税務署に狙われる経費とは?経費にできるもの・できないものの境界線を徹底解説

決算が近づくたびに、「また税金で手元の資金が大きく減ってしまう」と憂鬱になる経営者は少なくないでしょう。

そうした不安から、できるだけ多くの支出を経費として計上しようとする気持ちは理解できます。

しかし、経費の判断基準が曖昧なまま処理を続けていると、本来経費にできたものを見落として税金を払いすぎるケースもあれば、逆にプライベートな支出まで経費にしてしまい、追徴課税で数十万円、場合によっては数百万円のペナルティを受けるケースもあります。

こうした事態を防ぐためには、「経費にできるもの」と「できないもの」の境界線を正しく理解しておくことが不可欠です。

本記事では、経費判断の基本原則から、見落としがちな経費項目、そして絶対に間違えてはいけない注意点まで、体系的に解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

経費判断の基本原則:「経費」と「損金」の違い

経費と損金は基本的に同じ意味

まず押さえておきたいのが、「経費」と「損金」の関係です。

基本的には「経費=損金」と考えて問題ありません。

ただし、法人税の計算においては、会計上は経費として計上できても、税金計算上は損金として認められない「損金不算入」という項目が一部存在します。

たとえば交際費の一部や、ルールに沿っていない役員報酬などがこれに該当します。

会計上の「経費」と税務上の「損金」には、こうした微妙なズレがあることを理解しておく必要があります。

大原則は「事業との関連性を合理的に説明できるかどうか」

経費と損金のどちらにも共通する大原則があります。

それは、「事業との関連性を合理的に説明できる」ということです。

税務調査で「この支出はなぜ事業に必要なのですか?」と問われた際に、明確に答えられるかどうか。

この説明ができない支出はプライベートな支出とみなされ、否認される可能性が大きく高まります。

経営者が見落としがちな主要経費

この原則を踏まえたうえで、経営者が見落としがちな経費項目を確認していきましょう。

人件費・組織に関する費用

従業員への給料や賞与は当然ながら経費になります。

法人の役員報酬も、毎月同じ額で支払っていれば損金として認められます。

しかし、役員への賞与は原則として経費(損金)にならない点に注意が必要です。

また、退職金についても重要な違いがあります。

法人が従業員や役員に支払う退職金は損金にできますが、個人事業主が自分自身に退職金を支払っても、これは経費にはなりません。

個人事業の場合、自分の口座から自分の口座にお金が移動するだけと見なされ、税務上は単なる資金移動として扱われるためです。

あくまで法人は経営者とは別人格であるからこそ、「退職金」という概念が成立するということです。

福利厚生費の落とし穴

福利厚生費にも注意が必要です。

社員旅行や忘年会、健康診断の費用などは、基本的に従業員がいることが前提となります。

社長1人、あるいは家族だけの会社で福利厚生費として計上すると、実質的に給料と変わらないと判断され、課税されるリスクが非常に高くなります。

知らずに計上している方も少なくないため、該当する場合は早めに見直すことをお勧めします。

事務所・日常業務の費用

自宅兼事務所で事業を行っている方で、家賃や水道光熱費のうち事業で使用している部分を経費計上していないケースが意外と多く見られます。

按分計算が面倒だからと放置するのは、明らかに損です。

床面積や使用時間で按分して、事業使用分はしっかり経費として計上してください。

また、消耗品については、期末に慌てて大量購入しても、事業で通常使用する量を超えた分は「貯蔵品」として資産計上され、その期の経費にはならない点にも留意が必要です。

ただし、青色申告をしている中小企業や個人事業主であれば、少額減価償却資産の特例を活用できます。

現行制度では30万円未満の資産を年間合計300万円まで一括で経費計上できますが、2026年4月からは40万円未満の資産まで対象が拡大されます。

なお、年間合計300万円という枠自体は変わりません。

営業活動・成長投資の費用

接待交際費については、資本金1億円以下の中小企業であれば年間800万円まで損金算入が可能です。

さらに、1人あたり1万円以下の飲食費は「会議費」として処理できるため、交際費の800万円の枠を消費せずに済みます。

この使い分けは実務上非常に有効です。

旅費交通費も見落としがちな項目です。

電車代やバス代で領収書がない場合でも、「いつ・どこへ・何の目的で・いくらかかったか」を記録しておけば、経費として認められます。

Excel やメモ帳での記録でも構いませんので、習慣化しておくことを強くお勧めします。

減価償却費を活用した節税の考え方

高額資産は一括経費にできない

車や機械、建物といった高額な資産は、購入時に一括で経費にすることはできません。

減価償却費として、法定耐用年数に応じて数年に分けて少しずつ経費にしていくことになります。

つまり、数百万円の車を購入しても、その全額をその年度の経費にはできないのが原則です。

中古車を活用した節税手法

一方で、中古車の場合は税務上のルールを活用することで、購入年度にほぼ全額を経費として計上できるケースがあります。

具体的には、4年落ち(正確には3年10か月を経過した)の普通車の中古車であれば、耐用年数が大幅に短くなります。

法人であれば期首から、個人であれば1月から事業で使い始めれば、理論上、取得価額のほぼ全額を1年間で減価償却費として計上することが可能です。

リセールバリューのある車種を選べば、売却時にキャッシュの負担も軽減できます。

ただし、車庫に置いたままでは認められません。

あくまでも事業で実際に使用していることが大前提です。

意外と認められる特殊な経費

高級車やスマートウォッチも経費になり得る

一見すると経費にならなそうに見えても、意外と認められるものがあります。

たとえばフェラーリのような超高級車であっても、業務に使用されている事実を運行記録などで示すことができれば、経費計上が認められた事例があります。

Apple Watchなどのスマートウォッチも同様です。

単なる時計としての使用では否定されがちですが、顧客からの通知を即時に確認するためなど、業務上の具体的な使用目的を説明できれば、消耗品として認められる余地があります。

