多くの人が知りませんが、実は個人事業主でも年末までにできる節税対策が複数あります。
これをやるかやらないかで、納税額に大きな差が生じる可能性があるので、ぜひ最後までご覧ください。
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1. 年末までに所得税・住民税を減らす方法
1.1. ふるさと納税
1つ目は「ふるさと納税」です。
ふるさと納税の申し込み自体は、年間を通して365日いつでも可能ですが、毎年1月1日から12月31日までを単位として控除枠があり、その控除枠は翌年に繰り越しできないので、年末に上限まで利用する人が多いです。
ふるさと納税では、自分が選んだ好きな自治体に寄付をして、お礼の品を受け取ることができます。お肉や海産物、果物などが人気の商品などの特産品もあれば、洗剤のような日用品を選ぶこともできます。
そして寄付金については、税金の控除を受けることができます。
====ポイント====
税金の控除を受けることができる
これは「寄付金控除」の一つで、控除上限額の範囲内であれば、自己負担額2,000円を除いた全額が控除の対象となって、住民税・所得税から控除されます。
「4万円」を寄附した場合で見てみましょう。
4万円を自治体に寄付すると、まず、その3割相当、つまり最大1万2千円相当の返礼品を受け取ることができます。
そして翌年以降、4万円から2,000円を差し引いた38,000円が、本来納めるべき税金から控除または還付されます。なので、実質負担するお金は、2,000円で済みます。
この場合、実質2,000円の負担で1万2千円相当の返礼品を受け取ることになります。
控除限度額の範囲であれば、どれだけ寄付しても2,000円の負担で済むので、かなりお得と言えるでしょう。
注意点としては、控除限度額を超えると自己負担になる、という点です。限度額を超えた分の寄付をしても、翌年の住民税や所得税から控除されません。
限度額は年収のほか、扶養家族、医療費控除などによっても変わります。
(セゾンのふるさと納税)
こういったシミュレーターで目安を計算できるので活用してみて下さい。
また、ふるさと納税した後は、必ずワンストップ特例制度の申請か、確定申告をする必要があります。忘れてしまうと、税金の控除・還付が受けられないので注意してください。
1.2. 医療費控除&セルフメディケーション税制
2つ目は、「医療費控除&セルフメディケーション税制」です。
まずは、医療費控除から説明します。
医療費控除は、年に10万円以上の医療費を支払った場合に、確定申告することで受けられる控除です。
計算式は、
(年間の医療費-保険金から補填された金額)ー10万円=控除額
となります。この医療費は自分の分だけでなく、世帯で合算して計算できます。
(医療費控除を受ける方へ|令和5年分 確定申告特集)
もし、医療費が10万円に届かないようなときでも、所得控除の対象になる場合があります。
それが、2つ目の「セルフメディケーション税制」です。
セルフメディケーション税制とは、指定された医薬品の購入費用が年間12,000円を超えていれば、超えた分について所得から控除できるという、医療費控除の特例です。
====セルフメディケーション税制====
指定医薬品の購入費用が年12,000円を超えた分を所得から控除できる医療費控除の特例
指定された医薬品とは「スイッチOTC医薬品」と呼ばれるもので、元々医師の処方箋がないと入手できなかった薬が、 ドラッグストアなどでも購入できるようになったものです。
対象製品はパッケージやレシートに、以下図のように記載されています。
計算式は、
スイッチOTC医薬品の年間世帯購入額-12,000円=控除額
となり、控除上限は88,000円です。
また、セルフメディケーション税制で控除を受ける場合も確定申告が必要です。会社勤めの方は、年末調整では適用できないのでご注意ください。
1.3. 親を扶養
3つ目は「親を扶養する」です。
意外と知られていないのですが、別居している親を扶養に入れることで、年間十数万円節税することが可能です。
しかも、かなり簡単で、自営業であれば確定申告時ですが、会社員は年末調整の時に以下図の赤枠内を記入してもらえればOKです。
これは「扶養控除」というもので、お子さんや親などを扶養している場合、所得から一定額を控除できる制度です。
====扶養控除====
子どもや親などを扶養している場合に、所得控除が受けられる制度
控除額は、被扶養者の年齢によって異なります。
