旅行費用を経費で落とす方法|社員旅行を福利厚生費にする5つの条件

日々の業務に尽力してくれる従業員への感謝と慰労、そして社内のコミュニケーション活性化のために、社員旅行を企画したいと考える経営者の方は多いでしょう。しかし、その際に必ず頭をよぎるのが「この旅行費用は、会社の経費として認められるのだろうか?」という疑問です。

結論から言うと、社員旅行は、一定のルールさえ守れば「福利厚生費」として損金(経費)に計上することが可能です。ただし、その条件は税法上で細かく定められており、一つでも満たさないと、経費として認められないばかりか、従業員への「給与」として課税されてしまうリスクもあります。

この記事では、社員旅行の費用を福利厚生費として正しく経費計上するための5つの必須条件、家族同伴や役員のみといったケース別の取り扱い、そして税務調査で指摘されないための重要注意点について、詳しく解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

1.社員旅行が「福利厚生費」になるための5つの条件

社員旅行の費用を、給与ではなく福利厚生費として経費計上するためには、国税庁が示す以下の5つの条件をすべて満たす必要があります。一つでも欠けると福利厚生費とは認められないため、計画段階で必ず確認してください。

①会社が負担する金額が社会通念上、少額であること

まず、会社が負担する旅行費用が、一人あたり「社会通念上、少額」の範囲内であることが求められます。あまりにも豪華で高額な旅行は、福利厚生の範囲を超え、経済的利益の供与、つまり給与と見なされてしまいます。

では、「少額」とは具体的にいくらなのでしょうか。法律で明確な金額が定められているわけではありませんが、過去の判例や国税庁の見解から、一人あたりの会社負担額が10万円以内というのが一つの目安となります。

過去の裁決例では、一人あたり約24万円の会社負担額が高額すぎると判断されたケースがあります。また、国税庁のウェブサイトでは、旅行費用25万円のうち会社負担が10万円であれば問題ない、という例が示されています。重要なのは旅行の総額ではなく、あくまで「会社がいくら負担したか」です。総額が20万円の旅行でも、会社負担が10万円であれば問題ありません。

②旅行の期間が4泊5日以内であること

福利厚生として認められる旅行の期間は、「4泊5日以内」と定められています。この日数には、移動日も含まれます。もし旅行期間がこれを超えてしまうと、たとえ1日だけであっても、旅行費用全体が福利厚生費として認められなくなってしまうため、厳守が必要です。

ただし、海外旅行の場合、この基準は「海外での滞在日数」で判断されます。例えば、往復の機内泊を含めて旅行日程が4泊6日になったとしても、海外での実質的な滞在日数が4泊5日以内であれば、この要件を満たすことになります。海外への社員旅行を計画する際は、現地の滞在日数でスケジュールを組むことが重要です。

③参加する従業員の割合が全体の50%以上であること

社員旅行は、全従業員に機会が与えられている福利厚生制度の一環でなければなりません。そのため、旅行への参加者が、役員を含む全従業員数の50%以上であることが求められます。

もし、特定の役員だけが参加する旅行や、営業成績優秀者だけを対象としたインセンティブ旅行のような形をとると、それは福利厚生とは認められず、参加者への給与(役員賞与や報奨金)として課税されることになります。

ただし、会社に複数の支店や工場がある場合、全社一斉ではなく、それぞれの支店や工場といった「職場単位」で旅行を実施することも認められています。その場合は、その職場単位で従業員の50%以上が参加していれば、要件を満たします。

④旅行に参加しない人に対して金銭を支給しないこと

社員旅行に参加しなかった従業員に対して、「不公平感をなくすため」といった理由で、旅行費用の代わりに現金を支給することは絶対に避けてください。不参加者に金銭を支給した場合、その社員旅行は「従業員が旅行か現金かを選択できる制度」と見なされます。

そうなると、旅行に参加した従業員も「現金支給の代わりに旅行という経済的利益を受けた」と解釈され、旅行費用全体が給与課税の対象となってしまいます。不参加者に支給した金額だけでなく、社員旅行にかかった経費の全額が福利厚生費として否認されてしまう、非常に大きなリスクです。不参加者への配慮は、別の形で行う必要があります。

⑤取引先などの接待が目的ではないこと

福利厚生費は、あくまで自社の従業員のために支出される費用です。したがって、社員旅行に取引先の担当者などを招待し、その費用を会社が負担した場合、その費用は福利厚生費にはなりません。

この場合、取引先担当者の費用については「接待交際費」として経理処理することになります。自社の従業員分の費用については、他の4つの要件を満たしていれば福利厚生費として計上できますが、会計処理を明確に分ける必要があります。社員旅行と取引先の接待を兼ねる場合は、経理処理を間違えないよう注意が必要です。

2.【ケース別】こんな旅行は経費にできる?

