簿外資産とは?節税しながら会社を守る7つの資産形成術

為替相場や株式市場の変動が激しい昨今、将来の経済状況に不安を感じ、より安定的な資産形成方法を模索している経営者の方も多いのではないでしょうか。特に中小企業の経営者にとって、会社の財務体力を強化し、万が一の事態に備えることは喫緊の課題です。その有効な手段の一つとして、「簿外資産」を形成することが挙げられます。

「簿外資産」とは、会計帳簿(具体的には貸借対照表)には資産として計上されないものの、実質的には会社にとって価値のある財産や将来のキャッシュフローを生み出す可能性のあるものを指します。

これらは、適切な会計処理や税法上の特例を活用した結果として生じるもので、簿外資産を形成する過程で節税効果が得られるケースも多く、将来の利益調整や退職金の原資確保、あるいは不測の事態における資金繰り対策としても機能します。

この記事では、経営者が知っておくべき簿外資産の基本的な考え方と、具体的な7つの簿外資産の作り方について、その仕組みやメリット、注意点を解説していきます。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

1. 経営セーフティ共済(倒産防止共済)

制度概要と簿外資産としての性質

まず最初にご紹介するのは、多くの経営者が活用している「経営セーフティ共済(正式名称:中小企業倒産防止共済制度)」です。これは国が運営する制度で、取引先の倒産リスクに備えつつ、節税と簿外での資金形成が可能です。

支払った掛金は全額損金(法人の場合)または必要経費(個人事業主の場合)に算入できるため、課税所得を圧縮できます。そして、この積み立てられた掛金は貸借対照表上には資産として計上されないため、実質的に帳簿外に資金を貯めている形になります。

掛金の損金算入と解約返戻金

掛金は月額5,000円から最大20万円まで選択でき、総額800万円まで積み立てることが可能です。年間では最大240万円(年払いも可)を損金にできます。そして、40ヶ月(3年4ヶ月)以上加入していれば、任意解約した場合でも支払った掛金の全額が解約手当金として戻ってきます(元本割れしません)。これにより、経費で落としたお金を簿外に貯蓄し、必要な時に引き出すことが可能になります。

注意点:2024年10月からの解約後再加入ルール

ただし、注意点として、2024年10月1日以降に共済契約を解約した場合、その解約日から2年間は、新たに共済契約を締結してもその掛金が損金(または必要経費)に算入できなくなりました。節税目的での短期的な加入と解約の繰り返しを防ぐための措置です。

2. 中古社用車(特に4年落ち)

短期償却による簿外資産化の仕組み

中古の社用車、特に新車登録から3年10ヶ月以上経過したいわゆる「4年落ち」の普通乗用車は、税法上の簡便法による耐用年数計算で「2年」となります。これを定率法で減価償却すると、償却率が100%となるため、理論上、購入初年度(期首に購入・使用開始した場合)に取得価額の全額を経費として計上(損金算入)できます。

リセールバリューの高い車種の活用

全額償却により、帳簿上の車両価額は1円などの備忘価額になりますが、メルセデス・ベンツやトヨタのランドクルーザー、アルファードといったリセールバリュー(再販価値)の高い車種であれば、市場では数百万円の価値が残っているケースも珍しくありません。この帳簿価額と実勢価額との差額が、実質的な簿外資産となります。

注意点

減価償却費は月割りで計算されるため、1年間で全額償却するには期首に購入・使用開始する必要があります。また、これはあくまで課税の繰延べであり、将来売却した際には売却益が課税対象となる点も理解しておく必要があります。

3. 太陽光発電投資(福島復興再生特措法)

特定条件下での即時償却

一般的な太陽光発電投資は、かつてのような税制優遇が少なくなっていますが、「福島復흥再生特別措置法」に基づく税制優遇を活用すれば、福島県内の特定の対象地域において、現在でも太陽光発電設備の取得費用を即時償却(購入初年度に全額経費化)できる可能性があります。

制度の概要と適用期限

この特措法は、原子力災害からの福島の復興を目的としており、認定を受けた法人または個人が対象地域で新規設備投資を行う場合に、即時償却または取得価額の15%の税額控除を選択できます。太陽光発電設備の場合、土地代などを除いた設備費(投資額の約90%程度)が即時償却の対象となるケースがあります。

例えば、初期投資額2,500万円のうち2,250万円が即時償却できれば、法人実効税率30%と仮定して約675万円の税負担軽減効果が見込めます。 ただし、この特例の適用には期限があり、対象地域や事業開始時期によって異なりますので、早めの確認と検討が必要です。

簿外資産としての側面と収益性

即時償却によって帳簿上の価値は早期になくなりますが、太陽光発電設備はその後も長期間(FIT制度で20年間など)売電収入を生み出すため、簿外の収益源泉としての価値を持ちます。

4. トレーラーハウス投資

「車両」扱いによる短期償却(4年)

トレーラーハウスは、法律上「車両」として扱われるため、法定耐用年数が4年と短く設定されています(「被けん引車その他」に該当)。これを定率法で償却すれば、初年度に取得価額の50%、2年目までに累計75%を償却でき、早期に大きな減価償却費を計上できます。