19歳〜23歳の、大学生位のお子さんを扶養している場合、「特定扶養親族」となり、控除額は63万円、住民税の控除額は45万円になります。
そして70歳以上の親を扶養する場合、同居であれば控除額58万円、住民税の控除額45万円です。
また、別居の場合は控除額48万円、住民税の控除額は38万円です。
では、課税対象所得金額が650万円の人の場合でシミュレーションしてみましょう。
課税対象所得金額が650万円の人の場合、所得税の税率は20%です。
この人が75歳以上の別居の親を1人扶養に入れる場合、単純に計算すると、
所得税の減額は、48万円×20%=9万6,000円です。
住民税の減額は、38万円×10%=3万8,000円です。
所得税と住民税を合計すると、合計13万4,000円分の税金が低くなります。
ちなみに親を扶養に入れるタイミングですが、家族の扶養人数は、12月31日時点の扶養状況で判断されます。
もし12月に開始した場合、1カ月分の仕送りの負担で1年分の扶養の節税効果を得ることができます。
1.4. 少額減価償却資産の特例
4つ目は、「少額減価償却資産の特例」です。
仕事用にパソコンなどの機械・備品を購入する場合、10万円以下であればその年の経費にできますが、原則として10万円を超えるものは固定資産となり、減価償却をする必要があります。
この場合、耐用年数に応じて経費にしていく形となります。
しかし、青色申告している個人事業主であれば、1つ30万円までの資産について「少額減価償却資産の特例」が利用できます。
これによって1年間で合計300万円までは、取得した年の必要経費に計上することができます。(中古で購入した場合も対象になります。)
=====少額減価償却資産の特例======
青色申告をしている個人事業主は、取得価額が30万円未満の減価償却資産(少額減価償却資産)は決算期末に一気に経費として処理可能(1年あたり300万円まで)
1.5. 小規模企業共済
5つ目は、「小規模企業共済」です。
(出典 中小機構)
小規模企業共済は、中小企業の経営者や個人事業主のための退職金積み立て制度です。
掛金は毎月1,000円~7万円までの範囲内で自由に選択でき、掛金の全額が所得控除の対象になります。
=====小規模企業共済=====
毎月1,000円~7万円まで積立可能
掛金全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象
実は小規模企業共済は1年分の前納ができるため、年末に加入しても最大84万円の所得控除を受けることができます。
そのほかのメリットとしては
・掛金は運用され、解約手当金は最大で約120%
・貸付制度があり、金利は0.9%から1.5%
・貸付は最短で申込即日
などがあります。
1.6. 経営セーフティ共済
6つ目は、「経営セーフティ共済」です。
中小企業の連鎖倒産を防ぐために設けられた共済で、もし万が一、取引先が倒産して損失を被った場合には、積立てた金額の最大10倍(最高8000万円)を「無利子・無担保・保証人不要」で借りることができます。
中小企業はもちろん、個人事業主も加入することができます。
掛け金がほぼ積立となり、かつ掛け金の上限額の年間240万円、最大800万円までを全額損金計上できます。
経営セーフティ共済も年払いすることができ、年末に加入したとしても、一気に240万円を経費に入れることができます。
注意点としては、たとえば、解約事由が任意解約の場合、払戻金は12ヶ月以上の継続で80%、24ヶ 月以上で85%、30ヶ月以上で90%、36ヶ月以上で95%、40ヶ月以上で100%となります。
また、12カ月未満での解約は、0%つまり、掛け捨てになってしまうので、注意が必要です。解約するなら40か月以上のほうがオススメです。
2. 年末NGな節税
最後に、年末にやってはいけない節税についても説明します。
それは、固定資産の購入です。
有名なものとしては4年落ち中古車であれば、1年で全額経費に落とせるという方法があります。
しかし、減価償却は基本的に月割りなので、12月に購入しても、その年に経費として計上できるのは12分の1しかありません。
そうなると、駆け込み節税という点では意味がなくなってしまうので、ご注意ください。
まとめ
個人事業主でも年末にできる節税はいくつかあります。
上手に節税することでキャッシュフローが大きく改善するので、漏れなく活用してください。
You Tube「経営者の資産防衛チャンネル」で税理士が詳しく解説していますので、こちらも合わせてご覧ください。