内部留保より有利?利益の繰り延べで会社にお金を残す「簿外資産」活用術

会社の経営を安定させるためには、万が一の業績悪化や不測の事態に備えて、利益を計画的に蓄積し、「内部留保」を厚くしておくことが重要です。

内部留保が潤沢であれば、資金繰りは安定し、金融機関からの信用力も向上します。事実、コロナ禍のような危機的状況を、厚い内部留保で乗り越えた企業も少なくありませんでした。

しかし、この「内部留保」、ただ闇雲に増やせば良いというわけではありません。なぜなら、内部留保は法人税などを支払った後の利益から積み立てられるため、その過程で多額の税金がキャッシュアウトしてしまうという大きな課題があるからです。

そこで、より効率的に会社にお金を残すための選択肢として注目されるのが、利益を将来に先送りする「利益の繰り延べ」によって形成される「簿外資産」の活用です。

この記事では、過剰な内部留保のデメリット、簿外資産を作って利益を繰り延べることのメリット、具体的な形成方法、そして最も重要な「出口戦略」について詳しく解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

1. 「内部留保」はなぜ無駄が多いと言われるのか?

内部留保のメリット(資金繰り安定、信用力向上)

改めて確認すると、内部留保のメリットは、会社の財務基盤を強化し、経営の安定性を高める点にあります。

手元に十分な現預金があれば、急な支払いや業績の変動にも対応しやすく、金融機関からの融資審査においても有利に働くことが一般的です。

内部留保のデメリット(税負担の先行)

一方で、内部留保を増やすプロセスには大きなコストが伴います。内部留保は、会計上は「利益剰余金」という勘定科目に相当し、これは税引後の当期純利益の蓄積です。

つまり、内部留保を貯めるためには、まずその原資となる利益に対して法人税等を支払わなければなりません。

内部留保を貯めるための税金コストのイメージ

仮に法人税等の実効税率を33%と仮定してみましょう。

この場合、会社に2,000万円の内部留保(現金)を貯めるためには、税金を支払う前の利益(税引前当期純利益)が約2,985万円必要になります(計算式:2,000万円 ÷ (1 – 0.33) ≒ 2,985万円)。

つまり、2,000万円を会社に残すために、約985万円もの税金を先に支払う必要があるのです。

また、資本金1億円超の同族会社などの場合には、過大な内部留保に対して「留保金課税」という追加の税金が課されるリスクもあります。税金のことを考えると、単純に内部留保を増やし続けることが必ずしも最善策とは言えないのです。

代替案としての「簿外資産(利益の繰り延べ)」

そこで有効なのが、利益の繰り延べによる「簿外資産」の形成です。

  • 簿外資産とは? その名の通り、会計帳簿(特に貸借対照表)の外に存在する資産のことです。適切な会計処理や税法上の特例を活用した結果として、帳簿上の価額はゼロまたは非常に低くなるものの、実質的には価値や将来のキャッシュインを生む権利などを指します。
  • 利益の繰り延べとは? 法人で利益が出た場合に、その利益にかかる税金の支払いを、当期ではなく翌期以降に合法的に先送りすることです。簿外資産を形成する過程の多くは、この利益の繰り延べ効果を伴います。

簿外資産活用のメリット比較

先ほどの例に戻り、税引前利益が約3,000万円あり、将来の退職金として2,000万円を準備したいケースで考えてみます。

内部留保で準備する場合、前述の通り約1,000万円の法人税を支払った上で2,000万円を貯めることになります。

一方、利益が出た期に2,000万円を簿外資産形成のために支出し、それが全額損金として認められた場合、その期の課税所得は約1,000万円に圧縮され、法人税は約330万円程度に抑えられます。

そして、将来退職金を支払うタイミングで簿外資産を現金化し、その収入と退職金(損金)を相殺する「出口戦略」をとれば、法人税の負担を大幅に軽減しつつ、効率的に会社にお金を残すことが可能になるのです。

2. 簿外資産を作る具体的な方法

では、具体的にどのようにして簿外資産を形成すればよいのでしょうか。ここでは代表的な方法をいくつかご紹介します。

① 経営セーフティ共済(倒産防止共済)

