確定申告後にこそ始めるべき個人事業主の節税対策と資金繰り戦略

確定申告を終えて一息ついている個人事業主の方も多い時期ですが、実は本当に注意すべきはここからです。所得税の納付が済んでも、住民税や事業税、予定納税といった大きな支払いが控えており、何の準備もないまま夏や秋を迎えると、資金繰りが一気に苦しくなるケースが少なくありません。

そこで本記事では、確定申告が終わった直後にこそ取り組むべき節税対策と資金管理のポイントについて、わかりやすく解説していきます。来年の申告で後悔しないためにも、ぜひ早い段階で動き出していただきたい内容です。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

確定申告が終わった後にこそ訪れる「本当の試練」

まず大前提として、確定申告が終わって所得税の納付を済ませても、それで一年分の納税が完了するわけではありません。個人事業主が納める税金は所得税だけではなく、住民税、事業税、消費税、さらには国民健康保険料や国民年金保険料など、年間を通じて複数の支払いが発生します。

特に注意したいのが、所得税の納税額が一定以上になると発動する「予定納税」の制度です。確定申告から数か月後、すっかり気が緩んだ頃に高額な納付書が届き、慌てる個人事業主は本当に多いのが実情です。だからこそ、確定申告が終わったタイミングで、その後の支払いスケジュールと節税対策を一気に整理しておく必要があります。

確定申告後にやるべき3つの対策

確定申告を終えた個人事業主が、次に取り組むべき具体的な行動は次の3つに整理できます。

(1)年内に支払う税金や保険料を把握する

(2)来年に向けた節税対策の準備を始める

(3)月次決算を導入し、利益と税金を毎月把握する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

(1)年内に支払う税金・保険料を把握する

まず最優先で取り組むべきは、これから年内にかかる税金や保険料の「時期」と「金額」を把握しておくことです。事前にスケジュールを押さえておけば、慌てずにキャッシュを準備できますし、いざという時に資金ショートを起こすリスクも下げられます。

住民税は年4回、合計負担は意外と大きい

住民税は前年の所得に対して課税されるもので、確定申告の内容に基づいて市区町村が算出します。普通徴収の場合、6月、8月、10月、翌年1月の年4回に分けて納付します。

会社員時代は給与から毎月天引きされていたため意識しにくいのですが、個人事業主になると1回あたりの金額が大きくなり、心理的な負担も増えます。税率は所得に対して一律10%、さらに均等割が4,000円、これに森林環境税が加わるため、実質的な固定額は5,000円程度となります。

個人事業税は8月と11月の年2回

個人事業税は特定の業種に対して課される地方税です。所得金額をもとに算出されますが、青色申告特別控除や基礎控除は適用されない代わりに、290万円の事業主控除が用意されています。

法定業種は70種類以上あり、飲食業、医業、請負業などは5%、柔道整復師などは3%と、業種によって税率が異なります。納付時期は原則として8月と11月の年2回。実は8月は住民税と事業税の支払いがダブルで重なるため、ここで一気にキャッシュが流出します。

多くの事業主が詰まる「魔の11月」

最も警戒すべきは予定納税の存在です。前年分の所得税額が15万円以上だった人が対象となり、前年の所得税額のおよそ3分の2相当額を、その年の税金として先払いする制度です。

これを7月と11月の2回に分けて納付するのですが、11月は事業税の2回目の納付も重なります。つまり、11月は「事業税+予定納税」のダブルパンチが襲ってくる月。確定申告から半年以上経って、すっかり忘れた頃に大きな納税が発生するため、ここで資金繰りに行き詰まる個人事業主が非常に多いのです。

なお、廃業や休業、業績不振などで本年の所得が前年より明らかに減少する見込みがある場合は、「予定納税額の減額申請」が可能です。所定の時期に税務署に申請すれば、減額や免除が認められることもありますので、苦しい時は必ず活用してください。

消費税の中間申告も忘れずに

前年の消費税額(国税分)が48万円を超える場合は、消費税の中間申告も必要になります。計算方式には、前年の納税額を分割して納める「予定申告方式」と、当年の売上・経費を仮計算する「仮決算方式」の2種類があります。

当年の消費税額が前年より少なくなる見込みなら、仮決算方式の方が中間納付額を抑えられますが、その分手続きの負担は増えます。

国民健康保険料・国民年金保険料

国民健康保険料は前年所得をもとに6月頃に金額が確定し、原則として6月から翌年3月までの10回に分けて納付します。国民年金保険料は毎年改定されますが、月額1万数千円程度を見込んでおくとよいでしょう。

主な税金・保険料の納付スケジュールを整理すると、以下のようになります。

種類 納付時期 主な特徴
所得税 3月(確定申告時) 国税。前年所得に対して課税
予定納税 7月・11月 前年所得税15万円以上が対象
住民税 6月・8月・10月・翌年1月 税率10%+均等割等
個人事業税 8月・11月 業種により3〜5%
消費税中間申告 納税額により異なる 前年消費税48万円超で必要
国民健康保険料 6月〜翌年3月(10回) 前年所得に基づき算出
国民年金保険料 毎月 月額1万数千円程度

