会社の経営活動において、取引先との会食や従業員との打ち合わせ、残業時の食事提供など、飲食を伴う場面は数多くあります。そのたびに「この費用、経費にできないだろうか?」と考える経営者の方は少なくないでしょう。
結論から言うと、飲食代は事業に関連するものであれば、適切な勘定科目と処理方法によって経費として計上することが可能です。しかし、食事は本来個人的な支出という側面も持つため、税務上の取り扱いには注意が必要です。
安易な経費計上は、税務調査で指摘を受け、追徴課税などのペナルティにつながるリスクもあります。この記事では、飲食代を経費として計上できる主な勘定科目(交際費、会議費、福利厚生費)とその要件、そして経費にする際の重要な注意点について解説します。
The following two tabs change content below.
1. 飲食代は原則経費にならない?
食事の基本的な考え方(プライベート費用)
まず基本的な考え方として、飲食は人が生きていく上で必要な個人的な行為であり、その費用は原則として個人のプライベートな支出とみなされます。そのため、個人的な昼食代や、事業とは無関係な友人との食事代などを会社の経費にすることはできません。
事業関連性が認められれば経費計上可能
ただし、その飲食が事業活動を行う上で必要であったり、事業に関連して行われたりした場合には、税務上も経費として認められます。その際、飲食の目的や相手、金額などによって、どの勘定科目で処理するかが変わってきます。
従業員への食事提供は原則「現物給与」
会社が役員や従業員に対して食事を提供した場合、それは原則として「現物給与」として扱われます。つまり、現金で給与を支給する代わりに、食事という「現物」で給与を支給したとみなされるのです。
この場合、食事代は会社の経費にはならず、受け取った役員・従業員の給与所得として課税され、社会保険料の計算対象にもなってしまいます。これでは、会社・従業員双方にとって負担が増えるだけです。しかし、後述する一定の要件を満たせば、「福利厚生費」として経費計上でき、給与課税もされない扱いとなります。
2. 飲食代を経費計上できる勘定科目
事業に関連する飲食代を経費計上する場合、主に以下の3つの勘定科目が使われます。それぞれの定義と要件を見ていきましょう。
(1) 交際費
最も多くの飲食代が該当する可能性のある勘定科目です。
- 交際費の定義: 交際費とは、得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用を指します。取引先との会食やゴルフ、お中元・お歳暮などが典型例です。
- 中小企業の損金算入限度額: 交際費は原則として損金(経費)不算入ですが、資本金1億円以下の中小企業については特例があります。以下のいずれか有利な方を選択し、その限度額まで損金算入が認められます。
- 定額控除限度額: 年間800万円まで
- 接待飲食費の50%: 交際費のうち、飲食その他これに類する行為のために支出する費用(接待飲食費)の50%まで
- 1人あたり1万円以下の飲食費の特例: 接待飲食費のうち、支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が1万円以下である場合は、交際費から除外し、「会議費」などとして全額損金算入することができます(帳簿書類への一定事項の記載・保存が要件)。年間800万円の交際費枠を温存するためにも、この基準は意識しておくとよいでしょう(以前は5千円でしたが、令和6年度税制改正で1万円に引き上げられました)。
- 誰との食事が対象? 取引先はもちろん、情報交換や関係構築を目的とした同業者、あるいは将来的に取引につながる可能性のある知人・友人など、事業に関連する相手との飲食であれば対象となり得ます。ただし、全く事業と関係のないプライベートな飲食は対象外です。
- 場所は問われる? 基本的に場所は問われません。レストランや料亭だけでなく、例えばキャバクラなどでの接待であっても、事業関連性が認められれば交際費として処理できます。
- 「一人飲み」は経費にできる? 原則として、一人での飲食代を経費にするのは困難です。接待や会議といった相手がいて初めて事業関連性が認められやすいためです。「接待に使うお店の下見」といった名目も、よほど明確な理由と記録がない限り、税務調査で私的な支出と判断されるリスクが高いです。過去には、高級クラブでの一人飲み代を経費として否認され、重加算税が課されたケースもあります。安易な計上は避け、税理士に相談するのが賢明です。
(2) 会議費
社内または社外の関係者との会議や打ち合わせに関連して支出した費用は「会議費」として経費計上できます。
- 会議費の定義: 会議に関連して、お茶菓子、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために要する費用などが該当します。会議室のレンタル料や資料代なども含まれます。
