障害年金とは、公的年金の一つです。障害年金は、障害によって生活に支障が出てしまった場合に支払われる年金のことです。
ただ、障害年金の制度内容について「よくわからない」と思っている方も多いのではないでしょうか。
死亡してしまうよりも障害状態になり生きていくほうが、生活費も医療費もかかり、大きな経済的負担を背負うことになってしまいます。だからこそ、この「障害年金」の制度は是非知っていただきたいと思います。
そこで本日の記事では、障害年金についてお伝えしたいと思います。できるだけわかりやすく解説しますので、是非参考にしてください。
The following two tabs change content below.
私たちは、お客様のお金の問題を解決し、将来の安心を確保する方法を追求する集団です。メンバーは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持っており、いずれも現場を3年以上経験している者のみで運営しています。
はじめに|障害年金とは
障害年金とは公的年金の一つです。障害年金は、障害によって生活に支障が出てしまった場合に支払われる年金のことです。年金というと、老後の生活を支える「老齢年金」のイメージがありますが、現役世代でも、病気やけがなどで障害が生じたときには、「障害年金」が支給されます。
障害年金は、眼や耳、手足などの障害だけでなく、がんや糖尿病などの病気で長期療養が必要な場合なども、支給の対象になります。
これから障害年金の基礎知識をお伝えしていきますが、以下の3つを押さえておいてください。
-
障害年金の種類
-
障害年金の受給条件
-
障害年金の受給と年金額の目安
それでは順番に解説していきます。
1.障害年金の種類
障害年金には以下の3つの種類があります。
- 障害基礎年金(受給対象者すべて)⇒1・2級
- 障害厚生年金(会社員の場合は障害基礎年金に上乗せされる)⇒1~3級
- 障害共済年金(公務員の場合は障害基礎年金に上乗せされる)⇒1~3級
どの障害年金を受け取れるかについては、障害状態になった人の職業によって異なります。また、等級によって受け取れる金額は異なります。
2.障害年金の受給条件
障害基礎年金は次の3つの要件をすべて満たしている場合に支給されます。
- 国民年金に加入している
- 一定の障害の状態にあること
- 年金保険料をしっかり支払っていること
(加入期間の3分の2以上支払っているか、直近1年間支払っている)
これら3つの要件を満たさなければ、障害年金は給付されません。
例えば、大学を卒業後に新入社員として現在働いている22歳の新入社員Aさん。社会人になったばかりで、現在はしっかりと給与から厚生年金保険料が天引きされています。
しかし、大学時代は学問に専念していたため、年金の支払いができませんでした。また、学生納付特例制度もよくわからなかったので、申請していませんでした。
(学生納付特例制度とは学生は在学期間、保険料の納付を猶予してもらえる制度です。)
この状況で、Aさんが交通事故を起こし、重い障害を負ってしまった場合は、障害年金はいくら受給できるでしょうか?
この場合、受給額は0円になってしまう可能性が極めて高いです。何故ならば、加入期間の3分の2以上支払っていませんし、直近1年間支払っているという条件を満たしていないからです。
学生納付特例を申請していなかったため、年金保険料の支払い期間にもかかわらず未納しているという扱いになってしまっているのです。
このような最悪な状況に陥らないよう、しっかりと受給条件を確認しておきましょう。
また、一定の障害状態とは、以下のような症状です(日本年金機構HP参照)。
1級障害:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度
- 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両下肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両眼の視力の和が0.04以下のもの(原則として矯正視力)
- 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの、など
2級障害:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度
- 1上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 1下肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの(原則として矯正視力)
- 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの、など
簡単に言うと、、、
- 日常生活が全くできないなら1級障害
- 日常生活が少しできるならば2級障害
という判断になりそうです。