トレーラーホテル事業への出資

具体的な投資方法としては、複数のトレーラーハウスをホテル客室として活用する「トレーラーホテル」事業などに出資する形があります。出資者は、賃料収入の分配を受けつつ、トレーラーハウスの減価償却費を損金として計上できます。

簿外資産としての価値と税務メリット

4年で償却を終えた後も、トレーラーハウス自体は物理的な耐用年数が20~30年程度あると言われ、中古市場での需要も見込めるため、簿外資産としての価値が残ります。

また、車両扱いのため、不動産取得税や固定資産税の対象外となる点もメリットです。一口700万円程度から始められる案件もあり、比較的少額から取り組める簿外資産形成の一つです。

5. 海外不動産投資(特に米国中古木造物件)

短期償却と資産価値維持の可能性

中古不動産、特に築年数が経過した木造建物は、日本の税法上、短い耐用年数で減価償却が可能です。例えば、法定耐用年数22年の事業用木造建物が築22年を経過していれば、中古資産の簡便法により耐用年数は4年(22年×0.2=4.4年→端数切捨てで4年)となります。

これがアメリカの中古木造住宅となると、話は少し変わってきます。アメリカでは中古住宅市場が活発で、築年数が古くても適切なメンテナンスがされていれば価値が下がりにくく、むしろ立地によっては価値が上昇する傾向も見られます。

日本との市場特性の違い

日本では築古の木造建物の価値は下がる一方と見なされがちですが、アメリカではしっかりとした構造の木造住宅が築80年や100年でも現役で使われているケースが珍しくありません。

そのため、日本の税法に基づいて4年で建物価値を償却し終えた後も、現地では高い資産価値を維持し、安定した家賃収入や売却益が期待できることから、簿外資産としての魅力があります。

リスク

ただし、為替変動リスクや、現地での納税義務、物件管理の難しさといった海外不動産特有のリスクも十分に考慮する必要があります。

6. オペレーティング・リース(航空機、船舶、コンテナ等)

仕組み(レバレッジと初期の大きな損金)

オペレーティング・リースは、航空機、船舶、海上コンテナといった高額な資産を対象としたリース取引を活用した節税・投資スキームです。投資家(出資者)は、SPC(特別目的会社)などを通じてこれらの資産の共有持分を取得し、航空会社や海運会社にリースします。

この際、出資額に加えて金融機関からの借入(レバレッジ)を利用して資産を購入するため、出資額に対して大きな減価償却効果(特に定率法による初年度の大きな償却費)が得られ、出資額の70%~80%程度を初年度に損金算入できるケースが多くあります。

簿外資産としての効果

リース期間(通常7~10年程度)が終了すると、リース物件は市場で売却され、その代金が出資者に分配されます。

多くの場合、出資金のほぼ全額(時には100%超)が戻ってくることが期待されるため、償却によって帳簿上の価値はなくなっても、実質的には数千万円から数億円規模の簿外資産を形成したことになります。大きな利益が出た年度の決算対策として有効です。

注意点と最近の動向

投資額が一口1,000万円~数千万円と高額であること、原則として中途解約ができないこと、そしてリース終了時の分配金は益金として課税されるため出口戦略が必要な点に注意が必要です。

最近では、国内で運用されるトラックのオペレーティングリースや、コロナ禍でも需要が底堅かったヘリコプター・小型航空機の案件なども注目されています。

7. その他の簿外資産(無形資産)

自社開発のWEBコンテンツや確立された自社ブランド

これまで紹介してきた有形の資産以外にも、簿外資産となり得るものはあります。例えば、自社で制作・育成したウェブサイト、ブログ、YouTubeチャンネルといったWEBコンテンツは、その制作にかかった人件費や外注費は経費として処理されますが、一度軌道に乗れば、継続的に集客や売上をもたらす無形の資産となります。

同様に、長年の努力で築き上げた企業のブランドイメージや信用力も、貸借対照表には計上されませんが、事業を支える極めて重要な簿外資産と言えるでしょう。これらの無形資産は、直接的な数値では測りにくいものの、将来の収益力を高め、企業の競争優位性を確立する上で大きな価値を持ちます。

まとめ

簿外資産は、適切な会計処理や税法上の特例を活用した結果として、貸借対照表には現れないものの、会社にとって実質的な価値を持つ資産や将来の収益源泉となるものです。

経営セーフティ共済のような制度利用、中古資産の戦略的な減価償却、特定の投資スキームの活用、さらには自社で育成する無形の価値など、その形成方法は多岐にわたります。そして多くの場合、その過程で節税効果も期待できます。

これらの簿外資産は、将来の利益計画の調整弁として機能したり、役員退職金の原資となったり、あるいは予期せぬ経営危機に見舞われた際の備えとなったりと、会社の財務的安定性と持続可能性を高める上で重要な役割を果たします。

ただし、それぞれの方法にはメリットだけでなく、デメリットやリスクも必ず存在します。自社の業種、規模、財務状況、そして将来の事業計画などを総合的に勘案し、税理士などの専門家と十分に相談した上で、最適な簿外資産形成戦略を検討・実行していくことが肝要です。

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