- 会議中の飲食代: 会議や打ち合わせに伴う飲食代であれば、会議費として処理できます。例えば、社内でのランチミーティングの弁当代や、喫茶店での打ち合わせのコーヒー代などが該当します。重要なのは「会議の実態」があることです。単なる食事ではなく、業務に関する議論や情報交換が行われている必要があります。そのため、ファミレスや個室のある飲食店など、会議に適した場所を選ぶことが望ましいでしょう。
- カフェ代は経費になる? 出張先などで仕事をするためにカフェを利用した場合、そのコーヒー代などは会議費(または雑費等)として経費計上できる可能性があります。ただし、事務所が近くにあるのにわざわざカフェを利用するなど、その必要性が低いと判断される場合は否認されるリスクがあります。また、経費として認められるのは、あくまで場所を利用するための最低限の費用(例:コーヒー代)であり、一緒に頼んだ食事代まで含めるのは難しい場合が多いです。しかし、これが複数人での打ち合わせであれば、食事代も含めて会議費として認められる可能性が高まります。
(3) 福利厚生費
従業員の福利厚生を目的として支出した費用は「福利厚生費」として経費計上できます。飲食に関連するものとしては、主に以下のケースがあります。
- 残業食事代: 残業している従業員に対して提供する食事代は、以下の要件をすべて満たせば福利厚生費として認められます。
- 残業や宿日直など、通常の勤務時間外の勤務であること。
- 食事の提供が現金支給ではないこと(会社が直接支払う、または立て替え精算でも実費であること)。
- 残業している従業員全員が対象であること(希望しない者を除く)。
- 社会通念上、妥当な金額であること(著しく高額なものはNG)。
- 昼食代補助(社員食堂等): 全従業員を対象に、会社が昼食代の一部を補助する場合、以下の要件をすべて満たせば、会社負担分を福利厚生費として計上でき、従業員側も給与課税されません。
- 従業員が食事代の半分以上を負担していること。
- 会社の負担額が、従業員1人あたり月額3,500円(税抜)以下であること。
- 希望する全従業員が対象であること。
- 要件を満たさない場合の扱い: 上記の要件を満たさない場合、会社が負担した食事代は原則として従業員への「給与」として扱われ、所得税・社会保険料の対象となります。
3. 飲食代を経費にする際の重要注意点
飲食代を経費として計上する際には、以下の点に必ず注意してください。
領収書・記録の保管義務
経費計上の基本として、支出を証明する領収書(レシート)の保管は必須です。さらに、交際費や会議費として処理する場合は、税務調査でその内容を問われた際にきちんと説明できるよう、領収書の裏面や別途帳簿(総勘定元帳や経費精算書など)に以下の情報を記録しておくことが極めて重要です。
- 飲食年月日
- 参加者の氏名、会社名、関係性
- 参加人数
- 飲食店の名称・所在地
- 飲食代金の総額
- 飲食の目的(例:〇〇社との新商品に関する打ち合わせ、△△社担当者との接待、社内□□会議など)
特に「目的」を具体的に記載しておくことで、事業関連性を明確に示すことができます。
税務調査でのチェックポイント
飲食代、特に交際費は、私的な支出との線引きが曖昧になりやすいため、税務調査では重点的にチェックされる項目の一つです。「とりあえず経費に入れておこう」といった安易な処理は、後で大きな問題につながる可能性があります。
グレーゾーンな費用計上は避ける
事業との関連性が明確に説明できない飲食代(例:家族だけでの食事、事業とは関係ない友人との飲み会など)や、社会通念上あまりに高額すぎる飲食代などは、たとえ領収書があっても経費として認められない可能性が高いです。疑わしいものは経費に計上しない、という姿勢が、結果的に税務リスクを回避することにつながります。
まとめ
飲食代は、その目的や相手、金額に応じて、「交際費」「会議費」「福利厚生費」などの勘定科目を用いて適切に処理すれば、会社の経費として計上することが可能です。
それぞれの勘定科目の定義や税務上の要件(特に交際費の損金算入限度額や1人1万円基準、福利厚生費の給与課税要件など)を正しく理解し、適用することが重要です。
そして何よりも大切なのは、経費計上する飲食代について、「いつ、誰と、どこで、何のために、いくら使ったのか」を客観的に証明できる記録をしっかりと残しておくことです。
安易な判断でグレーゾーンの費用まで経費に含めることは避け、自信を持って「事業に必要な支出だった」と説明できるものだけを経費として計上する。この基本的なルールを守ることが、飲食代に関する税務リスクを最小限に抑えるための鍵となります。不明な点や判断に迷う場合は、必ず税理士に相談するようにしましょう。
この記事で解説した内容は、以下の動画で税理士がより詳しく解説しています。具体的な事例などを知りたい場合に、参考にしてください。