個人事業主の手残りを最大化する、見落としがちな税金と7つの節税策

個人事業主として独立すると、会社員時代とは異なり、ご自身で確定申告を行うため、税金への意識が自然と高まります。所得税や住民税の仕組みについては、多くの方が詳しくなっていくことでしょう。

しかし、個人事業主が納める税金はそれだけではありません。実は、多くの方が見落としがちであり、かつ、知っていれば合法的に負担をゼロにできる可能性のある、もう一つの「事業に関する税金」が存在します。その存在を知らずにいると、本来払う必要のない税金を納め続けてしまうことになりかねません。

この記事では、まず個人事業主が支払う税金の全体像を整理し、特に見落とされがちな「個人事業税」の仕組みと、その負担を軽減する「裏ワザ」を解説します。その上で、今日から実践できる、手取り収入を最大化するための7つの具体的な節税テクニックを詳しくご紹介します。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

1.個人事業主が支払う4つの税金と「個人事業税」の罠

個人事業主が納める主な税金は、以下の4種類です。所得税、住民税、消費税についてはご存知の方も多いと思いますが、ここで改めて確認しておきましょう。

  • 所得税:1年間の事業所得に応じて課される国税です。所得が多くなるほど税率が高くなる「超過累進課税」が採用されており、節税対策の効果が最も表れやすい税金と言えます。
  • 住民税:お住まいの都道府県・市区町村に納める地方税です。所得に対して一律約10%の税率で課されますが、所得控除の金額などが所得税とは一部異なります。
  • 復興特別所得税:東日本大震災からの復興財源として、2037年まで課される国税です。所得税額に対して1%が上乗せされます。
  • 消費税:2年前の課税売上高が1,000万円を超える場合や、インボイス制度に登録している場合に納税義務が発生します。

そして、これらに加えて、特定の事業を行う個人事業主が納めるもう一つの地方税が「個人事業税」です。この税金の存在と仕組みを理解することが、最初の重要な節税ポイントとなります。

個人事業税とは?その仕組みと「290万円の壁」

個人事業税は、都道府県が、その地域で法律に定められた特定の事業(法定業種)を営む個人事業主に対して課す税金です。税率は事業の種類によって異なりますが、多くの業種で3%~5%に設定されています。

この個人事業税の計算式は以下の通りです。(事業所得+青色申告特別控除前の所得-各種控除)×税率

ここで最も重要なのが、各種控除の中に含まれる「事業主控除」です。事業主控除は、年間を通じて事業を行っている場合、一律で290万円が所得から控除されるという、非常に大きな控除です。

つまり、青色申告特別控除などを適用する前の事業所得が290万円以下であれば、個人事業税は一切かからないのです。この「290万円の壁」を意識して利益をコントロールすることが、個人事業税をゼロにするための「裏ワザ」と言えます。

課税対象となる所得を290万円以下に抑えることが、一つの目標となります。

2.手取りを最大化する7つの節税テクニック

それでは、個人事業税の負担を軽減し、所得税や住民税も含めたトータルの手残りを増やすための、具体的な7つの節税テクニックを見ていきましょう。

①青色申告のメリットを最大限に活用する

まず、個人事業主になったら必ず行うべきなのが「青色申告」の申請です。白色申告と比較して、青色申告には計り知れないほどの税制上のメリットがあります。

【図表】青色申告と白色申告の主な違い

特に「最大65万円の青色申告特別控除」は、所得を直接圧縮できるため、非常に強力です。

また、開業当初に赤字が出た場合に、その赤字を翌年以降の黒字と相殺できる「純損失の繰越控除」も、経営の安定に大きく貢献します。複式簿記での記帳という手間はかかりますが、それを補って余りあるメリットがあると言えるでしょう。

②「家事按分」を制して経費を漏れなく計上する

節税の基本は、事業にかかった経費を漏れなく計上することです。特に個人事業主の場合、見落としがちなのが「家事按分」できる費用です。

家事按分とは、自宅の家賃や光熱費、通信費など、プライベートと事業の両方で使っている支出について、事業で使用した割合分を経費として計上することを指します。

例えば、月10万円の家賃の自宅のうち、30%を事業用スペースとして使用しているなら、月3万円(年間36万円)を経費にできます。通信費であれば、1日のうち事業でスマートフォンを使用した時間割合などで計算します。

