「年収は1,000万円を超えているはずなのに、なぜか生活に余裕がない」「昇給して額面は増えたけれど、手取り額がほとんど変わっていない気がする」
高所得者の方であれば、一度はこのような虚しさや違和感を覚えたことがあるのではないでしょうか。日本の税制は、所得が高くなればなるほど税率が跳ね上がる「超過累進課税」を採用しています。課税所得が900万円を超えると所得税率は33%、さらに一律10%の住民税を合わせると、税率は43%にも達します。さらに1,800万円を超えれば、その税率は50%(所得税40%+住民税10%)です。これに厚生年金や健康保険などの社会保険料負担を加えると、実質的に「稼ぎの半分」が国や自治体へ流れていく構造になっています。
「サラリーマンは税金が天引きされる(源泉徴収)から、節税なんて無理だ」と諦めてはいけません。実は、会社員であっても活用できる節税スキームは数多く存在し、それらを知っているかいないかで、生涯の手取り資産には数百万円から数千万円単位の差がつきます。特に高所得者の場合、適用される税率が高いため、同じ1万円の控除でも、一般的な所得層に比べて「節税効果(戻ってくる税金)」が大きくなるというメリットがあります。
この記事では、高所得なサラリーマンが確実に手取りを増やし、資産を守るために実践すべき「最強の節税方法9選」について、その仕組みと具体的な活用ポイントを徹底解説します。
The following two tabs change content below.
1.医療費控除:市販薬やレーシックも対象になる
意外と見落としがちですが、確実な効果が見込めるのが「医療費控除」です。自分や生計を一にする家族のために支払った年間の医療費が「10万円(総所得金額等が200万円未満の人はその5%)」を超えた場合、その超過分について所得控除を受けられます(上限200万円)。
対象範囲は想像以上に広い
「病院での治療費」だけが対象ではありません。以下のような費用も含まれます。
- 市販薬の購入費:風邪薬や鎮痛剤など、治療目的の医薬品(ドラッグストアのレシートは必須です)。
- 通院費:電車やバスなどの交通費(タクシーは緊急時など限定的)。
- 自費診療:レーシック手術、インプラント、不妊治療、子どもの歯列矯正など。
- 入院費用:入院時の食事代(病院食)など。
高所得者が申告するメリット
医療費控除は家族全員分を合算できます。夫婦共働きの場合、所得税率が高い方(年収が高い方)がまとめて申告することで、還付される税金額を最大化できます。なお、医療費控除は年末調整では対応できないため、必ず確定申告が必要です。領収書やレシートは5年間保存しておく必要があります。
2.住宅ローン控除:税金が直接戻ってくる強力な制度
マイホームを購入・増改築する際に利用できる「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」は、サラリーマンが使える節税策の中でも最大級の効果を持ちます。
「税額控除」の破壊力
多くの節税策が「所得控除(税金の計算元となる所得を減らす)」であるのに対し、住宅ローン控除は「税額控除(計算された税金そのものを減らす)」です。年末時点の住宅ローン残高の0.7%相当額が、最長13年間にわたって所得税から直接差し引かれます。所得税で引ききれない場合は、翌年の住民税からも控除されます(上限あり)。
例えば、年末残高が4,000万円であれば、年間最大28万円(物件の省エネ性能等により異なる)の減税になります。13年間続けば数百万円規模の節税です。初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は会社の年末調整で手続きが完了するため、手間もかかりません。
3.iDeCo(個人型確定拠出年金):3段階で得する最強の年金
老後資金作りのための「iDeCo」は、現役世代の節税策としても最強クラスです。メリットは「積立時」「運用時」「受取時」の3段階すべてに及びます。
掛金が「全額所得控除」に
毎月の掛金全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引かれます。所得税率が高い人ほど、このメリットは大きくなります。例えば、所得税率20%・住民税10%の人が月額2.3万円(年間27.6万円)を積み立てた場合、年間約8.2万円の税金が軽減されます。実質的な利回りで考えれば、これだけで確実なリターンを得ているのと同じです。
運用益非課税と制度改正
通常、投資の利益には約20%の税金がかかりますが、iDeCoの運用益は非課税です。複利効果を最大化できるため、資産形成のスピードが加速します。現在の掛金上限は会社員の場合月額2.3万円(企業年金がない場合)が基本ですが、2024年12月からは他制度との併用要件が緩和され、より使いやすくなりました。
4.扶養控除:別居の親も対象になる可能性
「扶養控除」は同居している家族だけが対象だと思っていませんか?実は、配偶者や子供だけでなく、「別居している親(義理の親含む)」も要件を満たせば対象になります。
「生計を一にする」の要件
