「個人事業主として売上も安定してきたし、そろそろ法人化すべきだろうか」「一人社長になると節税できると聞くけれど、具体的にどれくらい得するのかイメージが湧かない」
事業が軌道に乗ってきた個人事業主の方にとって、法人化(法人成り)は大きな決断です。設立費用や維持コストがかかる一方で、「同じ売上でも手取りが年間50万〜100万円変わる」と言われるほどの節税効果があるのも事実です。その理由はシンプルで、法人になると個人事業主には認められていない「節税の引き出し」が一気に増えるからです。
この記事では、一人社長が個人事業主よりも圧倒的に有利になる「13の節税メリット」について徹底解説します。すでに法人化しているけれど活用しきれていない方や、これから法人化を目指す方にとって、知らなければ損をする必須のノウハウをお届けします。
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法人化はコストがかかるが「お金を守りやすくなる」
メリットの前に、まずは法人化のデメリットを確認しておきましょう。法人化には、以下のようなコストや手間が発生します。
- 設立費用:株式会社なら約24万円、合同会社なら約10万円程度。
- 均等割:赤字でも毎年最低7万円の法人住民税がかかる。
- 社会保険料:会社負担分と本人負担分を合わせて負担が大きくなる。
- 事務負担:経理が複雑になり、税理士報酬などのコストが増える。
それでもなお、一定以上の利益が出ている場合に法人化が推奨されるのは、節税効果がこれらのコストを上回り、結果として手元に残るお金(キャッシュ)を最大化できるからです。また、対外的な信用力の向上や、有限責任によるリスクヘッジといった経営上のメリットもあります。
一人社長だけが使える!圧倒的な節税メリット13選
それでは、具体的にどのような節税メリットがあるのか、13個のポイントを順に見ていきましょう。
1.役員報酬を経費にできる
個人事業主の「事業所得」は、売上から経費を引いた残り全額が課税対象です。一方、法人の場合は、社長自身に「役員報酬」を支払い、それを会社の経費(損金)にできます。会社の利益を役員報酬として個人に移すことで、法人税を圧縮できるのが最大の基本です。(※ただし、期首から3ヶ月以内に金額を決め、毎月同額を支給する「定期同額給与」のルールを守る必要があります)
2.役員賞与(ボーナス)も経費にできる
原則として役員へのボーナスは経費になりませんが、「事前確定届出給与」という制度を使えば経費化が可能です。あらかじめ税務署に「いつ、いくら支払うか」を届け出て、その通りに支払うことで、賞与も損金として計上できます。
3.給与所得控除(みなし経費)が受けられる
社長が受け取る役員報酬は「給与所得」となります。給与所得には、経費のレシートがなくても自動的に差し引かれる「給与所得控除」が適用されます。その額は最大195万円。個人事業主の青色申告特別控除(最大65万円)と比較しても、その差は歴然です。領収書不要でこれだけの控除が受けられるのは、法人化の大きな特権です。
4.出張手当で「非課税所得」を作る
「出張旅費規程」を作成すれば、出張時の交通費・宿泊費とは別に、社長個人へ「出張手当(日当)」を支給できます。
- 会社側:全額経費になる(消費税も節税できる)。
- 個人側:所得税・住民税・社会保険料がかからない(非課税)。会社のお金を無税で個人に移転できる、非常に強力なスキームです。
5.役員社宅制度で家賃を経費化
自宅を法人名義で契約し、社宅として社長に貸し出す制度です。社長は「賃料相当額(相場の2〜5割程度)」を会社に支払えばよく、残りの家賃はすべて会社の経費になります。個人の手取りから高い家賃を払う必要がなくなり、可処分所得が大きく増えます。
6.家族への給与で所得分散
家族を非常勤役員などにし、業務の実態に合わせて報酬を支払うことで、所得(利益)を分散できます。日本の所得税は超過累進課税なので、社長一人で高額な報酬を取るよりも、家族に分散させた方が世帯全体の手取りは増えます。非常勤であれば社会保険への加入義務もないため、コストも抑えられます。
7.家族従業員と扶養控除の両立
個人事業主が家族(専従者)に給与を払うと、その家族は配偶者控除などの対象外になります。しかし法人の場合、家族に給与を支払っていても、年収が一定額(103万円等)以下であれば、社長の扶養親族として控除を受けることが可能です。
8.退職金による巨額の節税
個人事業主には退職金がありませんが、法人は社長に退職金を支給し、全額を経費にできます。受け取る個人側も「退職所得控除(勤続20年超で年70万円など)」や「2分の1課税」、「分離課税」といった優遇措置があり、社会保険料もかかりません。勇退時に税金を極限まで抑えて、会社から個人へ資産を移す最強の方法です。
9.創立費・開業費の任意償却
設立や開業にかかった費用(創立費・開業費)は、「繰延資産」として計上できます。これらは「好きな時に、好きな金額だけ」経費に償却することが認められています。黒字が出た年にまとめて経費にして利益を消すなど、柔軟な利益調整に使えます。
10.決算月を自由に設定できる
個人事業主は12月決算と決まっていますが、法人は自由に決められます。繁忙期を避けて決算月を設定すれば、じっくりと節税対策を行う時間を確保できます。また、消費税免税期間(最大2期)を最大限活用するために設立日を調整するといった戦略も可能です。
11.欠損金(赤字)の繰越が10年可能
事業で出た赤字(欠損金)を翌年以降の黒字と相殺できる期間が、個人事業主の3年から、法人は10年に延長されます。大きな設備投資などで一時的に大赤字が出ても、向こう10年間の利益と相殺して法人税をゼロにできるチャンスが広がります。
12.車両関連費用の経費化
法人名義で車を購入すれば、車両代(減価償却費)、ガソリン代、保険料、税金などを経費にできます。特に「4年落ちの中古車」を活用すれば、最短1年で全額を経費化(即時償却)することも可能です。プライベート利用分については、社内規定でルール化し、適正な使用料を個人から会社へ支払うなどの運用が必要です。
13.オペレーティングリースの活用
突発的に数千万円〜億単位の利益が出た場合、「オペレーティングリース(航空機や船舶など)」に出資することで、出資額の70〜80%を一気に損金算入できます。巨額の利益を繰り延べる手段として、個人事業主にはない法人の強力な武器となります。
まとめ
法人化は、単なる「箱」の変更ではありません。「役員報酬」「退職金」「社宅」「出張手当」といった制度をフル活用することで、個人事業主では不可能なレベルの資産防衛が可能になります。
ただし、これらのメリットを享受するためには、正しい知識と適切な手続きが必要です。ご自身の事業規模で法人化すべきか迷っている方は、一度シミュレーションを行ってみることをお勧めします。
この記事で解説した内容は、以下の動画で税理士がより詳しく解説しています。具体的なシミュレーションや注意点も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。