暗号資産(仮想通貨)の税金はどうなる?現行制度と税制改正の動向、有利な利益の受け取り方

近年、ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)の価格が大きく変動し、短期間で大きな利益を得る方が増えています。その一方で、暗号資産取引で得た利益に対する税金の取り扱いについて、「どう計算すればいいのか分からない」「税金が高すぎると聞いた」といった不安や疑問の声も多く聞かれます。

確かに、現在の日本の税制では、個人の暗号資産取引で得た利益は、株式やFXなど他の金融商品とは異なる取り扱いがなされ、場合によっては税負担が非常に重くなることがあります。しかし、暗号資産の市場拡大とともに、税制を見直す動きも出てきています。

この記事では、個人の暗号資産取引における現行の税制、事業として取引を行う場合の可能性、法人で保有する場合のメリット・デメリット、そして今後の税制改正で期待される変更点について解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

1. 個人の暗号資産取引における現在の税制

原則「雑所得」としての取り扱い

個人が暗号資産取引(売買、交換、マイニングなど)によって得た利益(所得)は、原則として「雑所得」に区分されます。この雑所得は、「総合課税」の対象となります。

総合課税と累進課税(最大税率55%)

総合課税とは、給与所得や事業所得など、他の所得と合算した総所得金額に対して所得税が課税される仕組みです。所得税の税率は「超過累進課税」が採用されており、課税される所得金額が大きくなるほど、段階的に高い税率が適用されます。

現在の所得税の最高税率は45%で、これに住民税(一律約10%)を加えると、最大で約55%もの税金がかかることになります。暗号資産取引で数千万円単位の大きな利益が出た場合、この最高税率が適用される可能性があり、利益の半分以上を税金として納めなければならないという状況も起こり得るのです。

例外的に「事業所得」と認められる可能性

ただし、一定の条件を満たす場合には、暗号資産取引による所得が雑所得ではなく「事業所得」として認められる可能性があります。事業所得も総合課税の対象ですが、雑所得にはない税務上のメリット(後述)があります。

国税庁の見解:収入300万円超+帳簿保存

国税庁が公表している情報によれば、暗号資産取引による所得が事業所得と認められるかどうかの判断基準の一つとして、「その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行われているかどうか」が挙げられています。さらに具体的な目安として、

  • その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超えること。
  • 暗号資産取引に係る帳簿書類の保存があること。 これらのいずれの要件も満たす場合には、原則として事業所得に区分される、とされています。

社会通念上の「事業」としての実態

ただし、上記の収入基準や帳簿保存はあくまで形式的な要件であり、最終的にはその取引が「社会通念上、事業として行われている」と客観的に認められる実態があるかどうかが重要になります。

具体的には、営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無、自己の計算と危険において独立して遂行されているか、相当程度の時間を費やしているか、といった点が総合的に勘案されます。単発的・偶発的な取引や、ごく短期間の取引で大きな利益が出たとしても、それだけでは事業所得とは認められにくいでしょう。

2. 暗号資産取引が「事業所得」になるメリット

暗号資産取引による所得が事業所得として認められた場合、雑所得の場合と比較して以下のような税務上のメリットがあります。

メリット①:損益通算が可能になる

事業所得に赤字(損失)が生じた場合、その赤字を給与所得や不動産所得など、他の黒字の所得と相殺(損益通算)することができます。これにより、全体の課税所得を圧縮し、所得税・住民税の負担を軽減できます。暗号資産取引は価格変動が激しく、大きな損失を被る可能性もあるため、この損益通算の可否は大きな違いとなります(雑所得では、一部の例外を除き、他の所得との損益通算はできません)。

メリット②:青色申告による赤字の3年間繰越控除

事業所得として青色申告の承認を受けていれば、その年に生じた赤字(純損失)のうち、損益通算してもなお控除しきれない金額を、翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺することができます。これにより、単年度で見れば大きな損失が出たとしても、複数年度で見て税負担を平準化できます。

メリット③:青色申告特別控除(最大65万円)

青色申告を行うことで、所得金額から最大65万円(一定の要件を満たす場合)を控除できる「青色申告特別控除」の適用を受けることができます。これも、雑所得では利用できないメリットです。

注意点:事業所得認定のハードルと専門家相談の推奨

このようにメリットの大きい事業所得ですが、前述の通り、暗号資産取引が事業所得として認められるためのハードルは低くありません。安易に自己判断で事業所得として申告した場合、税務調査で否認され、追徴課税や加算税が発生するリスクもあります。

事業所得としての申告を検討する場合は、必ず事前に税理士などの専門家に相談し、ご自身の取引実態が事業所得の要件を満たすかどうかを慎重に判断してもらうことが重要です。