社員旅行を計画する上で、よく疑問となるケース別の取り扱いについて解説します。

家族の同伴費用は経費にできるか?

従業員の家族が社員旅行に同伴する場合、その家族の分の旅費を会社が負担したとしても、原則として福利厚生費として経費にすることはできません。福利厚生費は、あくまで従業員本人のためのものだからです。

会社が負担した家族の分の費用は、その従業員に対する「給与」として扱われ、源泉徴収の対象となります。ただし、家族経営の会社などで、その家族が役員や従業員として業務に深く関与しており、旅行の目的が慰安ではなく、業務遂行上(例えば、視察や会議など)その家族の参加が不可欠であると合理的に説明できる場合は、話が変わってきます。その場合は、家族の旅費も「旅費交通費」や「研修費」として経費計上できる可能性があります。

役員だけの旅行は経費にできるか?

前述の通り、慰安目的の旅行を役員だけで行った場合、参加率の要件を満たさないため福利厚生費にはなりません。これは役員賞与と見なされ、事前に届出をしていない限り、法人税法上も損金不算入となります。

しかし、旅行の目的が慰安ではなく、明確に業務目的であれば経費計上が可能です。例えば、役員全員で経営計画を策定するための「役員合宿(会議費)」や、海外の先進事例を視察するための「海外視察(研修費)」などであれば、その実態に伴った費用を経費にすることができます。

重要なのは、その旅行が業務上必要であったことを、議事録や報告書などで客観的に証明できることです。

プライベートな旅行に補助を出す方法

「社員旅行ではなく、従業員がそれぞれ好きな時に行くプライベートな旅行に、会社として補助を出したい」というニーズもあるでしょう。これも福利厚生の一環として「旅行費補助」という制度を設けることで実現可能です。

ただし、ここでも注意が必要です。会社から従業員へ補助金を直接現金で渡してしまうと、それは給与とみなされ課税されてしまいます。非課税の福利厚生として扱うためには、

  1. 会社が旅行会社などと契約し、予約と支払いを会社名義で行う。
  2. 従業員は、旅行代金から会社の補助額を差し引いた金額を、会社に支払う。という手順を踏む必要があります。全従業員が公平に利用できる規程を整備することが前提となります。

3.税務調査で否認されないための重要注意点

せっかく要件を満たして社員旅行を実施しても、税務調査でその事実を証明できなければ、経費として否認されてしまう可能性があります。そうならないために、以下の書類は必ず整理・保管しておきましょう。

  • 旅行の計画書・案内状:旅行の目的、日程、場所、参加対象者が明記されたもの。
  • 参加者リスト:実際に誰が参加したのかを記録し、参加率が50%以上であることを証明します。
  • 旅行会社からの請求書・領収書:費用の総額と内訳がわかるもの。
  • 現地の写真:参加者が写っている集合写真など、旅行が実際に催行されたことを示す客観的な証拠。

これらの証拠書類を揃えておくことで、税務調査が入った際にも、福利厚生費として正当性を主張することができます。また、海外旅行の際に会社が従業員のパスポート申請代を負担した場合、これは福利厚生費ではなく「給与」として扱われる点も覚えておきましょう。

まとめ

社員旅行は、従業員のエンゲージメントを高め、組織の一体感を醸成するための有効な施策です。

そして、本記事で解説した5つの条件(①会社負担10万円以内、②4泊5日以内、③参加率50%以上、④不参加者へ金銭不支給、⑤接待目的でない)をしっかりと守れば、その費用は「福利厚生費」として、正しく会社の経費にすることができます。

重要なのは、一部の人間だけでなく、全従業員に公平な機会が与えられていること、そして社会通念上妥当な範囲の支出であることです。慰安目的の旅行だけでなく、研修や会議を目的とした旅行であれば、また別の経費として計上する道もあります。

目的とルールを明確にし、その証拠となる書類をきちんと保管しておくこと。これが、社員旅行という素晴らしい福利厚生を、税務上のリスクなく最大限に活用するための鍵となります。

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