 

こうして並べると、特に8月と11月に支払いが集中していることがわかります。3月の段階で年間スケジュールを可視化し、必要な資金を逆算して積み立てておくことが重要です。

(2)来年に向けた節税対策の準備を始める

確定申告が終わったばかりで気が早いように思えますが、節税対策は「終わった直後」から動き出すのが鉄則です。年末になってから慌てて手を打っても、間に合わないケースが非常に多いからです。

白色申告から青色申告への切り替え

現在白色申告をしている方は、青色申告への切り替えを強くおすすめします。青色申告にするだけで最大65万円の特別控除が受けられ、2027年以降は最大75万円への引き上げも見込まれています。これだけでも数万円〜十数万円規模の節税効果があり、申請書一枚で得られるメリットとしては破格です。

さらに、青色申告には少額減価償却資産の特例、純損失の繰越控除、青色事業専従者給与など、複数の優遇措置が用意されています。手続きには期限があるため、確定申告が終わったこのタイミングで切り替えを検討することが大切です。

減価償却資産は購入時期がカギ

「今年は利益が出そうだから、節税のために中古車を買おう」と考える方は多いですが、購入時期を誤ると節税効果はほとんど得られません。

減価償却費は月割り計算が基本です。例えば12月に中古車を購入しても、その年に経費計上できるのはわずか12分の1のみ。これでは思ったような節税にはなりません。逆に、1月や年度の早い段階で購入し使用を開始すれば、12か月分まるまる経費に計上できます。年末に慌てて買い物をするのではなく、計画的に早めに動くことが節税効果を最大化するポイントです。

短期前払費用やオペレーティングリースの活用

家賃や保険料を年払いにして経費計上する「短期前払費用」の特例も有効な手段ですが、これも資金繰りとの兼ね合いがあるため、早い時期からの計画が必要です。

また、ある程度まとまった利益がある個人事業主の場合、ヘリコプターなどのオペレーティングリースを活用する方法もあります。中古のヘリコプターであれば耐用年数が短く、短期間で大きな償却を取れるケースもあるため、利益規模の大きい事業者は選択肢として検討する価値があります。

いずれにせよ、節税対策は「直前に慌てて実行する」ものではなく、年初から計画的に組み立てておくものです。

(3)月次決算で利益と税金を毎月把握する

3つ目に取り組むべきは「月次決算」の導入です。単に毎月帳簿をつけるだけではなく、毎月の利益と発生する税金を予測する仕組みを作ることが目的です。

通帳の残高だけを見て経営判断をするのは非常に危険です。口座にあるお金は、まだ払っていない税金分かもしれませんし、借入金が含まれているかもしれません。それを利益だと勘違いして使い込んでしまうと、納税時期に資金が底を尽き、先ほどの「魔の11月」で破綻するリスクが高まります。

現在はクラウド会計ソフトを利用すれば、銀行口座やクレジットカードと連携して仕訳の大部分を自動化できます。毎月締めて「今月はこれだけ利益が出ているから、税金はこれくらい発生する」と把握しておけば、必要な節税対策を余裕を持って打てますし、年末に慌てて無駄な経費を使ってしまうこともなくなります。

どんぶり勘定から脱却し、毎月の数字を正しく押さえる習慣こそが、資産防衛の出発点と言えるでしょう。

納税をお得にする決済の裏ワザ

最後に、どうせ支払う税金であれば、少しでもお得に納付する方法を紹介します。

現在、国税はスマホ決済アプリやクレジットカードでの納付に対応しています。例えば楽天ペイのチャージで0.5%のポイント還元を受けられるなど、納付金額が大きい分、ポイント還元のインパクトも無視できません。

特にスマホ決済アプリ経由の納付は決済手数料がかからないため、クレジットカード納付のように手数料負担で目減りすることもありません。ただし、スマホ決済アプリでの納付は1回あたり30万円が上限となっている点には注意が必要です。

まとめ

確定申告は終わりではなく、新たな1年の資金繰りと節税対策のスタートラインです。本記事のポイントを整理すると次のようになります。

第一に、住民税、事業税、予定納税、消費税中間申告、国民健康保険料といった支払いスケジュールを年初の段階で可視化し、必要なキャッシュを逆算して準備しておくこと。特に8月と11月の支払い集中月には十分な備えが必要です。

第二に、青色申告への切り替え、減価償却資産の購入時期、短期前払費用などの節税策は、年末にまとめてやろうとしても間に合わないため、確定申告直後から計画的に進めることです。

第三に、月次決算を導入して毎月の利益と税金を見える化し、どんぶり勘定から脱却すること。これが資金繰り破綻を防ぐ最大の防御策となります。

そして、納税の際にはスマホ決済を活用してポイント還元を得るなど、細かな工夫も積み重ねていきましょう。

今回ご紹介した内容について、税理士がさらに詳しく解説している動画もぜひご覧ください。各税金の発生時期や減額申請の実務、青色申告への切り替え手順、月次決算の進め方など、実例を交えながらわかりやすく解説していますので、確定申告を終えたこのタイミングでの行動に必ず役立つはずです。

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