スーツは原則として経費にならない

一方で、スーツやバッグなどは原則として経費としては認められません。

仕事でしか着ないという主張があっても、税務上はプライベートでも使用可能であると見なされてしまうためです。

この線引きは厳しいですが、明確に理解しておく必要があります。

事業に不可欠な動物も対象になる

意外なところでは、猫カフェの猫のように事業に不可欠なペットも、備品として減価償却の対象になります。

事業との直接的な関連性が明確であれば、一般的な感覚では「まさか」と思うようなものも経費として認められるのです。

経費計上で絶対に間違えてはいけない項目

ここまで経費にできるものを見てきましたが、実は経費にできないものを間違えて計上しないことの方がより重要です。

誤って計上してしまうと、税務調査で否認されるだけでなく、重いペナルティを課される可能性があります。

以下の図表で、経費になる税金とならない税金を整理します。

区分 項目 経費(損金)算入の可否
経費にならない税金 法人税 ×
  法人住民税 ×
  所得税(個人) ×
  住民税(個人) ×
  延滞税・加算税 ×
経費になる税金(租税公課) 事業税
  固定資産税
  自動車税
  不動産取得税
  登録免許税
  印紙税

 

経費になる税金をしっかり計上しないのは逆にもったいないので、漏れなく処理するようにしてください。

保険料の扱い

個人の生命保険料や社会保険料は事業の経費ではなく、個人の税金計算上の「所得控除」という別の枠組みで処理されます。

経費とは別枠であるという点を正確に理解しておく必要があります。

借入金の返済は経費にならない

特に注意が必要なのが借入金の返済です。

会計に不慣れな方が、銀行への返済額を全額経費として計上してしまうケースが少なくありません。

確かにキャッシュは出ていきますが、会計上は「お金が出たかどうか」と「経費になるかどうか」はまったく別の話です。

経費になるのはあくまで利息部分だけです。

元本の返済部分は、借りたお金を返しているだけなので、経費には一切なりません。

キャッシュが出ていくのに経費にならないという感覚的な違和感から、知らずに全額を経費計上してしまうと、税務調査で重大な指摘を受けることになります。

非常に危険な間違いですので、確実に把握しておいてください。

効果的に経費を増やすための考え方

無駄な支出をしない

ここまで経費にできるもの・できないものについて整理してきましたが、最も重要なのは、税金を減らしたいからといって無駄な費用を使わないことです。

期末になると「税金を払うくらいなら何かに使おう」と、必要のないものを購入してしまう経営者は少なくありません。

しかし、それでは手元資金が減るだけで、資産防衛にはなりません。

補助金・助成金との連携

賢い経営者は、どうせ使う経費であれば、補助金や助成金の対象になるものと連携させています。

たとえば、広告宣伝費を使う際に「小規模事業者持続化補助金」を活用したり、パソコンやタブレットを購入する際に「デジタル化・AI導入補助金」を活用したりすることで、経費計上による節税効果に加えて、支出の一部が国から補助されるという二重のメリットを得ることができます。

他人の話を鵜呑みにしない

もう一つ強調しておきたいのは、周囲の経営者の話を鵜呑みにしないことです。

「この費用は経費にできるよ」という先輩経営者のアドバイスがあったとしても、その方がたまたま税務調査を受けていないだけ、あるいは調査があっても該当箇所が指摘されなかっただけ、という可能性は十分にあります。

何の根拠もない話かもしれません。

周囲の情報や自分の経験則だけで安易に判断せず、正しい知識に基づいて自ら判断する力を身につけることが、長期的な資産防衛につながります。

まとめ

経費に関する判断を誤ると、払いすぎによる資金流出か、過少申告による追徴課税か、いずれにしても経営者にとって大きな痛手となります。

本記事の要点を改めて整理します。

経費判断の大原則は「事業との関連性を合理的に説明できるかどうか」です。

この基準をすべての支出に当てはめて考える習慣を持ってください。

見落としがちな経費として、自宅兼事務所の按分費用や、領収書がない交通費など、計上すれば確実に節税になる項目があります。

面倒がらずにしっかり処理することが重要です。

一方で、借入金の元本返済や法人税・住民税、1人社長の福利厚生費など、絶対に経費にしてはいけない項目も明確に存在します。

ここを間違えると、取り返しのつかないペナルティにつながりかねません。

そして、節税のために無駄な支出をするのではなく、補助金・助成金との連携や中古資産の活用など、手元資金を守りながら効果的に経費を使う戦略を持つことが、真の資産防衛です。

経費の境界線を正しく理解し、守るべきルールを守りながら、合法的に手元資金を最大化していきましょう。

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