一つひとつは小さな金額でも、年間で合計すれば大きな経費となり、課税所得を大きく引き下げます。家賃、水道光熱費、通信費、車両関連費など、按分できる費用がないかを徹底的に洗い出しましょう。

③未払金を計上して利益をコントロールする

会計の原則として、費用は「支払いが発生した時点」ではなく、「その費用が発生する原因となる取引や事実が発生した時点」で計上します。これを利用して、決算期末に利益を圧縮するのが「未払金」の計上です。

例えば、月末締めの翌月払いで業務を外注している場合、12月分の外注費の支払いは翌年1月になりますが、この費用は12月中に発生しているため、当年の経費として「未払金」で計上できます。

従業員を雇用している場合の給与(例:12月16日~31日分)なども同様です。期末に利益が出すぎている場合に、翌期に支払う予定の経費を当期の経費として前倒しで計上することで、利益を平準化できます。

④小規模企業共済で「退職金」を準備しながら節税

個人事業主には会社員のような退職金制度がありません。その退職金を、自分で積み立てながら、同時に高い節税効果を得られるのが「小規模企業共済」です。

この制度は、毎月の掛金(最大7万円、年間84万円)が、その全額「所得控除」の対象となります。課税所得から直接差し引かれるため、所得税・住民税の負担を大きく軽減できます。

将来の生活資金を確保しつつ、目先の税金を減らせる、非常に効率の良い制度です。また、納付した掛金の範囲内で、事業資金の貸付制度も利用できるため、いざという時の資金繰りにも役立ちます。

⑤経営セーフティ共済で「リスク対策」と「節税」を両立

小規模企業共済と並んで活用したいのが「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」です。これは、取引先の倒産という不測の事態に備えるための制度ですが、強力な節税効果も併せ持っています。

この制度の掛金(最大20万円、年間240万円)は、所得控除ではなく、全額が「必要経費」として計上されます。必要経費として計上されるため、所得税・住民税だけでなく、所得に応じて金額が決まる国民健康保険料の負担を軽減する効果もあります。

掛金は40ヶ月以上納付すれば、解約時に全額が戻ってくるため、実質的にノーリスクで、リスク対策と節税を両立できる優れた制度です。

⑥活用できる所得控除を再確認する

確定申告の際には、様々な「所得控除」を活用することで、課税対象となる所得を減らすことができます。生命保険料控除や地震保険料控除、iDeCoの掛金などはもちろんですが、意外と見落としがちな控除もあります。

例えば、年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合に使える「医療費控除」は、生計を同一にする家族の分も合算できます。

また、遠方に住む親に生活費の仕送りをしている場合などは「扶養控除」の対象になる可能性もあります。一度、自分や家族が使える所得控除がないか、改めて確認してみることをお勧めします。

⑦「法人化」という選択肢を検討する

事業が順調に拡大し、所得が一定額を超えてきたら、次のステップとして「法人化」を検討するのも、非常に有効な節税策です。個人の所得税は、所得が増えれば増えるほど税率が上がる累進課税ですが、法人税の税率は一定です。

一般的に、課税所得が900万円を超えてくると、個人の税率が法人税の実効税率を上回り始めるため、法人化した方が税負担は軽くなる傾向にあります。

法人化すれば、自分自身に役員報酬や退職金を支払って経費にしたり、社宅制度を活用したりと、節税の選択肢が格段に広がります。もちろん、設立費用や維持コストもかかりますが、それを上回るメリットが得られる可能性は十分にあります。

まとめ

個人事業主として手元に残るお金を最大化するためには、日々の売上を伸ばす努力と同時に、税金に関する知識を身につけ、賢く対策を講じることが不可欠です。

特に、多くの方が見落としがちな「個人事業税」は、「事業主控除290万円」という大きな非課税枠を意識するだけで、大きな節税に繋がります。

そして、青色申告を基本とし、経費の計上、共済制度の活用、所得控除の見直しといった、今日からでも始められる対策を一つひとつ着実に実行していくこと。

それが、厳しい税負担を軽減し、ご自身の事業と生活を豊かにするための、最も確実な道筋と言えるでしょう。

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