日までに事業を開始すれば、この特例の適用を受けることが可能です。まだ時間的に余裕を持って取り組める地域も残されています。

投資規模としては、おおよそ1,500万円程度から始めることができます。

太陽光発電投資の収益シミュレーション

最後に、この特例を活用した太陽光発電投資で、実際にどれくらいの収益が見込めるのかを見ていきましょう。

 

このシミュレーションにおける投資利回り(NET)は、年間利益150万円 ÷ 初期投資額2,200万円 = 約6.8% となります。

そして、20年間の累計利益は、150万円 × 20年 = 3,000万円 と計算できます。

単に課税を将来に繰り延べるだけでなく、長期にわたって安定したリターンを確保できる可能性がある点は、この投資の大きな魅力です。

まとめ

今回は、初年度に投資額の100%を経費化できる「即時償却」を活用した、3つの具体的な節税スキームについて解説しました。

  • GPUサーバー投資: AIの発展と共に成長する将来性のある分野への投資。中小企業経営強化税制を活用。
  • コインランドリー投資: 景気に左右されにくい安定収益モデル。自身が経営に関与することで即時償却が可能。
  • 太陽光発電投資: 福島復興再生特措法を活用。地域貢献と長期安定リターンを両立。

いずれの手法も、多額の利益が出た年度の税負担を効果的に圧縮できる強力な選択肢です。

しかし、それぞれに特有の要件やリスクが存在するため、導入を検討する際は、自社の状況を十分に分析し、専門家のアドバイスを受けながら慎重に判断することが不可欠です。

これらの制度を賢く活用し、戦略的な資産防衛と事業成長を実現してください。

この記事で解説した即時償却を活用した節税策について、税理士がこちらの動画でさらに分かりやすく解説しています。それぞれの投資の具体的なメリットや注意点をより深く理解したい方は、ぜひこちらもご覧ください。

 

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