中小企業にとって最も手軽でリスクの低い方法の一つです。国が運営する制度で、支払った掛金は総額800万円まで全額損金に算入できます。

この積立金は貸借対照表には計上されません。

そして、40ヶ月以上加入すれば、解約時に掛金が100%返ってくるため、実質的に「損金として処理しながら、簿外に800万円の貯蓄ができる」制度です。

ただし、2024年10月以降に解約した場合、その後2年間は再加入しても掛金が損金にならないというルール改正があった点には注意が必要です。

② オペレーティング・リース

航空機や船舶、コンテナなどを対象としたリース取引を活用し、利益を繰り延べる方法です。

出資者は、金融機関からの借入(レバレッジ)を利用して高額なリース資産を購入するため、出資額の70~80%程度を初年度に減価償却費として損金計上できるケースが多く、数千万円から億単位の大きな利益を繰り延べたい場合に有効です。

リース期間満了時には、資産の売却代金が出資金とほぼ同額(またはそれ以上)で戻ってくることが期待されるため、これも実質的な簿外資産となります。

③ その他(トレーラーハウス、太陽光発電投資、中古社用車など)

その他にも、

  • トレーラーハウス: 法定耐用年数4年という短期償却が可能で、償却後も資産価値が残るため、簿外資産となり得ます。
  • 太陽光発電投資: 「福島復興再生特別措置法」などの特例を活用すれば、即時償却が可能で、その後も売電収入というキャッシュフローを生む簿外の収益源泉となります。
  • 中古社用車: 4年落ちの中古高級車などを活用し、1年で全額償却した後も、高いリセールバリュー(再販価値)を維持している場合、その実質的な価値が簿外資産となります。

これらの方法は、それぞれ特徴やリスク、適用できる税制が異なりますので、専門家と相談の上、自社の状況に合ったものを検討すると良いでしょう。

3. 最も重要!繰り延べた利益の「出口戦略」

簿外資産を形成して利益を繰り延べる際に、最も重要となるのが「出口戦略」です。

繰り延べた利益は、解約返戻金やリース期間満了時の分配金として、いずれ会社に戻ってきます。その際、何ら対策をしなければ、その戻り益に対して法人税が課税され、単に税金の支払いを先送りしただけになってしまいます。

繰り延べた意味を最大化するためには、この戻り益を相殺できるような大きな損金を計画的にぶつける必要があります。

効果的な4つの出口戦略

  • (1) 役員退職金の支給に活用する: 最も王道で効果的な出口戦略です。戻り益が発生するタイミングで役員に退職金を支給します。退職金は多額の損金となるため利益を相殺でき、さらに受け取る役員個人も、給与で受け取るより税制面で大幅に優遇される「退職所得控除」などのメリットを享受できます。
  • (2) 大規模な設備投資に活用する: 工場の新設や大規模な機械の入れ替えなど、将来計画している大きな設備投資の原資として活用する方法です。戻り益を、事業成長のための投資費用(減価償却費など)と相殺します。
  • (3) 業績悪化時の資金繰り補填に活用する: 経営には予期せぬ浮き沈みがつきものです。本業で大きな赤字が出たタイミングで簿外資産を現金化すれば、その利益で赤字を補填し、資金ショートを防ぐことができます。いわば、会社のセーフティネットとして機能させるわけです。
  • (4) 他の繰延べ商品でさらに利益を繰り延べる: すぐに出口が見つからない場合は、戻ってきた資金を元手に、再び別のオペレーティングリースなどに出資し、さらに利益を繰り延べるという方法も考えられます。

4. 簿外資産を形成する上での注意点

最後に、簿外資産を形成する上で共通する注意点です。

それは、いずれの方法も、実行にあたっては基本的にキャッシュアウトを伴うということです。

経営セーフティ共済にせよ、オペレーティングリースにせよ、掛金や出資金を支払う必要があります。そして、その資金は解約やリース期間満了まで、一定期間拘束されます。

節税効果を追求するあまり、むやみに簿外資産形成に資金を投じると、手元の運転資金が不足し、会社の資金繰りを悪化させる本末転倒な事態になりかねません。

まとめ

会社の利益を、法人税を支払ってから積み立てる「内部留保」と、税金の支払いを将来に先送りしながら資産を形成する「簿外資産(利益の繰り延べ)」を比較すると、多くの場合、後者の方がより効率的に会社にお金を残すための有効な戦略となり得ます。

経営セーフティ共済やオペレーティングリースなどを活用して簿外資産を計画的に形成し、その「出口」として役員退職金の支給や大規模な設備投資などをタイミングよくぶつけることで、法人税負担を最適化し、会社の財務体力を強化することが可能です。

ただし、いずれの方法もキャッシュアウトを伴い、資金が一定期間拘束されるという側面を持ちます。

自社の現在の利益状況だけでなく、将来の事業計画や資金繰りの見通しを十分に考慮し、税理士などの専門家と相談しながら、リスクとメリットを天秤にかけた上で計画的に実行することが不可欠です。

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