毎年4月頃になると、自治体から「固定資産税の納税通知書」が届きます。「今年もまたこの季節か…」と、その金額を見てため息をついている方も多いのではないでしょうか。固定資産税は、土地や建物を所有している限り、住んでいようがいまいが関係なく、毎年払い続けなければならない「保有コスト」です。30年、40年と積み重なれば、その総額は数千万円にも及びます。
しかし、多くの人が「通知された金額は絶対であり、ただ払うしかない」と思い込んでいます。実は、固定資産税の仕組みや特例を正しく理解し、建築前や保有中に適切な対策を講じることで、支払う税額を合法的に、かつ大幅に抑えられる可能性があることをご存知でしょうか。この知識を持っているかいないかで、生涯の支払い総額に100万円単位、あるいはそれ以上の差がつくことも決して珍しくありません。
この記事では、固定資産税が決まる複雑な計算の仕組みから、個人の方がマイホームを建てる際や相続時に使える具体的な減税テクニック、そして事業者や法人が償却資産税を節税するための実務的なポイントまで、徹底的に解説します。
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そもそも固定資産税はどう決まる?「6分の1」になる特例の正体
対策を講じる前に、敵を知ることから始めましょう。固定資産税はどのように計算されているのでしょうか。基本式はシンプルですが、その中身には多くの補正や特例が絡み合っています。
税率と計算の基本式
固定資産税の標準税率は1.4%です。さらに、市街化区域内に不動産を所有している場合は、都市計画税(最高0.3%)が加算されることが多く、合計で約1.7%の税金が課されます。計算式は以下の通りです。
固定資産税=課税標準額×1.4%都市計画税=課税標準額×0.3%
ここで重要なのは、「課税標準額」です。これは実際に売買される価格(実勢価格)とは異なり、自治体が定めた「固定資産税評価額」を基に算出されます。
土地の税金を激減させる「住宅用地の特例」
土地の評価額は、公示価格の7割程度を目安に設定されますが、そのまま課税されるわけではありません。土地に関する最大の節税ポイントは、「小規模住宅用地の特例」です。
土地の上に「人が居住するための家屋(住宅)」が建っている場合、その土地の200㎡(約60坪)までの部分については、課税標準額が評価額の6分の1(都市計画税は3分の1)にまで軽減されます。200㎡を超える部分についても、3分の1(都市計画税は3分の2)に軽減されます。
これは非常に強力な特例です。例えば、評価額3,000万円の土地があったとします。
- 更地の場合:3,000万円×1.4%=42万円
- 住宅がある場合:(3,000万円÷6)×1.4%=7万円
なんと、家が建っているだけで税金が35万円も安くなるのです。逆に言えば、「家を取り壊して更地にした瞬間、税金が6倍に跳ね上がる」というリスクも孕んでいます。この仕組みを理解することが、土地の節税の第一歩です。
建物の税金は「点数」で決まる
一方、建物の評価額は「再建築価格方式」で決まります。「今、同じ建物を建てたらいくらかかるか」を基準に、使用されている屋根材、外壁、内装、設備などを点数化して算出します。そして、建物は年数が経つごとに価値が下がるとみなされ、「経年減価補正率」という係数を掛けて評価額を下げていきます。ただし、どんなに古くなっても評価額がゼロになることはありません。木造住宅の場合で築27年程度、当初の2割になった時点で下げ止まり、それ以降は解体するまで2割の評価額に対し税金を払い続けることになります。
【個人編】固定資産税を安くする7つの具体的対策
これから家を建てる方、建て替えを検討している方、あるいはすでに所有している方ができる具体的な対策をご紹介します。
①「1月1日」を死守せよ!解体と完成のタイミング
固定資産税において最も重要な日付は、毎年1月1日(賦課期日)です。この日にどのような状態で所有しているかが、その年1年間の税金を決定します。
- 解体は1月2日以降に:建て替えなどで古い家を解体する場合、もし年内(12月中)に解体して更地にしてしまうと、1月1日時点で「住宅」が存在しないため、「住宅用地の特例(1/6)」が使えなくなります。その結果、土地の固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。解体工事は1月2日以降に行うことで、その年は「住宅があった」とみなされ(あるいは建替え特例の適用など)、安い税金のままで済みます。
- 新築の完成時期:逆に、新築住宅を建てる場合は、1月1日までに完成させておくと、その年から「新築住宅の減額措置(建物税額が半額)」を受けられるようになります。
②長期優良住宅の認定を受ける
新築住宅には、建物の固定資産税が一定期間半額になる減額措置があります(戸建ては3年間、マンションは5年間)。この期間を延長できるのが「長期優良住宅」の認定です。認定を受けると、減額期間がそれぞれ2年間延長され、戸建てなら5年間、マンションなら7年間も半額になります。認定手数料や建築コストの増加はありますが、固定資産税だけでなく、住宅ローン控除の限度額アップや登録免許税の軽減などメリットが多いため、トータルでプラスになるケースが多いです。