別居していても、常に生活費や療養費の送金が行われている(生計を一にしている)事実があれば、扶養親族として認められます。70歳以上の別居親族(老人扶養親族)の場合、一人当たり48万円の控除を受けられます。田舎の両親に仕送りをしている場合などは、扶養に入れることで大きな節税効果が得られる可能性があります。ただし、銀行振込の控えなど、送金の事実を証明できる書類の保存が必要です。
5.生命保険・地震保険料控除:年末調整で確実に申請
金額は大きくありませんが、すでに加入している保険があるなら、確実に申請すべき制度です。
- 生命保険料控除:「一般」「介護医療」「個人年金」の3枠合計で最大12万円の所得控除。
- 地震保険料控除:最大5万円の所得控除。
これらは年末調整で処理できます。保険会社から送られてくる控除証明書を紛失せず、漏れなく申告することで、確実に税金を減らせます。
6.ふるさと納税:実質2,000円で返礼品を楽しむ
もはや節税の定番となった「ふるさと納税」。厳密には節税というより「税金の先払い(寄附)」ですが、実質負担2,000円で各地の特産品を受け取れるため、やらない手はありません。
高所得者ほど枠が大きい
重要なのは「控除限度額」です。年収や家族構成によって上限が決まっており、高所得者ほどその枠は大きくなります。年収1,000万円であれば、十数万円分の寄附枠があるケースも珍しくありません。ご自身の限度額をシミュレーションサイト等で確認し、枠を使い切るのが最もお得です。ワンストップ特例制度を使えば確定申告も不要ですが、医療費控除などで確定申告をする場合は、ふるさと納税分も合わせて申告する必要がある点に注意してください。
7.特定支出控除:サラリーマンの「経費」枠
「特定支出控除」は、サラリーマンにおける「必要経費」の実費計算制度といえます。業務に必要な特定の支出が、給与所得控除額の2分の1を超えた場合、その超過分を所得控除できます。
対象となる支出
- 通勤費・転居費・帰宅旅費:会社が負担していない分(単身赴任の帰省費など)。
- 研修費・資格取得費:業務に必要な技術習得や資格(弁護士、公認会計士、税理士など含む)の費用。
- 図書費・衣服費・交際費:業務に関連する書籍、スーツ代、接待費など(上限65万円)。
ハードルは高めですが、MBA取得などの高額な自己投資をした年や、単身赴任での帰宅旅費がかさむ場合などは適用できる可能性があります。適用には会社の証明書が必要です。
8.不動産投資:赤字で税金を相殺(損益通算)
ここからは、資産運用を兼ねたより積極的な節税策です。不動産投資を行い、帳簿上の「赤字」を作ることで、給与所得の黒字と相殺(損益通算)し、給与から天引きされた税金を取り戻すスキームです。
減価償却費で「帳簿上の赤字」を作る
不動産投資では、建物の購入費用を数年に分けて経費化する「減価償却費」が発生します。特に「築古の木造アパート」などは法定耐用年数を経過しており、最短4年という短期間で建物の購入価格を経費化できます。実際には家賃収入が入ってきてキャッシュフローがプラスであっても、多額の減価償却費を計上することで会計上は赤字となり、その赤字分を給与所得から差し引くことで、所得税・住民税を大幅に圧縮することが可能です。
譲渡所得税との税率差を利用する
不動産を売却する際の利益(譲渡所得)にかかる税率は、長期譲渡(所有5年超)であれば約20%です。給与所得の最高税率(55%)と比較して圧倒的に低いため、所得税を還付させつつ、最終的に不動産売却益として受け取ることで、トータルの税負担を下げることができます。
9.太陽光発電投資:即時償却で一気に節税
「福島復興再生特別措置法」などの特例を活用した太陽光発電投資も、高所得者に有効な手段です。
投資額の大部分を即時償却
指定地域の設備に投資することで、取得費用の即時償却(100%経費化)などが可能になる場合があります。例えば、2,500万円を投資して、その90%(設備部分)を初年度に償却できれば、約2,250万円の経費を一気に作ることができます。これにより、その年の課税所得を大幅に引き下げることが可能です。
事業所得としての認定要件
ただし、売電収入が「雑所得」とみなされると、給与所得との損益通算ができません(雑所得の赤字は他の所得と相殺できないため)。損益通算を行い節税メリットを享受するためには、「事業所得」として認められる必要があります。一般的には、出力50kw以上であることや、フェンスの設置・除草管理などを行い事業として反復継続して行っている実態が必要です。
まとめ
高所得のサラリーマンこそ、累進課税の影響を大きく受けるため、節税対策を実行した際の効果(リターン)も大きくなります。まずは「iDeCo」や「ふるさと納税」といった手軽で確実な制度から始め、ご自身の資産状況やリスク許容度に応じて「不動産投資」や「太陽光発電」などの運用型節税を検討してみてはいかがでしょうか。
これらを組み合わせることで、額面年収は同じでも、手元に残る資産を最大化することができます。「自分にはどの対策が最適か?」「具体的な節税シミュレーションをしてみたい」という方は、ぜひ専門家にご相談ください。
この記事で解説した内容は、以下の動画で税理士が詳しく解説しています。具体的なシミュレーションや、動画ならではの分かりやすい図解も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。