3. 法人で暗号資産を保有する場合の税務

個人ではなく、法人を設立して暗号資産取引を行うという選択肢もあります。法人で保有する場合の主なメリットとデメリットは以下の通りです。

法人保有のメリット

  • 法人税率の適用: 個人の所得税のような高い累進税率は適用されず、法人税率(資本金1億円以下の中小法人の場合、所得年800万円以下の部分は15%、それを超える部分は23.2%。これに法人住民税・事業税が加わります)が適用されます。一定以上の利益が出る場合は、個人よりも税負担が軽くなる可能性があります。
  • 法人特有の節税策の活用: 役員報酬の設定による所得分散、役員社宅制度の活用、生命保険の活用など、法人ならではの節税スキームを利用できる可能性があります。
  • 赤字の繰越控除期間が長い: 青色申告法人であれば、損失(欠損金)を最長10年間繰り越すことができます(個人は3年)。

法人保有のデメリット・注意点

  • 期末時価評価課税(含み益への課税リスク): 法人が保有する暗号資産(売買目的有価証券等に準じるもの)は、原則として期末(決算時)に時価評価され、評価益(含み益)に対しても法人税が課税されます。個人では売却・交換など決済した時点で初めて利益が認識されるのに対し、法人の場合は保有しているだけで、まだ実現していない含み益に対しても課税されるリスクがあるのです。暗号資産は価格変動が大きいため、期末にたまたま価格が急騰していると、多額の税金が発生し、その後の価格下落で実際の利益がほとんどないのに税負担だけが残る、という事態も起こり得ます。これは法人化の最大のデメリットと言えるでしょう。
  • 個人から法人への移転コスト: 個人で保有している暗号資産を設立した法人へ移す場合、その時点の時価で法人に譲渡(売却)したものとして扱われ、個人の譲渡益に対して所得税が課税されます。含み益が大きい状態で法人に移転すると、多額の税金が発生する可能性があります。

総合的な比較検討の必要性

法人での暗号資産保有は、メリットとデメリットを十分に比較検討し、個人の場合とどちらが有利になるか、慎重なシミュレーションと判断が必要です。

4. 暗号資産税制の改正動向:申告分離課税への期待

このように、現行の個人の暗号資産税制は、特に利益が大きくなった場合の税負担の重さや、他の金融商品との税制上の不均衡などが課題として指摘されています。そのため、近年、金融庁や業界団体などから税制改正を求める声が上がっており、政府・与党内でも検討が進められています。

申告分離課税になった場合のメリット

最も期待されている改正の一つが、株式やFX(外国為替証拠金取引)などと同様の「申告分離課税」への移行です。もし、これが実現した場合、以下のようなメリットが考えられます。

  • 税率が一律になる可能性: 株式等の場合、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%を合わせた合計20.315%の税率が適用されます。暗号資産取引の利益にも同様の税率が適用されれば、現行の総合課税(最大約55%)と比較して、税負担が大幅に軽減されることになります。
  • 確定申告手続きの簡素化: 他の所得と分離して計算されるため、確定申告の手続きが相対的に簡素になる可能性があります。

申告分離課税になった場合の潜在的なデメリット

一方で、申告分離課税に移行した場合、現在(雑所得の場合)可能な「他の雑所得(例:副業の原稿料、年金など)との内部での損益通算」ができなくなる可能性があります。ただし、暗号資産取引以外の雑所得がない人にとっては、大きなデメリットとはならないでしょう。

今後の動向に注目

暗号資産の税制改正は、投資家にとって非常に大きな関心事です。どのような改正が行われるか、あるいは行われないかによって、今後の投資戦略にも大きな影響を与えます。引き続き、政府や関連省庁の発表、税制改正大綱などの情報に注意を払う必要があります。

まとめ

個人の暗号資産取引から生じる利益は、現行の税制では原則として総合課税の「雑所得」として扱われ、特に高額な利益に対しては最大約55%という重い税負担が生じる可能性があります。一定の要件を満たせば「事業所得」として認められ、損益通算や青色申告のメリットを享受できる道もありますが、そのハードルは低くありません。法人を設立して取引を行う選択肢もありますが、期末の時価評価課税という特有のリスクを伴います。

現在、暗号資産の税制については見直しの議論が進んでおり、将来的には株式投資などと同様の「申告分離課税(税率約20%)」が導入されることが期待されています。これが実現すれば、多くの暗号資産投資家にとって税負担の大幅な軽減と申告手続きの簡素化につながるでしょう。

いずれにしても、暗号資産の税務は複雑であり、法改正の動向にも注意が必要です。ご自身の取引状況や利益の規模に応じて、最適な対応をとるためには、税理士などの専門家に相談することを強くお勧めします。

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