また、以下のような状態で、障害認定となります。
初めて医師の診療を受けた日から1年6ヶ月以内に、次の1.~7.に該当する日があるとき
- 人工透析療法を行っている場合は、透析を初めて受けた日から起算して3カ月を経過した日
- 人工骨頭又は人工関節をそう入置換した場合は、そう入置換した日
- 心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)又は人工弁を装着した場合は、装着した日
- 人工肛門又は新膀胱の造設、尿路変更術を施術した場合は、造設又は手術を施した日
- 切断又は離断による肢体の障害は、原則として切断又は離断した日(障害手当金又は旧法の場合は、創面が治癒した日)
- 喉頭全摘出の場合は、全摘出した日
- 在宅酸素療法を行っている場合は、在宅酸素療法を開始した日
1~7の障害の認定項目を見ていると、糖尿病や心筋梗塞やがんは、悪化してしまったときには、結果として障害状態になりうることがわかります。
たとえば、人工透析療法は糖尿病が悪化して行うものですし、心臓ペースメーカーや人工弁は心筋梗塞や不整脈が原因になることは多いでしょう。
日本人がかかりやすい生活習慣病は悪化すると障害認定される状態までなりうるということです。
また、会社員は厚生年金保険料を支払っていることから、障害厚生年金が受給されます。
支給条件は1・2級障害に関しては、障害基礎年金と同じです。
ただし、障害厚生年金は3級まであります。
以下が障害厚生年金3級の受給条件の例です。
3級では『うつ病』などの精神疾患で労働が著しい制限を受けると認定されて、障害年金の受給がされることもあるそうです。もちろん精神疾患で重い症状であれば1級障害にもなりえます。
障害年金の保障範囲は広く、『原因や事由が何か』よりも『生活や労働をしていくのにどの程度支障があるのか』を受給基準としているようです。支払事由を限定しないからこそ、頼りにできる国の制度といえるのです。
それでは、障害年金の保障範囲の広さを知っていただいたところで、ここからは、実際に障害状態になってしまったときに『どれくらい受け取れるのか』をお伝えしていきます。
3.障害年金の受給と年金額の目安とは
これから障害年金がどれくらい受取れるのか目安をお伝えしていきますが、年収や年金の納付期間によっても違いますのであくまでも目安としてご覧ください。
障害基礎年金は等級ごとに一律で、子の加算があります。詳しくは日本年金機構HPをご覧ください。
※平成30年4月分からの年金額(定額)
-
974,125円(1級)
-
779,300円(2級)
1級障害年金は2級障害年金の1.25倍受給できます。
子の加算もあるため、ご家族を持つ方にとっては手厚い制度となっています。ただし、加算対象の子とは18歳到達年度の末日を経過していない子。または20歳未満で障害等級1級または2級の障害者のことです。
【1級】
(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,300円)〕※対象者のみ
【2級】
(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(224,300円)〕※対象者のみ
【3級】
(報酬比例の年金額) ※最低保障額 584,500円
報酬比例の年金額の計算
障害厚生年金の計算を見ると、
障害厚生年金は、報酬比例の年金額で受給額が大きく変わることがわかりますよね。
報酬比例の年金額は、平均標準報酬額(ボーナスも含めて、平均して毎月いくら稼いできたか)と被保険者期間(厚生年金を何か月収めてきたか)で決まります。
年金定期便などでご自身の年金状況を確認されると、受給額の目安がより具体的にわかりますので、一度ご自身で確認してみてもいいでしょう。
また、「被保険者期間が少ないとあまりもらえないのではないか?」と考えてしまいませんか。
しかし、被保険者期間が300カ月未満の方は300カ月(25年間)加入していたとみなして支給してくれます。
よって、年金保険料をまだあまり納付できていない20代・30代の若年者でも、しっかりと障害年金が受給できる制度になっています。
まとめ
障害年金は、障害等級や職業により受給金額が異なりますが、保障範囲も広く、子の加算や障害厚生・共済年金には報酬比例部分もあり、手厚く保障してくれます。普段、なんとなく支払っている年金ですが、老後の備え・死亡への備え・障害への備えの3つの場面で活用できる優れた制度です。
ただし、この制度ですべての経済的負担がカバーできるわけではありません。
一度、社会保障と民間の保険でどれだけカバーできるのか、ご自身で確認してみるのもいいかもしれません。
社会保障の知識は今すぐ必要でなくても、もしかしたら将来必要になるときがくるかもしれません。ある程度の知識を持っておけば、万が一の事態にもすぐに対応でき、余裕を持った行動ができるでしょう。
安心して生活をするためにも、少しずつでもよいので、社会保障を調べてみてください。