③設備選びで「贅沢」を避ける
建物の評価額は、自治体の調査員による「家屋調査」で決まります。ここでチェックされる設備のグレードが、税額に直結します。評価額が高くなりやすい設備の代表例は以下の通りです。
- 床暖房(施工面積が広いほど高い)
- 全館空調システム
- ホームエレベーター
- 開閉式天窓(トップライト)
- タイル張りの外壁
- 高機能なシステムキッチン(幅が広いもの等)
「どうしてもつけたい」という希望がないのであれば、あえて標準的な設備を選ぶことで、毎年の固定資産税を抑えることができます。
④家屋調査には必ず立ち会う
新築後に行われる家屋調査には、必ず所有者が立ち会いましょう。調査員も人間ですから、図面だけでは判断できない部分や、グレードの判定に迷う部分が出てきます。例えば、高級に見える壁紙を使っていても実際は安価な素材である場合など、その場で説明することで、過大評価を防ぐことができます。「忙しいから勝手に見ておいて」と任せきりにするのは避けましょう。
⑤評価額への「不服申し立て」を検討する
届いた納税通知書に同封されている「課税明細書」を確認し、近隣の土地と比較して明らかに評価額が高いと感じる場合は、「審査申出(不服申し立て)」を行うことができます。特に、以下のような土地は評価減の対象になる可能性がありますが、見落とされているケースがあります。
- 不整形地(形がいびつな土地)
- 間口が狭く奥行きが長い土地
- がけ地を含んでいる土地
- セットバックが必要な土地
- 私道として使われている土地
これらが正しく反映されているか、役所の窓口で確認する価値は十分にあります。
⑥二世帯住宅は「完全分離型」が得
二世帯住宅を建てる場合、「構造上の独立性」と「利用上の独立性」が認められれば、「2戸の住宅」として扱われます。具体的には、各世帯に専用の玄関、キッチン、トイレなどが備わっており、廊下等でつながっていても扉で仕切られている状態などです。2戸として認められるメリットは絶大です。
- 土地の特例:200㎡まで1/6の減額枠が、2戸分で400㎡まで適用されます。広い土地を持っている場合は効果てきめんです。
- 新築減額:建物の半額減税枠(120㎡まで)も2戸分(240㎡まで)適用されます。
⑦木造住宅を選ぶ
建物の構造によって、評価額の下がるスピード(経年減価補正率)が異なります。鉄筋コンクリート造(RC)は法定耐用年数が長いため、評価額がなかなか下がりません。一方、木造住宅は法定耐用年数が短いため、評価額が早く下がっていきます。資産価値の維持という点ではRCが有利ですが、「固定資産税を安く抑える」という点だけを見れば、木造の方がトータルの支払い額は少なくなります。
【法人・個人事業主】償却資産税の節税ポイント
事業者にとっては、土地・建物以外に、事業用資産(機械、パソコン、看板、内装設備など)にかかる「償却資産税」も大きな負担です。これも固定資産税の一種であり、毎年1月末に申告が必要です。
年末の大掃除で「除却処理」を徹底する
償却資産税も、1月1日時点で所有している資産に対して課税されます。オフィスの片隅に、すでに壊れたパソコンや、使わなくなった古い機械が眠っていませんか?これらが資産台帳に残っている限り、現物がなくても税金を払い続けることになります。12月31日までに廃棄・売却し、経理上で「除却処理」を行えば、翌年度の償却資産税の対象から外れます。年末の大掃除とセットで資産の棚卸しを行うことが、最も確実な節税になります。
中小企業経営強化税制などの特例を活用する
中小企業が新たな設備投資を行う際、国の認定を受けることで償却資産税が軽減される特例があります。
- 先端設備等導入計画:認定を受けた設備について、償却資産税が3年間1/2あるいはゼロになる(自治体の条例による)。
- 中小企業経営強化税制:即時償却などの法人税メリットに加え、償却資産税の軽減措置が受けられる場合がある。
設備投資を検討する際は、「法人税の節税」だけでなく、「固定資産税の特例」もセットで確認する癖をつけましょう。
まとめ
固定資産税は、ただ漫然と支払うだけの税金ではありません。仕組みを知り、行動を起こすことで、確実にコストを削減できる分野です。
- タイミング:解体は1月2日以降、取得は年末までに。
- 個人の対策:特例のフル活用と設備の見極め。
- 法人の対策:不要資産の徹底的な除却と投資減税の活用。
これらを意識するだけで、手元に残るお金は確実に増えます。特に不動産の評価額については、専門的な知識が必要な場合も多いため、疑問を感じたら税理士や不動産鑑定士などの専門家に相談し、適正な評価かどうか診断してもらうことをお勧めします。
この記事で解説した内容は、以下の動画で税理士がさらに詳しく解説しています。図解を用いたシミュレーションや、動画でしか話せない情報も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。